前話でも言った通り、子供達の絡みでございます。
では、どうぞ!
浩司が働き始めて一週間が経った頃………
アクアside
「ふむ、もうちょい味は薄めで良いか?」
俺の名前は『
妹の『
俺達は今、キッチンに立っている男を警戒していた。
男の名は、『
アイと斉藤さんの紹介で来たお手伝いさんだそうだ。
何でも、働き口が無くて困っていた所を、アイを通して社長に雇われたのだという。
だが、
「ねぇお兄ちゃん、あの人信じて大丈夫なの?」
「うぅむ、いまいち信用できないな………」
「やっぱりそうだよね……」
そう、どうしても警戒せざるを得ないのだ。
アイの事を二度も助けて貰ったとはいえ、そう簡単に信じる事は出来なかった。
アイと社長には申し訳ないが、俺達は彼を信用することが出来ない。
だが、彼の放った言葉により、俺達は彼に対してとんでもない事を行おうとしていた。
それは………
浩司side
(全部聞こえてんだよなぁ………)
調理中、双子の子達が小声で内緒話をしてるように見えるが、
ここ最近聴力が上がって来てるせいか、全部丸聞こえである。
内容としては、俺に不信感を抱いていると言った所だろう。
(まぁ、いきなり自分達の生活を手伝いする事になったおじさんとか、信じられるわけ無いもんな………)
年齢的に言ったらお兄さんが近いかもしれないけど、
ちびっ子とかは高校生の人にもおじさんおばさんって呼んだりするって言うからなぁ………。
そこら辺は諦める事にしよう。
しかし、ここで俺はふと、割と大事な事に気づいてしまった。
(アレ?そういえば俺って、アイドルとしての星野さんを何も知らないのでは?)
そう、普段の生活で星野さんの事は少しずつ理解できるようになったのだが、
アイドルとしての星野さんの事は、ほとんど知らないのである。
唯一知ってるとしたら、以前学校でミニライブをした時のあれだけである。
(俺も芸能界に片足突っ込んでる訳だし、これを機に少しでも勉強してみるのも良いかもなぁ………)
だが、普段から忙しい星野さんや斉藤さん達に教えて貰うというのは少し気が引けるし………。
(うぅん、僅かな希望に賭けてみるかな………?)
アクアside
「アクア君、ルビーちゃん、少し良いかな?」
「「え?」」
俺達が小声で話していると、烏丸さんが声をかけて来た。
いったいどうしたのだろう。
「どうかしたんですか?」
「えっと、ちょっと聞いてみたい事があってね?」
「………聞いてみたい事って?」
まさか、俺たちの事について聞こうとしてるのか?
いや、でもそれだったら既に社長の方で説明はされてると聞いたぞ?
何を知ろうというんだ………?
「アイドルとしての星野さんについて、教えて欲しいんだ」
「「……… へ?」」
アイドルとしての、アイ………?
「どうしてそんな事を?」
「いやぁ恥ずかしい話、俺ってアイドルとか芸能関係とかに全然興味無くてさ、知識がほぼゼロなんだ」
「でも、曲がりなりにも芸能界に片足突っ込んでるわけだから、少しでも勉強した方が良いと思ってね?」
「けど、星野さんや斉藤さん達は忙しいから教えて貰うのは難しいだろうし、それだったら、一番近くで見て来た君達に教えて貰おうと思ったんだ」
「だから、お願いできないかな?」
………どうするべきなんだ?
教えるのは別に構わないが、だからと言って簡単にホイホイと説明してもなぁ………。
そう思っていると、ルビーが俺を引っ張って烏丸さんから距離を取り、耳元で話しかけて来た。
「ちょ、何するんだよルビー!?」
「良い考えを思いついたの!」
(良い考え………?)
嫌な予感がするが、一応聞くだけ聞いてみよう。
「何をするつもりなんだ?」
「烏丸さんをこっち側に引き摺り込む」
「な、お前正気か!?」
そう、烏丸さんをアイのドルオタの道に引き摺り込もうというのだ。
明らかにエゲツない事をやろうとしている。
「だって推しを布教出来るまたと無いチャンスなんだよ!?これを逃す手は無いよ!!」
「いや、しかしなぁ………」
「お兄ちゃんは共通の推しが増える事が嬉しくないの!?」
「そ、それは………」
共通の推しが増えるのは嬉しい事ではある。
だが、今からやろうとしている所業に対して、物凄い抵抗があるのだ。
しかし、ルビーはとてもやる気に満ちており、
烏丸さんの顔を見ると、不安に駆られた表情でこちらを見ている。
(仕方ない………)
「………分かった、俺も手伝うよ」
「ありがとうお兄ちゃん!!」
(とことん甘いな、俺………)
すいません、烏丸さん。
妹を止められなかった情けない兄をお許し下さい………!
浩司side
(聞こえてはいるけど、やっぱアクア君は乗り気じゃ無いか………)
(というか今更思ったけど、四歳児がここまで流暢に喋れるって、なかなか凄い事だよなぁ………)
(これが俗に言う『ギフテッド』ってヤツなのかな………?)
(あ、戻ってきた)
色々と考えていると、双子達が戻って来た。
ルビーちゃんはやる気に満ち溢れた表情をしており、
アクア君は全てを諦めたような表情をしている。
「えっと、やっぱりダメ……かな?」
「任せてください!!」
「僕たちが教えられる範囲になりますけど………」
「本当に!?ありがとう!」
こうして、俺は子供達からアイドルとしての星野さんについて教わる事になった。
色々と学べると良いなぁ………。
数日後………
アクアside
あれから数日が経ち、俺達は烏丸さんにアイドルとしてのアイの事を色々と教えていた。
途中、ルビーが暴走して説明する事もあったが、そこは俺が修正しつつ実際の部分を話していった。
結果はどうなったかというと………、
「へー、結構凄い事してたんだなぁ星野さんって」
「お兄ちゃん、この人スッゴイガードが硬いんだけど!?」
「まぁ、こうなるだろうと思ったよ」
オタクに堕ちる事は無かった。
それ自体はまぁ問題ではなかったのだが、リアクションが明らかに薄すぎるのだ。
「へー、そうなんだ。すげー」というようなまるで関心が無いような反応に見えるかもしれないが、
おそらく本人としては、純粋に勉強したいからという理由で聞いてみたのであって、
決してファンになりたいからとかではないのだろう。
俺も、多分ルビーも、何だか敗北したような気分である。
(でもまぁ、これで良かったのかな?)
共通の話題ができた事を喜ぶとしよう。
俺は、諦めるように天を見上げるのだった………。
浩司side
アクア君とルビーちゃんのおかげで、ある程度はアイドルとしての星野さんを知ることができた。
星野さんって、実はすごいアイドルだったんだなぁ………。
『嘘を本当に変えるアイドル』か………。
愛したことも、愛されたことも無い少女が、アイドルになり、そして母親になって
「愛してる」と心から言えるように今も変わらず努力してる。
………何だか、胸が痛くなってくるな。
あ、そうだ。
「2人とも、ちょっとお願い事があるんだけど、良いかな?」
「お願い事?」
「どうしたんですか?」
「俺のことはおじさんって呼んでも良いからね!」
「「おじ、さん?」」
「いつまでも烏丸さんって呼ばれるのも、少し寂しいなって思ってね。あと仲良くなりたいっていうのもある」
「………分かったよ、烏丸おじさん」
「それじゃあよろしくね、烏丸おじさん!」
「あぁ、これからもよろしく頼むよ、アクア君、ルビーちゃん」
こうして、俺は双子の子達と仲良くなったのである。
そして、それから10年以上の時が流れたのだった………。
というわけで、雑な双子との絡みでございました。
この後は原作に突入します。