烏の戦士の奮闘記   作:クロロンヌ

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はい、第十二話でございます。

では、どうぞ!


第十二話 烏の彼は愕然とする

浩司side

 

 

 

俺達は、アクア君が出演する『今日あま』という作品のドラマを鑑賞していた。

しかし………、

 

『人間は嫌い。だって皆、自分の事しか考えてないから』

 

「あ、ロリ先輩だ!」

 

「この子が、アクア君達が言ってた有馬かなちゃんか………」

 

オマエ、ソンナカオシテテタノシイノカ?

 

「………ん?」

 

今、台詞の読み方どうなってた?

 

ナンダ、ワラエバカワイージャン!

 

『からかわないで!』

 

「「「「………」」」」

 

オレノオンナニテヲダスナ!

 

ハッ、ナンダテメー!?

 

『喧嘩は止めて!』

 

その台詞が終わった段階で、ミヤコさんはそっとパソコンを閉じた。

沈黙が部屋の中を支配する。

何だったんだ、今のドラマは?

あまりにも台詞が棒読み過ぎる。

 

「『今日あま』ってこんな作品だったっけ!?」

 

ルビーちゃんも困惑していた。

そりゃそうだ。

楽しみにしていた作品がこんな劇物だったとは思いもしなかっただろう。

 

「まぁ、概ねこんな感じじゃなかったかしら……?」

 

ミヤコさんの表情も暗い。

 

「演出とかはしっかりしてるから観れない訳ではないけど………原作にいないオリキャラが活躍してるし

 

「できるだけ多くの役者を使いたい制作側の意向ね………」

 

だからと言って、これは出過ぎじゃないか?

 

「展開もさ、こんなんじゃなかったよね?」

 

「原作14巻分を半クール分にまとめるとなると、どうしても物語をカットする部分が出てくるのよ………」

 

「アクア君、半クールって?」

 

「1クールが大体3ヶ月で12話だから、その半分の6話だよ」

 

え、だとしたら相当無理があるんじゃないか?

 

「役者の演技とかも………」

 

「演技未経験のモデルの子が多いみたいね………」

 

うわぁ、これは流石に………

 

「なんか………ひどいね!マジかこれ!?』って感じ!」

 

「ルビーちゃん、それ思っても言っちゃダメ!」

 

「それに、ロリ先輩の演技、なんか昔より質が落ちてない?」

 

「え、あの子の演技ってあれよりも凄いの?」

 

「そうだよおじさん!おじさんが神隠しにあってた間の話なんだけど………」

 

「ふむふむ」

 

「………」

 

(………ん?)

 

 

 

 

数時間後………

 

 

 

 

 

アクアside

 

 

 

「ってな事があったんだよ」

 

「は!?アンタの妹そんな事言ってたの!?死ねよアイツ!!

 

「お前、相変わらずクチが悪いよな」

 

俺はあの後、近くのカラオケ屋で有馬と待ち合わせをし、今回の件を有馬に話した。

そしてこの反応である。

 

「それと、私の名誉のために言っておくけど、私ほど演技が出来る高校生なんてそうそう居ないからね!」

 

「じゃあ何で今回はこんな事になってんだよ?」

 

「………今回のドラマは、これから売り出したいモデルを兎に角いっぱい出して、イケメン好きな女性層の人気を確保する企画なのよ。」

 

なるほど、演技は二の次という訳か。

 

「でも、それじゃあ作品が破綻する!だから演技が売りの私をヒロインに起用してるってワケ」

 

「ふーん……それにしてはお前の演技がヌルいと俺は思うが?」

 

「抑えてるからに決まってるでしょ!」

 

「周りの役者は皆大根役者ばっかり!メインキャストの中でマトモに演技ができるの私だけなのよ!?」

 

「この中で私が本気で演じてみなさいよ!他の役者の大根ぶりが浮き彫りになって大変な事になるわよ!?」

 

「まぁ、確かに………」

 

こいつが本気で演技をしようものなら、それこそ作品が崩壊するかもな。

 

「私だって本気で演技がしたいわよ!誰が楽しくて態々下手な演技をするっていうのよ………」

 

………こいつもこいつなりに苦労してるんだな。

素直に同情するよ。

 

「………でも、上手い演技と良い作品作りは別物よ」

 

「?」

 

「上手い演技をすれば、いい作品になるかと言われればそうじゃない」

 

「確かに、この作品は企画からして売り手の都合が全面に出過ぎているし、作品として面白くなりようがないわ」

 

「まぁ、それはそうだが………」

 

「それに、第一話の撮影で原作者の先生が現場に訪れた時、あの失望した顔は今でも忘れられない………」

 

「でも、役者や裏方の人は個人個人で精一杯やってて、見てくれる人や原作ファンの為に少しでもいい作品にしたい」

 

「だからせめて、『観れる』作品にする!そのためだったら、下手くそな演技でもやってやるわ」

 

「………それって、自分の役者としての評価を下げてもする事なのか?」

 

「………役者に必要な要素って、『コミュ力』なのよ」

 

「!」

 

「昔の私は自分の演技をひけらかして、確かに売れてたけど、他人を蔑ろにしてた」

 

「だから、旬が過ぎれば、一気に仕事が無くなった」

 

「私より演技が上手い子どもは沢山いて、それでも私を使う意味が大事なことなんだって気づいたんだ」

 

「さしずめ私は、我を通さずに作品の品質貢献に務める使いやすい役者!」

 

「プロデューサーとの付き合いも長くてね、今回も私がその辺りを弁えてるから、起用してくれたんだ」

 

こいつも、それなりに成長してるって事なんだなぁ………。

 

「協調性を身につけたって事か?」

 

「私もそれなりに大人になったって事よ」

 

「まぁ、モデル共と張っても負けない顔の良さもあるだろうけど!」

 

ちょこっと褒めた途端これである。

役者って自信家しかいないのか………?

そう考えていると、有馬はとんでもないことを言い放った。

 

というわけで、撮影は明日ね!

 

「は?」

 

来週オンエアだから!撮影後は即編集、即納品!!

 

「え、ちょ」

 

本読みはすっ飛ばして即リハ即撮影だから、よろしくね!!!

 

「どういうスケジュールしてんだ!?」

 

スケジュール管理どうなってんだよ!?

切り詰め過ぎじゃ無いのか!?

 

「仕方ないでしょ!アンタの役の子が、おいしい役じゃないからってゴネて降りたモノだから、リスケになって大変だったのよ」

 

「まぁ、だからこそアンタを捩じ込めたんだけどね?」

 

そう言って有馬は俺に台本を渡してきた。

 

「コネで役取って本読みも飛ばし……子供の頃同じ事やって散々言ってくれたよなぁ………」

 

そう、実はちびっ子だった頃に俺は似たような事を有馬にした事があった。

まさか今度は自分がされる側になるとはなぁ………。

 

「懐かしいわねぇ……今度は私がやる側になるとは、汚い大人になってしまったものね!アハハハハ………」

 

笑い事じゃ済まされないぞ?

 

「本当にごめんなさい……でも、今なら監督の気持ちもわかる気がする」

 

「え?」

 

「アクアを誘った理由は、もう分かってくれたよね……?誰にボロクソ言われようと、大根と言われても構わない」

 

お願い、私と一緒に良い作品を作って!

 

「アンタとなら、それが出来ると思うの」

 

「有馬………」

 

 

 

 

 

浩司side

 

 

 

「………なるほど、そういう事だったのか」

 

アクア君の様子が気になって尾行していたが、

そういう事情があったとはな………。

 

(都合が良いことに、明日は仕事が休みだから、コッソリ付いて行こうかな?)

 

純粋にドラマの撮影ってどんなものか気になるからな………。

 

こうして、俺の明日の予定は決まった。

だが翌日、俺は、彼の撮影について行って良かったと安堵する事になる。




はい、というわけで、第十二話でございました!

何で浩司は安堵することになったのか、
それは次回くらいになります。
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