烏の戦士の奮闘記   作:クロロンヌ

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はい、第二十話でございます。

浩司が若干不憫な目に遭います。

では、どうぞ!


第二十話 烏の彼は巻き添えに遭う

浩司side

 

 

 

『座って足を伸ばし踵浮かし〜♪』

 

(何で俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ………)

 

俺は、ひよこのマスクを被りながら死んだ目をして踊っていた。

俺の横には同じひよこのマスクを被ったパンツしか履いていない筋肉質の男性、

そして後ろには、同じくひよこのマスクを被ったルビーちゃんとかなちゃんがいる。

踊っている内容も某ブートキャンプを連想させる振り付けとなっており、

BGMも、某筋肉芸人を連想させる音楽が流れている。

本当に何でこうなったんだっけ?

それは、数時間前にまで遡る………。

 

 

 

 

 

数時間前………

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんは今日も収録、かたや私は………。先輩って仕事無いのに慣れてますよね、普段どうやって過ごしてるんですか?」

 

「アンタその顔引っ叩くわよ?」

 

「ルビーちゃん、またおやつ抜かれたいの?

 

「マジですんませんでした!!」

 

「アンタ、烏丸おじさんの事になると本当に素直よね………」

 

「だって、おじさんのおやつって本当に美味しいんだもん!」

 

「適当に作ってるだけなんだけどなぁ……」

 

かなちゃんはともかくとして、ルビーちゃんはまだ苺プロに所属してはいるものの、

まともな活動を何一つとしてしていない。

 

「アイさん、アイドルだった貴方から見た場合はどうなんですか?」

 

「そうだな………そこまで焦る必要は無いと思うけど、活動出来ずに終わるっていうのも、少し違う気がするし………」

 

「ていうか、暇なら勉強とかしてなさいよ。アイドルなんて売れても食えない上に旬の短い仕事なんだから、良い大学に入る為に何かした方が人生にとってプラスよ

 

「かなちゃんもかなちゃんで身も蓋もない事言うな………」

 

「それに、持ち曲も無ければユニット名も未定、今の私達に何ができるってのよ?」

 

「ユニット名がまだなのは先輩がゴネるからでしょ!?」

 

そう、実はかなちゃんは苺プロに所属したものの、

アイドルとして活動する決意が固まっていなかったのだ。

本人曰く、

「アイドルを名乗る踏ん切りが付いてない」のだそう。

 

「良いじゃん、『アイドル 有馬かな』って!」

 

「いや、実績の無い自称アイドルとか、恥ずかしくて親に説明出来ないわよ!」

 

「じゃあ、実績があれは踏ん切りが付くのかな?ミヤコさーん!」

 

「そう言うだろうと思って用意しといて良かったわ………」

 

そう言ってミヤコさんはため息をついて小さなカメラを取り出した。

そしてご丁寧に三脚まで用意されている。

 

「何ですか、そのちゃっちいカメラ?」

 

「ちゃっちくても性能は十分よ?」

 

「ひと昔前の新人アイドルの下積みといえば、ビラ配りとか、アイドルの合同ライブに出演したりとか、そういうのが基本だったけど………」

 

確かに、秋葉原とかの都心のアイドルはそれがポピュラーだったけど………。

 

「今やアイドルカルチャーの中心はインターネット!草の根するにもここが一番コスパが良いし、先ずはネットで名前を売る所から始めましょう!」

 

「つまり、ユーチューバーって事!?」

 

「有り体に言えばそうね。固定客を作ってライブに人を呼べば、効率が良いでしょ?」

 

「おぉ、ミヤコさん賢い!」

 

「それに、苺プロは色んな動画投稿者を多く抱えてるいわゆる『ネットに強い事務所』!それなりにノウハウはあるんだよね〜

 

「ちょうどさっき協力してくれる人を確保した所だから、彼に教えて貰いましょう

 

「それじゃあ、後はお願いね」

 

『オ任セアレ!』

 

そう言ってドアを開けて入ってきたのは、

頭にひよこのマスクを被り、服装もブーメランパンツしか履いていない

筋骨隆々の大男だった。

 

「へ、変質者だァァァァァァァァ!?」

 

「あ、ぴえヨンだ!」

 

「まさかの貴方が呼ばれましたか………」

 

「え、誰なのあの人!?」

 

「え、覆面筋トレ系ユーチューバーの『ぴえヨン』をご存じない!?」

 

「言い方が悪くなりますけど、こんな見た目でも子供達に大人気の人だよ?」

 

「そうなの!?………世の中ってやっぱり何か歪よね………」

 

「ちょ、ぴえヨンになんて口の利き方を………!?ぴえヨンさん、彼女にバシッと言ってやってください!!」

 

言い方が三下みたいになってるよルビーちゃん………。

 

「所詮ネットってインパクト勝負っていうか、テレビの企画を流用したキャラビジネスっていうか………」

 

かなちゃんがそう言うと、ぴえヨンはかなちゃんの方を向いて、

割ととんでもない事実を言い放った。

 

「ボク年収1億ダヨ?」

 

「舐めたクチ利いてスンマセンでした!!」

 

そう、実は彼の年収は驚く事に1億である。

実際彼はこの年収のおかげで苺プロの稼ぎ頭の一人となっている。

因みに一番は星野さんである。

 

その後、ぴえヨンから登録者を稼ぐために必要な事を学ぶ事になった。

 

「イイカイ?登録者を稼ぐには、幾つかのテクニックがあるヨ!何か分かるかナ?」

 

「毎日投稿するとか!」

 

「元々の知名度とか?」

 

「うんうん、確かにそれもあるネ。デモ君達って毎日投稿する根気も知名度も無いヨネ?」

 

「うぅわ辛辣………」

 

「ところが、手っ取り早く登録者を増やす裏テクがあるんだ!」

 

「あ、その言葉を待ってました!」

 

「教えて、ぴえヨン先生!」

 

「ソレはね………」

 

 

 

 

かなside

 

 

 

『ピヨピヨピヨ〜ぴえヨンチャンネル!』

 

「ハイ、今回はネ、しがらみ案件デス!」

 

「なんでも、ウチの事務所でアイドルユニットを作るらしくて、お前のチャンネルで使ってくれって言われたんダ!」

 

「最初は断ろうと思ったんだケド、副社長に言われたからネ………。と言うわけで、今回の企画は!」

 

『ぴえヨンブートダンス!1時間ついてこれたら、素顔出してヨシ!!』

 

そんな感じで企画が始まったんだけど、普通にキツい!!

流石筋トレ系ユーチューバー名乗るだけあってしっかりキツいし、

マスクを被ってるから下手すると酸欠になっちゃう!

それに、本来なら私とルビーとぴえヨンでやる筈だったのに、ノリと勢いで烏丸おじさんまで巻き込まれてるし!!

私は走り込みとかしてるし、おじさんも少なからず体力は大丈夫だけど、

ズブの素人のルビーにこれは………。

そう思ってルビーの方を見ていると、何故かルビーは笑っていた。

 

「アハハハハ!キッツ!死んじゃう!アハハハハ!」

 

(嘘でしょ……!?)

 

そして、後半になると、私もルビーもフラフラになった。

おじさんも流石に足元が覚束ないところまで来ていた。

よく聞いてみると、呼吸も浅いように思える。

こうなったらもうヤケクソだ、死ぬ気で踊ってやる!!

 

 

 

 

 

一時間後………

 

 

 

 

 

 

「「お、終わった………!」」

 

あれから一時間、私達はしっかりと踊りきった。

本当に死ぬかと思った。二度とやりたくない。

 

「ハイ、お見事!着ぐるみを取って自己紹介をどうぞ!」

 

そうだ、最後は私達の自己紹介をするんだった。

私達は息絶え絶えになりながら、自己紹介を行なった。

 

いちごぷろしょぞく……、ほしのるびー……、じしょうアイドルです………

 

「うん、次はそっち!」

 

「………有馬かな!自称アイドルですこんにちは!!

 

「名前は聞き覚えがある!」

 

「名前だけかい!?」

 

「………あれ、そういえばおじさんは?」

 

「「え?」」

 

ルビーがそう言ったので周りを見ると、

おじさんは、部屋の隅の方で倒れていた。

よく聞いてみると、呼吸がほとんど出来ていない。

このままだと命に関わるかも!?

 

「おじさん大丈夫!?しっかりして!!」

 

「呼吸も浅いわ!早く酸素を!!」

 

 

 

 

 

 

浩司side

 

 

 

………あれ?

俺、何してたんだっけ………?

確か、ルビーちゃんとかなちゃんとぴえヨンのブートダンスに巻き込まれて………。

駄目だ、そこからの記憶が無い。

ルビーちゃん達、大丈夫だったのかなぁ?

そう思っていると、

 

「浩司さん?」

 

「え?」

 

目を開けると、なんと星野さんがいた。

あれ、ていうかこの体勢、俺が寝っ転がってて顔の上には星野さんの顔。

しかも後頭部の柔らかい感触………。

これっていわゆる膝枕………!?

 

「すいません星野さん!直ぐに退きま「駄目ですよ!」うぇ!?」

 

「もうしばらくはこのままでいて下さい。心配したんですから………」

 

「そう、でしたか………そういえば足、大丈夫なんですか?痺れとかは………」

 

「これくらいなら、どうって事無いですよ!まぁ、ぴえヨンさんには少しオハナシをしますので………!

 

「よし、これ以上は何も聞かない事にしようそうしよう」

 

あ、やばい、眠い………。

俺が瞼を閉じてもう一度眠ろうとした時、星野さんが俺の手を握った。

 

「大丈夫ですよ、私がそばに居ますからね………」

 

………やっぱり、本当に星野さんには敵わないな………。

そう思い俺は、もう一度眠りに着いたのだった。




というわけで、第二十話でございました。

この後、ぴえヨンは割と本気でアイにキレられました。
動画の方もテロップで『何故か巻き込まれたスタッフ』として紹介され、
視聴者からは同情のコメントが相次ぐ事に………。
いったい何を書いてるんだろう俺は()

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