『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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再会と決別
パウロ、長女と再会する


それはミリシオンで宿にしている「門の夜明け亭」の酒場で、軽く飲みながら情報の整理をしていた時の事だった。

不意に聞こえた、見慣れない二人組…その赤毛の若い男の声に耳を疑った。

 

「飯はどれにする?ルーディア」

 

捜索中の愛しい家族の名前を口にした男、その正面に座る人物に否応なく視線が向いてしまう。

それは全身をローブに覆われ、更には仮面までつけた見るからに怪しい風貌の人物だった。

あんな格好してるのが自分の可愛い娘な訳がないか…と視線を外そうとしたその時、丁度その人物が仮面を右手で左にズラしているのが見えた。

仮面がズレて見えた右の顔は成長して無表情ではあったが、間違いなく自分の娘、行方不明の家族、ルーディア・グレイラットだった。

 

「ルディ…?」

 

思わず席を立ち、二人組に近付く。

先程まで飲んでいた酒のせいなのか、漸く見つけた娘に困惑しているのか、腹立たしい程に足元は覚束なかった。

近付いてくるこちらに気付いたのか、赤毛の男と未だに顔半分を仮面で隠したままのルーディア、二人の視線が俺と交錯する。

怪訝な表情となる男と違い、ルーディアは俺に気付いたのか、驚いたように眼を丸くしていた。

…だが…気のせいか、変化したのはその眼くらいのもので、表情はまったく変わっていなかったような気がした。

 

一先ず話をしようと席を同じくする事を提案すると、ルディはこくりと頷いてくれた。

一緒にいた赤毛の男はエリオットと名乗り、ルディには世話になったと俺に頭を下げてきた。

フィリップのとこのガキといえば手のつけられない暴れん坊だったという話だったが、なかなか礼儀正しい物だと感心した。

そう告げると苦笑しながら、ルディのお蔭だと溢すのだ。

ピンときた俺だったが、にいっと意地悪く笑いそうかそうかと返すだけに留めておいた。

すると短時間ルディとエリオットは視線を交わすと頷きあった。

 

「では、俺は少し離れてますので、家族でお話ください」

 

そう言って離れた席に移動するエリオットに、ルディは小さく会釈をした。

言葉もなく意志疎通が出来る様に親として複雑なものを感じつつも、その気遣いに感謝し、俺も軽く頭を下げてやった。

 

改めてルディと向かい合ったが、仮面は依然と左半面を隠したままで、身をすっぽり隠すローブもそのまま、注文したジュースにも手をつけようとしないで、無表情のまま少し顔を俯かせていた。

そんな様子に面食らい多少の沈黙の時が流れたが、酔いざましに頼んだ水を飲み干し、意を決して話しかけた。

無事で何よりだ、と。

 

『…いえ』

 

くぐもった声が聞こえる…いや、違う。

口がまったく動いていなかったし、口元は見えているのにくぐもって聞こえるのもおかしい。

それにそもそも…ルディの声はこんな声だったか…?

 

『父様もご無事で良かったです、母様やリーリャ、アイシャにノルンは元気ですか?』

 

声に対する違和感を感じつつもその言葉には少し思う所があった。

賢いルディの事だ、俺からの伝言を見つけ家族を探しているとばかり思っていたので、まるでここにいるような言い方に少し苛立ってしまった。

事件が起きた日、俺と一緒にいたのはノルンだけで、他は消息不明だと伝えると、『…そうですか』と肩を落としていた…が、表情が大きく変わることはなかった。

 

「…」

 

逆に俺からお前はどうしていたんだ?と聞くとエリオットと共に魔大陸に飛ばされ絶望していた所、大人の親切な魔族をボディガードに、ギルド等で依頼をこなし、どうにかこちらへと戻ってきたというじゃないか。

上手くやったな、と思うと同時にそれなら魔大陸の捜索も出来たんじゃないか?と頭を過る。

そんな親切な魔族ならある程度の余裕もあった筈…現に今のルディは辛そうな素振りもない。

未だに無表情で此方に視線を合わせず、ただ淡々と今までの道中を語る娘を見て、言い様のない苛立ちを俺は、パウロ・グレイラットは感じていた。

これからルーディアの待ち受ける運命とは

  • 平穏な日々
  • 苦労はあれど救われていく日々
  • もう少し曇らせて欲しい
  • もっと地獄に叩き落として欲しい
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