『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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ギース戦慄する/ロキシーの里帰り

おうパウロ、久しぶりだな。

なかなか精力的に動いてるらしいじゃねぇの、かなり裏の連中気が立ってたぜ。

知らねえ、っときたか、なんだ良くも悪くも思い切り良くなったな。

所でルーディアは何処だ?保護したんだろ?挨拶しとかねえとな。

…いない…?…はぁ?縁切られたぁ!?

 

…成る程。そんでそうなっちまったと。はぁー。

いや、仕方ねーさ、客観的に言いたいこたぁごまんとあるが、傷心してる父親に追い討ちかける趣味もないんでね。

ま、どうにかなるさ、徳を積めばどっかで報われるかもしれねーぞ?

ん?ルーディアの事で礼?っつっても俺は服を着せてやったくらいしか出来てねーぞ。

いやぁ、俺は過去イチ驚いたね、喋れもしない片腕片足ない子供の女をあんながんじがらめにして虐めれる獣族に。

しかも完全に男にトラウマ持ってやがったからな、牢屋の端っこで常に息殺してたぜ。

あ?なんでトラウマ持ってるかわかったかって?んなもん見りゃわかんだろ。

 

むしろその後のがヤバかったね、牢屋から解放されて服を着せられて、仮面被ったあいつ、どうしたと思う?

仮面に狼みてえな…口…マズルっつーのか、それを氷で作ったかと思うと、とんでもない声量で吠えやがったんだ。

その場の敵味方全員麻痺、俺も勿論例外なくだ。

仲間だけは治療したと思ったら、麻痺してる獣族を次々と蹴落とし始めたんだ。

後から聞いたが、ルーディアへの仕打ちはその蹴落とされた奴らが独断でやったらしいな。

そいつらがどうなったか?そこまでは知らねえな。

雨季は始まってすぐだったが既に下は洪水だったからな、半々ってとこじゃねえか?

 

あん?雨季?始まってたっつの。

ごうごうと木の下は洪水だったぜ。

あー、そうそう、凄かったぜ、ルーディアの奴そのまま洪水を自分達が歩く道を全て凍り付かせたんだ。

流石に目を疑ったね、こんなもんが人の身で出来んのかよってな。

あいつらザワザワしながら口々に言ってやがったぜ、『化け物』ってな。

あ?ノルンちゃんがそうルーディアに面と向かって言っちまったのか?

そりゃあルーディアの嬢ちゃんでも縁切るわなぁ。

ま、殺されなかっただけ儲けもんなんじゃねぇか?痛っ!

 

しっかしまぁあの年であんだけ強いとはねぇ…こりゃあ益々。

え、いや将来もっと強くなんだろなーってな、この頃にすこーしだけ恩を売れたのは儲けだって思ってな。

あ、そうそう、大森林の各部族には人族の迷い人はミリシオンに送るよう伝えてきたからな、感謝しとけよー?

お、奢ってくれんのかい、じゃあ遠慮なく!この店で一番高い酒頼む!なーんて…え、一杯だけならいいのか?マジ?

やったね。これもジンクスのお陰かね。

 

ーーーーーーーーーー

 

ロキシー・ミグルディアは元黒狼の牙のメンバーである長耳族のエリナリーゼ、炭鉱族のタルハンドと共に魔大陸を旅してきた。

そしてわかったことは、探し人の一人であるルーディアと思わしき人物とすれ違ってしまったという事だ。

『デッドエンド』と名乗る冒険者チームで、『狂犬』と『番犬』と『ボス』の三人で構成される、全員前線で大暴れするという噂だ。

探し人のルーディアは魔術師で少女で、ロキシーの記憶ではセミロングの茶髪を後ろに纏めた、可憐な少女だった。

更には『デッドエンド』とは魔大陸において実在する禁忌の存在、スペルド族を指す名前でもあり、そんな名を名乗る奴らは危険である可能性が高い。

それ故に彼らを候補から外していたのだが、その『番犬』がルーディアと呼ばれ、前線で戦っているものの魔術師であるという事がわかったのだった。

 

「まぁ仕方あるまい、他に仲間がいるのなら無事に魔大陸を脱出出来たと思う他ない」

 

「噂では元気にはしていたようですし、大丈夫だと信じるしかないですわね…ルーディアという人物が顔どころか素肌もろくに露出していないという情報は気になりますが…」

 

「タイミングとしてはウェンポートですれ違った可能性が高いです…ああ、僕がデッドエンドという名前に怯まなければ…」

 

ロキシーの内心に後悔が募る。

とはいえ今更どうにもならない、少なくとも生きているなら既にミリシオンにいてもおかしくないのだから。

 

「それで…どうしますの?捜索を切り上げてルーディアを追いますか?」

 

「…いえ、ルディならきっと無事に旅を続けているはずです。それにデッドエンドの番犬がルディだと決まった訳ではありません。僕達は魔大陸のまだ探していない土地を捜索しましょう」

 

「強情じゃの…しかし、うむ、異議はない」

 

「同じくですわ」

 

そのまま三人は捜索を続ける。

ロキシーは時折懐かしそうに目を細めながら、旅をしていた。

最中、近くに自分の故郷がある、とロキシーが呟く。

 

「少しだけ、寄ってもよろしいでしょうか…?」

 

内心気が進まないが、家族を嫌っているわけではないロキシーは、少しだけ村に寄る事を提案した。

 

「うむ、故郷に帰れるのならばゆっくりするといい」

 

「犯罪を犯した訳ではないのでしょう?わたくし達は村の外で待っていますわ」

 

含みのある言い方に少しジト目で見るロキシー。

ひらひらと手を振る二人に、小さく息を吐くと、頭を小さく下げて村に足を踏み入れた。

 

村は良くも悪くも変わっていなかった。

こちらを黙って見つめる村人達に、居心地の悪さを感じてしまう。

ミグルド族として出来損ないである自分は彼らと本当の意味で会話する事が出来ない。

両親に顔を出してすぐに旅立とう…ロキシーはそう心に決めて、此方に駆け寄ってくる両親を少しひきつった笑顔で迎えた。

 

かつての我が家につくと、二人は何処かソワソワとしながら、何か、飾り気のないマスクのようなものを取り出した。

今まで見たこともない物に首を傾げていると、ロキシーの両親はそれをいそいそと口元に張り付けた。

何をしているんだろうと怪訝な表情を浮かべたロキシーを、衝撃が襲う。

 

『おかえりなさい、愛しのロキシー!』

 

目を丸くして言葉に詰まってしまう。

ミグルド族は大事な言葉のやりとりを能力で行う。

特に、愛の言葉を。

幼い頃から愛を言葉として両親から受け取った事のなかったロキシーには、まさに青天の霹靂であった。

 

話を聞けば、なんとルーディアがこの村にきたというではないか、そこで言葉を失ってしまったルーディアに、両親はかねてより考え、挫折していた開発途中の魔道具を見せたのだという。

 

『それがこの、発したいと思えば言葉に変換してくれる魔道具さ、愛しのロキシー』

 

「なんと…本当にルディは…天才という言葉じゃ生温いですね」

 

ルーディアが言うには基礎が出来ていたから仕上げられた、との事。

それの完成形が二人がつけているマスク型の二つと、ルーディアがつけている仮面、という事であった。

仮面というワードに益々『デッドエンドの番犬』がルーディアである疑いが強くなるが、今は頭から追いやる。

ロキシーはその日、幸せだった、両親から愛を受けていた自覚はあったが、やはり不安だったのだ。

それが今は言葉で愛を囁いてくれる、これほどの幸せがあるだろうか?

そのままロキシーは語った、様々な冒険を天才な生徒を優秀な生徒を。

そして、毎回呼ばれる「愛しのロキシー」に少し照れを感じ始めた時。

そういえば、と思っていた事を二人に問いかけた。

 

「所で、何故ルーディアにこんな魔道具が必要だったんですか?」

 

その言葉に二人は押し黙ってしまった。

能力でやり取りしてる訳でもない、ただの沈黙に、ロキシーは戸惑う。

それを見た二人はポツポツと語りだした。

やがて告げられた、愛弟子の現状に、ロキシーは目の前が真っ暗になる思いだった。

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