『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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獣寄りの女の子と獣寄りの双子が接戦ですねぇ…。


フェイス

事の始まりは、アスラ王国内のジンシン教の支部、それらの一斉調査の日からだった。

事前に騎士やエンド傭兵団が潜入し、特に危険度の高い支部をピックアップ。

その支部にそれぞれ戦闘能力や対応力の高い外部協力者や騎士達を向かわせ、国として真正面から実態調査に入る。

余命幾ばくもない現在の王を憂いなく送る為に、とアリエルが主となって行う今回の摘発に、グラーヴェル等も戦力を送り協力して行っていた。

戦力を惜しんでいられない、と守護騎士、守護術師すらも送り出したアリエルは一見無防備に見えた。

アリエルの側にいる老婆がいなければ。

アリエルの護衛と入れ替わりに傍らに佇むようになったその老婆とは水神流の今後を、という名目で今日一日話し合いをする予定だと笑顔で告げるアリエルに、グラーヴェルは頬をひくつかせてそうか、と言う事しか出来なかった。

ダメ元で暗殺者が数人送られたが、現れた瞬間に両手両足を切り裂かれていた。

 

「抜け目のない嬢ちゃんだねぇ…」

 

水神レイダ・リィアは用意された紅茶を飲み、笑みを絶やさないアリエルを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それぞれの支部に人が派遣される事となった。

パウロ、フィッツは危険度が高いとされる支部にそれぞれ騎士を伴って向かい、エリオットとロキシーもエンド傭兵団を率いて次いで危険度の高い支部へと向かっていった。

一方でジンシン教に苦手意識のあるルーディアは、そう問題ないだろう支部を見て回る事となった。

エンド傭兵団を道案内に、護衛に北神を連れて。

妙にやる気満々の北神を微笑ましく眺めながら、ルーディアは支部を見て回っていた。

そんな支部の一つ、ルーディアが調査する最後の支部が『愛の巣』と呼ばれる拠点であった。

 

「えー…この拠点に共に入ったものは結ばれる…という噂があります。とはいえ無理矢理連れ込んだりすると門前払い所か、兵や騎士すら呼ばれる事もあるとか…」

 

「調査では此方に入るのは、冷やかし以外では恋愛関係に発展目前の友達以上恋人未満のような燻ってるような方々が多く…えー…殆どそういう行為の為の宿…のような役割だとか」

 

『成る程…奇妙な事をしているようですが…今回も問題ないといいですね』

 

氷狼鎧のパーツを纏い、その上に大きめのローブを着たルーディアは羊皮紙にかかれた資料も読み込み、うんうんと頷いた。

 

『さてでは…行きますか』

 

「ふぅ、これで最後ですか。特に問題ありませんでしたねぇ…。僕に怖じ気づいたのでしょうかね?」

 

ふふん、と得意そうに笑うアレクサンダーを連れ、ルーディアはその拠点に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

快く調査を受け入れた拠点内で、ルーディアとアレクサンダーは一つの部屋に案内された。

着いてきた傭兵団には内部の調査をお願いし、ルーディアとアレクサンダーはこの拠点の責任者に話を聞く事にした。

そして…その男のハチャメチャさに困惑するのだった。

 

「と、いう訳でして。私としてはカップルが幸せになればいいのですよ、そういう人と人をくっつける場を設けられれば」

 

目の前の男は裕福寄りの、そこまで大した権力のない貴族だそうだ。

ジンシン教の教えに感銘を受け、私財を投じてこの拠点を作成したのだという。

 

「良いものですよ。例えばとある男女が、よくよく見れば互いに思いあっているのがわかるというのに、互いに恥ずかしがって進展しない。そんな時…此方で私のカウンセリングを受けてくっついて…手を繋ぎお互いに頬を染めながらここから出ていく初々しい様子…この為に生きてると実感します」

 

『えー…貴方が手をだすとか、何か弱味を握って脅すとかは…』

 

「ありませんね。ジンシン教と名乗ってはいますが、正直そういうカップルの様子を見守りたい輩達の経営する…無料宿みたいなものです。ほぼ私の自費と、彼らの心ばかりの寄付でやってます。ここに入ったものは結ばれる、という噂も自分達で流したものですね。逆に、そういう関係じゃないと行けないと思わせる為のものです」

 

『それでもたまに無理矢理連れ込む人なんかはいるようですけど…』

 

「あー、あれは最悪ですね。私、可哀想なのでは抜けないので、即座に通報しています。同じジンシン教の人なんかがやってたりするようですけど、そう言う所、ジンシン教が悪いと思いますね。あ、それでですね、たまに熟年の夫婦もご利用して下さってましてね、枯れたような二人が若々しくなって腕を組んで出て来て下さった時は、思わず感涙してしまいましてね…」

 

「……なんとも奇妙な人ですね」

 

こそこそと耳打ちをするアレクサンダーだったが、ルーディアも同感であった。

話を聞く限り嘘をついてる感じもなく、そういう人と人の仲を取り持つ形での行動であるなら、特に問題はないかもしれない。

まぁ一応は持って帰ってからの話になるが…とりあえず問題なく終わりそうだ。

そう思いながらルーディアは、出された果実水をこくりと飲み込む。

不意に鼻に抜ける香りに、何処か懐かしい思いを覚える。

けれどその正体がわからず、首を捻り、コップをテーブルに置く。

 

「勿論これから活動する上で無理矢理、等は決して起きないようにしますし、ここで得た情報で人を脅す等という事も絶対にしないと誓いましょう。私は人を見る目には自信がありますから、問題を起こさないように尽力します。私はただ気持ちよく、彼ら彼女らが結ばれるのを見ていきたいのですよ」

 

その結論を聞いたルーディアは、戸惑いながらもこくりと頷く。

 

『わかりました、私としてもそう問題はないように思います。正式に宿としての許可を取れば、直ぐに…でも…』

 

ふら、と頭をふらつかせたルーディアは、テーブルに肘をつけ、右手で顔を覆った。

それを見た男は、目を煌めかせる。

 

「…?ルーディアさん?」

 

様子のおかしいルーディアに気付き、アレクサンダーが声をかけたが、ルーディアの反応はない。

ルーディアは肩を上下させ、何かを堪えるように深く呼吸をしていた。

 

「それでは…貴方達も、どうにもあとひと押しが足らないようにお見受けします。あなた方のように性欲が強い子と童貞の子は、気持ちよさだけを求めるから、激しいんですよね。さ、この部屋にあるものは好きに使っていいので、どうぞお楽しみください。神のご加護を」

 

男は笑顔を浮かべてそこまで言いきると、止める間もなくするりとその部屋を出ていった。

そのまま扉が閉まり、ガチャリと音をたてた。

それを呆然と見送ってしまったアレクサンダーは、慌てて扉に向かうが、案の定扉には鍵がかかっていて開かない。

 

「ちょっと!?開けてください!閉じ込めるなんて、なんと卑劣な!今開ければ許して――」

 

しゅる

 

ぱさ

 

その時、布ズレとは明らかに違う音が、アレクサンダーの耳をうった。

 

『ん……あつい……』

 

どさどさ

 

しゅるり

 

ぱさ

 

背後で何が起きてるのか。

いや、いつもキッチリと、素肌をほとんど見せないルーディアさんが此方を不思議そうに見てる筈だ。

この音はきっと、自分の妄想が生み出してしまった幻聴だ。

アレクサンダーは冷や汗を垂らしつつ、そう自分に言い聞かせ、意を決して後ろを振り返った。

そこには、体にピッタリと張り付いた黒インナーと純白のパンツのみを身に付けたルーディアの肢体が、艶かしく輝いていた。

足元にはコートや鎧、ズボン等が乱雑に脱ぎ捨てられていた。

頬を赤く染め、蕩けた瞳でアレクサンダーを見つめる、恍惚とした雰囲気のルーディアが、まるで自分の妄想から飛び出してきたような姿で。

そんな想い人を視認したアレクサンダーは、慌てて視線を反らし、壁に体を向けて椅子に座り込んだ。

そんなアレクサンダーにルーディアは近付き、胸を押し付けながら背中にもたれ掛かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に迫るルーディアのさんの顔、背中を包む胸の柔らかな感触に、中心にある少し硬い感触まで感じる密着度合い。

部屋にはいつの間に焚かれていたのか甘い臭いが充満し、ルーディアさんの臭いと交じり、僕の理性は今にも消え去りそうだった。

ルーディアさんも正気を失い、僕を男として性を求めてくれている。

ああ…いいんじゃないかな、このまま身を任せても。

きっと異変に気付いた誰かが助けてくれるだろうし…それまで彼女を抱いても。

それに彼女から誘ってきてる今、自分には今この時しかチャンスはないんじゃないだろうか。

僕が自覚を持ってから、彼女は僕と一定の距離を開けてるように感じる…。

それに、昨日はルーディアさんがロキシーさんと営みをしていたのを覗いていたけども…本当に気持ちよさそうで、幸せそうだった。

経験こそあれど、人を愛して抱いた事のない僕では、ルーディアさんをあそこまで幸せに出来ないかもしれない。

それなら、ここで…思い出として…一度だけ、一度だけ抱いてもいいんじゃないか?

この焚かれてるのも恐らく媚薬…実際に僕の股関は痛い程盛り上がってしまっている。

昨日の営みを見てから発散していないのもあり、限界寸前だ。

このまま抱いても、媚薬のせいにして謝ればきっと許してくれる…。

既に鼻の触れる位置にルーディアさんの顔がある。

僕が避けないのをわかったのか、ルーディアさんの瞳がそっと閉じられた。

ああ、本当に綺麗で、可憐で、美しい…。

僕の唇に、ルーディアさんの唇が触れようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間に、僕は人差し指をその間に差し込んだ。

ふに、と瑞々しい柔らかな唇の感触に気が狂いそうになるも、僕は首に回されたルーディアさんの腕を振り払う。

 

『…?アレク様…?なんで…?』

 

そして、ルーディアさんに向き直り、肩を掴んで引き離した。

ピクン、ピクンと震える体と、温もりを求めてか宙を彷徨う腕。

 

「ダメです…ルーディアさん、今の僕は貴方に相応しく、ない!」

 

今の僕は泥沼に負け、愛剣を失い、言い訳ばかりの、夫婦の営みを覗く…ただのエロガキだ。

英雄に程遠いこんな今の僕が、媚薬によって正気を失った彼女を抱く事なんて出来ない。

 

『…はぁっ…はぁっ……!』

 

息を荒げさせ、もじもじと太ももを擦り合わせ、バタバタと暴れ始めるルーディアさんの動きを塞き止めつつ、僕は視線を合わせる。

 

「貴方には、貴方を愛する、貴方が愛する三人の夫がいる筈です…!僕なんか相手にしては、いけません…!」

 

そこまで言うと、僕が自分に手を出さない事を理解したのか、蕩けた瞳のまま、自分の胸を揉みしだき始めた。

インナーしかないので、ムニュムニュと形を変える様子がバッチリと目に映り、あまりにも目に毒だった。

 

『あつい…せつない…よぉ』

 

媚薬の影響かポロポロと涙まで流しながら快楽を求め続ける様子に、僕は決心する。

三人の夫の誰かに届けよう、と。

後は、丸投げだ。

僕に出来る事はそれだけだ。

僕は立ち上がって椅子の足を一本へし折り、扉の前に立った。

その場に座り込み、荒い息を吐いて汗を流すルーディアさんが、乳房だけではなく、自身の股関にも手を伸ばすのを尻目に、僕は気を整える。

一度肺の中を空にして、大きく息を吸った。

椅子の足、それを両手で握り、大上段に構えて、全力をこめる。

王竜剣ではない、ただの椅子の足でこれを放つ事になるとは、少し前の自分では想像も出来ないだろうな…。

苦笑しながら、言葉を紡ぐ。

 

「右手に剣を」

 

「左手に剣を」

 

「両の腕で齎さん、有りと有る命を失わせ、一意の死を齎さん」

 

「『破断』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は目の前のルーディアさんの一番目の夫、アリエル王女の守護術師フィッツ・グレイラットに、未だ甘い息を吐き、荒い呼吸を続けるルーディアさんを横抱きにして手渡した。

そこでルーディアさんは自分がフィッツさんの、夫の腕の中にいるのに気付いたのか、首に手を回すとしがみつき、フィッツさんの長い耳を食みだした。

 

「うひゃぁ!媚薬を盛られたって話だけど、これは相当だね…アレク君、ありがとう…」

 

『はぁ…はむ……ふぃっつ…』

 

「いえ、当然です。僕の役目は護衛ですから…ですがこれでお役御免ですね、失礼しますね」

 

僕は、限界だった、臨界寸前だった。

フィッツさんに一度呼び止められたものの、道中ズタズタになるほどに噛み締めた唇と、口の端からを血を流すのを見て、フィッツさんはルーディアさんを抱えたまま、黙って小さく礼をしてくれた。

それに礼を返し僕は…痛い程反り返る自分のそれを処理する為に駆け出すのだった。

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