『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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アンケート接戦過ぎて少し悩むので、二択にして、多いほうに確定します。


キングダム

多少の移動の後、一行はシーローン王国首都ラタキアへと辿り着いた。

その昔、ルーディアとエリオット…そしてルイジェルドと共に来たことのある国。

リーリャとアイシャと再開した国。

そして、パックスとザノバと出会った国。

ルーディアがチラリとザノバの様子を見ると、何処か感慨深い顔をしている。

また、ロキシーも昔ここでパックスの教師をしていた…ロキシーも何処かそわそわとしている。

ジンジャーは辺りを世話しなく鋭い目線で見渡している。

エリオットも剣に手こそかけてないものの、直ぐに伸ばして抜けるように警戒をしてるように見える。

この国に広がる、何処か物々しい雰囲気に警戒を示しているのだ。

 

「うーむ、しばらく見ないうちに、随分と傭兵が増えておりますな。やはり戦争の気配が色濃いということなのでしょうなぁ」

 

そんなザノバの言葉に何処か喜色を感じ、ルーディアは思わず問い掛けた。

 

『…なんだか、少し嬉しそうですね?』

 

「む…そう見えますかな?まぁ、理由はどうあれ、戦とは心が踊るものです。男子たるもの、皆そうでしょう」

 

『…そういうものなんですか?』

 

「……戦いが心踊るってのは否定しないな」

 

「僕はあまりわかりま…いや、自分の力を思う存分使えると考えれば、わかるかもしれませんね。自分の鍛えた力を存分に発揮出来る場というのは、貴重なものですから」

 

ロキシーのその説明にルーディアはストンと納得出来た。

強くなればなる程、特に魔術師の等級を上げれば上げる程、その魔術は大規模となり、おいそれと使うタイミングも場もない。

それならはそれらを思う存分発揮出来るだろう戦とは、何処か心踊るものなのだろう。

それなら少しわかると思い、成る程、と小さく呟いてルーディアは納得する事にしたのっだった。

 

 

 

王城への道を進む中、ジンジャーが情報収集をかって出た。

ザノバはやや苦言を呈したものの、些細な事でも知っていて損はないと言うロキシーの取り成しもあり、そのままジンジャーとは別れる事になった。

充分に注意する事をお互いに確認しつつ、一行は王城へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

謁見はスムーズに許可された。

国境を越えてなかったり、手紙の返事もなかったり、徒歩であったりと不審な点はいくつもあっただろうに、可愛そうなくらいにザノバに恐縮する兵士にはそれらを問う余裕なんてなかったのだろう。

そんな中、ルーディアは不謹慎ながら弟弟子との久々の再開が少し待ち遠しかった。

ふと控室で隣に座るロキシーを見ると、少し顔色が悪いように見えた。

ルーディアははロキシーの手を握ると、首を傾げる。

 

『先生、大丈夫ですか?』

 

ロキシーはルーディアを見ると、小さく笑みを浮かべた。

 

「…いえ、僕がこのシーローン王国から出る時の事を思い出しましてね。転移事件の光が気になっていた僕はパックス王子が成人した事もあり、少し無理をして出てきたんです。それが…少し気まずくて」

 

『大丈夫ですよ。パックスは先生をちゃんと尊敬していましたよ。…私からはそれ以上は言わないでおきます』

 

「…え、気になりますよ!パックス王子は僕の事を一体―」

 

コンコン

 

ロキシーがルーディアを問い詰めようとした時、タイミング良くノックの音が部屋に転がった。

 

「謁見の準備が整ったそうです」

 

そしてそんな声が部屋の外から聞こえてきた。

立ち上がるザノバとエリオットに対し、何処か納得のいかない表情を浮かべ、ルーディアにすがるような目を向けるロキシー。

ルーディアはそんなロキシーの脇に手を入れ、ひょいと持ち上げた。

詳しい話はパックスから直接聞いたほうが早い、と。

 

『それじゃ、行きましょうか』

 

「ルディ!流石にそれは止めてください!威厳が!僕の先生としての威厳が!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謁見の間には一行だけが通され、案内していた兵士はそのまま外に残り扉を閉めた。

謁見の間はがらんとしてた。

兵士は見当たらず、玉座の隣に一人だけ護衛のような人物が立っているだけ。

そしてその玉座に座る男。

それがルーディアの弟弟子の、パックス・シーローンだ。

贔屓目にもそう整った顔立ちではないものの、ルーディア達の記憶より更に引き締まった体を顔つきをしていた。

顔は無表情で、尊大に此方を見下ろしている。

そこでまず、ザノバが一歩進み出て、片膝をついた。

 

「陛下。ザノバ・シーローン。召還に応じ、魔法都市シャリーアより馳せ参じました」

 

そう告げたザノバをちらりと見たパックスは、その重々しい口をゆっくりと開いた。

 

「よくきてくれた、兄上。随分と早いが…まぁいい。後ろのは三人は…護衛か?」

 

「はっ、いえ、戦力が必要と判断し、協力を仰ぎました。必ずや陛下の力となると愚考致します」

 

ザノバの言葉に合わせてルーディア達も片膝をつき、頭を下げた。

それに感心したように、パックスが感嘆の息を吐くのが微かに聞こえる。

 

「…いいだろう。客人達よ、協力に感謝する。期待しているぞ」

 

そこまで言うとパックスは口を右の手のひらで抑え、隣に立つ護衛…まるで骸骨のような男に視線を向けた。

その男は閉じていた目を開くと、パックスに向けてコクリと頷いた。

 

「兄上、客人達、もういいぞ、楽にしてくれ。そして改めて…良く来てくれた、兄上、ルーディア、ロキシー。もう一人は…確かエリオットだったか?お前達が力を貸してくれるとは心強い。どうかこの国の為に力を貸してくれ」

 

パックスは先程までの無表情を崩して笑みを浮かべた。

彼のその笑顔に懐かしさを感じて、ルーディアは姿勢を戻す。

 

『お久しぶりです、パックス王子…お元気そうで何よりです』

 

「ああ、見ての通りだ。しかし…余の見立ては正しかったな。また一段と美人となった。今からでも余の側室にどうだ?」

 

にっ、と悪戯っぽく告げられ、ルーディアは懐かしさに目を細める。

ルーディアは過去、妃や側室に、と以前にも誘われていた。

けれどあの頃は帰るのが最優先だったし、誰かに抱かれるのも御免だからとキッパリと断っていたのだ。

 

『お戯れを…一度断りましたでしょう?』

 

「そうだな…それに、今はお主よりいい女を手に入れる事が出来た」

 

パックスは隣に座る少女を肩を抱き寄せてにい、と笑みを深めた。

先程からパックスの隣でうつろな目をしていた水色の髪の少女…パックスがルーディアを口説いた時に、少しだけ頬を膨らませていた事から、ルーディアはピンときていた。

 

『まぁ、もしや』

 

「ああ、余の妃、ベネディクト・キングドラゴンだ。美しいであろう?」

 

『ええ、お美しいです。それに…お互い良く想いあっていらっしゃって』

 

抱き寄せられた少女、ベネディクトは傍目にはわからない程ではあるけど、頬を染めていた。

お互い好きあっているのがよくわかる、幸せそうな夫婦であると思えた。

そこで話が一段落したのだろう、パックスはロキシーへと視線を移す。

それに気まずくさから少し肩を揺らすものの、ロキシーはしっかりとパックスを見返して口を開いた。

 

「パックス王子…いえ、陛下、お祝い申し上げます」

 

「おお、ロキシー。久しいな。お主の教育を受けていた日々が、まるで昨日のようだ。お主達の結婚も祝わせてくれ」

 

そう言って朗らかに微笑むパックスに、緊張の面持ちだったロキシーも、ホッとした顔で笑みを浮かべた。

 

「まぁ、余の教育を途中で投げ出して国を出たのだ。その上ベネディクトの次に良い女であるルーディアを嫁としておいて、幸せとなってなければおかしいなぁ?」

 

その言葉にロキシーは笑顔を固まらせた。

パックスはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて、その様子を伺っているようだった。

 

「えと…その…その節は真に…」

 

「あっはっはっはっ、冗談だ冗談。余は気にしていない。お主がいなければ余はきっと腐っていただろうからな」

 

そう言ってパックスが語るのは自分の幼少期…何をしても自分を見て貰えない日々。

勉学を頑張ろうと、悪戯をしようと、ほとんど放置される日々。

それは幼少期のパックスを腐らせるに充分な日々であった。

やがて意味もわからず、一番悲鳴が大きいからとメイド等への性的な悪戯を行う事が増えていたある日、新たな教師としてロキシーが雇われた時…それがパックスの契機であった。

 

「そんな事してはいけませんよ」

 

そう言ってやんわりとパックスのメイドへの悪戯を止めてきたロキシーに、感情のままに反発し襲い掛かった時だ。

身を翻したロキシーの平手が頬をうち、床に倒れこんでしまった。

それを慌てた様子で、先程パックスが悪戯していたメイドが助け起こそうとした時に言われた言葉が、パックスの胸をうった。

 

「先程悪戯をしていた女性にそうやって助け起こされて、貴方は自分が情けないと思わないんですか?男として恥ずかしくないんですか?」

 

そう目をしっかりと合わせて言われた事で、パックスは今の自分が非常に情けない人間であると気付けたのだ。

それでもそのまま同じように過ごしていれば、また腐っていっただろうが、そこからはロキシーの教育を受けるようになり、パックスは毎日充実した生活を送っていた。

ロキシーは教育者として非常に熱心であったが、天才肌な部分があり、出来ない者を無意識にか見下しているのをよく感じていた。

また、以前の生徒と比べる事もままあったが、そんなでもパックスとしては嬉しかった。

たまにくれる褒め言葉だけで、悪い事をしたら叱ってくれるだけで、パックスは満たされていた。

故にロキシーが国を出たがっている事に気付いたパックスは内心嫌々ながらも、恩返しのつもりでスムーズに国を出れるように便宜をはかっていたのだという。

もしもこれでロキシーが異性であったなら尊敬と愛欲とが混じりあい、どうなったかはわからなかった。

けれど、そうはならなかった。

故にパックスはロキシーが去った後もしっかりと勉強を続けていたのだ。

 

「余にとってロキシーは最も尊敬する大人よ。今の余があるのはお主のおかげと言って過言ではない。改めて感謝を告げよう、ありがとうロキシー」

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