『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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別れと新たな命
赤竜の下顎にて


シーローン王国でリーリャとアイシャの無事を確認し、ルーディア、エリオット、ルイジェルドの三人は旅を続けていた。

ルーディアにとって実りのある出会いとして、弟弟子に当たるパックスと、その兄であり人形好きなザノバとの出会いがあった。

詳しくは割愛するが、二人が保護していた事で政事に巻き込まれる事なく二人を解放する事が出来た。

そのせいで二人は国を出ることになったのだが…それはまた別のお話。

 

そんなこんなで一行は馬車で一路フィットア領へ。

今向かっているのは赤竜の下顎、そこを越えれば遂にアスラ王国である。

 

「山脈越えていけたりしねーかな」

 

「流石に無理だな、俺達で竜を討伐できないとは言わないが、山脈を越えるにはそれこそ竜を片手間で倒せる実力がなければ無理だろう」

 

「見つからないでどうにかさ」

 

『それが出来たら苦労はしないですね、縄張り内の感知能力はピカイチらしいですよ赤竜』

 

「やっぱ無理かぁ」

 

あの山こえられたら早いのになぁ、と山脈を眺めながら呟いた。

 

『直進距離では確かにそのほうが早いですね、よく気付きましたねエリオット』

 

「今俺バカにされたよな?」

 

「ルーディアは山脈を通るのに賛成なのか?」

 

『まさか、完全に感知されなくなる魔術とかが開発されたなら、通ってもいいかな、と思う程度の話ですよ』

 

「まぁでも竜か…いつか倒してはみたいもんだな、一人で」

 

「そのまま強くなればそのいつかはくるだろう」

 

『エリオットなら出来ますよ。危なくなったら全力で援護しますから安心してください』

 

「ルーディアが見てる前提なのか」

 

雰囲気も穏やかに進む一行。

時折現れる盗賊を足を凍らせて放置して撃退し続け、平和な旅を続けていた。

 

やがてついに赤竜の顎へと辿り着く。

ここを抜ければアスラ王国…旅の終わりが見えてきた。

 

その時、向こうから二人の人影が歩いてくるのが見えた。

銀髪の男と、黒髪の仮面をつけた少女…銀髪も黒髪もほぼ見たことがない。

珍しいなぁ、とルーディアは思った。

それはそれとして仮面つけるような少女が自分以外にもいるものなのか、と黒髪の少女に視線を向けて首を傾げた。

すると少女も同じように首を傾げたので、喉の奥で笑って逆方向に首を傾げる。

更にそれにあわせて首を傾げられ、その様子に小さく笑ってしまう。

此方より年上だと思っているようで、何処か此方をあやすような動作を感じてしまったからかもしれない。

 

『ふふ、あの子そう悪い子じゃなさそうですね、盗賊とかではなさそう…』

 

そうルーディアが言いながらルイジェルドの顔を見ると、初めてみるような表情をしていた。

槍を握りしめ、冷や汗をダラダラと流し、一点を見つめて視線を反らさない。

どこを見てるのか、とルーディアがその視線の先を見れば、仮面の少女の隣にいる銀髪の男だった。

 

「ルーディア…下手に動くな。エリオットもだ」

 

ふとエリオットの様子を見れば、エリオットも緊張した面持ちで、剣に手を添えながらも、カタカタと震えているようだった。

尋常ではない手合…?確かに強さは感じるし目もとても怖いが、同時に穏やかさも感じていた為、何故?という気持ちがあった。

だがルイジェルドが言うのだから、とルーディアはこくりと頷いた。

 

「…ここからだな」

 

目の前の男が突然声を発した事で、ルイジェルドとエリオットの肩がはねあがる。

男はそのまま声が届く距離で足を止めた。

何を…?とルーディアは怪訝に思い、ルイジェルドとエリオットは武器を強く握りしめた。

 

「そう警戒するな、これ以上近付かないし、危害を加える気はない」

 

両手を軽くあげて言うが、ルイジェルドとエリオットの警戒は緩む事はない。

隣にいる少女は男のほうを見て何か言ってるようだが、あまり一行には聞こえない。だが困惑しているようだ。

 

「ルイジェルド・スペルディア、エリオット・ボレアス・グレイラット、ルーディア・グレイラットだな」

 

瞬間ルーディアの頭も臨戦態勢へと切り替わる。

三人の名前をピタリと当てたあまりにも怪しい実力者、警戒するなという方が酷である。

ルーディアは静かにローブの中で左腕を形成し始める。

 

「俺の名はオルステッド。お前達に、特にお前に話がある。ルーディア・グレイラット」

 

ルイジェルドが息を飲む。

エリオットが歯を噛みしめながら眉を潜める。

わざわざ名を出されたルーディアは警戒しつつも、男の穏やかさは変わってはいない、そう思い話を促す。

 

『…なんでしょう』

 

「ヒトガミという名に覚えはあるな?」

 

『ええ。まあ何度か夢で見たことが…彼は一体』

 

「すぐに奴から手を引け」

 

そう断言する男、オルステッドにルーディアは更に詳しく聞こうとするが、オルステッドは畳み掛けるように続ける。

 

「俺にはお前が必要だ」

 

横にいた少女が勢いよくオルステッドの顔を見るが、当人は気付く事なくルーディアへと手を差し出しながら続けた。

 

「俺の元にこい、ルーディア・グレイラット、家族が大事だろう?」

 

瞬間弾かれたようにルイジェルド、エリオット、ルーディアの三人はオルステッドに襲い掛かった、全員の思いは一つだった。

こいつは、敵だ。

それぞれが本気の一撃を繰り出そうとし、隣の少女が気付いて逃げ出そうとしている。

そんな最中オルステッドは呟いた。

 

「…何故こうなる?」

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