まぁ、そんな事もあろうかと
「お姉ちゃん!パックス様大丈夫だった?」
『…ちょっと危なかったけど、今は大丈夫。シーローンでの政治的な立場は結局あんまり良くない感じで終わりそうだけど…』
「そっかぁ…転移事件の時は沢山遊んで貰ったし、幸せになって貰いたかったなぁ」
『でもとっても綺麗な、ベネディクトっていうお嫁さん貰ってラブラブだったよ』
「へぇー。ま、パックス様顔はアレだけど行動がいちいちカッコいいからねぇ…そんな人がいるのも納得かな」
「……アイシャ姉、その人の事好きなの?」
「え、アルス君…嫉妬?キャーもう可愛いなぁ。パックス様は恩人ってだけだし、そういう感情はないよー」
「それより姉さん、妊娠してたって…」
『あ、うん…えと、その…アスラ王国でのジンシン教摘発の時に…かな…多分』
「むぅ、自分の中で疑い始めた時点で、途中で帰っても罰は当たらないと思います。ただでさえララちゃんの時の出来事があったんですから、もっと自分を大切にして下さい」
『うん…ロキシーにも言われたけど、今回は出産まで大人しくしてるよ。二ヶ月後くらいにちょっと、パックスとお話だけしに行くけど…』
「あんまり大人しくしてなかったら、姉さんの事ベッドに縛りつけますからね!」
『しば…』
穏やかな家族との時間を過ごした次の日、ルーディアは出産を終えたというギレーヌの顔を見るためにパウロの家に向かう為に家を出る所である。
ルーディア達がシーローン王国にいる間に産気付き、そのまま産んだのだという。
初めてのお産だとは思えない程に順調に終えて、産後も調子は悪くないらしい。
ルーディアはその報告に胸を撫で下ろしつつ、新たな家族の誕生に内心微笑んだ。
アルス、ルーシー、ララをまとめて抱き締めながら言葉を紡ぐ。
『お母さんの子供見に行こっか。皆にとっては叔父さんと叔母さんになる子達の』
「はい、お母様」
「行く行く!かーいいんだよ!」
「……」
アルスとルーシーは元気に返事をする。
ララは父親譲りのジト目を瞬かせてから、ルーディアの胸をむにむにする作業に戻ってしまった。
「おっぱい…」と伝えてくるけれど、ルーディアは胸を露にする事なく、ララをひょいと抱き上げる。
ララをそのまま胸に押し付けてあげれば、満足そうな顔を胸に埋めて小さな手でむにむにと胸をこね始める。
ララは乳離れが早かったからか、時折こうやっておっぱいを要求するのだけれど、こうやって触らせたり押し付けてやるだけで満足している。
きっと匂いを求めてるのだろうとルーディアは解釈しつつ、真面目くさった顔で胸をむにむにする姿に癒されていた。
『それじゃ、行こっか』
数歩先で周囲を見回すアルスに、側でにぱっと笑いながら見上げてるルーシー。
個性が出てて可愛いなぁと思いつつ、二人の特にアルスの成長が嬉しくて目を細めた。
パウロの家はすぐそこだ。
「さあルーディア、是非見てくれ。あたしの子供達を」
パウロ宅に着き、挨拶もそこそこに早速とばかりに案内された部屋で。
そこでルーディアはギレーヌの子供、自分の妹達と初めて対面する。
ルーシーとアルスは既にその三つのベビーベッドの横につき、それぞれ目を煌めかせながら、赤子の顔を覗き込んでいた。
ルーディアは赤子の顔を同じように覗き込み、口元を少しだけ吊り上げた。
『三つ子ですか…可愛いですね。お疲れ様ですお母さん』
「ふふん」
得意そうに胸を張るギレーヌにも癒されながら、ルーディアは改めて、その赤子達…三つ子の赤子を見つめた。
初めに産まれたのがギレーヌにとっての長女、シャロン。
褐色で灰色の髪に前髪がうっすら茶色に見える猫耳の子で、顔立ちがギレーヌそっくり。
ルーシーの差し出す指に手を伸ばし、きゃいきゃいと遊んでいる。
ルーシーも笑いながら楽しそうに相手をしているようだ。
『ギレーヌそっくりで、可愛いですね…何処と無くリニアや…………リニアにも似てます』
「リニアも自分に似てるとおおはしゃぎしてたぞ」
次に産まれたのがギレーヌにとって、またパウロにとっても初めての長男、シャルル。
シャロンと同じく褐色、灰色の髪、後ろのほうが茶色く見える猫耳の子。
そして顔立ちがパウロそっくりな男の子だ。
『シャルル君か…初めての弟ですね。父様にそっくりですし…かなり喜んでたんじゃないですか?』
「ああ、あのリーリャが顔に出して嫉妬するくらいには喜んでいたぞ。ゼニスも…あれは何処と無く不機嫌そうだったな。二人には悪いが…あたしもすごく褒められて嬉しかった」
顔をほんのり赤くして照れるギレーヌ。
更には嫉妬するリーリャとゼニスがいたというのだがら、現場にいられなくて残念だ、とルーディアは思った。
アルスはシャルルをじっと見つめて、口をへの字にして何かを考えているようだ。
同性の自分より幼い子が珍しいのかもしれない。
シャルルはアルスをあまり気にせず、キョロキョロと落ち着きなく辺りを見回している。
そんな様子を微笑ましく見つめつつ、三人目に目を向ける。
すぅすぅと安らかな寝息をたてる…傍目に見ると最も目立つ子。
『…真っ白ですね…肌も白い…アルビノ…だっけ』
「あるびの…?違うぞ、シャーレというんだ」
真っ白い髪に肌も白く、他二人と比べると垂れた猫耳まで真っ白。
リニアも白いには白いが、それよりも更に純白に近い。
顔立ちは目元がパウロ、鼻筋はギレーヌのように程好く特徴の混じっている女の子、シャーレ。
ルーディアの脳裏、前世の記憶が真っ白い兎がガラスの平たい器に詰まってる様子が浮かんでいた。
それが何故浮かんできてるのかは、ルーディアにはよくわからなかったが。
じっと見つめる視線に気付いたのか、瞼を震わせたシャーレは目をパチリと開く。
真っ赤な瞳がルーディアを捉えると、体をびくりと震わせ、顔をくしゃくしゃにして、今すぐにでも泣き出しそうになる。
『わ、あららら、起こしちゃったか、ごめんね』
ルーディアは胸に張り付いていたララをギレーヌに手渡し、シャーレをひょいと抱き抱える。
左胸に頬を当てさせ、軽くゆさゆさと揺すってやる。
シャーレはピクピクと垂れた猫耳を震わせて、雫を目元に浮かべながらも泣く寸前のままルーディアを見上げている。
『よしよし…可愛いねぇシャーレちゃん』
そう言って頭をするりと撫でられたシャーレは、すぅ、と瞳を閉じた。
たまっていた雫が頬を伝った。
「おぉ…シャーレは臆病ですぐに泣くし、なかなか泣き止まないんだが…流石だなルーディア」
ギレーヌはニッと笑うとルーディアの頭を優しく撫でた。
自分を優しく撫でる手にルーディアも小さく笑みを浮かべた。
『アルスがよく泣く子でしたからね…懐かしいですね』
そうルーディアが呟くと、ギレーヌも懐かしそうに目を細めた。
二人で四苦八苦しながらアルスを育てた日々が浮かんでは消えていった。
自分の腕の中ですぅすぅと安らかに呼吸をするシャーレの耳がパタパタと動く。
『あっという間に三児のお母さんですね。大変でしょうけど…』
「はは、リーリャがいればそう苦労はないな。ゼニスもよく手伝ってくれるし…おっと、それはララ、お前には飲ませられないんだ、すまない」
『あ、ララ、こーら』
ギレーヌに抱き抱えられたララがギレーヌの胸をまさぐり出したのを見て、抱いていたシャーレをベッドにそっと戻した。
ルーディアはギレーヌからララを受け取り、頭を優しく撫でる。
再度胸に押し付けられたララは満足そうな顔で「ママのおっぱい私の」と伝えてくる。
『もう独占欲があるの…可愛い』
そんな様子も愛おしくルーディアは感じていた。
ギレーヌの産んだ三つ子、シャロン、シャルル、シャーレ。
皆可愛く、これからが楽しみ。
愛しい妹達に祝福あれ。
そう内心で呟き、三人の頭を順に優しく撫でていった。
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