『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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親子の触れ合い

「こほん、奥様、お嬢様はそろそろランニングの時間ではありませんか?」

 

『ん?あ、ふふふ。「ええー、もう少し弄らせて頂戴、ルディも女の子なんだから可愛くしてあげたいの」』

 

「そうは言いましても、ランニングするのにそのように結っていては、邪魔になってしまいますよ」

 

『「ルディは女の子なんだから、そもそもそんなに本格的な運動しなくてもいいと思わない?ねールディ」』

 

「奥様…お嬢様がお困りですよ」

 

『「もー仕方ないなぁ。じゃあ邪魔にならないように後ろで一つにまとめて…と。はい、おしまい。ランニング頑張ってね」』

 

「お嬢様、今日も頑張って…ぷっ、ふふふ」

 

『あはは。懐かしいですね。母様は私が女の子らしいお洒落に無頓着だったから、いつも髪を弄りたがっていましたね』

 

「ええ、ルディは弄るのが長くなってくると、いつも私のほうを見て助けを求めてきて…可愛らしかったですね」

 

『わかってて私が助けを求めるまで知らんぷりするんですから、ママもママですよ』

 

「うふふ、ごめんなさい」

 

「ん……」

 

『あ、母様ありがとうございます。ん…本当に、ブエナ村にいた頃を思い出します…』

 

「そうですね…」

 

二人の母親の手の温もりを感じながら、ルーディアは静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穏やかな日々を過ごしている間、レオの散歩を担当してくれていたリニアとは、ほぼ毎日散歩の後にお茶をしていた。

美味しそうに魚のパイを頬張るリニアを眺めながら、甘味の抑えたフレンチトーストを咀嚼しつつ注意を促す。

 

『一応丁寧に骨はとったつもりですけど、気を付けてくださいね』

 

「わかったニャ。いやぁ、美味いニャぁ…」

 

見るからにご機嫌な様子で頬張るリニアは、とても幸せそうだった。

頬についたパイの欠片を拭いとったりしつつ、カチャカチャとリニアの食器が小さく音をたてる音だけが響いていた。

 

 

 

「ふー、ご馳走さまニャ」

 

一抱え程もあるパイを食べきったリニアは満足そうにお腹を擦りながら、口の回りペロリと舐めとる。

その口回りをルーディアは丁寧に拭いてやり、目を細めるリニアの頭を一撫でした。

 

『はい、お粗末様でした』

 

空になった食器をリーリャが片付けているのを眺めながら、リニアは常々思っていた疑問をルーディアへとぶつける。

 

「…時々感じてたけど、ボスってたまにあちしの事手の掛かる妹みたいに扱うよニャ…」

 

『え?……んー、そうかもしれませんね。アイシャはずっと良い子でしたし、ノルンは腕白だったり行儀悪かったりはしないので…リニアは丁度よく構ってあげたくなります。…嫌でしたか?』

 

「あ、いや、そういう訳じゃニャいのよ。ただ、ほらあちし長女だし、大森林でも学校でもガキ大将やってたから、そういう扱いにニャれてないというか…」

 

少し落ち込んだ雰囲気を感じたリニアは、慌てて弁明する。

別にリニアとしても不快感があった訳ではない。

ただ少し、恥ずかしさを感じてしまっていた。

 

『じゃあ程好く続けますね』

 

無表情ながらも何処か嬉しそうな雰囲気を醸し出すルーディアに、リニアは苦笑いを浮かべる。

 

「あはは、御手柔らかに頼むニャ…」

 

グイッと残った茶を呷ったリニアは、一息つくと、ルーディアに視線を合わせた。

 

「ところでボス、フィッツ達が帰ってきたら、あちしは暫くの間ここを離れようと思うニャ」

 

『む、何かありましたか?』

 

「ほら、なんか戦力を求めてるって話があったじゃニャいか?なんちゃらの復活に備えてーみたいニャ。それで各国に渡りをつけるって。それの大森林との事を任せて貰おうと思ってニャ」

 

『確かに…それはリニアが適任かもしれませんね』

 

「ニャ。そんで大森林との交渉が終わったら、そのままミリスでエンド傭兵団の拠点を作るのニャ。顧問…アイシャちゃんから色々ノウハウのメモ貰ったし、そういう経営に詳しい奴等も連れてくつもりニャ」

 

「くぅん」

 

そんな話をしていると、レオが鼻を鳴らしながら部屋へと入ってきた。

その鳴き声から伝えたい事を把握したリニアは、伝えようと口を開いた。

 

「あ、聖獣様。のど…が」

 

『おや、ママ、レオが喉渇いたようです。お水お願いしますね』

 

リニアのそれは、途中でルーディアの発した言葉に遮られ、尻窄みとなってしまう。

 

「畏まりました、それでは此方へ」

 

「うぉん!」

 

しかもルーディアの言葉は合っていたようで、嬉しそうに元気よく返事をしたレオは、リーリャに先導されて部屋を出ていった。

そんなやり取りに呆気に取られたリニアは、ぽやんと口を開いたままルーディアに視線を戻した。

 

「……聖獣様の言うこともボスがわかるから、翻訳係もあんまりいらなそうだニャぁ…」

 

『まぁ…かれこれ数年家族同然に過ごしてきましたからね。もうなんとなくわかりますよ』

 

「流石ボスだニャぁ…」

 

腕を組んで何度か頷いたリニアは、改めてルーディアを真っ直ぐ見つめる。

気を取り直し姿勢を正したリニアは口を開く。

 

「ま、とりあえずフィッツ達が帰ってきたらあちしは出発するからニャあ。移動は有難い事に転移魔法陣とかいうのがあるし…まー、流石にあっちの拠点安定させるのに一年は掛かると見てるから、宜しくニャ」

 

『わかりました。少し寂しくなりますけど…お願いしますね。リニアになら任せられます』

 

「ニャハハ、あちしも罪な女ニャ。既婚者をここまで魅了してしまうニャんて…。ニャハハハ。そんじゃ…また夕方の散歩の時間に来るニャ。ご馳走さまニャー」

 

立ち上がりながら、軽くしなを作って腰を横に突き出し、冗談っぽく笑みを浮かべるリニア。

うっふんなの、というプルセナの空耳が聞こえるようだった。

リニアは反応を気にする事なくさっさと姿勢を戻し、ひらひらと手を振って退室していった。

それにルーディアも手を振り返し、扉が閉じるまで見送ったのだった。

 

『…プルセナへのお土産でも考えておきますか…おにくかなぁ』

 

大森林で頑張っているだろうプルセナを思い、ルーディアは小さく言葉を発した。

おにく、と想像の中のプルセナが呟きながら涎を垂らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戴冠式は滞りなく行われ、祭りも好評に終わったらしい。

目をキラキラさせながら、初めての長期の旅行に大興奮のルーシーはルーディアの背中に文字通り貼り付いて、この三ヶ月の事をつらつらと楽しそうに語っている。

 

「それでね!あのね!」

 

次々と飛び出す様々なエピソードに、ルーディアは穏やかな気持ちで時折相槌を挟む。

ララはルーディアの膝を枕に、臨月のお腹や胸を撫でながら楽しかった、と嬉しそうに伝えてくれる。

そんなララの頭を撫でてやれば、目を瞑って気持ち良さそうに手のひらに頭を擦り付けてくる。

アルスはルーシーの話す内容を捕捉したりしつつ、隣に座ってルーディアを見上げてくる。

しっかりとお兄ちゃんをしていたようで、少し自慢気にしていた。

 

「イゾルテさんとニナさんに会って、少し指導して貰えたよ。母様に会えなかったのを、残念にしてた」

 

そしてなんと、お祭りには剣の聖地にいる友人、ニナもいたという。

イゾルテに招待されたらしく、期間中結構行動を共にしていたようだ。

 

『良かったねアルス。二人とも強いから、いい経験になったね』

 

そう言ってアルスの頭を撫でてやれば、アルスは嬉しそうにはにかんで身を寄せてくる。

 

「む…ママー!わたしも!わたしもなでなでしてー!」

 

すると背中に貼り付いていたルーシーが背中から離れ、ルーディアの前に移動して頭を差し出した。

ルーディアはずっと撫で続けていたララから手を離し、ルーシーの頭を撫で始める。

 

「えへへへー」

 

少し残念そうなララはお腹に頬擦りを始め、ルーシーは嬉しそうに笑う。

良い子で可愛い子達に囲まれ、ルーディアもご満悦だった。

すると、ララがそろそろ産まれてくる?と見つめて聞いてくる。

 

『ん…そうだね、そろそろララの弟か妹も産まれてくるよ。皆優しくしてね?』

 

言うまでもない事だけれど…なんて考えるのは親バカかな、と頭に過る。

けれど、躊躇いなく頷いて肯定する子供達は、かしこくて可愛くて優しいから、親バカではないね、と思い直すのだった。

子供達の触れ合いは、ルーシーが力尽きて寝息を立てるまで続いていくのだった。




最近更新遅くて申し訳ないです。
なんとなく毎日更新してましたが、ちょっとキツくなってきました。
なかなか文章が降りてきませんねぇ…流れは決めてるんですけどね。
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