『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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ルーデウスとシルフィエットのあのいじらしい感じ。
本作ではそれら一切なく、一日目でお持ち帰りされたから感慨もクソもないっすな。
それはそれとしてアニメ良いですなぁ。
今回は何処までやるのか…。


何かの足音

「……なんだと……?」

 

オルステッドが単身ビヘイリル王国に向かい、スペルド族の村があった場所へと辿り着いた。

そこに広がる景色に、オルステッドは眉を寄せる。

破壊された家屋に、家の破片の所々に散る赤黒い染み。

こんな時期にこんな事は初めてだと目を細めた。

 

「……何か手掛かりは」

 

村の中に入り、辺りを見回す。

いくつか建てられていた筈の家はそれぞれが完全に壊されていて、どれも中に入ることは出来そうもない。

そこそこの規模の畑の作物は荒らされ、既に枯れきっていた。

それらの徹底的な破壊には、明らかに人為的な物を感じた。

村の中央の泉は無事のようだが、その周辺には調理器具や破壊された鍋等が転がり、調理でもしていたのか、その中には異臭のする肉片のような物が付着していた。

村を覆う柵も所々が破壊されていて、その辺りにも赤黒い染みが付着している。

これらはほぼ間違いなく、敵対存在の襲撃の跡であった。

ビヘイリル王国が兵を差し向けた、『泥沼』が先がけて襲撃した、いくつかの予想が頭を過るが、決定的なものは何もない。

 

「…奴等はスペルド族だ、逃げ延びたと…思いたいが…」

 

この頃はまだ動ける者も多数いた筈。

特にルイジェルドは発症まではまだまだ先だった筈だ。

ただ、尻尾も取れていない子供達もある程度いただろう事が、心配であった。

 

「……心配、か。見捨てようとしていた身で俺は、何を…」

 

オルステッドは頭を振ってその考えを止める。

そもそも治るかもわからない事だ。

しかし、疫病に犯されていると伝えた時に、そもそも診てみないとわからないだろう、とクリフに詰め寄られていた。

自分は諦めてしまっていたが、確かにクリフは自分には出来なかった、呪いを抑えるという成果をあげている。

それに賭けてみるのも良いかと様子を見に来たが、この結果は予測していなかった。

 

「…仕方ない。一先ず戻るとしよう」

 

足元に転がっていた枯れた花輪を眉を寄せて眺め、オルステッドは踵を返して設置していた転移魔法陣のほうへと歩き始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見るだけでおっかない人ですね」

 

「……ああ」

 

「皆しっかり避難出来てますよね?」

 

「……ああ」

 

「これでもう少ししたら皆に戦って貰う戦場が出来る筈です。その時には存分に力を奮って下さい」

 

「……ルーディアが倒れ、エリオット達が未だに龍神に従っているのは本当なのか?」

 

「ええ、神様のお告げではルーディアを治療するような名目で利用しているようですよ?」

 

「そうか……信憑性は薄いが、一先ずは信じ、この槍を存分に奮わせて貰おう」

 

「ええ、期待していますよ」

 

「……その気味の悪いにやけ面をやめろ」

 

「ひっでえですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……という訳で、スペルド族の村はもぬけの殻だった。あの場を去ってかなり時間が経っているようだった…すまない、もっと早く動くべきだった」

 

兜を被ったオルステッドのその言葉に、会議室の中、主にエリオットとノルンの周辺の空気が重くなる。

ルイジェルドの事と聞いて、少し無理を言ってこの場にいたノルンの顔色が青くなっていった。

ノルンにとってルイジェルドはやはり未だに大きな存在なのだろう。

口元を押さえてカタカタと震えるノルンに、少し表情を暗くしたエリオットが退室を進める。

しかしノルンは頭を振り、気を取り直したようにじっとオルステッドを見つめた。

その様子にエリオットは納得したように一度頷き、同じようにオルステッドを見つめる事とした。

 

「襲撃…か。国か、『泥沼』か、はたまた正義感を暴走させた何者か。スペルド族は悪魔と恐れられているからな…」

 

クリフが腕を組み、椅子にもたれ掛かりながら天井を仰ぐ。

予想だけはつくが、情報が足りない。

 

「そう、ですね。以前の僕のような人物なら、スペルド族の村がわかれば、討伐に向かうかもしれませんね。ある程度自分の実力に自信があれば、ギルドにすら報告せず勝手に動く事も考えられます。……恥ずかしい話ですが」

 

気まずげに頬をかくアレクに、パウロが口を挟む。

 

「とはいえなぁ、ルイジェルドは相当強いぜ?今の俺達でも一対一じゃあ怪しい。流派はないらしいが、確実に王級以上の実力者だ。生半可な実力じゃあ返り討ちだ?」

 

パウロは、ルイジェルドの実力を直接見てはいないものの、その身で感じた圧と様々な情報からかなり高い精度で実力を把握していた。

そんな実力者がそう簡単に負けるような存在が、ほいほいいるとは思えない。

 

「いえ、仮に簡単に返り討ちにした所で場所が割れていて一度でも襲われたという事実があるのなら、村を捨てるというのも納得がいきますわ。次がないとは限りませんもの。家が壊れていたというのもスペルド族の工作の線もありますわよ」

 

エリナリーゼはむしろスペルド族自ら捨てたのではないか、と主張する。

赤黒い染みも血とは限らない、惑わせる仕掛けの可能性もある。

眉を寄せ考えるも、やはりハッキリとはわからない。

 

「結局、情報が足りなすぎるわ。これしか材料がないんじゃ、結論は出ないわよ。オルステッド、ルーディアの恩人の安否がかかってるわ、もっと情報を集めるべきよ」

 

そこでシズカが纏め、オルステッドに求めた。

意見を出したのがシズカに対して、オルステッドは暫し考え、小さく頷いた。

 

「そうだな、やはりビヘイリル王国で情報を集めるべきか。転移魔法陣は設置しておいた。何人か派遣するとしよう」

 

そうオルステッドが締め、誰も異論はないようで頷いていた。

パウロはそこで頭の後ろに手を回し、椅子にもたれ掛かる。

 

「やれやれ、そろそろノルンの成人式だってのに。ま、逆に丁度良いな!ルイジェルドにも是非参加させて、ノルンの艶姿見て貰うとするか!」

 

「もう!お父さん!」

 

わざとらしく明るく言われた言葉に、ノルンは顔を少し赤く染め、控え目に怒声をあげた。

笑い声がからからと部屋に響く中、黙って話を聞いていたザノバが動き出した。

足元から一抱えの箱を取り出し、それをパカリと開いたのだ。

 

「此方、魔力結晶で稼働する、氷狼鎧を参考にした防御用の魔道具です」

 

取り出したそれは、二つ一組の、魔力結晶が嵌め込まれた腕輪だった。

 

「自動で発動して氷が展開され、あらゆる攻撃から身を守ってくれます。ただ、消費が激しく、数度しか発動しませんので、過度に期待はしないでくだされ」

 

そう言い、その腕輪を配り出すザノバに、受け取ったクリフは驚いたように目を丸くしていた。

 

「ザノバお前、いつの間に……」

 

「ははは、師匠が余の呪いを吸いとってしまったようで、かなり器用になりましたからな!細かい作業が捗って仕方ありませんな!人形作りも順調で、まったく……」

 

そこまで言って、ザノバは涙と鼻水を溢れさせ、言葉につまってしまう。

 

「師匠には、困った、ものですな…余は、師匠を犠牲にしてまで……このような……」

 

手に一つ持った腕輪。

それを握り締めるも、多少軋む程度でヒビも入らない。

 

「っ……!」

 

ドンッ!

 

ザノバはその拳を箱を置いた机に叩きつけるも、大きな音が鳴るだけで、歪みもしなかった。

見た目通りの力しかない自らの体に、ザノバは内心舌打ちを鳴らした。

これでは、誰かの壁になる事も出来ず、戦う事等夢のまた夢だ。

確かに力加減は完璧となり、念願の人形作りも出来るようになり、私見ではあるが、相当優秀な魔道具を作る事も出来た。

だが、代わりに今のルーディアはよく物を破壊しているとの事だ。

誰かを身代わりに、呪いを押し付けてまで

ぎり、とザノバは思わず奥歯を強く噛み締めた。

 

「マスター……」

 

赤く腫れ始めるその手を心配そうに擦るジュリに、ザノバはハッとする。

ズビビと音をたてて鼻をすすり、取り出したハンカチでメガネをずらしながら涙を拭う。

 

「はは、すみませぬ、見苦しい姿を見せました。見ての通り、怪力の神子としての力は、余にはまったく残っておりません。魔力も乏しく、まともに戦闘行為は行えないでしょう…せめてこの腕輪、役立ててくだされ。余は裏方として皆様を支えましょうぞ」

 

ザノバはそう言ってははは、と笑う。

それに皆は、それぞれ力強く頷く。

赤く腫れた手に痛そうに振るその手に、フィッツの手が優しく置かれた。

 

「ありがとうザノバ……本当にルディは自分勝手で…困っちゃうよね」

 

笑みを浮かべて治癒魔術を行うフィッツに、ザノバも笑みを浮かべた。

 

「感謝致しますぞ。ふふふ、その通りですな、まったく師匠ときたら…目が覚めたら文句の一つや二つ、申し上げねば気が済みませぬな」

 

その言葉に一瞬驚きながらも、フィッツは穏やかに笑みを浮かべると小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラカラカラ……

 

「お姉ちゃん、今日はいい天気だね」

 

「…………」

 

移動に不便だろうとザノバが作った歩く椅子…。

シズカのいた世界にあったというものを聞き取り作成した、試作の車椅子にルーディアは座っていた。

椅子の左右には大きな車輪、ルーディアが足を乗せてる辺りには左右に曲がれるように小さめの車輪が取り付けてあり、背もたれには押せるようにハンドルが着いている。

そのハンドルを今はアイシャが、時折アルスが押して散歩の真っ最中である。

ルーディアの腕の中ではジークが抱かれ、念のためにだっこ紐でくくりつけられている。

 

「お兄ちゃん!次私が押す!」

 

「うーん…これ結構大変だよ、ルーシー。…お母様が危なくならないように気を付けてね?」

 

「はーい!」

 

アルスに絡むルーシーは次に車椅子を押したい、と意気込んでいるようだった。

まだ試作品の為に押すのにコツがいるので、アルスは少し心配そうだ。

 

「……ひざし、きもちいい」

 

レオに跨がるララが目を瞑りながら呟く。

やがてもふもふのレオの背中にうつ伏せになり、そのまま寝息を立ててしまった。

 

「ふぬー!」

 

その間にアイシャと代わって貰い、車椅子を押そうと踏ん張るルーシーだが、先程のようにスムーズには動かない。

ルーシーの顔は真っ赤で、幼いながら頑張ってはいるが。

苦笑を浮かべて小さく息を吐き出したアルスは、ルーシーの後ろに回る。

そっと車椅子のハンドルを持つルーシーの手に自らの手を添えて、少しずつ力をいれていった。

やがて先程のようにカラカラカラと鳴り出した車椅子に、ルーシーの顔がパアッと明るくなる。

 

「さ、ルーシー。お母様を一緒に押してあげよう」

 

「んふふふ、はーい!」

 

目を細めてルーシーを手伝うアルスに、笑みを溢すルーシー。

その2人の仲睦まじい様子を、アイシャは笑みを浮かべて見守る。

 

「ふふ、アルス君、カッコいいなぁ…」

 

そうぼそりと呟き、念の為に何かあればすぐ手が出せる位置に陣取り、その様子を眺め続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリエルから通信石板でこう、届いた。

 

「ギースらしき姿がアスラ王国にて発見」

 

そしてビヘイリルでこのような発見報告があった。

 

「『泥沼』らしき姿が鬼ヶ島付近で発見」

 

オルステッドは感じていた。

何かが始まる、そんな予感がした。




原作より実は色々と進行が早かったりしてます。

そろそろ最終章、この小説の結末は…

  • 完全無欠のハッピーエンド
  • 一応なんとかハッピーエンド
  • ちょいとほろ苦いビターエンド
  • …求めてないよね?バッドエンド
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