『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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最終章なのに主人公がいないの結構ヤバイ?(今更)
後更新速度遅くなって申し訳ないです。


最初の襲来

ビヘイリル王国に転移した面々は、まず『泥沼』が目撃されたという港町へと向かう事となる。

とはいえその港町、ヘイレルルも転移魔法陣からはそう遠くない為に、直ぐにたどり着く事が出来た。

潮風を感じながらぼんやりと遠くに見える島を眺める。

その島は火山島らしく、山の頂上辺りからは煙が上がっていた。

ヘイレルルで早速情報収集を済ませた面々は、『泥沼』らしき人物が船を借りようとしている事を突き止めた。

話を聞けば、翌日の午後に船を取りに来る、との話であった。

 

「丁度良い、鬼ヶ島に渡られても面倒だ。ここで叩く」

 

警戒され逃げられても困る為に、オルステッドは森の中で息を潜めていた。

ここにいる面々もそう、皆目深にフードを被り、ローブを纏って町では情報収集をしていた。

その分当然ながらかなり怪しまれたが、アレクとロキシーがどうにか頑張っていた。

 

「船貸しの船が置かれている場所はわかっていますから、そこで待ち伏せしましょうか。近くには森もある事ですし…その辺りに潜みましょうか」

 

「漸く奴を始末出来るのか」

 

アレクの冷静な意見の傍ら、ギレーヌはウズウズとした様子で、その目を殺意でギラギラとさせていた。

思えばオルステッドだけではない、自分含めた剣王三人で容赦なく切り捨てようとしていたにも関わらず、ルーデウスを切る事は出来なかった。

だが、今回は絶対に逃がさん。

そう強く心に決め、ギレーヌは自らの剣に手を添えていた。

思い出すのは、エリオットを連れてシャリーアに戻った時の森の中…あの時ルーディアは命が消える寸前だった。

オルステッドがいなければ、ルーディアはあそこで力尽きていただろう。

知らず剣の柄を持つ手に力が入った。

 

「……とりあえず移動しておくか。オルステッド、あんたは更に森の奥に身を隠しててくれ。『泥沼』の姿が見えたら合図するから、それまではアンタの姿は見せない方がいいだろう」

 

ルーディアを殺されかけた恨みを持つのは、エリオットも同じだ。

しかし、ルーデウスを仕留めきるのは簡単ではないと、エリオットは冷静に判断していた。

危機察知能力の高さと魔術師らしからぬ身のこなし、そして一瞬の間を与えると無詠唱で放たれる範囲が広く強大な魔術。

シャリーア近郊の森で対峙した時、それ以降ルーデウスにまともに攻撃を与えられていない。

業腹ではあるが、オルステッドによる完全な不意打ち、それが現状奴を仕留める可能性が一番高いと思えた。

それをオルステッドに伝えると、納得したように力強く頷いた。

 

「……成る程。確かに奴は魔眼持ちの疑いがあったな…予知と千里…わかった、いいだろう。その策で行くとしよう」

 

そのオルステッドの言葉の後、辺りを警戒しつつ移動を始める。

そんな中、ロキシーがふと口を開いた。

 

「なら、可能性を上げる為に、隠密系の能力を持ったマジックアイテムを持ってきます。戦闘系ばかりを急いでかき集めてきたので…昼頃なら少し時間はあるでしょうし、今のうちに行ってきますね」

 

「む、一人で行動するのは危ないですよ。僕が付き添いましょう。構いませんよね?」

 

名乗り出るアレクにロキシーはペコリと頭を下げる。

そして、ロキシーはよいしょと背負っていたバッグをエリオットに手渡した。

その中にはスクロールやマジックアイテム、あと緊急用の転移魔法陣等、魔術系の道具がたっぷり詰まっている。

エリオットはそれを受け取ると、小さく頷いた。

 

「近いとはいえ、気を付けてな」

 

「はい。そちらも。見つからないように…」

 

そんな言葉を交わし、ロキシーはアレクと共に一時的にシャリーアへと帰還する為に踵を返した。

森の中に消えていく二人を見送り、エリオットとギレーヌも待機する場所を選定する為に歩き始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスラに転移したフィッツとエリナリーゼは、まず現状を把握する為に、王城へと向かう事にした。

そこで二人が大通りに出てみると…何処かピリピリとした雰囲気を感じた。

道行く人々の表情も何処か緊張したもので、気のせいか騎士をよく見る。

それを見たエリナリーゼが怪訝な顔をした。

 

「…なんだか、戦争前や戦時中の国のようですわね…何故こんなに物々しいのでしょうか…?」

 

「…どうにもギースさんの目撃情報があってから、裏が騒がしくて…情報提供者の盗賊の人もそれ以降連絡がつかないんだ。そのせいで治安が悪くなってる。ジンシン教摘発前よりはマシだけど…。仕方なく警備を増やして対応してるんだけど、首都以外はエンド傭兵団と各地の私兵に任せるしかない状況なんだ…」

 

「それは、なかなか面倒な状況ですわね…もしもギースの仕業であるなら、早く見つけて止めなくてはなりませんわね」

 

「ええと、僕はギースさんの事あんまりよく知らないんだけど…ここまで大それた事やれる人なの…?言ってしまえばアスラという大国を一人で揺るがしてるって事になるんだけど…」

 

そのフィッツの言葉に、エリナリーゼは暫し顎に手を添えて考える。

移動しながら考え込むエリナリーゼだったが、やがて整理がついたようで口を開いた。

 

「結局何をしようとしているのかにもよりますが…ギースらしくはないですわね。けれど…それが出来ない人物ではないですわ。努々油断しない事ですわ…」

 

そのエリナリーゼの言葉にフィッツは少しだけ表情を固くする。

そのままこくりと重々しく頷く孫に、エリナリーゼは少しだけ表情を綻ばせる。

 

「でもギースに戦闘能力がないのだけは確かですわ。見つけてしまえばどうにでもなると思いますわ」

 

そう言ってフィッツの緊張を解すように頭をポンポンと優しく叩いた。

ギースに戦闘できる力がないのは確かで、見つければいい、というのは本当だ。

ただ、エリナリーゼは勿論、ずっと探し回っているパウロも、だからこそ警戒している。

戦闘以外なんでも出来ると豪語する男、戦闘能力なしでSランク冒険者に登り詰めた男。

パウロがミリス神聖国でミリス教団に襲われたのも、手紙によればギースの仕掛けだという。

魔族を嫌うミリス教団魔族排斥派の枢機卿を、魔族のギースが動かし、教団にとって恩のある人物を襲うように仕向けた…。

それがどれ程難しい事か。

どうやって実行したのか、想像も出来ない。

 

「……むず痒いですわね」

 

エリナリーゼはそう小さく呟いて、隣で王国民達に手を振っている自分の孫を眺める。

兎に角、アスラの現状を改めて聞き、パウロと合流し、手早くギースを見つけなければならない。

そうしなければ、孫達の平穏は崩れ去ってしまう。

エリナリーゼは覚悟を新たに、王城へと歩き続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の昼前。

事務所にロキシーとアレクが入る。

ロキシーの背負うバッグには隠密系のマジックアイテムが、アレクの持つバッグには新たに描かれたスクロールが詰め込まれている。

そしてついでに、とアレクは鉄剣も見繕っていた。

流石に木剣では舐めすぎだ、と。

とはいえ数打ちの剣ではある為に、そう良いものではない。

たがそれで良いとアレクはそれを木剣と共に腰にさしていた。

 

「あっ、お早うございます、お疲れ様です」

 

受付のファリアステアがペコリと頭を下げて挨拶をする。

 

「おはようございます」

 

「おはようございます。何か目ぼしい情報はありますか?」

 

「うーん、何もありませんね」

 

通信石板に目を通したファリアステアは首を振った。

文字は浮かんでおらず、特に何もなさそうである。

 

「そうですか…。では僕達はまたビヘイリル王国に向かいたいと思います。お願いしますね」

 

「はい、ビヘイリル王国の転移魔法陣の使用ですね…承りました、お気をつけていってっしゃいませ」

 

手元に何かを忙しなく書き込み、ファリアステアは笑顔で頭を下げた。

それにロキシーが合わせて頭を下げた、その時だった。

 

「……ん……?」

 

バッグを持ち直したアレクは、不意に違和感を覚えて上を見上げた。

勿論その先は天井で、天井以外何も映る事はない。

だが、何か耳鳴りのような、風を切るような音がするような…。

そこまで考えてアレクはハッとなり、バッグを放り投げた。

 

「失敬!」

 

そして、側のロキシーの背中から腹に左手を回し、強引に脇に抱えた。

 

「えっ!えっ!?」

 

「失礼!」

 

更には受付のファリアステアの後ろ襟に手を伸ばし、受付越しに引っ張りあげた。

 

「あわわわ!?な!なんですかぁ!?」

 

声をあげて手足を動かして抵抗するものの、意にも介さず肩に担ぐ。

ロキシーを左脇に、ファリアステアを右肩に乗せたアレクは、二人の反応を一切気にせずに一気に加速し、事務所の玄関を蹴破って外へと飛び出した。

 

「何―――」

 

――――ィン!!!

 

その瞬間、ロキシーの抗議の声をかき消すように風切り音が響いた。

そしてすぐに、凄まじい轟音が鳴り響いた。

 

ドゴォオオオオオオン!!!!!

 

同時に背後から強い衝撃が三人を襲う。

 

「っぐぅううう!!」

 

「えぶぇっ!」

 

「きゃああああああ!!」

 

肩に乗せていたファリアステアをどうにか前に抱え、小柄なロキシーをその前に纏めて抱えたアレクは、二人を衝撃から守りつつ、苦痛の声をあげる。

それでも耐えきれずに吹っ飛ばされ、三人はそのまま転がっていく。

衝撃の勢いが収まると、ロキシーとファリアステアはアレクの腕の中で、ほぼ無傷。

二人を庇ったアレクの手足に擦り傷がついたくらいで、三人とも無事であった。

土煙がもうもうと立ち込める中、アレクは痛みを気にする素振りもなく二人を解放して立ち上がり、事務所のほうを振り向き、剣を抜き放って構えた。

 

「い、一体何が…?」

 

「きゅー……」

 

ロキシーは多少衝撃で痛む体を起こしながら、顔を歪め、目を凝らす。

ファリアステアは完全に目を回している。

土煙で何も見えないので、ロキシーは短縮詠唱で風を起こし、辺りの土煙を一気に吹き飛ばす。

そして、驚愕に目を見開いた。

前程まであった事務所が跡形もなく、瓦礫の山となり果てていたからだ。

そしてそこでロキシーは意識を切り替えた。

杖を構え、周囲を見回す。

ロキシーは今のを何者かの攻撃と判断したのだ。

下手人は近くにいる筈、と。

だが、アレクは感じていた。

瓦礫の中から発される、懐かしく、恐ろしいプレッシャーを。

たらり、とアレクの額から頬を冷や汗が流れた。

その瞬間、ドカン、と瓦礫の一つが浮き上がる。

 

「アーッハッハッハッハッハー!!」

 

高笑いをあげながら、そこから這い出してきた人物は身の丈程もある大剣を大きく振り回した。

それによって周りの瓦礫は不自然に弾けとび、その姿を露にした。

青い肌、額の一本角、ボロボロのコウモリのような羽根に、傷だらけの黒い鎧。

瓦礫と化した周囲を笑いながら見渡している。

 

「ここが本当にあの龍神の拠点かぁ?呆気ないものだな!」

 

その人物は剣と杖をそれぞれ構えるアレクとロキシーに気付いたようで、その視線を此方へと向けた。

その姿を見たロキシーの顔は恐怖に歪み、その大剣を見たアレクの表情は苦虫を噛み潰したように歪んだ。

 

「ふ、不死魔王、アトーフェラトーフェ…様……」

 

ロキシーの震えた声で呼ばれたその名に、アトーフェは好戦的な笑みを浮かべ、強大なプレッシャーを放つ王竜剣カジャクトを肩に担いだ。

その視線と久しぶりに感じる愛剣の圧に、アレクの剣を持つ手に力が入った。




そういえば曇らせ杯なるものが開催されるとか。
折角なので何か新作かいて参加してみたいと思います。
ポケモン剣盾のホプユウか。
悪役令嬢ものか。
魔王の子に転生した話か。
そんな事考えてるから更新が遅いんですよね。
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