『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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アニメ1クール目、終わりましたね。
面白かったですね。
今後の交遊関係の広がりのきっかけで、面白いけれどアニメ映えはしないと思っていた魔法大学編…。
ここまで素晴らしい出来映えのアニメになるとは…。
2クール目も楽しみですね。
迷宮編かぁ…(辛い)


ヒトガミの使徒を捉えろ

「…!あいつは」

 

エリオットが、小さく声をあげた。

ロキシーとアレクが一時的に帰還した後、森の中で見つかり辛い場所の選定を終えたエリオットとギレーヌは、息を潜めて交代で見張る事にしていた。

そうして夜を越し、現在ギレーヌは干し肉を齧って休憩している中、エリオットが様子を見ていた時の事だった。

現在は朝食と昼食の間くらいの時間、船貸しが数人のローブで身を隠した人物達を引き連れてやってきていた。

その中では小柄な、鼠色のローブを着た男に、エリオットの視線は吸い寄せられる。

気配を消し、息を潜め、船貸しとその男のやり取りを見つめる。

遠目で会話はわからないが、鼠色のローブの男が差し出した物を受け取った船貸しは、一礼してからその場を立ち去っていった。

男は、一隻の船を他の人物達に指し示しながら、その鼠色のフードを取り去る。

そこから現れた茶髪の男の顔を確認したエリオットは、ギレーヌに伝える為に、慎重にその場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で船を海に浮かべ終え、一息ついている様子のその集団に、エリオットとギレーヌはあえて姿を表して近付いていく。

それに気付いたのかローブで身を隠した人物達は、警戒した様子で二人を視界にいれながら身構えた。

そして鼠色のローブの男…ルーデウスは薄ら笑いを浮かべ、エリオットとギレーヌに向かい合うのだった。

 

「おや、久し振りですね。こんな所で会うとは奇遇だなぁ。師弟揃って観光ですか?」

 

へらり、と軽い態度で話し掛けてくるルーデウスに、ギレーヌが一歩前に出る。

 

「知れた事。今度こそ貴様を斬るだけだ。ルーディアの受けた苦痛…今、貴様に返してやる…!」

 

腰の剣の柄に手を伸ばし、歯を剥き出し、姿勢を低く構えたギレーヌ。

それに対して身を隠した…体型的に男であろう人物達も、それぞれ身構えた。

この言葉、ギレーヌも本気で言っているし、本気で切り捨てるつもりではある。

しかし、思った以上にルーデウスの動きだしが早く、ロキシー達もまだ戻っていない。

この状態でオルステッドによる不意打ちの成功率を少しでもあげるには、二人が囮となるのが良い。

そう判断したエリオットは作戦を変更し、自分達が真正面から挑むので、隙を見てやってくれ、とオルステッドに伝えていた。

ここはあえて、本気で切りに行く、とエリオットは目を細めた。

 

「数年越しか…お前はここで切り捨てる。覚悟しろ」

 

エリオットもギレーヌに並び立つように、腰の剣に手を添えた。

少しずつ狂気を解放し始めるエリオットに、相手の男達もざわめきだす。

二人の放つまるで野生生物か強大な魔物のような圧に警戒し、意識が集中していく。

その意識が高まりきった、と判断したエリオットが足を一歩大袈裟に強く踏み込んだ。

ビク、と程度の差はあれど体を震わせた彼らに、一瞬だけ、意識の空白が出来た。

その瞬間、突風が吹いた。

エリオットとギレーヌの間を抜け、固まる男達を通り抜け、一瞬でルーデウスの前に躍り出たオルステッド。

目を見開くルーデウスに、その勢いのまま右手を振りかぶっていた。

 

「なっ…!」

 

「終わりだ、『泥沼』!」

 

強い感情の乗った言葉と共に、オルステッドの拳がルーデウスに突き出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王城にたどり着いたフィッツとエリナリーゼを迎えたアリエルは、忙しなく書類を書き続けているようだった。

なんでも治安維持の為に騎士を派遣し続けていたところ、怪しい者を何人も捕らえたのだという。

そしてそれらの多くが不法入国者で、送り返す為に調べると、国においてそこそこの地位にいたりしていた。

それらは流石に現場で判断を下す事が出来ない為に、アリエルのほうにまでこうやって書類が回ってきて忙しいらしい。

 

「紛争地帯の小国の方が多いですが、無視も出来ませんからね…。余りに不法入国者が多すぎるので、何者かの関与を考えていますが、そもそもの入国ルートの特定に手間取っています…。さて、そろそろパウロが戻る筈です。3人でギース捜索の任につく事を許可します。今のこのアルスを騒がせている犯人をギースだと仮定していますので、どうかよろしくお願いしますね」

 

そう言って一度手を止めて頭を軽く下げたアリエルは、再度書類に目を落とした。

その間にも扉が開き、ルークが新たな書類を抱えて入ってくる様子に、フィッツとエリナリーゼは気まずそうにしつつも、部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、エリナリーゼも来たのか」

 

王城に昼過ぎくらいに帰還したパウロは、報告も程々に、食堂で飯を詰め込んでいる所だった。

今もエリナリーゼに手を上げて挨拶した後は、大きく口を開けて厚切りのハムを口の中に放り込んでいた。

 

「あまり、芳しくないようですわね」

 

フィッツとエリナリーゼは既に食事を終えている為に、誰も座っていないパウロの前に腰掛ける。

飯を食らい、どちらかと言えば朗らかな表情を浮かべているのに、何処か圧のあるパウロに、誰も近付こうとはしていなかったようだ。

口の中の物を水とともに流し込み、パウロは口を開く。

 

「まぁな。目撃情報もねぇよ。今日はあいつらしい所、賭場とかを中心に探し回ったが…流石に俺がいる国でこんな事引き起こしといて、んなわかりやすい所にいる訳はねぇとは思ったが…ま、一応な」

 

むしゃむしゃと小麦色のパンにかじりつくパウロに、フィッツは口を開く。

 

「そういえばビヘイリル王国で『泥沼』……の目撃情報があったそうです。他の皆が対応してくれてるんですけど…」

 

仲間内で『泥沼』と因縁がない者はいない。

その話を聞いていない筈のパウロに、一応の報告として問い掛けてみたフィッツだったが、答えは即座に帰ってきた。

 

「俺はギースを探す。ギースへの違和感ってのは一応あったんだ。今思えば、だけどな。けどそれを俺が見逃したせいで、今あいつが何かを起こそうとしてるんだったら…止めるのは仲間である俺の役目だ。エリナリーゼも、だから来たんだろ?」

 

それにエリナリーゼは小さく頷いた。

ギースの全てが嘘だった訳ではない。

今も変わらず仲間なのは確かだ。

ただ、お互いの譲れない物が、対立してしまった。

結果的に敵対しているが、ゼニスも目覚めたんだ、全て終わったらまた酒でも酌み交わしたかった。

手紙を信じるならば、ギースも別に此方を憎く思ってる訳ではない…とパウロはそう思いたかった。

 

「だからまぁ、何か決定的な事する前に、さっさととっ捕まえちまいたかったんだ。今ならまだ……殺す事もねえだろ」

 

「……そうですね」

 

パウロは少し瞳に迷いを浮かべていた。

騎士として仲間として父親として、どう対応するのが正解なのか、パウロはギースへの対応を決めあぐねていた。

それで取り返しのつかない事に…というのだけは避けたいが…。

 

「一度罠に嵌められているというのに、甘いですわねぇ…」

 

「けっ。仕方ねーだろ。転移事件の時、あいつには本当に世話になっちまったからな…少なくとも直接話聞いておきてぇんだよ」

 

呆れたように言うエリナリーゼだったが、その口元には笑みが浮かんでいた。

拗ねたように返したパウロは、残ったパンを口に放り込み、水で流し込むと、息を大きく吐いてその場に立ち上がった。

 

「んー…!さて、午後からも探すとするか…行くぞ」

 

大きく背伸びをして体を解し、パウロは二人を見つめる。

力強く頷く二人に笑みを返し、気合いを入れ直すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局その日はギースは見つからず、怪しい人物を何人か確保してその日の捜索は終わりとなった。

だが、一つだけ情報があった。

猿顔の魔族に紛争地帯から連れてこられた、と。

依然方法はわからないものの、アスラ王国の治安悪化はやはりギースの企みであるとほぼ確定となった。

改めて首都アルスの治安維持と、犯人と思われるギース・ヌーカディアを捕らえる事をアリエルに命じられ、その日は解散となった。

三人はやきもきしつつも屋敷に戻り、食事を取ると次の日の為に体を休めようと、早々に就寝するのだった。

 

そして、事件は次の日の朝から始まった。

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