エリナリーゼと魔法大学
とある日、ルーディアとギレーヌの元に手紙が届いた。
すわエリオットからかと確認すると、きっちりとした厳重な封筒であり、すぐにエリオットではないとわかった。
ルーディアは凪いだまま、ギレーヌは小さく舌打ちをして、その手紙をあらためた。
結論からいうと、ラノア王国のラノア魔法大学に在籍してくれないか、との話だった。
子供を育てるサポートも、魔法を学べる環境も整えるとの事で、かなり厚待遇だと思える。
捜索も子育ても冒険者としての活動も中途半端になってる自覚がある今、選択肢としてありかもしれないな、とルーディアは思った。
そしてもうひとつ、その手紙を届けてくれた冒険者との語らいが待っていた。
「それにしても本当にギレーヌが『母猫』だったのですね」
「エリオットがこの子を孕ませて…恐らく…剣の聖地で修行中だからな、あたしが護らねばならない」
「…あのギレーヌが丸くなっちゃってもう」
ギレーヌ、そしてパウロ、ゼニスとの旧知の中である長耳族の女性、エリナリーゼ・ドラゴンロードである。
どうにもルーディア自身に伝言があり、ついでに手紙運びもやっていたとの事だった。
そして話を聞けば、ここ数年程元パーティーメンバーの縁でフィットア領の行方不明者の捜索に尽力してくれていたのだという。
同じ立場にであるタルハンドと、偶然出会ったロキシーと共に魔大陸を。
『まぁ、師匠は元気でしたか?』
「元気でしたわ、ずっと貴方を案じておりましたし、すれ違いになったかもしれない事を悲しんでおりましたわ」
『デッドエンド』の名前があまり良くない形で働いたらしい…とはいえルーディアにあまり後悔はない。
不意にルイジェルドは元気だろうか、なんて頭に浮かんだ。
そしてロキシーはある時に魔界大帝キシリカ・キシリスに出会う機会があり、結果的に恩を売ることとなり、ゼニスの居場所を探して貰うように頼んだのだという。
『彼女そんな事出来た…ああ、そういえば千…万里眼も持ってるとか言っていましたか』
「そういえば貴方も魔眼を貰ったとか?」
『ええ、右目に魔力眼をいただきました。とても役にたってますから、いずれは改めてお礼したいですね…ギレーヌとお揃いですしね』
「それで?そのキシリクリスタルはゼニスが何処にいると?」
少し機嫌良さげなギレーヌが改めて問う。
「キシリカ・キシリスですわ。ゼニスは、なんでもベガリット大陸、それも迷宮都市ラパンにいる…らしいですわ」
『迷宮都市ラパン…遠いですね』
「行くのか?」
ルーディアが抱くアルスに視線を向けながら問うと、ゆっくりと首を振った。
『とても、とても心配ですし会いたいですが…アルスを連れていく事も置いていく事もありえません…母様の事は捜索団の団長にお任せします』
「…?そう、ですわね、パウロやロキシーが向かいましたから、きっと大丈夫ですの。貴方は子育てに専念なさいな」
『そうですね、子育ての事もありますから、魔法大学の事も前向きに考えたいですね』
何処か言葉に違和感を感じつつも、エリナリーゼはうんうん、と頷く。
「ま、お話はそんな所ですわね…所で…わたくしにもその子抱かせて頂ける?可愛い子ですわね、何歳になりますの?」
『一歳になりました、どうぞ』
「おー、よしよし可愛いですわねー」
「?」
首をこてんと傾げる仕草にエリナリーゼが黄色い悲鳴をあげる。
ちやほやとアルスを構い、きゃっきゃっと笑うアルスに癒されていると、ふと思い出したようにエリナリーゼが話題を出す。
「あ、そう言えば聞きまして?北の辺りではぐれ赤竜が出たとか」
「ああ、聞いたな。昔の事もあったし腕試ししたい気持ちもあったが、移動に何日も掛かるからな…『デッドエンド』としては参加は見送った。顔見知りからは残念がられたがな。上手くいったのか?」
「わたくしの聞いた話だと遭遇戦になってしまって大変だったそうですが…通りすがりのソロのS級冒険者が倒してしまったそうですの」
「実質一人で討伐という事か…?凄まじいな。なんていう奴だ?」
「懐かしい名前ですのよ、彼ですよ『泥沼』。まったく活躍を聞かなくなったから死んだと思ってましたわ」