『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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ラノア魔法大学

ラノア魔法大学入学式の日、早朝にルーディアとギレーヌの姿はシャリーアの外れにあった。

ルーディアの腕の中にはまだ夢の中のアルスもいる。

 

『行くんですね』

 

「ああ、魔法大学の寮に入ってしまえば、負担はかなり減るだろう。流石にあたしはエリナリーゼのように魔法大学に入る気もないし、ここでずっと見守っているのも違うと思ってな」

 

『寂しくなりますね…』

 

「また会いにくるさ、次はエリオットと一緒だ」

 

ギレーヌはここで旅立つ事を決めていた。

色々と細かい理由はあるが、一番はやはり業を煮やした、というべきか。

目的は『剣の聖地』への殴り込みである。

流石に何も無さすぎる事に違和感を覚え、何かしら人為的な物が働いてると考えた。

故にいつかは直接行かねばならないと思っていた。

なので今回の、数年単位で同じ場所に居続けるうえに安全である魔法大学の入学は渡りに船であった。

 

『…アルス、ほら、ギレーヌにお別れして』

 

「んんーやー…」

 

「ふ、無理に起こす必要はない、また会える」

 

ギレーヌはルーディアの頭に手をあて、額同士をこつん、と合わせた。

 

「また会おう、ルーディア、あたしの愛しき娘…」

 

『…行ってらっしゃい、ギレーヌ…私だけのお母さん…』

 

「ああ、行ってきます」

 

そう言ってギレーヌは最後にルーディアとアルスを慈しみを込めて優しく撫でてから、 魔法都市シャリーアを去っていった。

ルーディアはギレーヌが見えなくなるまで見守り、一筋だけ涙を流すと、踵を返して街へと戻っていった。

 

 

 

 

 

ラノア魔法大学の入学式を終えたルーディアは、ホームルームへと参加する事となった。

そこで特別生との顔合わせ、という事になるのだろう。

他に五人いるという特別生と出会う場になる教室へと向かっていた。

ちなみにアルスは今は学校側に預けている。

子供の世話をする人を学校が雇い、専用の一室まで設けられた上で、いつでも会いにいけるし、何かあればすぐに連絡がくるようになっている。

更にはアルスを連れての授業も許可されていて、至れり尽くせりである。

今日は様子見を兼ねて午前中は預けておくつもりである。

 

『仲良くなれるかな?』

 

久々の学校生活であるし、穏やかに過ごしたいなという細やかな願いだった。

どんな子がいるんだろうな、と少しわくわくしながら教室に入っていったのだが。

 

「おうこら新入生、あんまあちしを舐めんニャよ?」

 

「舐められてるの、ペロペロなの」

 

いきなり絡まれてしまっていた。

理由は簡単で、ガン飛ばしを無視し続けたら絡んできたのだった。

特別生の中に知り合い…シーローン王国で世話になったザノバ・シーローンがいたので、話をし続けてしまったのがよくなかったのかもしれない。

 

『それにしてもザノバもお元気そうで、パックスとは連絡とっているのですか?』

 

「い、いえ、余からは何もしておりません、というか、師匠?」

 

そんな事気にせず、ルーディアは近くまできている獣族の娘二人を無視して、ザノバに話しかけている。

ルーディアとしては順番に話すつもりであったので、話途中のザノバとの会話のほうが大事だった故である。

ザノバは、そんなルーディアと獣族の娘二人を交互に見て流石に、とたらりと冷や汗を流した。

すると猫耳の獣族がたまらず声を荒げた。

 

「ニャー!まだあちしを無視する気かニャ!デドルディア族でいずれ族長にニャるこのリニア・デドルディアを無視し続けるとはいい度胸ニャ!」

 

『ドルディア……』

 

それを聞いたルーディアは目を細めると、顔の横につけていた仮面をカポリと顔に被せた。

ボソリと小さく響いた声は、興奮しているリニアには届いていないようだった。

 

「ここまでバカにされたのは初めてニャ!新入生!そこにニャおれ!」

 

そう叫んでルーディアから見て左側に身を寄せながら突っ込んでくるリニア、後ろの犬耳の獣族もやれやれという顔をしながらも、口に手を当ててルーディアにとって見覚えのある魔術を放とうとしている。

そんな二人に対して、ルーディアは瞬時に仮面に氷で狼の口を作り出すと。

 

『ウォン!ウォン!』

 

と二回咆哮、ピンポイントに獣族二人の頭を揺らした。

 

「ギニャア!?」

 

「わふんっ!?」

 

二人はそのまま崩れ落ち、困惑の表情で床で蠢く。

ドルディア族と対峙してる訳でもないのに、咆哮魔術が来るとは流石に予想出来なかったのだろう。

まともに食らった二人は立ち上がれず、犬耳のほうに至っては目を回していた。

 

「ニャ…ニャんで咆哮魔術が使えるニャ…何者なのニャ…」

 

「きゅー…」

 

『私はルーディア・グレイラットと言います。後でちゃんとお話しますから、大人しく待ってて下さいね先輩方』

 

ルーディアはそう言いながら仮面をまた顔の横に付けなおした。

同時に氷の狼の口がパリンと砕け、キラキラと光を反射していた。

 

「…あの二人を一瞬ですか、流石ですな」

 

『彼女達が油断していたからですよ、ほら私、片方腕も目もないですからね』

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