「…それで、逃げてきたと」
資料を持って生徒会にたどり着いたフィッツは頷いた。
それに対しアリエルは苦笑し、ルークは頭をかいた。
「逃げたくなる気持ちはわかるがな、悪手だろお前それは」
「でもでもだってだって」
「でもじゃない!兎に角今日中には弁明しろよ?」
「ううー」
そんなやり取りをアリエルが笑いながら見守っていた時の事だ。
コンコン
部屋の扉が叩かれた。
瞬間ルークとフィッツは佇まいを直し、アリエルの左右に着く。
一瞬で守護騎士ルークと守護術師シルフィとなった二人を頼もしく思いながら、アリエルは口を開く。
「どうぞ?」
扉を開いて出てきたのは、先程話にしていたばかりの少女、ルーディア・グレイラットであった。
『失礼します…シルフィさんが此方を落として行ったので届けにきました』
そう言ってルーディアが掲げる巻物に見覚えがあったフィッツは「あ!」と思わず声をあげた。
「ご、ごめんなさいルーディアさん、ありがとう」
ぱたぱたとフィッツはルーディアに駆け寄り、その巻物を手に取った。
しかし、ルーディアはその手を離さない。
「え、えっとルーディア、さん?」
『ルディって呼んでくれないの?』
「あ、えっと…」
フィッツは思わずアリエルに振り返った。
アリエルは苦笑しながら頷いた。
「あ、ありがとう、ルディ」
はにかみながら顔を赤くし、上目遣いでお礼を言う少年に、ルディは離した手をそのままフィッツの後頭部に回して抱き締めた。
再度になるがルーディアは割りと背が高く、フィッツは小柄である。
そしてルーディアは子を産んだ事もあり、母親程ではないが胸が 大きい。
故に少しフィッツを屈ませるように抱き締めると。
「もがっ!???」
フィッツの顔、鼻と口が胸に埋まる事になる。
『無事で良かった…フィッツが生きててくれて本当に嬉しい』
「!」
耳まで真っ赤にして耳をパタパタとしてもがくフィッツ。
その様子を、(抵抗してるようであいつ感触楽しんでるな)と看破して後で弄ろうと考えているルーク。
アリエルは出来ればこのままこの光景を楽しみたいと思っていたが、話が進まない為にコホン、と咳払いした。
『あ…ごめんなさい』
咳払いに気付きルーディアはフィッツを解放した。
顔を押さえながらぴゃーと逃げていったフィッツを目て追った後、アリエルに視線を合わせる。
「いえ…数年来の再会ですからね、構いませんよ」
『…それで、私の幼馴染はなんで女装させられてたんですか?』
ピシリと空気が凍ってしまったようなプレッシャーが放たれる。
それに対してアリエルは手を顔の前で組み、机に肘をついた。
「それは…なんやかんや、紆余曲折、あーだこーだありまして…つまり」
そこで一度切り、ルーディアをしっかり見据えた上でキリリと顔を引き締めて言い放った。
「私の趣味です」
「そーだったの!?」
『男の娘を騙して女装、ですか…やりますね』
「ルディ!?」
そんなやり取りを見てルークは思った。
フィッツは多分一生こんな感じで弄られるんだろうなぁと。
さっきので弄るのはやめてやろうと思ったルークだった。
冗談のようなやり取りを終え、ルーディアとフィッツはそれぞれの転移事件からの出来事を軽く話し合う。
詳しくは別の機会にちゃんと話そうと言いつつも、簡単に語っても七難八苦の旅路。
二人は再会出来た幸運を喜びあった。
お互いの苦労を分かち合い、お互いにホロリと涙を流した。
「あの、それでねルディ」
『どうしましたフィッツ』
穏やかにフィッツに問い返すルーディアに、意を決したようにフィッツは言い放った。
「いつ結婚する?」
その時のフィッツの目は病んでいた。
『え』
「え」
「は」
「僕ももう成人だしいつでも出来るよ。あ、子供がいるとか気にしてる?僕は気にしないよだってルディは可愛くて綺麗で強くて好きになるのも仕方ないし僕と一緒にいない時の事だし気にしてないよでも出来れば後は僕の子供を産んで欲しいな何人がいいかな産むのはルディだけど僕は何人でも産んで欲しいなでもでも他に好きな人が出来たりルディに惚れた人が出たりしたら許可しちゃうかもアルス君も可愛かったしなんかそれはそれで興奮するんだよねそれにルディが体を許す人なんて絶対いい人だもんルディが選んだなら僕は許しちゃう傷なんて僕は気にしないし手や足がなくても僕が全部助けてあげるというかもう腕や足がなくても可愛いし火傷跡もチャーミングだよ勿論ルディが嫌なら全部治す為にいくらでも努力するしこれからは治癒魔術を優先で覚えるよルディの為ならなんでも出来るよそれでね結婚したら家を買いたいね沢山部屋があって何人子供産んでもいいようにしたいねあお義父さんやお義母さんも住めるようにしないとねルディの妹も安心して住めるおっきな家にしなきゃいけないねでも大丈夫ルディの為ならなんでも出来るからお金は絶対なんとかするよもうルディの為なら迷宮の一つ二つ攻略しちゃうよペットとかも買いたいな大きな犬とか可愛い猫とか鳥もいいな馬もいいなルディと一緒に飼えるならなんでも大丈夫ルディは何がいいかなおっきな庭もあるといいな菜園とかお花とか育てたりしてお花愛でるルディは可愛いだろうな種族のせいで僕のほうが長生きしちゃうだろうけど大丈夫ルディは最後まで絶対に幸せにするからねああでも一緒に死にたいかもしれないまぁそれはその時に考えようかなとりあえず安心してねルディは絶対幸せにするから子供はいつから作ろうかなアルス君育てるの大変だけど僕もサポートするから今からでも子作りしようよだって年近いほうがいいよねでも産むのはルディだからそこは任せるよアリエル様の護衛の事もあるけど絶対全部上手くいかせるし僕も絶対無事に終わらせるしルディは僕が守るだから結婚しようルディ!」
『は、はい…?』
「やったぁ!」
ルーディアと手を繋いでぴょんぴょん跳び跳ねるフィッツに、現状を正しく把握出来ないで呆然としているルーディア。
そんな二人を見て漸く再起動したアリエルとルーク。
アリエルは意味深な笑顔を浮かべて二人を暖かな目で眺めた。
「ふっ…『愛』ですね…」
「それで誤魔化しきれると?明らかにナナシと貴方の悪影響受けてますよあれ」
ルークはどうしたもんだと呆れつつ、頭を抱えた。
ルーディア、入学一日目にしてプロポーズされる。