「おはよ、ルディ」
ルーディアは温もりの中目が覚めた。
目の前には幼馴染みエルフの笑顔、パチパチと瞬きをして、現状を理解する。
「っ……っ」
「あ、ほらこれ仮面」
フィッツから手渡された見慣れたそれをカポリと被る。
あー、と残念そうな声が聞こえるがルーディアはつとめて無視した。
『…おはよう、フィッツ』
入学の次の日、ルーディアはフィッツの腕の中で目を覚ましていた。
フィッツにプロポーズを受けた後、頭が真っ白になってしまったルーディアは無意識にアルスの元へ向かい、そのまま授業の終わりまでその部屋で過ごしてしまっていた。
雇って貰っていた世話係の人に子育ての事を聞いておく強かさは見せつつ、何処かぼんやりと過ごした。
夕飯を食べ寮にエリナリーゼと並んで向かっている時にフィッツと出会い。
再会した幼馴染みである事をエリナリーゼに伝えると、「積もる話もあるでしょうから。アルスは私が世話しときますわ」と言われ。
トントン拍子でルーディアの部屋で過ごす事となってしまった。
その時点でもうルーディアの負けのような物であった。
ルーディアは正直フィッツの反応を少し楽しんでいた節があった。
ブエナ村では友達とはいえ先生役でもあったし、上下をあえて言うならルーディアが上であるとそう言い切れた。
だが、タガが外れたフィッツはとても強かった。
押し倒されつつも、暖かみと此方を慈しむ視線に体が熱くなるのを感じていた。
仮面も義足も眼帯も外され、丸裸にされたルーディアの耳元で何度も何度も「綺麗だよ」「可愛いよ」と囁き、体中を優しく愛撫し。
身も心もとろとろに溶かされたルーディアはその日、快楽に初めて溺れた。
ルーディアは処女ではない。
慰み物にされていた時は兎も角、エリオットとの一夜で子供も孕んでいる。
だが、エリオットとの行為は彼を繋ぎ止めようとする意味もあったし、そもそもエリオットの獣欲を受け止めるのに必死で快楽という意味では実はそこまで感じていなかった。
フィッツとの愛のある交わりは、ルーディアにとっての行為の常識を塗り替える物であった。
内心軽蔑していたエリナリーゼの株が知らず上がるくらいには。
そして何より。
「?」
朝目覚めて隣がもぬけの殻じゃなかった事が、ルーディアの心を満たしていた。
部屋をフィッツに肩を貸して貰って出た所を、アルスを抱くエリナリーゼに発見された事が想定外な出来事であった。
そんな日から何週間程かたった頃だった。
その間にリニアとプルセナとの決闘があったが割愛。
ルーディアは今日はアルスを連れずに図書館で蔵書を読む日にしていた。
アルスを連れて授業を見学のような形で何度か受けた事もあったが、たまにグズってしまう事もあった為、図書館にはまだ連れていけないとの判断である。
静かな図書館で紙のめくる音だけが響く。
ふと、コツコツと足音が聞こえてくる。
誰かが来たのだろう、と気にも止めずに本を読んでいると「あ」という声が近くで聞こえたルーディアは思わず顔をあげた。
そこには赤龍の下顎で龍神オルステッドとともにいた仮面の少女が立っていた。
「貴方…無事だったのね」
『あ、えっと…お陰様で…?』
ルーディアは思わぬ再会に首を傾げた。
ルイジェルドからは共にいた女がオルステッドを止めた、止めていなかったらお前はそのまま拐われていたかもしれない、と言われていて、実感はなかったものの感謝を伝えたルーディアだった。
「別になんて事ないわ。あれは明らかにオルステッドが悪かったもの」
『いえそれでも、です。ありがとうございました。私はルーディア・グレイラット。貴方のお名前は?』
「ナナホ…サイレント・セブンスター。一応特別生よ」
『貴方がサイレントさんだったんですね、特別生全員と漸く会えました』
ルーディアはサイレントとの友好をこの機に深めようと本を閉じた。
ホームルームにも姿を見せない特別生の一人、次にいつ会えるかはわからない。
「ねぇ、貴方は何を調べているの?」
『そうですね…色々ですけど、転移事件の事を今は調べていますね。私も被害者なので』
その言葉にサイレントは少し俯いた。
ルーディアがその様子に首を傾げていると、サイレントは言葉を続けた。
「…そう…今日、今から貴方時間ある?」
『はい…?まぁ、そうですね、急いで調べるものでもないですから…大丈夫ですよ?』
「そう、ならちょっと一緒に来てほしいの、私の研究室に」
そう言って歩き出すサイレントに、ルーディアは慌てて立ち上がり、本をあった本棚へと戻してから後を追っていった。
「ルーディアさんお疲れ様…あれ?」
二人が去った後、図書館での調べ物デート(フィッツ視点)を楽しみにしてやってきたフィッツが、呆けた声をあげていた。
ぶっちゃけストーリーの都合上さっさと子供を作らないとベガリットにルーディアが行けない