『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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パウロ、絶望する

「随分と…強くなったもんだな。おまけに強い魔族の護衛、そのフィリップのガキも悪くねぇ。こんだけ力があれば魔大陸なんざ楽勝でした…ってか?それで余裕なかったって?おかしくねぇか?」

 

「っ、それはっ!」

 

『エリオット』

 

言い募ろうとするガキをルーディアが止める。

バツが悪そうに引き下がるそいつも、なおも表情すら変えないルーディアに何もかもがムカついた。

 

『それは…すみませんでした、捜索をしなかったのは間違いなく私の不手際です。エリオットをフィットア領に送り届ける為に皆様に合流する事は出来ませんが、ここからは私なりに捜索させていただきます』

 

そんな大人な対応するのもそうだ。

昔っから大人びた奴だったが、無表情で淡々としている様子を見ると、感情のままわめき散らす自分が惨めに思えてしまった。

 

「…そうかよ」

 

だからこそ、いや、それでも、なのか。

そんな感情からのただの八つ当たりで、俺達の関係が拗れてしまう、そんなやり取りに繋がる一歩を、俺は踏み込んじまった。

 

「それにしても、なんだその仮面は。フードも被ったままで。こっちもちゃんと見ないしよ。こんな情けない親にはちゃんと話すのも憚られるってか?さっさと外せよ、カッコつけやがって」

 

その言葉に弾かれたように俺を見るルーディア。

漸くまともに目があったと、内心少し安堵しながらも鼻を鳴らすだけに留めた。

 

「っ…!お」

 

『エリオット』

 

何か言いたそうな小僧を言葉と視線で黙らせ、ルーディアは改めて俺に視線を合わせ、顔の左半分を覆う仮面に、右手を添えた。

 

『そう、ですね。失礼しました父様。ちゃんと外します』

 

「ルーディア…!」

 

小僧のそんな悲痛な、尋常じゃないその声に、熱くなった頭がスゥッと冷めていくような感覚がした。

何か、見落としてるような、とんでもないような事をしでかしたような。

ルーディアの無感情な俺譲りの色の瞳の中に、何処かで見たような、そんな記憶が刺激されて。

しかもつい最近…そんな…。

 

その時だった、ルーディアの仮面に添えた手に横から手がのび、外そうとする動きを押し止めた。

見れば、捜索団の一人、シェラが肩で息をしながらルーディアの行動を止めたようだった。

驚いて動きを止めたルーディアを尻目に、シェラは俺を見て、思い切り睨み付けてきた。

あの大人しいシェラが来たことも、睨み付けられた事も、何もわからず困惑する俺に、シェラは間髪いれずに右手を振りかぶっていた。

 

 

 

バチン

 

 

 

場に静寂が満ちた。

頬が痛く、熱い。

シェラは息を荒くして、平手を振り抜いていた。

思わず頬を押さえながら、此方を睨み付けているシェラに視線を合わせる。

その瞳に怯えの色を映しながらも俺から視線を外さない事に、ああ、まだまだダメなんだなぁなんて場違いな事を考えてた。

そして、その怯えの色…今、ついさっき…ルーディアの瞳の中にも見えて…。

 

「っ…!最っ低です!」

 

吐き捨てたシェラは、仮面を外そうと手を添えたまま固まっているルーディアに向き直った。

そしてそのままルーディアを正面から抱き締めたのだった。

ルーディアに抱きつく形になったシェラは、何かに気づいたようにビクリと体を震わせると、途端に小さく嗚咽を漏らし出した。

そんなシェラをルーディアは右手を彼女の頭に回し、自分の左肩に押し付け、優しく撫で始めたのだった。

なおも、無表情の、ままで。

 

流石に変だと、おかしいと、再会してからのルディの違和感が頭を過る。

なんで全身ローブで仮面を?声がくぐもって聞こえているのは何故?そもそも口で喋っているのか?

頭に血がのぼったせいで後回しにした疑問が、グルグルと頭の中をかき回す。

 

「パウロ団長」

 

「…ヴェラ、か」

 

ヴェラ、シェラの姉だ。

男にトラウマを持つシェラの為に、扇情的な格好をして自分に目が向くようにしてる、気丈な女。

そんな彼女も、何処か俺を責めているような目で此方を見ていた。

 

「…とても言いにくい事ですが…恐らくご息女は私達と、同じです」

 

声を潜めて言われた言葉は、一瞬理解出来なかった。

同じ、同じ、同じ。

慰み物になってしまっていたヴェラと、一緒…てことか…?

そんなバカな事があるか、あれだけ優秀な娘が、俺とゼニスの娘が。

 

「怯えが、伝わって来るんです。何人も見てきましたから…わかってしまうんです。それに…」

 

「…それに?これ以上何があるってんだよ…」

 

「…彼女の仮面もローブも決して飾りなどではないと思いますよ 」

 

それを指し示すようにか、その時ルーディアの仮面が何かの拍子にパカリと外れた。

カラン、と音を立てて床に落ちた仮面。

同時に周りが息を飲んだ。

成長した娘の素顔をハッキリと目にした俺は、身体中から力が抜けていく思いだった。

その顔、左半分には夥しい火傷の跡と、目があっただろう場所には抉られたような傷跡。

明らかにまともな旅路では、無事な旅ではなかった事を証明するような姿。

椅子から崩れ落ちながら、そんな愛しい娘の顔を呆然と見上げていた。

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