「ルディ!こっちだよ!」
『うん』
ルーディアはとある日、フィッツに手を引かれシャリーアの街中を歩いていた。
今日のフィッツはパンツスタイルで、髪も後ろに一纏めにしてて、かなり男性的だ。
いや、元々男性ではあるのだけど。
それでもまだ体格の差があり、髪色が白同士である事もあり、傍目にははしゃぐ弟と姉にしか見えないが、二人は気にしていない。
やがて一軒の屋敷の前でフィッツは足を止める。
そしてルーディアに振り返り、満面の笑みで屋敷を指し示す。
「じゃぁーん!これが僕達の家だよ!ルディ!」
『わ、大きいお屋敷…』
大きな二階建ての屋敷で、庭もある。
かなりしっかりとリフォームしたのか、傍目には新築にすら見える。
実はルーディアはフィッツが何かしらしているのは知っていた。
というのもザノバが「この人形自力で動くのですぞ!」と傍目には不気味な人形を自慢していたからだ。
解析を続ければ動く人形が作れるかもしれない、と嬉しそうなザノバに、朧気な前世の記憶から自動人形か、ロマンがあるなぁなんて思っていた。
そしてそれがとある幽霊屋敷でフィッツに頼まれ、クリフとともに解決したひとつの事件の成果というか原因であったと簡単に説明を受けていた。
そこでピンときてしまったルーディアは密かにこの日を楽しみにしていた。
「さ、中見てみようよルディ」
『うん』
フィッツに手を引かれて入った屋敷を、二人でゆっくりと見て回った。
家具はあえてあまり置いてないらしい。
「この部屋に僕達の子供が住むことになるんだよ、ルディ」
『…恥ずかしい。よく平然と言えるね』
ルーディアの肩を抱いて真顔で、当然のように言うフィッツにルーディアは思わず赤面してしまう。
フィッツはその未来が来ることを疑っていない故に、そんな反応に首をかしげていた。
「それでここはお風呂!大きく作って貰ったから一緒に入ろうね、洗ってあげるから」
『…フィッツはえっち』
「なんでぇ!?」
そして最後に寝室、大きな、三人は寝れるようなベッドが置かれた部屋を二人は訪れた。
ベッドに並んで腰掛け、話をする。
「お家買ったはいいけど、僕はアリエル様の護衛もあるし、大学もまだまだ学ぶ事あるし。ルディもそうでしょ?」
『うん、それにあんまり家事に自信ない。自分で言う事じゃないけどかなりお嬢様だったから、一人で通いながら家事するのは難しい…アルスの事もあるし、まだ魔法大学に世話になるべきだと思う』
「お手伝いさんとかの目処がしっかりたたないと、ちょっと難しいかな…?まぁ、それまではここは…ルディを美味しく食べちゃうとこって事になるかな?」
冗談交じりでルーディアをぎゅうと抱き締めるフィッツ。
『…やっぱりフィッツはえっち。私覚えてる、昔フィッツが一緒にお風呂入ろう、って言った時も私の体ガン見してた』
「違!あれはルディがあの頃髪短くて男の子みたいだったから!アレが股関になくてビックリして!それにルディだって僕の事女の子って勘違いしてたから、僕のをジッと見てたじゃないか!ルディだってエッチな子だよ!」
お互い様である。
わちゃわちゃとイチャつきながら、思い出話に花を咲かせる。
ブエナ村で時間にして数年の、けれど輝かしい思い出。
不意に言葉が途切れて訪れた静寂に、二人を目を合わせる。
帰る場所を失った二人にとって、家を持つというのは大きな意味がある。
心の奥から、嬉しさが溢れてくルーディアはフィッツに心の中で笑いかける。
『…まだ本格的に住まないとしても、帰る場所が出来た事…本当に嬉しい』
「うん、良かった…。こほん、それじゃルディ、改めて」
フィッツは咳払いをすると佇まいを直した。
それにつられ、ルーディアもちょこん、とベッドに座り込む。
「ルーディアさん、この僕、フィッツと、結婚してください」
『…はい、よろしくお願いします』
差し伸べられた手に手を重ね、コク、と頷いた。
ルーディアの瞳から、ポロリと涙が溢れた。
フィッツがルーディアの肩に手を置き、顔を近付ける。
ルーディアはそれに応じ、そっと瞳を閉じた。
「…所でルディ、エリオット君の事はどうするつもり?僕は別にルディがいいなら大丈夫だよ、一回ボコボコにしたし」
『一年はお預け。一回私の事捨てたもん。許しはしてるけど、体は許さない。…だから暫く私はフィッツだけの私』
すり、とフィッツの胸元に頬擦りをするルーディアに、フィッツの口元がにやける。
「あー、僕のお嫁さん可愛すぎる…」
『お嫁さん…』
赤面しながら恥ずかしそうに俯くルーディアに、フィッツはたまらない物を感じて、ぎゅう、と抱き締めた。
「我慢してたけど無理無理、本当にルディ可愛いんだから…」
フィッツはルーディアの額と瞼にキスを落とし、ベッドに押し倒した。
「私は剣神流剣聖、ニナ・ファリオン!貴方がルーディア・グレイラットね、決闘を申し込むわ!私が勝ったらエリオット・グレイラットを返して貰うわ!」
『何言ってるのこの子』
獣族の若者が周囲に死屍累々な様で転がっているなか、快活な少女の声が響いた。