『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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発情期、決闘の季節

「ボス、これからあちし達は発情期がくるニャ。そしたらあちし達は寮に籠る事にニャるんだけど、もしかするとボスに迷惑がかかるかもしれニャいニャ」

 

「獣族が発情期の時に決闘するのは知ってるの?私達は…次期族長候補な事もあって結構ターゲットにされるの。面倒くさいからこの時期は寮に籠ってるの」

 

「でも今明確にあちしらはボスに負けちまったニャ。そうなると群れのボスって解釈されてボスのほうに決闘が挑まれちまう可能性があるニャ」

 

「そもそもボス自身が狙われる事もあると思うの、獣族に決闘を挑まれた時は気を付けて欲しいの」

 

『…面倒ですね、貴方達二人縛って放置してはダメですか?』

 

「ニャ!?後生ニャボス!」

 

「それは嫌なの!」

 

すがりつく二人にどうしたものかとルーディアは頭をかいた。

 

 

 

 

 

それが発情期が始まる前に二人とした会話。

そしてやっぱりあの二人を魔法大学前に磔にでもしておけば良かったと、ルーディアは後悔していた。

 

「ルーディア・グレイラット殿とお見受けする。婚儀の決闘を願う!」

 

『えー…誰目当てですか?』

 

「リニア嬢だ」

 

『そうしたら、えーっと授業が終わってからでいいですか…?』

 

「了承した」

 

既に十人以上がこんな感じで決闘を挑んでくる。

二人くらいルーディア狙いがいたが、女装フィッツことシルフィが何処からともなく現れて連れ去って行った後姿は見えない。

兎に角全員放課後に纏めて、と後回しにしている。

 

「おかあしゃま、耳、もふもふ」

 

エリオットの子供だけあってか、獣族を沢山見てアルスがご機嫌なのが幸いだった。

 

『もふもふだったねアルス』

 

今日はアルスを連れて図書館に行く予定だったのだが、もしも途中で実力行使に出られると怖いなぁと思い、アルスを預ける事に決めたルーディアだった。

 

 

 

図書館で本を読んでいると、ナナホシに出くわした。

ナナホシも調べ物の為にやってきていたらしい。

 

「こんにちはルーディア。今日は騒がしいわね」

 

『こんにちはナナホシ。いい迷惑ですよ、私放課後彼ら全員と決闘しなければいけませんからね』

 

「獣族のしきたりとか、種族柄というか…貴方も大変ね」

 

『まぁ、仕方ありません。それはそうと、守護魔獣の召喚を次の休みにするつもりです。ナナホシの都合は大丈夫ですか?』

 

「大丈夫よ、お言葉に甘えて見学させて貰うわ」

 

『良かった、さ、ナナホシ、急かすようで申し訳ないですが、あまり今私といると決闘騒ぎに巻き込まれますから、用事は手早くこなすといいですよ』

 

「まぁ…そうね、流れ弾になんて当たってられないもの。それじゃあまた」

 

『ええ、また。あ、そうでした、私この間結婚したんです。家もあるので実は召喚もそこでする予定です。ただ私の家事能力がないので同棲もまだな状態ですが、もう少し落ち着いたら宴を開きますので是非参加を…』

 

「貴方会話の終わりに毎回ぶっこんでくるわね!」

 

 

 

 

 

なんだかんだと放課後である。

ルーディアは重い足取りで、ジーナス教頭に頼んで借りていた暴れてもいいスペースへと向かう。

本当に面倒だと思いながらそこにたどり着くと、紺色の長髪を後ろで纏めた少女が膝に手をついて荒く呼吸を繰り返していた。

そこらには獣族の見覚えのある連中が倒れていて、まさかあの子が襲われたのかと思いこいつら全員凍りつかせてやろうかなんて思った瞬間、その少女がルーディアをギン、と睨んだ。

 

「私は剣神流剣聖、ニナ・ファリオン!貴方がルーディア・グレイラットね、決闘を申し込むわ!私が勝ったらエリオット・グレイラットを返して貰うわ!」

 

『何言ってるのこの子』

 

言ってる事の意味不明さに思わずただの本音が漏れるルーディアだった。

木刀の先を向けているニナと名乗る少女だったが、数十人を相手にした後だからだろう、剣先が少し震えている。

 

『…あの、事情はよく知りませんが、ひとまず少し休んでください…』

 

ゼーゼーと呼吸を繰り返すニナに思わず言ってしまうルーディア。

 

「ぜー…いえ、ふー…もう、大丈夫です」

 

息をあっと言う間に整えたニナは改めてルーディアを見つめて口を開く。

剣先は既に震えていない。

 

「貴方の噂は何度か聞いてる、噂に違わぬ人物なのか、確めさせて貰うわ!」

 

『はぁ…わかりました、エリオットを返すとか噂とか確めるとかもよくわかりませんけど、決闘は受けるつもりで来ましたから』

 

「それでは、尋常に!」

 

『いつでもどうぞ』

 

 

 

 

 

決着は一瞬だった。

ニナの放った上から振り下ろされる剣閃は素早く鋭く、思い切りのいい一撃だった。

それをルーディアは生成した左腕の手の甲で刃が立たぬよう受け流し、右の拳でニナの顎を強かにうちすえて頭を揺らした。

十分な強さを持っていたニナではあるが、流石に疲労から力を出しきれた、とは言えなかった。

とりあえず彼女の「エリオットを返せ」が気になるので、目を覚ましたら聞いてみようと目覚めるのを待っている。

 

「ルーディアー、ここにいるのか?今日実入りが良かったから飯でも…」

 

すると丁度良いところに半分当事者であるエリオットが顔を出す。

エリオットは現在シャリーアで冒険者として活動している。

修行が途中なので剣の聖地に戻らなければいけないと思いつつ、ルーディアの置かれた現状も気になるし、罪悪感もあるし、自分の子供も可愛い。

中途半端なのはエリオットも理解しているらしく、そろそろ結論を出すつもりではあるらしい。

 

「うわ、なんでニナがここにいるんだ」

 

それはそうとニナとは面識があるようだ。

 

『お知り合いですが?』

 

「修行相手かな…剣神の娘で、俺が剣の聖地に着いた日に素手でボコボコにした相手」

 

『素手で…?』

 

どうにもエリオットの態度が気に食わなかった奴らが、木刀での手合わせにも関わらず、ニナに鉄芯の入ってる木刀を渡すという事をされたと。

なのでぶつかり合いで木刀は折られ、ならばと素手でボコボコにするという暴挙に出たらしい。

その結果エリオットの剣幕にビビり散らしたニナは失神、小水まで漏らし、それは流石にと思ったエリオットが周囲にバレる前に追い打ちのように水球を放って決闘は終わったと。

その後剣神に簡単にあしらわれる一幕もあったが、一先ずそれで弟子として認められたらしい。

 

「ただなぁ、こいついつも五月蝿いんだよな、やれ道場で一緒に素振りしなさいご飯ちゃんと食べなさいちゃんと寝なさいお風呂入りなさいって、面倒くさくなって大分離れた所で修行してればそこにまで来るし。飯持ってきてくれるのは有難いけどなぁ、それにしたって」

 

『あー、はいはいもういいですわかりました、今日は気分じゃないのでご飯は別の機会に。それよりそのニナって子介抱してあげてください。顎殴って失神させただけですけど、貴方が手当てしてあげれば喜びますよ』

 

じゃ、と手をあげて足早に去っていくルーディア。

それに何処となく怒気を感じたエリオットは、首を傾げた。

 

「ええ…俺なんかしたかな…?」

 

臭かったか?と服を嗅いだりじゃながら、知らない仲でもないニナを言われた通り介抱するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不死魔王バーディ・ガーディは、ラノア魔法大学に現れなかった。

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