『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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守護魔獣の召喚、旅の予感

決闘騒ぎから数日経った魔法大学が休みの日、ルーディアは今、フィッツの購入した家の庭で守護魔獣の魔法陣を前にしていた。

体を屈めてアルスと手を繋いでいるギレーヌと、家主のフィッツと、見学のナナホシ。

あとエリオット。

ふいっとエリオットから視線を外したルーディアは話し出す。

 

『オルステッド様曰くこれで召喚される守護魔獣でヒトガミからの干渉をかなり妨げれるという事ですが…まぁ、やってみましょうか』

 

「ここから出てきた魔獣が僕達に危害を加えるとか、そういう事はないんだよね?」

 

『大丈夫だと思いますよ』

 

「一応見せて貰ったけど危険はないと断言出来るわ。召喚される魔獣には絶対服従の術式が刻まれるから、仮に竜でも此方を害する事はないと思う。周りや街は保証しないけど…」

 

腕を組んだナナホシがそう教えてくれる。

ルーディアはナナホシが言うなら、と納得するが、エリオットは逆に少し懐疑的になったようだ。

とはいえ何故か最近、元々低い自分の立場が更に低くなった気がしてるので、言葉には出さず顔をしかめる程度で押さえていた。

 

『竜が召喚出来るんですか?』

 

「理論上は…?ただそもそも難しいと思うし、オススメはしないわね。でかすぎるし。この魔法陣だと、かなり術者のイメージに左右されるみたいだから、余計な事考えずに…そうね、何かしら動物をイメージするといいと思うわ」

 

『成る程…わかりました。そうですね、子供達を見守って貰いたいですし、縄張り意識や群れを守る意識の強い動物がいいですかね…』

 

「ふむ、それこそ狼じゃないか?ルーディアとお揃いで丁度いいな」

 

「もふもふ」

 

アルスに尻尾を巻き付けてあやしながら、ギレーヌが言う。

それにルーディアはふむ、と口元に手を当てながら考える。

 

『そうですね、狼、良さげな気がしますね。じゃあその方向で』

 

ルーディアは魔法陣に手を置く。

 

『勿論危険はないと信じてますが、万が一召喚された魔獣が暴れた場合、即無力化出来るように構えておいてください』

 

その言葉に戦闘能力のないナナホシがアルスを連れて下がり、他の三人が魔法陣を囲うように三方に散った。

大丈夫だって断言したのに、とナナホシは少し不満そうにしていた。

 

『よし…いきます!』

 

ルーディアが魔力を魔法陣に込める。

イメージするのは狼…強く気高く、群れを守り、一番偉い!

全魔力を込め、そんなイメージを魔法陣に叩きつけた。

魔法陣が眩いカラフルな光を放ちはじめる。

 

「ワォオオオオン!」

 

暫くしてそんな咆哮とともにその光が収まった時、そこにいたのは白銀の毛皮の狼…。

 

「…えーっと、大きいけどこれ…子犬だよね?」

 

大きな子犬だった。

 

「うわ、聖獣様じゃないか、久しぶりに見たな…」

 

ルーディアにとっては見覚えのある姿だった。

同時に脳裏に甦るザントポートの劣悪な環境、奴隷を捕える檻、ドルディアの村で受けた仕打ち。

一瞬でフラッシュバックしたルーディアは膝を折りそうになり、少しバランスを崩す。

 

「ルーディア!大丈夫か?」

 

それをエリオットがすぐに駆けつけ支えた。

 

『…大丈夫です、少し魔力を一気に使いすぎました』

 

手で顔を押さえながらルーディアはしっかりと立ち上がる。

その様子に心配そうにしつつも、エリオットは手を離して一歩下がった。

 

「わんわん、もふもふ」

 

「あー、ダメダメ。もうちょっと私といましょうね」

 

アルスが聖獣らしき子犬に突進しようとするのをナナホシが止める。

聖獣は召喚されてから行儀よくその場でお座りをしてくれていた。

改めて見る、やはりこの魔獣はドルディア族で崇められていた聖獣なのだろう、と確信してしまう。

ルーディアは数回気を落ち着けるように深呼吸をし、獣神語で話し掛けるのであった。

 

聖獣は獣神語はわかるが、言葉を話すことは出来ない。

お守りをしてるドルディア族ならばわかるらしいが、ギレーヌはわからないらしい。

村を出て久しいのだから仕方ないのかもしれない。

とりあえず確認するのはルーディア達を、家族を守ってくれるのかどうか、である。

それに対して、何処か自信の溢れた顔で「ワン!」と吠えるのだから一先ず信じてみようという事になった。

 

『それでは聖獣様…名前どうしましょう?決めてもいいですか?』

 

皆の顔を見回すと誰も異論はないようで、ルーディアは聖獣の頬をわしゃわしゃと撫でながら命名する。

 

『貴方はレオです。どうか私の家族を、これから生まれる愛しい家族を、勇ましく、獅子の如く勇猛に、脅威から御守りください』

 

「ワン!」

 

聖獣改めてレオはそう一回吠えると、ルーディアのスカートの中に鼻先を突っ込んだ。

フィッツとエリオットが同時に色めき立つが、ルーディアはレオを頭を優しく撫でた。

 

『以前もこうして来たんですよね…ほら、くすぐったいからやめなさい』

 

するとレオは素直にそれをやめ、ルーディアの前にお座りをした。

その清々しい様に、フィッツとエリオットは内心「エロ犬がぁ」と怒りに燃えていた。

 

「わんわん!もふもふ!」

 

そこでアルスが辛抱たまらない、とばかりにレオに飛び込んできた。

微動だにせず受け入れたレオ、背中にアルスが抱きつき、全身でもふもふを感じているようだ。

アルスも気に入ってくれたようで良かった、とルーディアは思った。

 

「あー、召喚成功おめでとう?可愛いのが召喚されたわね」

 

『ありがとうございます、何かしら参考になりましたか?』

 

「まぁ、わかってた事がわかったって感じね…ただまぁ実際に空間転移の一種が見れたのは大きい…とは思ってるわ。来て良かった」

 

『そうですか、それなら良かった…そうそう、この家大きなお風呂があるので、もし良ければ入っていかれますか?』

 

「大きいおふろ…ま、まぁ入ってあげるわ」

 

大きな浴槽というのは前世ではよくあったが、この世界では相当珍しい故の提案だったが、ナナホシは想像より嬉しそうに答えた。

そうして、レオという新しい家族が増えた。

 

 

 

そんな時突然の闖入者が現れる。

 

「ルーディアさん!」

 

決闘騒ぎから何故かまだ街に滞在してたニナ・ファリオンである。

 

「わ、でかい犬。あ、それで私そろそろ剣の聖地に帰ろうと思って!ご挨拶に!」

 

ニナとはあれから日を改めて再度決闘を行った。

流石に瞬殺とまではいかなかったものの、ルーディアがあまり危なげなく勝利していたのだが、何故かそれから妙にルーディアを慕ってくる。

明らかにルーディアのほうが年下なのだが、さん付けで呼んでいるのが、その表れであった。

 

『そうですか、お元気で』

 

「それで今回はルーディアさんもエリオットと一緒に剣の聖地に来ないかなーってお誘い!」

 

『へ』

 

毎回なんか台風みたいな子だなぁ、とルーディアは空を見上げながら思った。




フィッツ「それじゃルディお風呂…」(ふんすふんす)
ルディ『今日はナナホシと入りますね』
ナナホシ「お邪魔します」(そわそわ)
フィッツ「え」

フィッツ「…これが、寝とり…?」
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