『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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フィッツ、歓喜の暴走

一月半の旅路を終えてシャリーアに到着したルーディアは、まずレイダとギレーヌをフィッツとの家に案内する事にした。

出産まで面倒を見る、と言ってくれた人達を空き部屋もあるのに宿屋に泊めるのは不義理だと思ったからだ。

 

『寝具はないので、フィッツが来たら買い揃えましょう』

 

「世話になるよ」

 

「世話になる」

 

「しぇわになりゅ」

 

「わんわわん!」

 

ひとまず荷物を置いて、馬車と馬を預けて、魔法大学に顔を出しに行くことにした。

 

 

 

ルーディアは正直楽観していた。

いや、ある意味楽観は正しかった。

大学は妊娠について理解を示してくれたし、特別生達に帰還の挨拶をすれば喜ばれたし、妊娠していると話せば皆祝福してくれた。

反応の大小はあれど穏やかに終わり、安心していた。

けれど、フィッツに対して読み違えていた。

 

「おかえりなさい、ルーディアさん」

 

未だに学校では女装し、シルフィとして過ごしているフィッツ。

廊下でそんなフィッツとバッタリと出会った。

ルーディアは、清楚に微笑むフィッツに対して言葉を発する。

 

『ただいま帰りました、それでちょっとお話が貴方とアリエル様にあるので、大丈夫でしょうか?』

 

「はい、今なら生徒会室にいると思いますよ、どうしたんですか?」

 

そう問われたルーディアは、体のラインが出にくい厚手のローブの前をはだけ、膨らんだお腹をフィッツにだけ見えるように見せて、すぐに隠した。

そして小声になるように調整し言葉を発する。

 

『実は旅の途中で妊娠がわかってしまって…これからの事について相談しようと…もう六ヶ月で…』

 

「…!こうしちゃいられない!」

 

フィッツは一瞬呆然としたが、すぐに気を取り直し、ルーディアをお姫様抱っこした。

 

『…え?』

 

パチパチと瞳を丸くして瞬かせるルーディア。

 

「アリエル様のとこいくよ!」

 

そしてルーディアを抱いてフィッツは走り出した。

 

『えぇえええ、自分で歩けますよ!』

 

「もう今はルディ一人の体じゃないんだから!」

 

『ちょ、何口走ってるんですか!』

 

「僕達の子供だよ!大事にしなきゃ!」

 

フィッツは今女装している。

道行く女生徒が顔を真っ赤にしてきゃあ、と声をあげた。

 

『今の子に絶対聞かれましたよ!』

 

ちなみに、ラノア魔法大学では既に、シルフィとルーディアは付き合っている、という噂はたっていた。

そんな中で二人の子供が出来た、という噂はすぐに広がりを見せ、二人の性別も疑問視されていく事となっていく。

 

 

 

「アリエル様!ルディが僕の子供を妊娠しました!」

 

「まぁ…」

 

あっという間に生徒会室にたどり着いたフィッツはノックもそこそこに扉を開き、部屋に入り込んだ。

そして空いているソファーにルーディアを座らせたと思うと、アリエルに向けてそう言い放った。

 

「なのでアリエル様、あと僕出産までルディに付きっきりでいいですか?」

 

「いや、良い訳ないだろう」

 

アリエルの隣のルークが咄嗟に反応してしまった。

 

「ええ、なんでさ」

 

「流石に護衛もしろよ…四六時中ついてなきゃいけない訳じゃないだろ、身の回りの世話の手伝いはいるだろうけどな」

 

呆れた様子のルークを尻目に、アリエルが口を開いた。

 

「まあまぁ、そこは追々話ましょう、それよりフィッツ、自分の子供を妊娠してくれた女性に何か一言ないのですか?」

 

にこり、と笑みを浮かべたアリエルに、フィッツはあ、という顔をした後小さく頷いた。

そうしてフィッツはルーディアに向き直ると、肩に手を置いて口を開いた。

 

「ルディ!ありがとう!大好き愛してる!」

 

『わっ』

 

満面の笑みで告げられた感謝の後、フィッツはルーディアに熱烈なキスをした。

いつの間にやら首の後ろに手を回され、動きがとれないようにされている。

 

『ちょ、フィッツ…!二人とも見てるよ…!』

 

キスされながらも魔道具で喋れるので抗議するルーディアだったが、フィッツは反応せず、むしろ更に強く唇を吸われる。

 

『フィッツ…!ダメ…!』

 

唇を食まれるような強いキス。

抗議するように右手がフィッツの胸を叩く。

 

『…ぁぅ…』

 

それでもまったくやめないフィッツに、先にルーディアの体が音をあげた。

ルーディアの瞳がとろけ、抗議する右手が力なく垂れ下がった。

 

「まぁ、ただのキスであの『氷狼』が腰砕けにされてますわ」

 

「あの子、表情筋が動かないのを良い事に余裕あるように見せてるだけで、性的な方面は意外と弱いですよ」

 

やがてフィッツはゆっくりと唇を離し、アリエル達に向き直る。

ルーディアはソファーにくたりと力なく座り込み、顔を真っ赤にて虚ろな瞳をしていた。

完全に事後。

 

「ふぅ、少し落ち着きました、じゃあ色々決めちゃいましょう!」

 

テンションがおかしな方向に振り切り、満面の笑みを浮かべるフィッツを二人は微笑まく思いながら、これからについて話し合った。

 

 

 

フィッツは話し合いを終えて、腰砕けのルーディアをまたもや同じようにお姫様抱っこして歩いていた。

今日の所は共に帰り、こっちはこっちの話し合いをしようとなった訳である。

 

「やっぱりシルフィ様とルーディアさん付き合ってるのね…」

 

「でもまさかルーシルじゃなくてシルルーだったとはね」

 

「ルーディアさん無表情なのにすごい幸せそう…」

 

ヒソヒソと学生達の話し声が聞こえて、それがルーディアの頬を染める。

 

『あの…自分で歩けますよ…?』

 

「だぁめ」

 

『まだ男だって隠していたいんじゃないんですか…?』

 

「もういいよ、あと女装もやめるよ。学校には後で改めて…女子寮の子達には土下座しに行かないとね」

 

フィッツは嬉しそうに続ける。

 

「ああ、嬉しいな、家族が出来るんだ。ルディのお腹に、僕の子供が…んー!早く帰ろ!」

 

そう言ってフィッツは駆け足になる。

口元を綻ばせ、頬を微かに染め、耳をパタパタさせるフィッツは歓喜の思いを胸に、ルーディアを抱き上げる腕に力を込める。

そんな嬉しそうなフィッツに、ルーディアは愛おしさを感じて、目を閉じて身を任せ、胸元に頬擦りをした。

 

無論この後魔法大学は大騒ぎとなり、生徒会に何度も問い合わせがきて、アリエルとルークは対応に追われる事となった。

次の日フィッツはアリエルとルークにやりすぎ、とたっぷりと絞られた。

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