『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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指が進まない進まない。
全然執筆捗りませんでした。


ルイジェルドとの別れ、姉妹のこの後

『ほらアルス、この人が私達の恩人、ルイジェルドさん』

 

「るーじぇるど?」

 

『ルイジェルド』

 

「りーじぇるど!」

 

「ルーでもリーでも構わん。アルスというのか」

 

「はい!あるす・ぐれらっと!2さい!」

 

「もう自己紹介が出来るのか、偉いな」

 

にひひと笑うアルスの赤毛を優しく撫でるルイジェルド。

エリオットを思い出す赤毛に、穏やかに目を細めた。

脇の下に手をやり、ひょいと抱える。

 

「ああ、大きく、健やかに育て。そして母と妹を、家族を守ってやれ」

 

そう言って微笑むルイジェルドに、アルスはきょとんと目を瞬かせ、わかってかわからないでかこくりと頷いていた。

 

 

 

 

ルイジェルドは今日そのまま旅立つと少ない荷物を纏めた。

もう少し滞在してもとは思ったが、北のほうでスペルド族らしき目撃情報があるから、と言われればルイジェルドのスペルド族への思いを知るルーディアに止める術はなかった。

ルイジェルドに世話になったアイシャとノルン、そしてレオとアルス、ルーシーを抱えたルーディアで見送りの為に町の出口まで歩いていく。

フィッツは既に魔法大学に行っている。

出る前にルイジェルドに呼び止められて「ルーディアを頼む」等と言われていたようだった。

 

やがて町の出口でルイジェルドは此方を振り返った。

 

「では、元気でな」

 

『ルイジェルドさん、この度はお疲れ様でした。どうかお元気で…』

 

ルーディアは眠るルーシーを起こさないように頭だけ下げる。

隣ではレオに片手をついたアルスが手を振っている。

 

「ルイジェルドさん!お世話になりました!」

 

アイシャが深くお辞儀をする。

この道中アイシャは出来る限り早く着くようにかなり無茶をしていたので、ルイジェルドへの負担は相当だった。

そんな強かな娘に、ルイジェルドは苦笑する。

 

「アイシャ、あまり無茶を言うんじゃないぞ」

 

そう言って撫でる手を受け、アイシャは笑みを返した。

 

「勿論です!お姉さまの腕になり、脚になります!」

 

そうか、と呟いてその手をゆっくりと離した。

そして俯いたままのノルンにルイジェルドは向き直った。

 

「…ルイジェルドさん…」

 

「俺とはいずれまた会える。それより今いる家族を大事にしろ」

 

「でも、あの人前と違う男の人と…!」

 

「そう悪い面ばかり見るな、お前の姉には良い所が数多くある。お前が見ようとしていないだけだ」

 

ぼすりとノルンの頭に手が乗せられる。

 

「お前達の幸せを願っている」

 

優しく撫でてくれたその手が離れていくのをノルンは名残惜しげに見つめるが、振り払うように頭を深く下げた。

そこで踵を返し、ルイジェルドは最後に顔だけルーディア達に向ける。

 

「ではな、また会おう」

 

そう言って三人の恩人であるルイジェルドは去っていった。

有らん限りの感謝を込め、改めてそれぞれルイジェルドに頭を下げ、姿が見えなくなるまで見送った。

 

 

 

 

 

そこから一週間後、二人の魔法大学の試験…一般教養と六種魔法知識が問われるもの…が終わり、結果が出た。

なんとアイシャは満点、ノルンは今一振るわなかったとは言えその歳では充分ではある、との評価であった。

 

「どう、どう、お姉様!」

 

『…わかりました、これならアイシャは希望通りでいいですよ、正直私一人では大変だったので助かります』

 

「やった!…コホン。それでは御姉様、これから改めてお仕えさせていただきます。侍女の仕事は母より学んでおります、お任せください」

 

『はい、分担は後程話ましょうね』

 

嬉しそうなアイシャを見て目を細めた後、ルーディアはノルンに向き直る。

ノルンは何処か悔しそうに俯いていた。

 

『ノルン、特に問題ない学力であるそうです。希望もないようなので、このまま魔法大学に通う、でいいですね?』

 

ルーディアが問いかけると、少し躊躇いつつ、ノルンは口を開く。

 

「…寮があるんですよね?それなら私は寮に入ってみたいです」

 

『寮ですか…』

 

一週間共に暮らしてみて、ルーディアは二人の問題を少しずつ理解していた。

アイシャは優秀だ、この一週間の家事の手伝い、子守りや、更にはルーディアのお風呂の補助までこなし、試験の勉強までしていたようだ。

それでいて元気いっぱいなので、ルーディアとしては逆に心配になる仕事振りであった。

ただどうにもノルンを見下しがち…いや、天才故に出来ない者の気持ちがわからない傲慢さが見て取れた。

ノルンはやや内向的ではあるが、いたって普通の子供だ。

その内向的な面も、周りの環境によって卑屈になったという事が大きいだろう。

学校に通い見識を広める事で、それが改善する可能性もある。

ただ問題は、今まで内に溜め込んだストレスをルーディアに吐き出している事だ。

ルーディアとしてはたまったものではない。

主観的にも客観的にも、ルーディアとしてはノルンの寮生活は望むところであった。

 

『ダメです』

 

それでもルーディアはこう答えるしかなかった。

自分の家族を友を失う未来、そのきっかけになるノルン、そんな未来は来てほしくないから。

 

「…なんでですか…!?」

 

悲痛な顔で問いかけるノルン。

 

『貴方がまだ幼いからです。せめて成人するまではここから通いなさい』

 

「っ…!私はっ…!」

 

『私と顔を合わすのが嫌、ですか?なら暫くは大丈夫ですよ。もう少ししたら私は暫くここを離れますから』

 

「え…」

 

「何それ!お姉様、私聞いてないよ!」

 

面食らうノルンよりも、先程まではしゃいでいたアイシャが、強く反応した。

 

『家も出来て大分落ち着き、貴方達も迎え入れました。後はルーシーをもう少し育てたら…母様を助けるのを手伝いにいきます』

 

その言葉にノルンはハッとしたように真っ直ぐにルーディアを見つめ、アイシャは難しい顔をした。

 

「むー…折角お姉様に仕えられると思ったのに…でも、そう言われたら仕方ないですね…お姉様!家の事は私に任せて下さい!お父さんとお母さんをお願いします」

 

済ました顔で丁寧に頭を下げるアイシャに、ルーディアは目を細める。

 

『勿論です』

 

そんなアイシャをちら、と見たノルンもガタリと椅子から立ち上がり、頭を下げた。

 

「わ、私からもお願いします!お父さん達を助けてください!姉さん!」

 

そんなノルンの様子に、アイシャは眉をひそめた。

 

『任せて下さい。ただノルン、一つだけ言っておきます』

 

ルーディアはノルンに近づき、肩に手を乗せる。

それを感じたノルンはゆっくりと顔をあげ、ルーディアの瞳を見つめ、ビクリと体を跳ねさせた。

そして見つめたまま、目を見開き涙を浮かべ、ガタガタと震え始めた。

 

『都合の良い時だけ私を姉と呼ぶな』

 

その言葉の後、肩を軽く押されたノルンはそのまま後ろに倒れ、ドスンと尻餅をついた。

なおも一点を見つめてガタガタと震えるノルン。

それを見下ろしていたルーディアは視線をきると踵を返し、部屋から出ていく。

 

『それでは、家の事と学校、それぞれ頑張って下さい』

 

バタン、と閉じられた扉、自分を抱き締めてガタガタと震えるノルン。

それを見たアイシャはふぅ、とひとつ息を吐いた。

 

「ノルン姉の自業自得…だからね?」

 

「うる…さい…!」

 

そんなノルンの様子に、アイシャは呆れたように肩を竦めた。

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