『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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旅支度、ベガリット大陸へ

事前に話はしていた。

ベガリットに向かう面子は三人。

ルーディアとエリナリーゼ、そしてギレーヌである。

剣の聖地には既に手紙を出しているので、問題がなけばそろそろ来てもおかしくない頃であった。

エリナリーゼは渋い顔をしてルーディアが行く事にそれはそれは苦言を呈した。

意見としては反対よりだったクリフが難色を示す程には。

クリフとしても反対ではあった、エリナリーゼの呪いを打ち消す魔道具の雛型、呪いを緩和する魔道具は出来ているものの、迷宮都市ラパンまでを往復する程の期間は確実に無理だ、と。

 

『いえ実は転移魔法陣をとある伝で使えまして、ここから迷宮都市ラパンまで往復3ヶ月でいけるのですよ』

 

「それなら大丈夫ですわね!」

 

「いやいやいやいや転移魔法陣だと!?というか3ヶ月!?ちょ、ちょっと待つんだ!」

 

そんなやいのやいのしたやり取りがありつつ、最終的に二人がイチャつき始め、クリフがエリナリーゼに結婚を申し込み、その返答とばかりに押し倒されたのを見届けてから、ルーディアは研究所を去っていった。

 

 

 

続いてナナホシの所で話をする。

また暫くここを離れる事になる、と。

沢山魔力込めますよーと腕を回して言うと、少し詰まってる所だからあまりやって貰う事はない、と言われてしまった。

ガリガリと頭をかきながら魔法陣とにらめっこしてる様子は、あまり良い状態には見えない。

 

『【…此方も少し落ち着きましたから、今日はお風呂入りにきますか?ポテトチップスも用意しますよ】』

 

【…そう…ね…フー…】

 

ナナホシは魔法陣を机に置き、天井を見上げて目元を抑えながら、息を吐いた。

 

『【私がいない間も入りに来ていいですからね?妹が侍女として働いてくれてるので、話は通しておきます】』

 

【…妹が侍女?】

 

『【侍女です、メイドさんです】』

 

【…またすごい話ね】

 

呆れたように肩を竦めるナナホシ。

ルーディアはとりあえず魔力込める魔法陣は用意しておいて欲しい事を伝え、また後で、とナナホシの研究所を後にした。

 

 

 

 

 

ザノバの所に顔を出し、改めてジンジャーに礼を伝える。

関係は良好のようで、ジュリの言葉遣い等の矯正をゆっくりと行っているようだった。

また暫く旅立つので何かあれば家族を頼む、と告げた。

 

「お任せくだされ。まぁフィッツ殿がいればそこまで心配いらぬとは思いますが…彼はアリエル姫の護衛ですからな、手の届かぬ所は余が見ますとも。お早いお帰りをお待ちしております」

 

『【心強いですね。道中に人形なんかがあって余裕があれば見繕ってきますよ】』

 

「おお!それは楽しみですな!師匠の芸術は勿論素晴らしいですが、研鑽の跡の残る物も良さがあります故」

 

朗らかな会話を交わし、ルイジェルド人形のクオリティが随分と上がった事に喜びあい、ルーディアは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

そうして旅をする事を周知させた数日後、ギレーヌがシャリーアに到着した。

家に訪ねてきたギレーヌには特に変わった事もなく、ルーディアを猫可愛がりし、義足に驚き、アルスを愛で、ルーシーに笑いかけていた。

数日ギレーヌが体を休めたら、ベガリット大陸へと向かう旅に出る。

 

「しかし、本当に行く必要があるのか?」

 

ルーシーをあやしながら言うギレーヌに、ルーディアは自分の考えを言う。

 

『オルステッド様の話を信じるなら、『泥沼』とエリナリーゼさんが援護に行ってギリギリだったという話なので、相当ヤバイものが潜んでいるのだと思うんです。詳細は知らないのか教えて貰えませんでしたけど…。そこで、最も頼れるギレーヌがいれば、という安易な発想なんですけど…』

 

「そこまで言われたら仕方ないな」

 

嬉しそうに尻尾をゆっくりとうねうねさせるギレーヌに、エリナリーゼが微笑ましいものを見るような目を向ける。

 

「ハイハイ、とりあえず転移魔法陣が本当に使えるのであれば、のルートを決めてしまいますわよ」

 

ベガリット大陸の地図を広げそう宣言するエリナリーゼ。

それにルーディアとギレーヌが力強く頷いた。

 

 

 

 

 

「ルディ。気を付けてね?」

 

『うん、フィッツ。』

 

ベッドの上、二人は見つめあっていた。

明日早朝、ルーディア達は旅に出る事を決めた。

 

『ん…フィッツにもアイシャにも迷惑かける』

 

「家族を助ける為に行動するルディを責めたりしないよ、むしろ僕が一緒に行けなくて申し訳ないくらいで」

 

フィッツは流石にアリエルの護衛がある為に着いていく事は出来ない。

 

「ルディならあっという間に助けてくるって信じてるよ」

 

『…ありがと。絶対助けて、直ぐに戻ってくる』

 

決意を新たに、ルーディアは気合いを入れ直す。

ぎゅう、とフィッツはルーディアを抱き締め、にこりと笑った。

 

「家の事は任せてルディ。安心していってらっしゃい」

 

『ん…行ってきます』

 

フィッツの触れるだけのキスを受けいれ、ルーディアは自分もフィッツの背中に手を回す。

幸せそうに瞳を閉じ、微睡みに沈んでいった。

 

 

 

 

早朝、馬を借りた三人は旅立つ。

目的地はベガリット大陸、迷宮都市ラパン、最後の家族ゼニスがいる場所だ。

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