『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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んー…出来があまり、良くないなぁ…。


状況整理、先生との語らい

「天大陸で『泥沼』の目撃情報が随分前からあった事に違和感を覚えてな…ビタの姿がない時点で、ラパンに罠が仕掛けてあるとほぼ確信した」

 

『助かりました…オルステッド様…』

 

「ヒトガミも冥王ビタを失ったのは痛手の筈だ。帰り道は大丈夫だとは思うが…一応離れた所から様子を見ている。安心するといい」

 

『あ、ありがとうございます…でもご迷惑では…』

 

「いや、今回の事は最初にも言ったが、俺の警戒不足だ。さしあたってはシャリーアに帰ったらまた呼べ。後で渡すつもりであったマジックアイテムを渡しておこう。また、もし協力するつもりがあるなら、パウロ・グレイラット達も呼んで構わん。以前はパウロにお前と話してる最中に、背後からいきなり斬りかかられたからな」

 

『それは…父様が失礼を』

 

「笑い話だ。父親の心境を汲めなかった俺の落ち度だ。さて…お前を蝕む毒も解毒しておいた。俺が都市に入ると騒ぎになるからな…パウロの事は任せたぞ。では、またな」

 

『はい、本当にありがとうございました…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ルーデウス・ノトス・グレイラット…?』

 

「そうだ、それが『泥沼』の名前だ。ルディの叔父に当たる」

 

ゼニスの様子を暫し見続けて変化が無いことに肩を落とし、ヴェラとシェラの二人と言葉を交わし、食事処についたルーディア。

そんなルーディアを迎えたのは『泥沼』と血の繋がりがあるという衝撃の情報だった。

だが現状それがわかったからとて何か出来る訳ではない。

一先ずルーデウスは童顔らしいが、パウロに似ているようなので、パウロに似た人物には気を付けるようにとの結論だった。

 

「あいつは産まれた時から、人としての良心をどっかに置いてきちまったような、かなりの問題児だった。おまけにそれを隠す術にも長けてた。人が苦しんでるのを見て、心から喜んでた人でなしだったよ。何するかわかったもんじゃねぇから、各自気を付けろよ」

 

具体的なエピソードとして、兄弟や親子の奴隷を片方だけ優遇し続けた場合どうなるのか見てみたい、と5歳の誕生日に自発的に言い出した事があったそうだ。

 

『どちらが先に折れると思いますか?』

 

そうにこやかに聞かれた時、パウロは何も言えなかった。

 

「兎に角イカれた野郎だ、俺が避けてたのもわかるだろ?…ルディは特に気を付けてくれ」

 

でしたら、とリーリャが口を挟む。

 

「ノルンお嬢様とアイシャは…本当に無事なんでしょうか…」

 

その言葉に周りが一瞬静まり返る。

それだけ悪辣なのであれば、むざむざと二人をそのまま逃がすだろうか。

 

「…腹の中の分体、俺達は無理矢理吐き出した。やばいって直感があったからな。ギレーヌとルーディアの嬢ちゃんに視て貰ったら、タルハンドの中にはまだ残ってやがった。その時…タルハンドに不調が見えたのが気になんだな?」

 

ギースの言葉にリーリャがこくりと頷いた。

つまりビタの死体が人体に影響を与えるのではないか、と考えているのだ。

しかも恐らく、治癒も解毒も効かない。

タルハンドに不調が見れた事と、吐き出した今は平気である事、無関係ではないだろう。

 

『…二人が憑依されてない可能性は…』

 

「俺やリーリャがよく添い寝してたからなぁ…寝てる間に体動かされた可能性まであるから、覚えがなくてもないとは言えねえな」

 

楽観視は出来ない。

 

「…二人が心配だ。仕方ねえな、流石に今日は目一杯休む。明日から帰るために動き始めるぞ」

 

「やれやれ、忙しないのぅ…」

 

「わりいな、だがルディの話、転移魔法陣がマジならラノアまで一月半だ、ゼニス救出、黒狼の牙の再会、俺の娘達の誕生祝い、祝い事はいくらでもある!あっち着いたら俺も家買って、そこで宴会でも開くから、タダ飯タダ酒を楽しんでくれ」

 

「へへへ、別にその為にやった訳じゃねぇが、こう目先にぶら下げられると少し楽しみで落ち着かねぇな。流石に意識のないゼニス運ぶんだ、馬車か何か必要だろ。下見に行ってくらあ」

 

「全く、ほぼとんぼ返りですわ。わたくし達からしたらただ悪夢見に来ただけじゃないですの?」

 

「骨折り損だが、皆無事で何よりだった。ビタがその気になればあたし達全員中から破裂してただろう?」

 

「ひえぇ、ゾッとしますわ」

 

「ヴェラ様とシェラ様にもその旨伝えてきます」

 

「おう、頼んだリーリャ」

 

「…」

 

『…?』

 

ざわざわと騒がしくなる中、ロキシーが浮かない顔をしている事にルーディアは気付いた。

ポツポツと思い思いに席を立ったり飯を食べ出す中、ふらりと 立ち上がったロキシーは部屋へと向かって行ったようだった。

ルーディアは心配になり、その後を追った。

 

 

 

 

 

ロキシーの部屋をコンコンとノックする。

 

「…はい」

 

『先生?入ってもいいですか?』

 

「ルディ?…………はい、どうぞ」

 

少し間があったものの許可を貰えた為、ルーディアは失礼します、と部屋に入り込んだ。

ベッドに腰掛けたロキシーは、やはりどうにも浮かない顔をしていた。

 

『隣、いいですか?』

 

「あ、はい」

 

気が抜けたような返事を受け、ルーディアはロキシーの右隣に腰掛けた。

ロキシーはちら、とルーディアを横目で見た。

並ぶとルーディアの成長が具合が良くわかる。

ブエナ村にいた頃は抱えあげる事も出来たし、抱えて馬に乗ることも出来たのに、と郷愁の念に近いものを感じた。

ロキシーはルーディアを見上げると視線を反らし、ふぅ、と小さく息を吐いた。

 

「…ごめんなさいルディ、僕が刺してしまった所…痛くないですか?」

 

『大丈夫ですよ先生。もう痛くないです。それに先生が謝る事じゃないですよ、操られていたんですから』

 

そんなルーディアの言葉に、ロキシーは俯いてしまう。

 

「…ダメですね僕は…ルディを助けると意気込んで、魔大陸ですれ違って…ルディはあの頃が一番辛かった筈です。その時に直ぐ側まで近付いていたのに助けられなかった事が、ずっと胸にひっかかっていたんです」

 

『…そう、ですね。あの頃は、まだまだ折り合いつけられてませんでしたから』

 

ロキシーはぎゅう、と自分のズボンを握り締める。

 

「それなのに僕は結局何も出来てません。迷宮攻略には自信がありましたが『泥沼』より活躍出来たなんて、口が裂けても言えない有り様でした。ルディは知らないかもしれませんが、一度転移の罠を踏んで分断されてしまい、僕を救出するか為にかなり時間をかけてしまっていたんです。これはビタに憑依されてる関係なく、僕の慢心…明らかな落ち度です」

 

『…』

 

「ゼニスさんこそ救出に成功しましたが、転移迷宮の守護者が魔術を吸収する鱗を持つヒュドラで、そこでも僕は足手まといでした。『泥沼』は…凄かったです。正直嫉妬しました。パウロさんと並んで、傷口を焼き、攻撃をいなし…僕達も出来る限りのサポートはしていましたが、ほとんどパウロさんと『泥沼』だけで倒していたと言っても過言じゃなかったんです」

 

『…確かに彼は、凄まじい魔術師でした』

 

その言葉にロキシーは力なく笑った。

 

「はは、そうでしょう…?それに比べて僕は…ルディに先生なんて言われる資格なんて…」

 

ルーディアはその言葉を遮るように、ロキシーの唇に指をたてた。

 

『そんな事ないです。私にとってロキシーは自慢の、最高の先生です。弟弟子のパックスだってそう思ってますよ?「ロキシーだけは余自身を見てくれた、実の親からすら放置され気味な自分を親身になって叱ってくれた、それが何より嬉しかった」と言ってましたよ』

 

ロキシーはその言葉に狼狽えてしまう。

 

「っ…そんな、僕はルディ達の事を心配するあまり、パックス王子を見捨ててしまったというのに…」

 

『彼は恨んでませんよ。自らの立場が悪くなっても構わないと転移してきたリーリャさんとアイシャを匿い、父様の元へ送ってくれたんです。ただ同じ師匠を持つだけの間柄である、私の家族を。それも全て、先生の恩義に報いる為なんですよ』

 

そのルーディアの言葉にロキシーが俯き、体を震わせ始める。

ルーディアはベッドに深く座り、ロキシーに向き直る。

そして、ロキシーの頭に手を伸ばし、胸元に抱えて抱き締めた。

 

『先生の教えで少なくとも、私とパックスは救われました。先生は空回りしてしまったと自分では思ってるかもしれませんが、私は先生が私達の為に頑張ってくれていたという事実だけで嬉しかったです。先生…ありがとうございました。大好きです』

 

そう言って優しくロキシーの頭を撫でた。

そんな優しげな瞳をしたルーディアの胸に顔を埋めているロキシー、ルーディアの胸に両手をつくと、そのままベッドに押し倒した。

 

『…あれ?』

 

とさりとベッドに倒れこんだルーディアに、ロキシーが覆い被さる。

顔を真っ赤にし涙目で、きょとんとしているルーディアを見下ろしたロキシーは、口を開いた。

 

「僕も好きですルディ、ずっと前から好きだったんです、ずっと、ずっと。成長した姿も美しくて…可愛くて…!たまらなくて!これ、同意って事ですよね…?」

 

鼻息荒くルーディアの胸を揉みしだくロキシーに、どうしてこうなった…?とルーディアは頭にハテナマークを浮かべた。

 

「ルディ…大好きです」

 

しかし、熱に浮かされたようなその言葉にルーディアは絆されてしまう。

自分のチョロさを自覚しながらも、顔を近付けてくるロキシーを受け入れてしまうのだった。

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