「無理しすぎだ!魔眼を酷使して目が見えなくなったのは流石にどうしていいかわからないぞ…」
『…治らないんでしょうか』
「治る…とは思うが、個人的には治癒魔術は使わないほうがいいと思う…断言は出来ないがな。取り敢えず僕は治さないで自然治癒する事を推す。この機会にゆっくり休むといい」
『わかりました、あの、本当に何もかもお世話になりました…エリナリーゼさんにも沢山助けて貰っちゃって…』
「気にするな、ミリス様の教えでもあるが、僕がやりたくてやってる事だ…君のお父様に教えられた事でもある」
『…!?クリフ先輩、父様と会った事があるんですか?』
「ああ…ミリシオンでな。僕はその頃冒険者に憧れていたんだ。あの頃丁度はぐれ竜が出たとかで冒険者が辺りに少なくてなっててね、1人で意気揚々と右も左もわからない中、森に突撃していった」
『それは…相当無謀でしたね』
「そう思うだろう?あの頃の僕は増長していたからな…恥ずべき過去だ。だがまぁ無駄に実力だけはあったから魔物自体は倒せた。だが帰り道がわからなくなってな…そこを君の父、パウロ・グレイラットに助けられたんだ。冒険者が少なくなってるから魔物が増えすぎないよう間引きをしている…と言っていたか。僕が13歳の頃だから…4年前くらいの事か」
『…丁度私もその辺りにいた頃ですね。』
「そうだったのか、もしかしたらすれ違ってたりしたかもしれないな。それでだ、迷っていた僕は彼に町まで送って貰える事になったんだが…少し離れた所から鉄のぶつかるような音がしてな、彼は慎重に様子を見に行き、そして直ぐ様飛び出していった。ミリス神聖国の次期教皇とも目されてる神子様が、教皇派に襲撃されていたんだ」
『教皇派…って』
「そう、その襲撃者達にも見覚えがあったよ、僕の教師達だった。神子様の護衛である神殿騎士達をほぼ全滅させていて、後は一人…という所で彼があっという間に襲撃者を切り捨ててしまった。教師達への愛着も忘れ、あの姿には憧れたなぁ…剣の才能は魔術に比べてこれっぽっちも無かったから流石に諦めたけどね」
『父様強いですよね。全ての流派で上級認定受けているのは伊達じゃないです』
「彼は剣術においてはまさに天才なんだな…まぁ、それでその後、何故飛び出したのかと聞いたんだ、見ず知らずの人を何故命懸けで…とね。それを彼はそれが力を持つものの責務だろ?と何て事ないように言うんだから堪らないよ。彼はミリス教徒でもないし、妻を二人迎えているし、仲間に魔族までいる。ミリス教団からすれば決して認められないにも関わらず、誰よりもミリス様の教えを体現していたんだ。別れる時にも頭を乱暴に撫でられて言われたよ、あんま力ひけらかすなよ、大切なもん守る為に使え、と諭されてね。視界が開けていった気持ちだったよ。彼は覚えていないかもしれないが、僕にとっては生まれ変わったような気分になった、大切な思い出さ」
『ふふ、カッコつけてますね、父様ったら』
【ごめんなさいね、そんな時に、どうしてもこの実験をやってみたくて】
『【いえ、大丈夫ですよ、目が見えないだけですから】』
【…充分大変だと思うんだけど。とりあえず、貴方がいない間に少し詰まったんだけど、クリフとザノバ…あの二人に少し相談してみたのよ。貴方の義足にも使われている手法…積層魔法陣、それが一気に私の研究を進めさせたわ。クリフの見識や視点はかなり参考になったし。我慢出来ずに一度魔力結晶を使って魔法陣を起動したら…ペットボトルの召喚に成功したの。そして今回、有機物の召喚に挑むわ。貴方には申し訳ないと思うけど、これが成功すれば私の実験は更に一気に進む。魔力、貸して頂戴】
『【わかりました、大丈夫ですよナナホシ】』
【よし、よし、よしっ!これで、これで漸くっ…!】
「お姉ちゃん、あーんして」
『はい、あーん』
「美味しい?」
『うん、美味しいよアイシャ、ありがとう』
「アイシャ姉あーん」
「あー、アルス君ありがとあーん」
「…それにしてもフィッツ兄さん達はナナホシさんに連れられて空中要塞…でしたっけ?お伽噺の人に会いにいけるなんて羨ましいなぁ…」
『まだノルンもアイシャも本調子じゃないからね、これから行く機会があるかはわからないけど…その時には連れてって貰えるといいね』
「姉さんの目はまだよくならないんですか?」
『まだ全然見えない。でも皆助けてくれるし、あんまり困ってないよ』
「姉さん、強がりじゃなくそう言えるのがすごいですよね…目が見えてないのに…」
「あぅー」
『あれルーシー今日はご飯嫌?またおっぱいかな…甘えん坊だね』
「…本当によくわかりますね…」
「今日はノルンとアイシャの10歳の誕生会だ!ゼニスはまだ治療の目処はたってないし、ルディもまだ目が完全に良くなってないが…家族皆揃って祝える事を嬉しく思う!どうか皆も楽しんでくれ、乾杯!」
「あ!お母さん今笑わなかった!?」
「そーかなー?ノルン姉の見間違いじゃない?」
「きっと奥様は笑っていらっしゃいますよ、皆様がご一緒ですもの」
『うん、私もそう思う。ね、母様』
「……」
「ロキシー…?いつルーディアにプロポーズするんですの?覚悟持って抱いたんじゃなかったんですの?」
「あ、いやえっとほら、今まだルディ大変ですし…」
「ミリス教徒ではなくルーディアとフィッツの友人として言うが…あの二人なら受け入れてくれると思うぞ」
「団長、長い間お世話になりました」
「お世話に、なりました」
「おう、ヴェラ、シェラ。お前達もありがとうな、これまで支えてくれて。どうか達者に暮らせよ」
「儂らもそろそろ離れる事にする。ここは居心地が良すぎたわい」
「これ、餞別のマジックアイテムだ。使うなり金にするなり好きにしてくれ。ルーディアの嬢ちゃん、元気でな」
『はい、タルハンドさん、ギースさん、今までありがとうございました。後で地下室に持っていきます』
「パウロー…いつあたしを嫁にしてくれるんだー?」
「お父さん!ギレーヌさんを嫁に迎えるってどう言うこと!?」
「ひぇえ、いや、その、ルディ!」
『ギレーヌがお母さんになるのは歓迎だけど、それは父様が自分で説得しないと…』
「あ、なんかゼニス様、心なしか怒ってるような気がする」
『すみませんロキシー、地下室に付き合わせてしまって』
「いえいえ、マジックアイテムを仕舞う前に見てみたかっただけですし、ルディ一人では行かせられませんから」
『ありがとうございます』
「この後二人で少し…飲みませんか?誕生会の食べ残しもありますし」
『…そうですね、少し小腹も空きました』
「ルディ…僕と…」
「あ、おはようお姉ちゃん。もー、最悪。朝から変なネズミの死体見ちゃったよ」