『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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ミリシオンへ、ミリス神聖国

「…魔石病か。一体、いつ干渉された?」

 

『…わかりません』

 

ミリス神聖国に向かうメンバーで空中要塞に向かう道中、オルステッドを指輪で呼び出して話をする事にした。

ルーディアの背後では、オルステッドと初めて会ったパウロがオルステッドを睨み付け、クリフは気丈に振る舞っているものの、足が震えていた。

 

『…一応聞きますけど、オルステッド様は神級の解毒魔術は…?』

 

「いや、習得していない。覚えようと思えば覚えられたかもしれないが…」

 

ばつが悪そうに視線を反らすオルステッドに、内心残念に思いつつも、ルーディアは首を振る。

 

『魔石病にしか効きませんからね。仕方ないです』

 

「…ビタといい今といい、ヒトガミに踊らされてしまっているな…」

 

『やはりこれはヒトガミの攻撃なのですか?』

 

「間違いなく、な。余程お前とロキシーの子供が産まれるのを阻止したいらしい。妊娠した途端これだ。しかも誰を使って攻撃しているのかがわからん…まずい流れだ」

 

「な、おいおいおい、ルーディアは妊娠してたってのか?それに加えて魔石病なんかに罹っちまったってのか?」

 

食ってかかるパウロに、オルステッドは少し驚いたように眼を開く。

 

「…ルーディア、話していないのか?そもそも魔石病に罹患しているのは、お前の胎児だという事を」

 

ルーディアは小さく俯いた。

魔石病は非常に感染力の低い病気だ。

キャリアは一部の魔石病に耐性のあるネズミ。

そのネズミが触れた物に半日以内に妊婦が口で触れない限り、罹る事はない。

だが一度かかれば魔石病は胎児を作りかえ、妊婦を足先から結晶化させる。

 

「…なんだそりゃ…たかが病気の癖に悪意すら感じるな。おい、あんたにはどうにか出来ねぇのか…?」

 

「…俺には無理だ」

 

「ちっ…使えねえ」

 

『父様、オルステッド様は呪いで相対していると敵意を抱きやすくなっています。どうか気持ちを落ち着けてください』

 

「…わかったよ」

 

「…兎に角予定通りミリス神聖国に真正面から頼むしかないだろうな。どうしても無理で力づくが視野に入ったなら呼べ。…俺がやろう」

 

「なに…?なんだあんたいい奴だな、そうなったら頼むぜ」

 

「…ではな、一応残る家族達は見守っておこう」

 

オルステッドはからりと態度の変わったパウロを怪訝な表情で見てから、反応をする事なく立ち去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…所でロキシーとの子ってのは確かなのか…?」

 

『帰ってきてからフィッツとはしてませんから、ロキシーしか有り得ないですね』

 

「三人目の孫か…」

 

『気が早いですよ父様』

 

「恐ろしい男だったな…しかし呪い…?…ルーディア、いずれ頼みたい事とはもしかして…」

 

『はい、ご明察です、今後を考えたら彼がいちいち恐れられるのは非合理的ですから…それに別の呪いに対処する経験は、エリナリーゼさんの呪いの対処の為になるんじゃないかなと』

 

「耳障りはいいけど…あれと対峙しなければならない僕の身にもなって欲しいな…」

 

『あはは…すみません』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オルステッドとの会話を終えた一行は空中要塞へと向かう。

辿り着いて早々シルヴァリルと並んでナナホシが待っていて、ルーディアへと駆け寄った。

 

【ねぇ、貴方がひどい病気になったって聞いたんだけど…大丈夫なの…?】

 

『【…正直に言うと不安で仕方がないです。でも治療法だけはハッキリしているので…上手く行く事を願っていて下さい】』

 

【…そう。わかった、上手く行くことを願ってるわ…また、元気な姿で再会しましょう】

 

『【はい、ナナホシも体には気を付けて…】』

 

【それじゃ…またね】

 

『【はい…あ、実はロキシーにプロポーズされたので、改めて紹介しますね】』

 

【また最後にぶっこんでくるのね!…もう】

 

ナナホシは最後にクスリと笑って去っていった。

 

 

 

その後一行は先を急ぐだろうとのペルギウスの計らいで、直ぐに転移魔法陣へと案内される。

初めて見る雲海に浮かぶ空中要塞に興味津々であったパウロとギレーヌではあったが、気を引き締め軽く見回す程度に押さえていた。

そうして直ぐ様転移魔法陣に乗り込み、ミリス神聖国へと転移するのだった。

 

 

 

 

 

転移した場所はパウロには大体の位置がわかったようで、方角を定めると直ぐ様歩き出した。

ゼニスをギレーヌとパウロで交互に背負い、ルーディアは足元の注意だけをフィッツにお願いする。

ペースは一番体力がなく旅慣れしていないクリフだ。

暫く歩いて休憩し、このペースならば2日かからずミリシオンに着くだろう、と

それにクリフが少し暗い顔をする。

足手まといになっている、と思っているようだ。

そんなクリフの頭をパウロがくしゃりと撫でた。

 

「そう気にすんな。クリフ君の体調が崩れないペースを維持したほうが結果的には一番早く着く」

 

そう言われても思う事はあったろうが、クリフはそれを飲み込み、眼を閉じて体力の回復に努めていた。

 

 

 

 

 

そして、道中に何も問題なく、一行はミリシオンへと辿り着く。

時間は既に夕方近く…ラトレイア家には明日訪問すると言伝でもして、今日は宿でも取ろうかという話になっていたが。

 

「いや、僕の家がある。誰も住んでいないと思うから、泊まって行ってくれ」

 

クリフのその言葉に甘える事となった。

まずはクリフの家へと向かい、ラトレイア家への言伝はパウロだけが直接向かう事となった。

クリフの家はほとんど使われていないのか埃だらけであったが、リーリャがとても張り切り、掃除をあっという間に終わらせてしまった。

 

「なかなかやり応えがありました」

 

と済ました顔で一礼したリーリャに、クリフが深々と頭を下げていた。

やがてパウロが帰ってきたので皆で食事を取り、明日の事を軽く話し合う。

クリフは祖父である教皇へとコンタクトを取り、状況を説明して神級解毒魔術の使用を願う。

そしてパウロ、リーリャ、フィッツ、ルーディアは護衛としてギレーヌをつけ、ゼニスをラトレイア家へと連れていく。

そこで今までの感謝とゼニスの状態と、現状の問題を説明し、此方からも神級解毒魔術の使用を願う。

ラトレイア家だけで駄目であるなら、パウロが以前神子を助けていた事を押してみる事も考える。

兎に角出来る事をやる、という事で話は終わった。

 

 

 

ミリシオン…以前ルーディアとパウロが決別した街。

パウロは寝転がりながらあの時の事を思い出していた。

ルーディアの『なんで私ばっかり』という言葉がリフレインする。

 

「…そうだ、ルーディアがこんな目にあうのは間違ってる」

 

自分の手のひらを見て、強く握りしめた。

 

「まぁ、どうにかなるか。必ずどうにかするし、なぁ、ゼニス」

 

安らかな寝息をたてるゼニスの頬を優しく撫で、パウロも眠る事にするのだった。

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