『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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龍神の配下達、『デッドエンド』

時は過ぎ、魔法大学が休みのとある日。

シャリーアから程よく離れた森の中に、大きな氷のテーブルと、いくつかの椅子が並んでいた。

そこにいるのは今日、『龍神』オルステッドと話をしに来た、ルーディアの家族や友人達である。

まずは勿論当人であるルーディア。

父であるパウロ、その妻の一人ギレーヌ。

夫であるフィッツとロキシー。

友人のクリフとザノバ。

義祖母のエリナリーゼ。

オルステッドを含めた9人で大きな円卓を囲んでいる。

そして今、オルステッドは説明を終えた。

以前ルーディアとフィッツとエリオットとギレーヌが受けた、あり得た未来の話だ。

聞き終わった面々は実に複雑な顔をしていた。

特にクリフとエリナリーゼが顕著だろうか、二人はその未来では関わりすらなかったようだった。

次いでパウロが、ノルンが悲劇の引き金を引いた事に強いショックを受けていた。

ザノバも腕を組み目を瞑って悩み、ロキシーは逆にひどく安心した顔をしていた。

 

「…この話の真偽も気になるだろう、俺に対する悪感情もあるとは思う。だが一先ず、ひとつやらなければならない事がある」

 

オルステッドは腕を組み、ルーディアを見据えた。

 

「前回は、ルーディアはとある鎧を装着していた。ヒトガミにアドバイスを受けて作り上げた、闘神鎧をモデルにした鎧だ。前回は、ザノバの全面的な協力があって漸く作り上げたもので、なかなか素晴らしいものだった。…しかし、それすら今ルーディアがつけている義足には劣る…。余程クリフ・グリモルが優秀なのだろうな…」

 

「はっ…と、当然だ!ぼ、僕は天才だからな!」

 

オルステッドのほうを、しっかりと見据えて震えた声で啖呵をきるクリフ。

冷や汗を流しながらも視線を反らさないクリフは、何かを見極めようとしているようだった。

 

「よって、その鎧の作成をザノバ・シーローンとクリフ・グリモルに頼みたい。ルーディアの力はこの先、必ず必要になる。ヒトガミとの使徒との戦いはいずれどこかで起こる事だからな」

 

『そうですね…一先ずヒトガミの戦力を整理しましょう』

 

ルーディアは自分の背後に土の壁を作り出す。

それに氷で文字を記していく。

 

『まず、前の世界のヒトガミの使徒、ですね。私、ノルン、王竜王国国王レオナルド・キングドラゴン、『泥沼』ルーデウス・ノトス・グレイラット、『冥王』ビタ。シーローン王国の将軍ジェイドが限り無く黒に近いグレー…。『泥沼』が決戦に用意した戦力が『剣神』ガル・ファリオン『北神』アレクサンダー・カールマン・ライバック『鬼神』マルタ…彼らも使徒にはなりえるそうですね。そして『泥沼』と私が装着して戦った『闘神鎧』…ですね?』

 

更にはオルステッドが何人かの名を使徒や協力者の名としてあげ、ルーディアは言われるままにそれらを記し、オルステッドに視線を向けた。

オルステッドは頷くと口を開く。

 

「今の状態だとその一覧から、ルーディア、ノルン、ビタが消える。だが代わりにアトーフェラトーフェが協力者として入るか…」

 

『『不死魔王』アトーフェラトーフェ・ライバックは本当にヒトガミ側なんですかね…?』

 

「恐らくな。ミリシオンへの襲撃等今まで起こった事もない。明らかに運命に干渉出来る何者かの動きがある。わかっているヒトガミの戦力からすると、『泥沼』が仕掛けたというのが有力だが、断定はしないでおこう」

 

ルーディアは同じものを並べて描き、そこからルーディア、ノルン、ビタの表示を消し、下部の協力者一覧にアトーフェラトーフェを付け足した。

そうそうたる面々に、小さくざわめきが起こる。

 

「見てわかる通り、奴らの戦力には七大列強すら含まれている。ヒトガミの執着を見るに、ルーディアの身はこれからも狙われ続けると思っていい。ルーディアの戦闘力の強化は必須だ」

 

「…改めて聞くと師匠がそんな戦いに出てくるというのがあまり信じられんが…まぁ物事は悪く考えておくべきか。それで?あたし達は結局何をすればいいんだ?」

 

「一先ずは力を付ける事だ。マジックアイテムの支給くらいはするが、本人が強くなるに越したことはない。俺からも各流派との戦い方や聖級、王級魔術くらいは教えられよう。その後…直近の頼みとしては…約一年半後、アリエル・アネモイ・アスラを王にするように動く事…だな」

 

そうオルステッドが言うと、ギレーヌの瞳が細められた。

 

「成る程…?いいな、アリエルの味方となるなら…相手にはきっとサウロス様を陥れた奴がいる。一石二鳥、そして後は憂いなくパウロの子を産めるな、一石三鳥だ」

 

獰猛な笑みを浮かべるギレーヌ。

それをパウロが苦笑いしながら見ていた。

 

「まぁでも丁度いいか。本格的な戦いは一年半後って事だろ?折角だから俺は、一度鍛え直しに剣の聖地に行く事にする。エリオットの奴もいるって話だし、顔でも見てくるぜ」

 

そこまで言って、パウロは真剣な目でオルステッドを見る。

 

「…ノルンは…大丈夫なんだよな?」

 

「守護魔獣、レオの庇護下にいる以上はヒトガミの介入はない筈だ。それに前はルーディアとも仲直りをしていなかったならな…既に流れは変わっていると思っていいだろう。俺としても彼女の生存は望ましい」

 

その言葉にパウロの表情が歪む。

 

「あ?お前俺の娘狙ってんのか?いいぜ買うぞその喧嘩」

 

「…そういった意味ではない…話が逸れているぞ。鎧の話に戻れ」

 

腰を浮かしたパウロは舌打ちをして、椅子に再度座り直した。

 

「それで、師匠が身につける鎧とはどのようなものなのですかな?余が作ったという話ですが…」

 

「俺の把握する限りの詳細をまとめてきた、二人で確認するといい」

 

オルステッドは薄めの冊子を取り出し、ザノバへと渡した。

 

「確認させて貰いましょう」

 

冊子を開き、暫しの沈黙と、ザノバの唸る声が聞こえる。

眉間に皺が寄り、その冊子を睨み付けているようにすら見える。

やがてため息を吐きながら冊子を閉じ、クリフへと渡す。

 

「…本当にこれを余が作ったのでしょうか…」

 

「ヒトガミの協力はあったが、ほぼお前一人で作り出した物だ。当時限界だったルーディアを気遣い、死に物狂いで作り出したものらしい」

 

「ふーむ…理屈はわかりましたぞ、師匠のつけておられる義足に比べると劣るといった意味もわかりました。この鎧では、師匠は常に緻密な魔力制御が必要になります。これでは戦えたとしても、師匠には相当の負担がかかりますぞ」

 

渡されたクリフも表情を歪めている。

確かにすごいが、これは…と呟きながら、冊子を難しい顔で睨んでいる。

 

「師匠の人並み外れた力と、非常に多い魔力を活かす為に、この鎧は最適ではあります。ならば余達がするべきは更なる最適化、装着者が魔力制御せずに万全に動く鎧の制作ですな。クリフ、これは師匠の命がかかっております、全力で望みましょうぞ」

 

クリフも軽く読み終わったのか、冊子を机に置いた。

そして腕を組み、小さく頷いた。

 

「ああ、そうだな。尽力しよう。…あと並行してオルステッド、あんたの呪いもどうにかしたい」

 

「…俺の呪いを…?出来るというのか?」

 

片眉を吊り上げるオルステッドに、クリフがビクリと震える。

 

「か、かかか会話の度にこ、こんなに震えては話にならない!で、出来ればあんたには、きょ、拠点を構えて貰いたい。すぐに会えるように」

 

カタカタと震えながら言い切るクリフに、オルステッドは面白い物を見るように口元を吊り上げた。

 

「いいだろう、資金は全て出す、ここシャリーアの少し離れた所にでも簡単な拠点を作ってくれ。俺は俺でやる事があるから暫しこの土地を離れるが、半年後辺りにまた様子を見に来よう。その後は出来得る限りその拠点に戻るようにしよう」

 

その言葉にクリフはふぅーと息を吐いて冷や汗を拭った。

 

「わたくしはクリフのサポートに回りますわ。クリフは人の為だと思うと、すぐ無茶しちゃいますから」

 

エリナリーゼの宣言の後、暫しの沈黙が流れる。

それにオルステッドが全員の顔を見回す。

全員が此方を警戒しつつもルーディアの為に、と一応の信用をしてくれている状態にオルステッドは内心で感謝を告げる。

 

「他に特にないならば、これで終わりとしよう。俺はお前達を俺の為に利用する。お前達も自分自身の未来の為に、精々俺を利用するといい」

 

「…へっ、そんくらいのほうが今はやりやすいな。精々娘の平穏な生活の為に頼むぜ?」

 

『皆で幸せな未来を掴めるように頑張りましょう。巻き込んでしまってごめんなさい…でも、あんなひどい未来には辿り着きたくないんです。どうか、これからも宜しくお願います』

 

ルーディアの言葉に、皆が力強く頷く。

その様子に、ルーディアは嬉しそうに目を細めた。

 

『心強いです。龍神配下『デッドエンド』発足ですね』

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