『氷狼』ルーディア   作:如月SQ

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『天剣王』リニアのこれから

二人の決闘を見届けた後、リニアを抱えて家に帰ったのだが、リニアは食事の頃にはケロッとした顔で魚を美味しそう食べていた。

 

「よく考えたら、そもそも帰ってもすぐに族長にはニャれないニャ。実績積むことが必要ニャ。その点で言えば聖獣様の世話係というのも大きニャ実績ニャ。ニャらここで聖獣様の為に頑張る事で、まだ族長になれるチャンスはあると思うのニャ」

 

そう語るリニアは無理している様子もなく、気持ちの整理は既についたようであった。

すぐに気持ちの切り替えが出来るリニアを内心羨ましく思いながら、ルーディアはふと気になった事を問い掛ける。

 

『というかそもそも二人は種族が違うのですから、二人とも族長になれたのではないですか?』

 

「ちっちっちっ、違うニャボス。あちしらのいう族長とは、獣族のトップって事だニャ。もし二人であっちに帰れば、何れは何かで決着を着けて、上下はっきりさせた筈だニャ」

 

『そういう物ですか』

 

ルーディアは魚の骨を丁寧に取り除いたものをリニアへと渡す。

 

「ありがとニャ。そういうもんだニャ。聖獣様のお世話が実績としてプルセナよりも評価されれば…あちしがトップになれる可能性もまだ残ってるって事だニャ。今はただただプルセナに真正面から戦って負けた事が悔しいニャあ…」

 

もぐもぐと魚を美味しそうに咀嚼するリニアに、ルーディアは新しい焼き魚の骨を取り除きながら、更に問い掛ける。

 

『それでリニアはこれからどうするんですか?家事とか出来るのならば雇う事も考えますけど…』

 

「んー、家事は自信ないニャあ。それに少しこの辺りを見て回りたい気持ちもあるのニャ。この辺りで拠点を構えつつ、冒険者になって稼ぐのを考えているニャ。あとは魔術ギルドの門戸も叩いてみるかニャ。折角D級の資格も貰ったしニャ」

 

『結構しっかり考えてますね、安心しました。はいあーん』

 

「ニャハハ、いいボスを持ったニャあーん」

 

ルーディアの差し出した魚の切り身のソテーをパクリと食べ、リニアは幸せそうに微笑んだ。

そんなやりとりを離れた所でじとりと見つめる妹達。

 

「お姉ちゃんって甘いし世話焼きだよね」

 

「姉さん人たらしだからね。お風呂から上がる時ナナホシさん毎回顔真っ赤なの知ってる?」

 

「え。あの人やっぱりそういうケがあるのかな。お姉ちゃんにだけ?」

 

「さあ…?ただ姉が増えるのは流石にちょっと…」

 

二人は顔を見合せ小さくため息をついた。

姉が増えるのは流石にどうかと思う二人であった。

そんな二人の思いに気付かず、ルーディアはその後もリニアを手厚く世話してやり、抱き締めて共に眠ったのだった。

流石に途中から、困惑しきりのリニアだったが、包み込む安心感に負けて、されるがままになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、ここに居たらダメにニャるニャーと家を飛び出したリニアは、小さな部屋を借りた。

リニアは冒険者となり、依頼をこなし、シャリーアにいる間はレオの散歩に付き合う。

そんな生活をするようになったのであった。

 

ルーディアとしても半年後、アスラ王国に向かう間少し家の事が心配だったのだが、リニアがいるなら任せられそうだ、と少し安心していた。

問題はルーディアの精神面…大分外での活動が行えるようになっているものの、まだ少し不安が残る。

そんな事を考えていたいた頃だった。

パウロ達が剣の聖地から帰還した。

 

 

 

「ただいまルディ」

 

『おかえりなさい父様、母様、ママ、お母さん』

 

「……」

 

「ただいま戻りました。ルーディアおじょ…ル、ルディ」

 

「戻ったぞルーディア」

 

途中リーリャがギレーヌに横腹をつつかれ呼び名を改めていたが、お互いに挨拶を交わした。

今は丁度ノルンは学校、アイシャはアルマと買い物、アルスとエリオットはレオとリニアと散歩と、ルーディアとルーシーとララしかいない時間帯。

隣にルーシーを座らせ、ララを抱っこしながら、四人と向かい合っていた。

四人とも元気そう…というよりはパウロが随分と強さが増したとルーディアは肌で感じ取っていた。

 

「その子がロキシーとの?」

 

『ええ、ララです。ほらララ、お祖父ちゃんとお祖母ちゃん達ですよ』

 

「うー」

 

ララを促すと、ふてぶてしい態度のままじーと不思議そうに眺めていた。

 

「可愛いですね。ルー…ディとロキシー様の特徴をよく受け継いでいます」

 

「ああ、可愛らしい子だな」

 

「……」

 

そんな話をしていると、ゼニスがすっと立ち上がり、すっとルーディアの隣に移動し、腰掛けた。

そしてルーディアとララの頭を優しく撫で始めた。

 

「はは、ゼニスも嬉しそうだな」

 

言葉こそ発しないものの、ゼニスの口元は笑みを浮かべていた。

ルーディアも目を細めて受け入れる。

頭を撫でる心地よい感触に、懐かしさに穏やかな思いになる。

腕の中のララ、自分とロキシーの大事な子供。

そんな子をルーディアは、母親に是非抱いて欲しいという気持ちで、ゼニスへとララを差し出した。

ピク、とそれに反応したゼニスはゆっくりとララを受け取り、実に手慣れた手つきでゆっくりとあやし始めるのだった。

そして母親がフリーになったと気付いたルーシーは、直ぐ様ルーディアの膝に滑り込んだ。

そのご機嫌な様子に、ルーディアは頭を優しく撫でた。

 

「なんか色々大変だったみたいだが…今はもう大丈夫なのか?」

 

『どうにか…?まだ少し後遺症で外が怖いですが、もう少しで心の折り合いをつけます』

 

「無理する必要はないぞルーディア。敵を私達が全員斬れば終わりだ」

 

そういうのが困るから私が、という言葉を飲み込み、ルーディアは言葉を返す。

 

『いえ、私もフィッツがお世話になったアリエル様の力になりたいですから』

 

やがて話は剣の聖地での話となる。

 

「エリオットとはすれ違いになっちまったみたいだな。しかし『狂剣王』ねぇ。格好いいな」

 

そうパウロが言うと、ギレーヌが前傾姿勢となり、膝に肘を乗せ、頬杖をついた。

珍しいギレーヌのやさぐれた姿に、ルーディアが目を丸くする。

 

「はっ…この半年ばかしで剣王になった奴に言われても、エリオットも困るだろうさ」

 

「ワンワン!」

 

「ただいま!」

 

「ただいま…え」

 

『あ、おかえりなさい』

 

タイミング良くか悪くか、エリオット達が帰ってきた。

そしてパウロが剣王となったという衝撃の事実に、エリオットが言葉を失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリオットとしては確かに剣王とかいう称号は実力のおまけであり、別に固執するものではない。

けれど数年の修行で漸く認可されたものでもあるので、狂剣王という名称に多少の愛着は持っていた。

それに対し上級だったパウロが半年で剣王というのは…流石に複雑な思いだった。

 

「『天剣王』パウロ・グレイラットだとさ。はは、この部屋に剣王が三人もいるな……。才能があるとは思っていたが、これ程とはな…」

 

ギレーヌが呆れたように言い捨てる。

昔に自分に勝てないと嘆いていた時もこいつは割りと適当だったんだな、とパウロに勝てる事に調子に乗っていた過去の自分が腹立たしい。

 

「おう、ルーシーちゃーん。じーじ強くなって帰ってきたぞー!」

 

「じーじちがう」

 

その当人は未だにルーシーにじーじとして認識されず、崩れ落ちていた。

ルーシーは近付いてくるパウロに背を向け、ルーディアに正面からひし、と抱き付いた。

 

『もう、ルーシーったら。ごめんなさい父様』

 

「……それなら、これからの鍛練、かなり楽しめそうだな」

 

エリオットは挑戦的な態度でパウロを見る。

膝から崩れ落ちたままのパウロはその視線に不敵な笑みを返した。

格好がつかない。

 

「ま、事が起こるまであと半年を切ってる…よな?それまでお互いに切磋琢磨しようや」

 

パウロはそう言って立ち上がる。

そんな妙に自信に溢れた様子に、エリオットは何処か闘争心を刺激されている事に気付き、思わず笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて手合わせした時に、そのあまりの厄介さに舌を巻くエリオット。

三流派の臨機応変な切り替え、場合によっては組み合わせすらされるそれに、北聖認可を受け、水王と切磋琢磨したエリオットでも対応が難しかった。

 

(これが本物の天才って奴か……)

 

更には北帝オーベールの使っていた、エリオットには対応出来なかった奥義、『朧十文字』に似た技すら自力で辿り着いていて。

エリオットはそんなパウロを見て思う。

 

(面白い!)

 

エリオットは獣のような笑みを浮かべて剣を振った。

元々、三流派と魔術すら操る龍神と相対する事を想定して鍛えてきたエリオットだ。

これも糧にする、と意気込み、暇があればパウロに手合わせを挑むのだった。

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