召喚実験が成功して戦力が増えることはいいことだ。
編成のパターンが増え戦地での対応力が上がるのはいいことだ。
しかし喚ばれるのは一癖も二癖も強すぎる英霊たちだ。人理のためにある程度妥協しているとはいえ調整には繊細な気配りが必要とされることもある。
故に戦力増強をマスターに単純に喜んでもらうためには陰ながらの調整が常に必要になるわけで。
その調整係の長はこの長いグランドオーダーが始まって以来、ずっとヘクトールが担っているわけで。
その難航度によっては今現在のように大絶賛に死んだ魚の目をしているようなヘクトールに出会うこともあるのである。
「ヘクトール大丈夫?ちょっと休んだら?」
「ん〜。もうちょっと懸念がありますかねえ」
「今回そんなにややこしいの?」
「まあ皆いい人なんですけどね、念のため。せっかく来ていただいたんだから少しは快適に過ごしてほしいですからね」
「それはそうなんだけどねえ」
食堂の片隅でヘクトールが何やら画面をたくさん開いてぐったりしているといたたまれない。
でも世界のためにとせっかく来ていただいたのに快適に暮らしていただけないのは問題だ。大変申し訳ない。だからヘクトールの尽力には大変ありがたいと常々思っているけれど。ヘクトールたちの苦労の上で何もせずに呑気に胡座をかいているのもなんだかなあと思ってしまう。かといって何か出来るわけでもないのだけど。多分自分が下手に手を出したら余計厄介なことになりかねないのも分かるので、申し訳なさばかりが蓄積されていく。
それにしてもこんなにくたびれてるヘクトールはいつぶりだろう。ここまで疲労しているヘクトールはなかなかない。随分前にリラクゼーションルームで虚無顔をして動物映像を眺めていた時以来ではないだろうか。なんとか癒やす方法があればいいのだけど。あの時はプラスで動物ぬいぐるみがあったわけだが、食堂に持ち込むわけにもいくまい。
「プリン食べる?」
「んー、いいかなあ」
「まあまあまあ。美味しいよ。今日は昔ながらのちょっと硬めのやつだよ」
手にしていたプリンを一口すくってほら、あーん。と差し出せばあーんと口を開いて食べてくれた。「美味しい?」と聞けば「美味しい」と返ってきた。
ささやかだけどヘクトールが喜んでくれることが出来るのは嬉しかった。楽しみにしていたプリンは全部ヘクトールにあげてしまおう。それが今の自分にとっての一番の嬉しいだ。
幸福に微笑みながら彼はプリンをすくってはヘクトールに与え続け「美味しい?」と聞けば「美味しい」と返ってくる。そんな幸福に彼の周りは華やかに花が咲き乱れ
「あいつ何新しい地獄を自分で作ってんだ」
その光景に殺気立つ通りがかりの目撃者たちの空気に気付かぬふたりに、これまた通りがかりのプロトクー・フーリンは呆れた声を漏らした。