最近、とあるマイブームができた。
スピカに魔法を習い始めて2ヶ月くらいだろうか、できることも増えてきて楽しくなってきた。
スピカというのは、私がパルデア地方で出会った色違いのムウマージ。元々は群れの中でもかなりのエリートだったらしいけど、今は群れを離れてナッペ山の頂上付近に小さな小屋を建てて生活してる。
え、私?えー...君ぃ...もしかして、この完璧瀟洒にして品行方正、立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花、頭脳明晰百花繚乱ウルトラスーパー大天才たるこのルナリアちゃんをご存知ないと? .....何、そのしかめっ面は...まぁいいや、私のこの寛大な御心に免じて許s
「ルナリアッ!!!!!!!」
...スピカが怒りながら駆け込んできた。
いや、スピカに足はなくて浮いてるわけだから、ここでは「駆け込んできた」よりは「浮き込んできた」の方が正しいのかな?でもそんな言い回し聞いたことないような...でも特性ふゆうだし.....
「貴女ねぇ、いくらある程度までは魔法で何とかなるからって流石にやりすぎよ...後始末も簡単じゃないのよ?マイブームだか何だか知らないけど、少しは自重してくれないかしら」
「だってここ、テレビこそあれど色んなジャンルの本があるわけでもないし実験施設があるわけでもないし、とにかく暇なんだもん」
「本ぐらい言ってくれたら買ってくるわよ...」
スピカは呆れたようにため息をついた。いやはや全く何も分かってない、呆れたいのはこっちだ。これだからワーカーホリックは...
「分かってないねぇ、本っていうのはね、これが欲しい!って言って買ってきてそれで満足するようなもんじゃないの。
大量の本を前にして、今日はこれを読もうかな〜それともこっちにしようかな〜ってあれこれ悩むところから読書は始まってるの。分からない?」
「分からないわよ。私は基本魔法関係の書籍しか買わないし読まないもの」
知ってる。本棚が完全にそうだもの。私が無限に本を注文するから少しはバリエーション豊かになったけれど、それでもジャンルの偏りが凄まじい。
オカルトもの、ミステリーもの、オカルトもの、ホラー、オカルトもの、ミステリーもの...曲がりなりにも私の魔法の師匠なのに、魔法理論の解説本とか原理や一般化についての論文とかそういうのすら無いのはどうなんですかスピカさん?
「と、話をズラさないでよまったく...」勝手にズレたのはそっちでは?
「とにかく、貴方のマイブームってものは結構お金もかかるし、力も必要だし、頭も使うし、とにかく色々私に不都合なのよ」
「スピカに不都合かどうかなんて私には関係ないじゃん」
「一応私が貴女を拾ってここで養ってあげてるのだから、少しは私の言うことを聞いてもらいたいのだけど」
「それについては感謝してるけど、それは私が今ここに弟子として居てあげてるって話じゃないの?」
そう、本来弟子というのは弟子希望が師匠に頼みこんでなるものらしい(そこら辺の本に書いてあった)のだけど、私とスピカの関係はちょっと違って、師匠側から「弟子になってくれ!」と頼まれているのだ、不思議なことに。
私が空港近くで倒れていたところを拾って助けてくれたのは感謝してるけど、その恩はもう充分返してると思うんだけどねぇ?修行自体もちゃんとやってるし...
「ぐっ...それは.....そうだけど.......」ほら見ろほら見ろ私悪くない。
「でも、それにしたってやりすぎよ...私が後始末にどれだけ悩んでるか知らないでしょう、どうしても帳尻が合わなくなって山に埋めてきたこともあるわ」
「まぁ、私の興味はバラすところまでだからね、事後処理くらいお願いしたって良いでしょ、面倒臭いし」
「その面倒臭いものを他人に押し付けるのは何とも思わないわけ???」
「思わない。現実は非情である。」
「あー頭来た、ちょっと表出なさい、実力行使で決めましょう」
「師匠が弟子に明らかに自分有利なフィールドで挑むの?プライド捨てた?」
このままでは魔法歴ウン10年もしくはそれ以上の大ベテランが歴2ヶ月の初心者をいたぶる初狩りが繰り広げられてしまう、ああいったいどうすれば師匠の醜態を晒さずに済むのだろうか...
いやぁ、こんな状況になってまで師匠の心配をする弟子たる私、やはり完璧瀟洒にして品行方...え、煽ってるだけだろって?.......はて、何のことだか
そういえば、肝心のマイブームが何なのかまだ言ってなかったね?ここまで出てきた情報をまとめると、
「ある程度魔法で何とかなる」
「後始末が大変」
「暇つぶしになる」
「お金がかかる」
「力が要る」
「頭を使う」
「いざとなったら残骸を山に埋める」
「バラすところまでは楽しい」
...私としては、そんなに力は要らないと思うけど...まぁいいや、皆はもう分かったかな?
さて、ここはいつもの修行場。結局私は師匠を止められず、初狩りに勤しむ古参の絵面を披露することになってしまった。しくしく。
「まずはその減らず口を塞いであげるわ」
不敵に微笑むスピカから、数多の熱線やら氷柱やら衝撃波やらが飛んでくる。いやぁいつ見てもこの撃ち方は流石元エリートのベテランだなぁと思わざるを得ない、これでもう少し性格が大人しかったら...
それにしても。スピカがここまでヒートアップする理由が私には本当に分からない。後始末ったってただバラしたのを元に戻すだけだし、頭を使うって言われてもそもそもこれ頭を使って金属の輪を外す玩具だし...だから私は答えてあげた。
「知恵の輪買ってきて何が悪いんだ────っ!!!」