担当ウマ娘とお出かけしたりしなかったりする話   作:野生の餡子

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ハルウララと商店街にお出かけする話

 蛁蟟が鳴くようになった七月の休日。俺は担当ウマ娘の息抜きがてら商店街でウィンドウショッピングをしていた。というのも、集中してトレーニングを積めるようになった彼女は自主練を始めたらしく、今度は逆にオーバーワーク気味になっていたからだ。

 

「ねえねえ、トレーナー!」

 

「ん……どうした? ウララ」

 

「えっとね、『にんじんたい焼き』食べに行こうよ!」

 

 ふと腕時計を見ると時間的にも丁度良く、

 

「じゃあ先にお昼ご飯にしよう。その後たい焼きを買いに行くか」

 

「えーっ! 今から行こうよ!『次の楽しみに取っておこう』ってトレーナー言ってたもん!」

 

 確かに次の楽しみに取っておこうと言ったし、その発言を有耶無耶にする気はさらさら無いが、昼飯をたい焼きで賄うのはそれはまた別問題というか。

 というのも、先月末に彼女と挑んだ『レジェンド☆スペシャルウィークへの挑戦!〜超特大盛ラーメンを完食せよ〜』とはまた別ベクトルで胃もたれする予感がひしひしとしたからなのだが。

 

「うーん、そうだな……お昼ご飯をしっかり食べてからたい焼きを買いに行くなら追加でにんじんアイスを2本買ってあげるってのはどうだ?」

 

「えぇっ!! にんじんアイス2本もいいの!? ほんと! えへへ……約束だよ、トレーナー!」

 

「……おう」

 

 若干の罪悪感に苛まれつつも、昼食を先にすることができほっと一息吐くと、隣からくぅと可愛らしい音が聞こえてきた。

 

「えへへ……お腹鳴っちゃった」

 

「そうだ、どこかオススメのとこってあるか?」

 

 片や常日頃から手伝いをし商店街で老若男女問わず人気の彼女、片や件のラーメン屋しか知らない俺。言うまでもなく彼女頼みになるのは当然だった。

 暫く体を左右に揺らし悩んでいた彼女だが、手をポンと叩くと、

 

「あのね、にんじんハンバーグがね、す〜っごくおいしかったよ〜!」

 

「じゃあ、そこにするか。ウララ案内頼んでもいいか?」

 

「うんっ! 任せて! よーし、トレーナーをエスコートするぞー!」

 

 彼女の案内に従い道なりに進むこと10分。商店街の隅にその店はあった。

 

「トレーナー、ここだよ! 早く入ろうよ〜!」

 

 そう言うや否や、彼女は戸を引き店内に入っていた。彼女の後を追うように入店すると、店内はどこかレトロな雰囲気を醸し出し、小洒落た喫茶店を彷彿とさせた。

 

 窓際の席に着き、彼女オススメのにんじんハンバーグを2人前注文すると

 

「ここね、グラスちゃんが教えてくれたんだ〜! なんかね、ふいんきがいいからって……えへへ」

 

「……そうだな」

 

 ここ最近はズタ袋を引き摺り回るゴールドシップを横目にコンビニ弁当を食べていたからか、より一層落ち着いた空間に感じられた。

 

 数刻してにんじんハンバーグが配膳されたのだが、

 

「…………」

 

「どうしたの? トレーナー」

 

「いや、メニュー表の写真よりだいぶ大きくないか?」

 

「あーっ! ほんとだぁ……よかったねトレーナー!」

 

「……ああ」

 

 にぱっと笑う彼女に「流石にこれは食いきれない気がする」なんて言えるはずが無く、なんとか完食した俺は暫くハンバーグは御免だと強く思った。

 

「わぁっ! トレーナーもお腹空いてたんだ!」

 

「……そうだな」

 

 「また件の大会に飛び入り参加するかもしれない」と思って昨日の昼からプチ断食をしてたのだが……まあ、敢えて言うほどのことでもないだろう。手持ち無沙汰になり、もきゅもきゅとハンバーグを口に運ぶ彼女を眺めるとハンバーグとこちらを交互に見つめ。

 

「はい、これトレーナーにお裾分け! お腹空いてるって言ってたから……えへへ」

 

「あ、悪い。凄い幸せそうに食べてるなってつい見ちった」

 

「うん、だっておいしいご飯食べると幸せいっぱいだもん!」

 

 会計を済ませ店から出ると、鼻唄交じりにスキップしている彼女の姿があった。

 

「トレーナー! こっちこっち!」

 

 上機嫌な彼女の背を追い数分経つと、たい焼き屋の屋台に着いていた。丁度昼時ということもあり空いているが、もう2時間もすればトレセン学園の生徒で長蛇の列ができるらしい。ソースはウララ。

 

「ウララ、たい焼きはいくつ食べたい?」

 

「えーっと……3つ!」

 

 にんじんたい焼き3つとなぜか売っていたにんじんアイス2本の支払いを済ませ、併設されたベンチに腰掛けた彼女に手渡す。

 

「はい、アイスとたい焼きな」

 

「やったぁー! トレーナーありがとう」

 

 いつも以上に瞳を輝かせると、袋から徐にアイスを1本取り出し

 

「はい、これトレーナーの」

 

「……2本とも食べて良かったんだぞ」

 

「ううん、だって一緒に食べた方がおいしいもん! ……えへへ」

 

 彼女の隣に腰掛けアイスを食べた後、ウィンドウショッピングを再開した。

 

※ ※ ※

 

 蜩の鳴き始めた夕暮れ、彼女を寮の前まで送り届けると。

 

「あ、キングちゃんが呼んでる! トレーナーまた明日ね!」

 

「おう、また明日」

 

 翌日の放課後、仕事に一区切りつけデスクワークで凝り固まった体を解していると、

 

「ねえねえトレーナー! あのね、昨日のお店で『第二回レジェンド☆スペシャルウィークへの挑戦〜超特大盛ハンバーグを完食せよ〜』って大会があるんだって! 」

 

「そうだな、今度はグラスワンダーも誘うか」

 

「うんっ! よーしレジェンドになるぞ〜! あ、それじゃあグラスちゃん誘ってくるね!」

 

「……っておい練習は!?」

 

 遠ざかっていく彼女の姿に短く溜息を吐くと、俺は頭を抱えた。

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