「知ってる天井だ…」
いつかのような何処かの某アニメの有名なセリフを、パクったようなセリフを吐き藤代拓美は目を覚ました。
「起きたのね…拓美」
目が覚めた後に一番先に目に入ったのは、自身が横になっているベッドの隣で椅子に座って、心配そうにこちらを見つめている母親だった。
「貴女はもう…ホント心配ばかりかけて…」
「…すみません」
「ホントにお前は…いや、スマン…怒るべき相手は犯人だったな」
次にそう言われた方を見れば、そこには母親の隣に立ち、同じく心配そうに見ている父親の姿があった。
事態を飲み込んだ拓美はこう答える。
「いえ…自分自身、考えが甘かったと思います。 素直に送迎を頼んでいれば、こんなことには…」
「いいえ、私達の方こそ、そこは強引にでも送り迎えをするべきだったと反省してるの。 今まであまり話す事が出来なかった貴女と、再びこうして話せるようになって…そんな貴女に嫌われたくないと思い、貴女の意見を尊重させてしまった事を今では凄く後悔しているのよ…」
「母さんの言う通りだ拓美…親ならば、あそこは折れてはいけない所だった。」
「っ父さん…母さん…」
そう言って自身の前で項垂れる両親からは、自分達の決断の甘さから今回の事態を招いてしまった事への悔しさが滲み出ていた。
そして、藤代拓美の両親に迷惑をかけたくないといった自身のわがままの結果、再び事件に巻き込まれてしまい、現状二人にそんな顔をさせてしまっている事への罪悪感から言葉をつまらせる拓美であった。
(結局、更に心配させることになってしまったな…)
そうやって拓美と両親はそれぞれに自分自身を責め続け、病室は暫くの間、静けさに包まれたのだった。
●
「あの、自分はどうやってここに?」
それぞれがようやく落ち着きを取り戻した頃、拓美は自身がどうやってここにたどり着いたのか疑問に思って質問した。
「友達に感謝するんだな…確か、大和田くんだったか?
彼が、拓美…お前のバッグから携帯電話を見つけ、そこから俺の携帯に電話を寄越したんだ。 帰りが遅くて心配していた俺達の元へ、(色々あって、今気を失っている状態ですが無事なので安心してください。ですが、自分1人では運ぶのが困難なので迎えに来てください)ってな。」
「バッグに…ですか?」
確か、自分のバッグはあのワゴン車の中に置き去りになっていたはずでは…?と、拓美は首を傾げる。
「ああ、しかし向かった先でお前は気を失っているわ、隣の大和田くんも、あちこち擦り傷だらけだわで、何があったのか聞けば再び事件に巻き込まれたと言うし……だが、だが本当に無事で良かった。そして…犯人が捕まって本当に安心した…」
未だ疑問が残る拓美に向かって、父親である広大がそう言って拓美の両肩を掴んだ。
「…はい、ありがとうございます。」
そう拓美が返事した後…再び病室は静けさに包まれていた。
「…でも、ホント良い子よねー大和田くん…もしかして拓美の彼氏だったり?」
しかしそんな中、突如放たれた母親からの爆弾に、拓美は顔をひきつらせこう答えるのだった。
「た・だ・の、クラスメイトです!」
_と。
●
あの後、病室にやって来た医師からは特に大事はなさそうなので、念の為に今日1日様子を見て、明日には退院して良いと言われた拓美は、一度帰って着替えとかを持ってくると言った両親がいなくなり、現在は1人病室のベッドの上に行た。
「やっぱ、ホントに自首したのか…」
両親が帰る前に、事件のあらましを聞きたいと警察が入ってきたのだが、拓美を襲った犯人である二人は既に逮捕されており、1人はあの時言っていた通り自ら出頭し現在は留置場の中、もう1人は骨折などの怪我により現在は意識不明の為、警察の監視の元、こことは別の病院のベッドの上にいるという話だった。
「めっちゃふっ飛んでたし、そりゃそーか」
その後の警察の話によると、出頭した犯人は二人の間のちょっとしたいざこざから仲間割れにいたり、頭にきて勢いのまま轢いてしまったと語っているらしかった。
そして、犯人の話の通りであれば、自分達が争ってる間に二人は逃げたと言っているが、間違いないか?…と、事実確認を求めに拓美の元へやって来たようであり、それに対し拓美は間違いないですと答えたのだった。
「ホントの事なんか、言えるかっつーの! …それに、言った所で誰も信じちゃくれないだろうし…」
そして、1人愚痴を溢していた拓美の元へ、コンコンという病室のドアをノックする音が聞こえてきた。
「藤代、入るぞ」
「お、おう」
と、聞き慣れた声が聞こえてきて拓美は慌てて返事を返した。
ガチャリ…と開かれたドアから入ってきたのは、今回の拓美救出の立役者である大和田拓海であった。
「…大和田」
「…随分と元気そーじゃないか? ドアの外まで独り言が聞こえてたぞ?」
と、デリカシーのかけらも無いセリフを吐いた大和田拓海を拓美は少し睨みつける。
「何しに来たんだよ?」
「なんだ? 自分が助けたクラスメイトのお見舞いに来ちゃいけないのか?」
そんな、人を煽るような態度の大和田拓海に…(なあ、俺ってこんなムカつく奴だったか?)と、入室してから今まで人の神経を逆撫でる事しかしていない、目の前の人物に拓美は、イラつきを押さえられずにいた。
「チッ、今回はありがとな」
「舌打ちか? 今、舌打ちしただろ?」
「うるせー、てかお前が持ってたっていう、おれ…自分のバッグ! あれはどうしたんだ? 確か、車の中に置き去りになってたはずだろ?」
もはや、大和田拓海に対して気を使う必要もないと感じた拓海は、荒々しい口調になりながら必死に一人称だけはキープしてそう質問した。
「口の悪い女だ…」
と、呆れながら大和田拓海は、それについての説明を始めた。
「あの後、お前が気を失った後に、あのオールバックの方の犯人がやって来てな。 忘れ物だって…無いと色々困るんじゃないかって言って、わざわざそれだけ持ってきて…置いて去っていったのさ。」
「なんとも…優しい犯人様だ…」
だったら、始めっからこんな事件なんて起こすなよ…と、拓美は皮肉たっぷりにそう言った。
「まあな、正直やっぱ殺されるんじゃないかと、ヒヤヒヤしたぜ」
大和田拓海もまた、オーバーリアクション気味に両手を広げてそう答える。
「でも、まあ…本当に助かったよ…ありがとう、大和田」
そして今度は、満面の笑みでそう言った拓美の顔から、気恥ずかしくなり目を反らした大和田拓海は、こう答えるのだった。
「お、おう。」
_と。
しかし、大和田拓海にはそれよりも、もっとずっと気になっている事があった。
「あ、ところで…あの浮いた車なんだが…」
「そ・れ・は、忘れろ。」
「……おう」
だがそれに対しては、先程よりもさらに深い笑みを造り黙らせる拓美なのであった。