「えー、今日は転校生を紹介する。」
季節は7月。
外は炎天下、うだるような暑さの中、キンキンと冷やされた教室内にそう言った声が響き渡った。
基本的に転校生と言えば、学期の始めや親の転勤の都合等により4月前後が多いため、変わった時期の転校生にクラス内はざわめきに満ち溢れていた。
「藤代っち、転校生だって! こんな時期に! 男子かな? 女子かな?」
「どうでしょうねえ…」
「あー、素っ気ない! まるで大和田くんみたい!」
「えぇ…」
元々の人格が同じなのであるから似ているのは仕方ないのであるが、いささか心外といったセリフを金田瑞希から言われた拓美であった。
(俺は、あんなに素っ気なくなかったし!)
と、心の中で悪態をつく藤代拓美も、色々ありはしたが、このクラスに来てから既に2ヶ月程の月日が経過していた。
隣で、朝から爆睡している大和田拓海に、自身の能力の話をして以降はこれといった災難に見舞われることもなく、今のところは平穏無事といった様子で日常をすごしていたのだった。
●
「それじゃ、入ってくれ」
「失礼します。」
と、担任のお決まりのセリフにより入室してきた転校生にクラス内の女子からはキャーッという悲鳴を挙がり、反対に男子の方からはチッというほぼ全員の舌打ちが重なるように発っせられたのだった。
「ちょっと、真弓! イケメンきたよ! イケメン!」
「はぁ!? いや、何処が?」
といった、廊下側の席でそう話す里中真弓と、その友人の会話が窓際の藤代拓美へと聴こえてくる。
相も変わらず、大和田拓海一筋な彼女のその反応を聞いた拓美は…(いや、自分で言うのもなんだけど何処が良いんだホントに?…コレだぞ?)…と、こんなにも騒がしいクラス内で未だ爆睡を続ける隣の男を見ては、謎が深まるばかりであった。
「それじゃ、自己紹介を頼む。」
「はい。親の急な転勤により、今日からこの高校に通う事になりました中村星司です。宜しくお願いします。」
担任の申し出により、そう挨拶をした男子生徒は170後半の長身で、スラリとした体型をしていた。
そして髪の色は茶色であり、前髪は目にかかるほどで、後ろはスッキリとした長さの髪型をワックスで馴染ませていた。
「まあ、そんな訳で急遽このクラスの仲間になる事になった、中村星司くんだ。 皆、仲良くするよーに!」
その担任の言葉に、藤代拓美や里中真弓といった約一部を除く女子生徒は『はーい!』と元気良く返事をし、反対に男子は『チッ!!』と、先程よりも強い舌打ちで返すのだった。
「おい男子…同じ男として気持ちは分からんでもない…分からんでもないが仲良くしろよー? …えーと、それで中村の席なんだが…」
男子生徒をそうやって宥めた担任の山本信之24歳(独身)は、隣にたたずむイケメンの席を探す。
すると…
「せんせー俺、彼女の隣がいーです!」
そのイケメン転校生、中村星司はいけしゃあしゃあと、教室の後ろで事態を静かに見守っていたとある女子生徒を指差したのだった。
「はっ??」
まさか自分が指されるとは思っていなかった藤代拓美は、突然の事態にらしくない驚きの声をあげ、クラス内もより一層ざわめきが大きくなる。
ザワザワザワザワ……
「あー、藤代の隣かー? まあ、ちょうど空いてるし良いぞ。 良いか、藤代?」
「えっと、はい…自分は別に構いませんが…」
「やりぃ!」
戸惑いつつもそう返す拓美に対して、嬉しそうに指を鳴らす転校生を見て、未だにざわめきが収まらないクラス内で、男子達はその男子生徒を怨みがましそうに睨み付けるのだった。
「中村星司です。 宜しくね、藤代拓美さん。」
「え? あ、はい。」
そして、自身の隣へと着席した中村星司からの挨拶に、(なんで、名前まで知ってるんだ?)…と、先程の担任とのやりとりからでは、自身の名前までは明かされていなかった事に違和感を覚えながら返事をする拓美であった。
「…あの? なんで自分の名前を?」
キーン、コーン、カーン、コーン…
だが、そう質問した直後に、1時間目の始まりを知らせるチャイムが鳴ってしまい、結局何故知ってるのか聞けずじまいでその場は終わってしまったのだった…。
●
「えーと、ゴメン藤代さん…教科書まだ無いんだ。見せてもらえるかな?」
「えっ?」
授業が始まって直ぐの事だった、拓美が返事をする間もなく、その生徒…中村星司はそう言って拓美の方へと机をよせて来たのだ。
「ありがと!」
人当たりの良さそうな笑顔でそういった彼に、拓美はなす術もなく「いいえ…」と返事をしてしまう。
カリカリカリカリ…
そうして、隣同士で授業を受けて15分位たった頃だろうか…
((…さっきの質問…やっぱり気になる?))
そう小声で、話しかけてきた中村星司に目を丸くして拓美は頷く。
((そっか…でも俺からしたら君の方が気になるんだよね…))
((?…それは、どういう……))
それに対して、中村星司は人当たりの良さそうな顔から一変して、目が笑っていないような不気味な笑顔になって、こう言うのだった…。
「藤代拓美さん…君は一体何者なんだい?」
_と。