陰実二次創作   作:邪道ガーディアン

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どうも邪道ガーディアンです。
できれば今回でアトミックまで行きたかったのですが、残念ながら無理でした。
タグにある通り、この作品は不定期更新です。GWの関係で今は少し楽なので毎日1話更新している状况ですが、これからは不定期になるかと思われます。


4、次期ラウンズ(笑)

 

 

「勝手に逃げられては困る」

 

 いつもの善人スマイルを浮かべたゼノン先生が僕らの前に立ちふさがった。

 

「なっ……なんであなたが……」

 

「ここが私の施設だからさ。私があの男に投資した」

 

 魔力封じの手錠とかこの地下の一角とか、めちゃくちゃお金がかかりそうだ。きっとかなり奮発してセットを用意したんだろう。悪の組織プレイをするために。そう思うと感動で涙が出てきそうだ。

 

「……! あぁ、そう。私、あなたのこと頭おかしいんじゃないかと思ってたの。やっぱりおかしかったのね」

 

「どうでもいいさ。君の血があればね」

 

「どいつもこいつも血の話……吸血鬼の研究でもしているのかしら?」

 

「君が知る必要はない。そこの被験体と一緒に来てもらおうか。ただし」

 

 ゼノン先生は剣を抜いて僕に向けた。

 

「シド・カゲノー、君はいらない。姉に適合者の疑いがかかっているからもしやと思って調べてみたが、無意味だった。だが知ってしまった以上、ここで死んでもらう」

 

 やっぱり姉さんがを誘拐した盗賊の関係者だったのか。本当に調べたのかどうかは分からないけど、仮に僕の血を調べていたんだとしたら、何も出てこないのは当たり前だ。だって抜かれた血の中にはほとんど魔力が入らないように操作したんだから。

 

「ひっ……!」

 

 ビビっているフリをした。ゼノン先生はこの国の中でも有数の魔剣士と評判で、そんな相手に剣を向けられたらモブは恐怖するに決まってる。

 

 どうだこの恐怖で思わず漏れてしまった感じの『ひっ』は。どこからどう見てもモブに見えるはずだ。

 

「させると思ってるの?」

 

 アレクシアが僕とゼノン先生の間に割って入り、さっき拾った剣を構える。

 

 うーん。ここでゼノン先生に切られて、あとで搬送された時に奇跡的に一命を取りとめたっていう展開にするのもありだけど、そうなると陰の実力者として登場するタイミングがない。よってこの案は却下だ。

 

「君こそ私に勝てると思っているのかい? しかも、そんなボロの剣で」

 

「あら、だったらその剣と交換してくれてもいいのよ?」

 

「剣は使い手次第さ。君も知っているだろう? 素人が振る名剣よりも逹人の振るナマクラが勝るって」

 

「だったらボロの剣であなたに勝てない道理はないわよね」

 

「あぁ。君が私以上の天才だったらね。だが、君は凡人だ」

 

 アレクシアは基本を愚直に積み重ねることによって強くなろうとしている。人はその剣を『凡人の剣』と呼ぶけど、僕はイマイチ理解できない。

 

 姉さんがアイリス王女を尊敬しているらしく、彼女の試合に無理やり連れて行かれたことがある。その時の剣を見たところ、あれは圧倒的な魔力量に任せて振う力任せの剣だ。それを『天才の剣』というのであれば、僕とはどうあっても相容れない。

 

 むしろ、僕は『凡人の剣』の方が好きだ。

 

「そう……凡人、凡人ねぇ……」

 

「ん?」

 

「そうね。確かに私は凡人よ。アイリス姉様と比べるとはるかに劣る才だわ」

 

「あぁ。本当はアイリスを連れて行った方が教団も喜ぶことだろう」

 

「けどね、もう自分を憐れむのはやめたの」

 

「そうか。身のほどを知ったか」

 

「えぇ。どうあがいても最初から持っているものが違うんだから、同じやり方で同じくらい強くなるなんて不可能だって気付いた。だから、私は私のやり方で剣の道を極めることにしたわ」

 

 どうやらいい方向に吹っ切れたようだ。うんうん。実にいいシーンじゃないか。暇つぶしでアレクシアと話していた話題が、こんなところで役立つなんて思わなかったよ。

 

「はははっ! 要は凡人の剣を極めるってことか。これはお笑いだ。少し見ない間に成長したじゃないか、愚かさが」

 

「なんとでも言いなさい」

 

「まぁいいさ。どのみち人格なんて最初からどうでもいいんだ。君の血と研究があれば、私はラウンズの第12席に内定する」

 

「ラウンズ? あなたみたいな頭のおかしい連中の集まりかしら?」

 

「教団の最高幹部ナイツオブラウンズ、今とは比較にならない富と名誉だ。剣術指南役なんていうくだらない役職ともおさらばさ」

 

「小綺麗に飾った仮面の下はただの俗物だったっていうことね。まるでポチみたい」

 

 さっきからめちゃくちゃ煽るね。ついでに僕にも飛び火してるけど。

 

「……少しお喋りが過ぎたようだ」

 

「そう? もっと喋ってくれてもいいのよ? この後あなたの背後にある教団とかいう組織について調査しなきゃいけないんだから」

 

「ならここからは次期ラウンズの剣を見せてあげよう」

 

 ゼノン先生、いやもうゼノンでいいか。もう教わる機会もないだろうし。

 

 ゼノンは剣に魔力を集中させ、上から下へと大振りした。

 

「はっ!」

 

 対するアレクシアは剣の側面でうまく斬撃の軌道を変え、ゼノンの剣の彼女の横を通って地面に激突することとなった。その隙にゼノンの顔面に向かって剣を振るアレクシアだったが、ゼノンは3歩分ほど後ろに下がり回避する。

 

「ポチ! 早く逃げなさい! 長くは持たないわ!」

 

 突如、ゼノンにビビって置き物になってるモブAの僕に、アレクシアは逃げるように言った。ここからの出口は2つあって、片方はゼノンがふさいでるけど、もう片方は普通に出られるはずだ。

 

 これは僕にとって都合がいい展開だ。これで一度アレクシアの目の前からいなくなって、モブAから陰の実力者にジョブチェンジできる。

 

 ただ、ここはテンプレを守るために

 

「で、でも、アレクシアを置いて行くなんて」

 

 あえて一度ためらっておく。

 

「いいから! 早く外に出て騎士団の誰かを連れてきなさい!」

 

 確かにアレクシアじゃまだゼノンは倒せない。でも、たぶん例えアイリス王女呼んできても勝てないと思う。

 

「わ、分かったよ! 必ず応援を呼んで来るよ!」

 

 そう言って僕はモブ式全力ダッシュで反対側の出口に向かっていく。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「応援を呼びに行かせるというのは悪くない判断だ。でも、それも間に合わなければ意味がない。彼が帰ってくるまで私を足止めできるとでも思っているのかい?」

 

「そんなの……思ってるわけない(………………)でしょ」

 

 実際、アレクシアはシドに逃げる口実を作っただけ。あの状况で2人とも助かるという望みはすでに捨てていた。アレクシアは知っていた。普通に戦っても勝てやしないということを。しかも、安物の剣ではシドが戻ってくるまで持つはずがない。

 

「なんだ、ただの当て馬かと思ったが思いのほか気に入っていたようだ。どうでもいいが」

 

 攻撃を再開するゼノン。今度もまた上から下に振り下げるだけの単純な一撃だった。ただし、魔力の量が先ほどよりも多い。

 

「ぐっ」

 

 今度は受け流すことができなかった。剣でそのまま受けたことで、アレクシアは両腕がしびれるのを感じ、ゼノンと距離を取った。

 

「よく防いだ。私に教わっていただけはある」

 

「そうね。あなたは狂人だけど、剣の腕は確かね」

 

 2人とも口調は余裕そうだが、アレクシアのは強がりだ。そもそも今のコンディションはお世辞にもいいとは言えないし、余裕を持てるような状況でもない。対するゼノンはまだまだ本気ではないといった様子で笑みさえ浮かべている。

 

「心にもないことを言う。じゃあ、今度は連続で行こう」

 

 宣言通り、次の攻撃は大振りではなく連続の斬撃だった。懸命に対応しようとするアレクシアだったが、徐々に増えていく切り傷 が現実を表していた。

 

 が、次の瞬間、ゼノンの頬に一筋の血い線ができた。彼女が反撃したのだ。彼は攻撃を止め、頬を手の甲でぬぐってそこに自らの血がついていることを確認した。

 

「なるほど、いつもよりはいい」

 

「はぁ、はぁ……どうも。別に嬉しくないけど」

 

 息が切れながらも彼女の目は死んでいなかった。次の行動を見逃すまいと睨んでいる。

 

「ところで、私がやけにあっさり彼を見逃したと思わないかい?」

 

「……!」

 

 一瞬の集中の乱れ。その隙にゼノンは突きでアレクシアの剣を折った。これで彼女は武器を失った。そして剣以外の武術の心得がないので、素手で戦うことも大した抵抗にはならない。つまり、アレクシアの負けだ。

 

「心の乱れは剣の乱れだ。やはりその程度か」

 

「こんなブラフに引っかかるなんて、私もまだまだね…………」

 

「ブラフ? 違う違う。この施設の2つの入り口には私の部下を配備してある。私ほどではないが腕利きを集めた精鋭さ。彼は地上に出る前に殺される」

 

「そんな、ポチ…………」

 

 ゼノンに敗れてもなお、超然していたアレクシアがここで初めて絶望の表情を浮かべた。

 

「これでわかっただろう? もはや君に希望はない。一緒に来てもらおうか。予定よりももう随分と遅い」

 

 一歩ずつ歩みを進めるゼノン。そして、それを睨みつつももはや 抵抗する力を持たないアレクシア。そんな二人の間に割って入る影が1つ。

 

「guuuu────────!」

 

 ミリアだ。言葉を失い話すこともできないが、ゼノンに威嚇しているということだけを伝わってくる。

 

「あなた……」

 

「なんだ? 被験体ごときがこの私に刄向かうつもりか? なら仕方がない。ここで廃棄しよう」

 

「やめなさい!」

 

 貴重なサンプルであるはずなのに、ゼノンは躊躇なく殺そうとしている。

 

 そんな時、彼の背後、つまりシドが逃げた方向からコツコツと足音が響いてきた。

 

 

 





アレクシアが少し早めに立ち直りました。原作では『君の剣が好き』というシドの言葉の真意を聞く間もなく誘拐されましたが、今回は会話する時間が十分にあり、シドがいることで精神的にも原作より苦ではないとい設定です。
ただし、それだけで大幅に強くなる訳ではないので、ゼノンには普通に負けます。

ところで、ゼノンってやけにラウンズを強調しますよね。某ハゲにしろ、某叛逆の騎士の名前を持つ人にしろ割とあっさり死んでるので、ラウンズって今のところあまり強いイメージはないのですが。

一応アンケートについて補足をば。お気づきの方も多いでしょうが、2の『死体のない殺人事件√』とは要するに原作通りシドが「お断りだ」って言ってアレクシアに斬られるだけのことです。なお、その後にシェリーと遭遇することになるので、1を選んだ場合は『この事件がなくなる=シェリーとフラグが立たなくなる』が成立します。また、1ではシェリーが闇堕ちしますが、2では総力を上げて闇堕ちを阻止します。

誘拐事件解決後のアレクシアとシドの関係についてのアンケートです。ちなみに1を選ぶとローズとシェリーにフラグが立たなくなる可能性が高いです。3が存在するかどうかは分かりませんが、それを選んだ場合は感想欄にて書いて頂きたいです。

  • 1、恋人関係続行√
  • 2、死体のない殺人事件√
  • 3、その他
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