ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

109 / 114

またお待たせしてすいません。今月はもう時間が取れなさ過ぎて今年最後の更新になるかもしれないです

まぁ、暗い話題はさておき、アニメでメガスターミー出てきましたね!アニメで見るとゲームで始めて見た時以上に面白くて笑っちゃいましたw


VSネモpart3

 

「ルガルゥ!」

「ハッサム!」

 

 ネモのモンスターボールからはオオカミポケモンのルガルガン(真昼の姿)、そしてジンのモンスターボールからはハッサムが飛び出し、バトルフィールドへと現れる。両者は目の前の相手を鋭い視線で睨みつけ、いつでも戦い出せる様に構えを取った。

 

「双方、準備は宜しいですね?それでは……バトル開始!」

「ルガルガン!『アクセルロック』!」

「ハッサム!『バレットパンチ』!」

 

 両者は互いに先手を奪おうと先制技を繰り出した。高速の頭突きと固く握られた鋼鉄の拳がバトルフィールドの中央でぶつかり合う。互角に見えたぶつかり合いであったが、相性とハッサムの特性『テクニシャン』により技の威力に差が生まれたのか押し合いに負けルガルガンは後方へと吹き飛ばされる。

 

「……力比べじゃ勝てないか」

 

 半ば分かっていた事ではあったが、相性や特性の差により純粋な力比べではルガルガンはハッサムには敵わない。ならば下手に勝負に拘らずに次の一手を打つべく行動を開始した。

 

「ルガルガン!『ステルスロック』!」

 

 ルガルガンは空中に幾つもの尖った岩を出現させるとその岩を透いてフィールドの上空へと移動させる。その様子を見たネモはモンスターボールを取り出し、ルガルガンを回収した。

 

(……思っていたよりも冷静だな)

 

 ネモの性格やこのバトルへの入れ込み具合から、勢いに任せた戦い方をしてくるとジンは予想していた。しかし、それとは対照的にネモは1体のポケモンに拘らず、次に繋がる技を使用するなど思っていた以上に冷静に判断を下している。

 

「ヨノワールお願い!」

 

 ネモが続いてフィールドに出したのは、てづかみポケモンのヨノワールだ。先日、ナッペ山でバトルしたハンベルのヨノワールと比べて遜色ない高レベルである事が、対峙しただけで伝わって来る。しかし、ヨノワールはハッサムに有利な炎タイプのポケモンではない。事前に調べた限りネモが公式戦で炎ポケモンを使った事はなく、この状況でも出さない辺り、持っていないと判断していいだろう。

 

「ヨノワール!『シャドーパンチ』!」

 

 ヨノワールはフィールドに降り立ったのと同時に右拳を前に突き出す。それと同時に拳の形をした影が飛び出し、ハッサムに襲い掛かる。

 

「『メタルクロー』で叩き落せ!」

「ヨノワール!『かげうち』!」

 

 ハッサムは鋼鉄の鋏を振りかざし、『シャドーパンチ』を打ちおろした。しかし、その瞬間を狙っていたかの様にヨノワールは影を纏わせた両手をフィールドに叩きつける。その影はハッサムの背後に回り込むと攻撃をし始めた。

 

(上手いな……)

 

 『シャドーパンチ』は必中技である為、回避が出来ない。その為、ダメージ覚悟で被弾するか相殺する他なかった。そのタイミングで先制技となる『かげうち』を使われては回避する事も迎撃する事も不可能だ。

 

「ハッ!?」

「今だよ!連続で『ほのおのパンチ』!」

 

 影からの攻撃を受け続け、苦しそうな声を上げるハッサム。ヨノワールはそんなハッサムに向かって両拳に炎を纏わせ突き進んでくる。効果抜群の『ほのおのパンチ』を受けるのは余りに危険だ。その為、多少、強引にでもこの場を離脱する必要がある。

 

「ハッサム!『ダブルウイング』で影を振り払え!」

 

 ハッサムは両翼を広げるとそのまま自身に襲い掛かっていた影に叩きつける。両翼に切り裂かれ、影はそのまま姿を消し去るが、炎の拳を構えたヨノワールはハッサムの直ぐ目の前にまで迫っていた。ハッサムは広げていた両翼を羽ばたかせ空中に飛び上がる事で攻撃を回避する。

 

「逃がさないで!『シャドーパンチ』!」

「『ステルスロック』を盾にしろ!」

 

 ヨノワールは再び、拳の形をした影を発射する。しかし、空中に飛び上がったハッサムは咄嗟に空中に浮いていた『ステルスロック』の背後へと旋回していく。必中技である『シャドーパンチ』は岩を次々に破壊し、ハッサムを追跡するが最後の岩にぶつかるのと同時に消えてしまう。最後の『シャドーパンチ』は岩に大きなひびを生み出すが破壊するには至らずハッサムにダメージを与える事は出来ない。

 

「ハッサム!『ステルスロック』に『たたきつける』!」

 

 ひびの入った岩を見た瞬間、ジンはハッサムに指示を出す。ハッサムは自慢の両腕の鋏を岩に叩きつけた。その瞬間、岩は砕け散り小さな破片となりフィールドへと勢いよく落とされていく。それはさながら『ストーンエッジ』を使用したかの様であった。

 

「ヨノワール!『シャドーパンチ』で防いで!」

 

 降り注ぐ岩の破片をヨノワールは両拳に纏わせた影を次々に打ち出す事で相殺していく。それでも完全には防ぎ切れなかったが、ダメージは最小限に抑える事が出来た。しかし、岩を防ぐので精一杯となり、正面にしか注意が行っていない。その隙を見逃すジンではなかった。

 

「『とんぼがえり』」

 

 岩の落下に紛れて地上に降り立っていたいたハッサムはヨノワールの真横に姿を現すと強烈な突撃を行う。効果はいま一つではあったが、『とんぼがえり』の効果により、ハッサムはモンスターボールへと戻って行った。

 

「ライボッ!」

 

 ハッサムと入れ替わる様にフィールドに現れたのはライボルトだ。ライボルトはフィールドに出たのと同時に『こうそくいどう』を発動し、自慢の脚力でフィールドを駆け抜けヨノワールへと接近していく。

 

「っ!?『シャドーボール』!」

 

 迫りくるライボルトに向けてヨノワールは両手から『シャドーボール』を次々に撃ち出した。しかし、ライボルトはそれを紙一重で回避し続け、遂にはヨノワールの直ぐ目の前に到達する。

 

「ヨノッ!?」

 

 ヨノワールは咄嗟に『シャドーパンチ』の構えを取ろうとするが、ライボルトの方が動きが早い。ライボルトは振り上げかかったヨノワールの腕に『かみつく』事で効果抜群のダメージを与えた上でその動きを強制的に止めに掛かった。

 

「ヨノワール!?振り払って!」

「させるか!『10まんボルト』!」

 

 ヨノワールは反対の腕を激しく動かしライボルトを振り払おうとする。しかし、ライボルトは牙を突き立てており簡単には振り払う事が出来ない。更にそこに追い打ちを掛ける様にライボルトは体から激しい電撃を放出した。

 

「ヨノッ!?」

 

 激しい電撃がヨノワールを包み込む。余りにも強力な電撃を前にヨノワールは反撃する余裕がなく耐えるだけで精一杯の様だ。しかし、特防の高いヨノワールと言えども何時までも電撃に耐え続ける事は出来ない。そう時間を置かず限界を迎えてしまい、その場で仰向けになり倒れてしまった。

 

「ヨノワール戦闘不能!」

 

 審判のクラベルはこれ以上の戦闘は不可能と判断し、そう宣言する。このバトルが始まって最初の戦闘不能のポケモンである。

 

「ヨノワール、ゆっくり休んで。流石だね……でも、まだまだここからだよ!」

 

 ネモはヨノワールを回収すると新たなモンスターボールを取り出しフィールドへと投げる。そこから現れたのは以前、ナッペ山でサーナイトとバトルを行った、しのびポケモンのゲッコウガだ。

 

「ここでゲッコウガか……」

 

 タイプ相性で見れば圧倒的にライボルトが有利である。フルバトルの終盤で仕方なく出すのならともかく、こんな序盤で相性の悪いポケモンを出すのは少々、不可解である。

 

「ネモ、何か狙っているな?」

「ふふっ……な・い・しょ!ジンの目で確かめてみてよ!」

 

 ネモは魅力的な笑みを浮かべながら、楽しそうにそう語り掛ける。何を狙っているのかまでは流石に予想出来なかったが、お楽しみが1つ増えたのだと思ったジンは小さな笑みを浮かべ、この先の展開に期待を寄せるのだった。

 

「では、お言葉に甘えるとしようか?……ライボルト!『10まんボルト』!」

「『あなをほる』で避けて!」

 

 ライボルトは再び、ゲッコウガに向けて強力な電撃を放つ。しかし、ゲッコウガは電撃が命中するよりも早くその場に穴を掘り身を潜めてしまった。

 

「狙いを絞らせるな。『かげぶんしん』!」

 

 ただ突っ立っていれば狙い撃ちされる。そう判断し、ライボルトは『かげぶんしん』によって、計6体に数を増やすとフィールドを縦横無尽に駆けていく。これで本体を狙うのは、かなり難しくなったと言えるだろう。

 

「コウガッ!?」

 

 ゲッコウガは直感を信じ攻撃を仕掛ける。しかし、6分の1の確率を当てるのは簡単な事ではない。結局、分身体を引き当てたようで攻撃は空振りしてしまった。

 

「そこだ!『10まんボルト』!」

 

 攻撃に失敗した今こそが好機である。ライボルトはゲッコウガに効果抜群の『10まんボルト』を放ち、一気に勝負を着けにいく。この時、バトルを見ていた誰もがゲッコウガの敗北を予感していた。しかし、その時ジンでさえも予想だにしなかった事態が起きる。

 

「コウガ!」

「なにっ!?」

 

 ライボルトから発せられた電撃は間違いなくゲッコウガに命中していた。しかし、当のゲッコウガはダメージなど欠片もなくピンピンしており、それどころか掌をライボルトに向け開き、反撃に転じる準備さえ行っている。

 

「『あくのはどう』!」

 

 ゲッコウガの両手から黒と紫の光線が発射され、真っすぐにライボルトに向けて突き進む。ライボルトは咄嗟に躱そうとしたが、電撃を無効化された事実が尾を引いていた様で動き出すのが一瞬遅れてしまい光線を直撃してしまう。ライボルトは素早さと特攻に優れてはいるが、決して打たれ強いポケモンではない。ネモのゲッコウガの様な高レベルのポケモンの攻撃を後もう1度受ければ戦闘不能になるのは避けられないだろう。

 

「ライボルト!?」

「決めるよ!全力で『みずしゅりけん』!」

 

 ゲッコウガは本来、2~5回連続で放つ水の十字手裏剣を一点に集中させた。通常であれば掌に納まるサイズの手裏剣が両手で掴まなくてはならない程の巨大なサイズへと変貌を遂げ、ライボルトへと向け投擲される。空中で勢いを増した巨大手裏剣は青く美しい輝きを放ち、ライボルトへと突き刺さった。

 

「ライボッ!?」

 

 手裏剣が命中したのと同時にライボルトの悲鳴と共に水滴がバトルフィールド全体へと広がり、視界を覆い尽くす。目元を手で拭い改めて視線を向けるとそこには、目を回し倒れるライボルトと背中を向け悠然と佇むゲッコウガの姿があった。

 

「ライボルト戦闘不能!」

「……ライボルト。ご苦労。休んでくれ」

 

 クラベルの宣言を聞き、ライボルトに労いの言葉を掛けモンスターボールへと回収する。ジンは僅かに悔しそうな表情を浮かべながらも笑顔となり、ネモを見つめた。

 

「ネモ……素直に認めよう。今のは完全に予想外だった。まさか、特性を変えて来るとはな」

「……やっぱり、ジンにはばれちゃうか」

 

 ネモのゲッコウガの特性はナッペ山でバトルした際に『げきりゅう』であった事は間違いない。しかし、今のバトルを冷静に振り返ってみれば、特性が『げきりゅう』から『へんげんじざい』へと変わっていたのは明らかである。

 

「『とくせいパッチ』を使ったな?」

 

 『とくせいパッチ』、数年前から流通が始まった道具でポケモンの特性を変更する事が出来るという優れ物だ。しかし、制作するのに特殊な技術が必要らしく特許の関係などもあり、流通数が少なく一般のフレンドリィショップで手に入る事が出来ないと言われる程の貴重品である。

 

「うん。正解。チャンピオンランクになった時にお父様がプレゼントしてくれたの」

「あぁ、確かスマホロトム会社の役員だったな?流石はお嬢様だ」

「何で知ってるの!?」

「このバトルに備えて情報収集したからな。それに割と有名だぞ?ネモがお嬢様で両親の事をお父様とお母様呼びしてる事とか」

「わーわー!それガラじゃないんだからやめてよ!?」

 

 ネモは大勢の前でお嬢様である事をばらされ顔を真っ赤にし恥ずかしそうに手を振る。その姿を見たジンは嗜虐心を強く揺さぶられたが、今はバトルの最中である為、この続きは後で落ち着いてからしようと決め一旦、冷静さを取り戻す。

 

「しかし、驚いたぞ。あの強力な『げきりゅう』を捨てなんてな」

 

 ゲッコウガの『げきりゅう』は強力な物だった。確かに『へんげんじざい』の方がバトルの幅は広がるが、『げきりゅう』であそこまで水タイプの技の威力を上げられるポケモンは決して多くはないだろう。それを捨て去るのは大きな決断であった筈だ。

 

「信じてたからね。ジンはきっと私達の事を研究し尽くして来るって、それを超えるならこっちも相応の手段を用意する必要がある。そう思ったんだ」

「その結果、ライボルトは倒されたか……」

 

 だが、これはライボルトの敗北と言うよりもジンの敗北と言い換えてもいいかもしれない。『とくせいパッチ』の存在を知っていながら、ゲッコウガ、いや、それ以前にネモのポケモン達の特性が変わっている可能性をジンは全く考慮に入れていなかった。

 

 あらゆる事態を想定していたつもりだったが、それでも読みが足りなかったと認めざるを得ない。まだバトルは序盤である為、巻き返しも可能だが、これが終盤であったなら流れを一気に持っていかれた可能性も十分にあった。

 

(俺自身の慢心のツケを払わされたか……ライボルト、すまない)

 

 互いに失ったポケモンは1体ずつ。ルガルガンにダメージを与えている分、ジンがやや有利だが僅かな差だ。ネモが『とくせいパッチ』を他のポケモンにも使用していれば作戦の大幅な変更が必要になる可能性もあり、油断できる状況ではない。

 

「だが、勝負はまだここからだ」

「うん!最後まで全力でバトルしよう!」

 

 

 

***

 

 

 

「ライボルトが負けた?」

「うそ……」

 

 バトルを一緒に見ていたリコとアンはライボルトが倒れた姿を見て呆然としながら、呟く。ジンのポケモンが倒されるのは以前のアオキとのバトルでも見ているが、その時、倒されたのはジンがセキエイ学園を出てからゲットした新参のポケモン達だ。セキエイ学園よりも前、ホウエン地方から連れ添った古参メンバーであるライボルトが負ける姿など余りにも予想外であったらしい。

 

「ネモ、凄いよ!」

「これ本当にいいデータが取れそうだな!」

 

 ロイとドットもジンの古参メンバーであるライボルトの敗北には驚いていたが、それ以上にネモへの賞賛とこの先の展望に興味を惹かれている様だ。しかし、彼らはバトルに夢中になる余り、テラパゴスの入っているバッグのチャックが開き、動き出そうとしている事に気付かなかった。

 

「パゴ?」

 

 テラパゴスは頭と足をバッグから出すとそのまま観客席から飛び降りて、そのまま校舎へと向かって歩き始めてしまう。

 

「……あれ?テラパゴスは?」

 

 その時、漸くリコがテラパゴスが姿を消している事に気が付いた。リコの声に反応して、ロイ・ドット・アンの3人も慌てて周囲を見渡し、校舎に入ろうとするテラパゴスの姿を何とか視界の隅に捉える事に成功する。

 

「いたっ!あそこだよ!」

「い、いつの間に……」

「追いかけよう!ごめん、アン、このバトルの映像撮っておいて!」

「ちょっ!?3人共!?」

 

 この研修にはエクスプローラーズが紛れ込んでおり、校内にも彼らの手先が残っているかもしれない。そんな状況でテラパゴスを1人でうろつかせるのは、あまりに危険だ。そう判断した3人はその場にアンを残して急いでテラパゴスを追い掛けて行く。

 

「~~~もう!仕方ないな……」

 

 アンとしてもテラパゴスの事は気になる。しかし、ポケモンリーグ出場を目指す彼女にとっては、ジンとネモのバトルにも大いに興味があった。板挟みという形になったが、最終的にはドットに頼まれた事もありこの場でバトルの行方を見守る事を選択し、観客席に残る事を決める。

 

「テラパゴス!どこ~?」

「ハァハァハァハァハァ……」

「もう!どこに行ったの~~!バトル終わっちゃうよ~~!」

 

 アンと一旦、分かれ校舎内に入った3人。テラパゴスの後を追跡し、生物室の近くまで来たのだが、そこで完全に姿を見失ってしまったらしい。まさか、エクスプローラーズに連れ去られたのではないか?そんな最悪の状況が頭によぎり、バトルの最中ではあるがジンに助けを求めた方が賢明なのではないかと誰もが思いながらも口に出せないでいた。

 

「パ~ゴ?」

「あっ!いた!」

「テラパゴス!無事で良かった~!」

 

 しかし、その心配は杞憂であった様だ。廊下の曲がり角からテラパゴスは姿を現し、リコ達の元まで歩いて向かって来る。見た所、怪我などもなくエクスプローラーズに何かをされた痕跡はない。その事実にリコ達は安堵する。

 

「……えっ?」

 

 テラパゴスを迎えようと一歩前に出たリコは生物室のドアの窓の様子が視界の片隅に入る。そしてそこには見覚えのある3人の人物がおり、その姿を見たリコは咄嗟に動きが止まってしまう。

 

「リコ?」

「どうしたの?」

「っ!2人共、隠れて!」

 

 リコはテラパゴスを抱きかかえると慌てた様子で身を隠す。ロイとドットは訳が分からなかったが、取り敢えず同じ様に身を潜めドアの窓から中の様子を探った。

 

「あれって!」

「エクスプローラーズ!」

 

 生物室の中にはオレンジアカデミーの制服ではなくエクスプローラーズとして活動する際の服装をしたサンゴとオニキス、そして教師として潜入していたアゲートの3名がいた。

 

「こんな所で何してるんだろう?」

「ちょっと待って」

 

 ドットはバレない様に慎重にスマホロトムのカメラ機能で室内をアップにした。室内ではアゲートが椅子に座り、複数のノートパソコンを操作している姿が映り、僅かにだが画面も見ることが出来た様だ。

 

「これは……ハッキングしてる!」

「ハッキング?一体何を?」

「多分、校長室だ。奴らテラパゴスのデータを盗もうとしてるんだと思う」

 

 テラパゴスのデータがクラベル校長のパソコンにある事は、リコ達も既に知っている。そして、今、研修終了を記念して開かれたバトル大会には全ての教師が参加し生徒の大半も注目している。そんな状況であればデータを盗む絶好の機会と連想するのは然程、難しくはなかった。

 

「2人共、どうする?」

「ど、どうするって止めないと!」

「でも、今はジンが結んだ同盟期間中だろう?今、こっちから手を出したらテラパゴスを無理やり奪いに来るかも」

 

 ドットの言う事にも一理ある。テラパゴスの安全だけを考えるなら、ここは見て見ぬふりをするのが最善である事は確かだ。

 

「……止めよう」

「リコ……」

「いいのか?危険かもしれないよ?」

「うん。だけど、あのデータは過去に危険な冒険を潜り抜けた人が残した大事なデータなんだと思う。それが奪われようとしてるのに、気付かないフリをするのは絶対に間違ってるよ!」

 

 過去の冒険者に対する敬意、彼女自身の優しさ、それとも潔癖さと呼ぶべきか分からない。だが、たとえ同盟を組んだ相手であってもリコには彼らの行いを見過ごすことは出来なかった。

 

「うん!分かった。僕も協力する!」

「仕方ないな……」

 

 リコの意見にロイとドットも賛同の意を示す。彼らも同盟の件で悩んではいたが、本音を言えばエクスプローラーズを止めたいと思っていたのだろう。

 

「チャー!」

 

 モンスターボールを取り出し、教室に突入しようとした正にその時、1体のポケモンがリコ達が来た通路とは反対側に現れ、大声を出し始める。

 

「ん?」

「なんだ、お前達か?」

「ん~?リコじゃん。なに?サンゴちゃんに会いに来たの?」

 

 アゲートが護衛の為にモンスターボールから出していたチャーレムの知らせにより、教室内にいた3人にリコ達の存在がバレてしまう。

 

「面倒な……任せるぞ?」

「了解した」

「あいよ~!やる事ないしジン君のバトル見られないし、鬼退屈してたから丁度いいや~」

 

 アゲートはデータを盗む為、その場に残る様だが、サンゴとオニキスはリコ達がいるドアの反対側から鍵を開け、廊下に出て来るとそれぞれモンスターボールからオニゴーリとキョジオーンを出しバトルの準備に入った。

 

「2人共、行くよ!」

「「うん!」」

 

 3人もそれぞれモンスターボールを取り出し、ニャローテ・アチゲータ・ウェルカモの3体をその場に出した。決して広くはない場所でこれだけの数のポケモンが出ると少々、狭くは感じるが相手に数の利を与える訳には行かないと判断した様だ。

 

「『マジカルリーフ』!」

「『かえんほうしゃ』!」

「『みずでっぽう』!」

「『ふぶき』!」

「『しおづけ』!」

「『サイケこうせん』!」

 

 3VS3の状況、互いに身動きが取り難い状況の為か接近戦ではなく遠距離技からバトルは始まる。廊下でぶつかり合った技の影響で窓ガラスが割れるが、それを気にしている余裕はその場にいるトレーナーとポケモンにはなかった。

 

 そして……そのバトルの光景を秘かに監視している人物がいる事にも気づいてはいない。

 

「……これは流石に想定外」

 

 監視している人物、それはジンに頼まれエクスプローラーズの動向を探っていたボタンである。彼女はジンの指示に従い、ある仕込みを終えた後もこうして秘かにアゲートの事をひっそりと監視し机の下に身を潜めていた。

 

(……手助けした方がええかな?)

 

 ボタンの心情としてはリコ達の力になりたいと思っていた。しかし、ジンからはこの後は何もせずに隠れているだけでいいとも言われている。想いを寄せる相手の指示と自分の個人的感情のどちらを優先すべきか板挟みとなり、ボタンはその場でじっくりと考え始める。

 

(……うん。もうちょい様子みよか)

 

 見た所、リコ達のポケモンはエクスプローラーズにも引けを取っていない。バトルしている環境もあってか膠着状態に入っており、この状態が暫く続きそうだ。それならばボタンが下手に介入する必要はない。そう自分に言い訳しつつまずい状況になったら、直ぐにでも動き出せる様にモンスターボールに手を伸ばすのだった。

 





半端になりますが今回はここまでです。ジンとネモがバトルしている裏でリコ達もバトルしている描写を入れましたが、次回は普通にジンのバトルに戻ります

前書きでも書きましたが、12月は忙しすぎて小説を書く時間の確保があまり出来ていません。今月中にもう1度更新したいですが、恐らく間に合わないと思いますのでご了承ください。

☆9
tjgtxnxさん、楠木祐希さん

☆10
ラーイさん

高評価ありがとうございます

作品の要望などあれば気軽にメッセージを送ってください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。