お待たせして申し訳ありません。
最近、本当に忙しすぎて仕事から帰ったらすぐに寝る日々の繰り返しで、なかなか執筆時間が確保できませんでした。完結まで続けるつもりですが、今後も時間がかかってしまうかもしれません
※0時投稿したつもりでしたが、遅くなりました
リコ達がテラパゴスを追い、エクスプローラーズと対峙していた頃、ジンとネモのバトルは続いていた。互いにポケモンを1体ずつ失い、序盤戦はほぼ互角である。
「頼むぞ!ドラピオン!」
ライボルトを失い、ジンは新たなモンスターボールをフィールドへと投げつける。そこから現れたのは、通常よりも巨大なサイズを誇るオヤブン個体のドラピオンだ。
「アオキさんとのバトルに出てたドラピオン……本当に大きい」
ネモはドラピオンの大きさに興味を示してはいる。ジンのポケモンという事もあり警戒はしている様だが、ゲッコウガを交代するつもりはない様だ。
「ドラピオン!『どくびし』だ!」
「ドラァッ!」
ドラピオンは上空へと顔を向け口から紫色の毒の塊を撃ち出した。その毒の塊は上空で破裂し、バトルフィールド全体に広がり落ちて行く。
「『どくびし』!?厄介な技を!」
これでネモのポケモンは交代の度に毒状態にされてしまう。主力級の1体であった筈のライボルトを倒されたというのにジンには、全く揺らぎが見られない。ネモにバトルの主導権を渡さない様にする為の嫌らしい一手を即座に打ってきた。
「呆けている暇はないぞ!続いて『ふきとばし』だ!」
「なっ!?」
「ドラァァァァァァァァァッ!」
ドラピオンは両腕を振りかざし、強力な突風を引き起こす。この技そのものにはダメージはないが、ゲッコウガはその威力に負け、モンスターボールに強制的に戻されていく。それに伴いネモのモンスターボールがランダムに反応し、最初にバトルに出したルガルガンがフィールドへと出された。
「ルガッ!?」
ルガルガンは『どくびし』の効果により、毒を浴びてしまう。こうなってしまった以上、ルガルガンが瀕死となるのは時間の問題である。
(まずい……)
毒に苦しむルガルガンを見てネモは内心でそう呟く。『どくびし』は特殊な技を使用するか毒タイプのポケモンをフィールドに出す事により打ち消すのが一般的な方法だ。しかし、ネモにはそんな技を覚えたポケモンはおろか毒タイプすら所有していなかった。
「ジン、流石だよ……」
徹底的に研究され尽くされている。だからこそ、この様な一手を仕掛けて来たのだと理解し、改めてジンの恐ろしさや周到さにネモは驚愕する。それと同時に自分が認め、ライバルになりたいと思っているトレーナーの凄さを見て嬉しそうにしていた。
「でも、こっちだって負けられない!『ドリルライナー』!」
毒により時間制限が出来てしまった。その為、効果抜群の技で一気に勝負を決めに行こうと決断したらしい。しかし、それはジンにとって予想の範囲内の行動でしかなかった。
「受け止めろ」
まるで弾丸の様に回転しながら突き進んでくるルガルガンに対し、ドラピオンはその場でしゃがみ込み回避する。そしてルガルガンが技を解き、地面に降りようとしたタイミングを見計らって尻尾を操作し鷲掴みにし動きを封じた。
「『クロスポイズン』!」
ドラピオンはその状態のまま頭部を180度回転し、ルガルガンを視界に捉えると腕をクロスし毒を集中させるとX状の光の刃を形成し、腕を振り抜いて刃を飛ばした。
「ルガッ!?」
ハッサムとのバトルで既にダメージを負っていたルガルガンには、ほぼ止めと呼べる攻撃だった。更なる攻撃をジンは指示しようとしたが、それよりも早く毒が全身に回ってしまった様でルガルガンはドラピオンの尻尾に挟まれたまま静かに気絶してしまう。
「ルガルガン戦闘不能!」
「毒状態になったからと言って勝負を焦り過ぎたな」
「返す言葉もないよ……ごめんね。ルガルガン」
ネモは己のミスを認め謝罪しながらルガルガンをモンスターボールへと回収する。これで2体目のポケモンの敗北だ。少しは焦りを見せるかとジンは予想していたのだが、ネモは大きく深呼吸する。そして、びしっと自分の頬を両手で叩き気合を入れ直し始める。
「ふぅぅぅぅ……よしっ!」
バトルフィールドを挟んでいても分かる程度には頬が赤く染まっている。自分の過ちを認めた上でこの敗戦を引きずらずに次のバトルに活かそうと強く決意している事が表情から伝わって来ていた。
「もう一度お願い!ゲッコウガ!」
再びバトルフィールドに現れたゲッコウガ。先程のルガルガンと同様に『どくびし』の効果で毒状態にされてしまう。しかし、そのリスクは承知の上でネモはゲッコウガを選んだ様だ。
「ごめんね。ゲッコウガ……辛いだろうけど耐えて」
「コウガッ!」
「ありがとう!『ちょうはつ』!」
ゲッコウガはドラピオンに向けて中指を突き立てる。その効果により、ドラピオンは暫くの間、攻撃技以外の使用が出来なくなってしまった。ジンとしては、出来る事なら全てのポケモンを毒、もしくは猛毒状態にするまでの間、『ふきとばし』を使用させるつもりでいたのだが、それを読まれてしまったらしい。
「仕方ないな……『ミサイルばり』だ!」
巨体なドラピオンではゲッコウガ相手に素早さでは勝ち目が薄い。ドラピオンが得意とする接近戦に持ち込むのが難しいのは目に見えている。ならば『ちょうはつ』の効果が消えるまでの間、遠距離から攻撃しチャンスを待つべきと判断した様である。
「『あなをほる』!」
ドラピオンの両腕の爪から放たれた無数の針をゲッコウガは『あなをほる』によって地中に逃げ込む事で回避する。
「来るぞ!警戒しろ!」
ドラピオンは両腕を広げ、更に尻尾を操作し周囲を警戒していく。そのまま待つ事、数秒後、ドラピオンは自分の体の真下の地面が僅かに振動し始めた事に気が付いた。
「ドラッ!」
「ドラピオン!飛べ!」
ドラピオンの合図に合わせジンは咄嗟に指示を出した。ドラピオンは尻尾を地面に叩きつけ、宙へと舞い上がる。それとほぼ同じタイミングで穴を掘り進んでいたゲッコウガが現れたが、攻撃は空振りに終わってしまう。
「『クロスポイズン』!」
「っ!『あなをほる』で逃げて!」
ドラピオンは毒の刃を生み出し真下にいるゲッコウガに撃ち出すが、間一髪のタイミングでゲッコウガは再び地中へと逃げ込んで行く。
「失敗だったかぁ……」
「ドラピオンの視野の広さを見誤ったな。伊達に『砂の悪魔』なんて異名はついていないぞ」
両腕に加え、尻尾までも武器とする上に首は180度回転する。砂漠で生まれ育った事もあって、地面の動きにも敏感だ。上下左右どこから攻撃をしてこようともドラピオンには対応するだけの適応力が存在する。この守りを抜けてドラピオンに攻撃をぶつけるのは至難の業である。
(どうすれば……)
ネモは必死に脳内であらゆる作戦を考えた。ゲッコウガの残り体力を考えれば長期戦は厳しい。しかし、生半可な攻撃をすれば先程の様に躱されてしまい、今度こそカウンターを喰らう可能性は大いにある。そうなれば、ゲッコウガは間違いなく倒されてしまうだろう。
(このままじゃ、まずいのに……)
今回、ネモの用意したポケモンの中には『どくびし』を消す技を持ったポケモンは1体もいない。どれも自慢のポケモン達だが、絡め手やサポート技よりも単純なレベルや技の強さに重点を置いて育てた者達ばかりなのだ。このままゲッコウガが倒されれば残りのポケモン達も毒に侵され交代する事すらままならなくなってしまう。そうなれば勝率はぐんと下がるのは目に見えていた。
(どうすれば……)
そんな時、ネモの視界にゲッコウガが『あなをほる』を使用した個所が入り込んでくる。穴は既に埋っていたが、よく見るとその周辺だけ心なしか『どくびし』の効果が薄まっている様に見えた。
(やるしかない!)
学園で教えられるバトル学を基準に考えればあり得ない事かもしれない。しかし、今のネモとゲッコウガには他に打てる手がないのも事実。この閃きに賭ける事に躊躇いはなかった。
「ドラピオン!次は逃がすな!」
「ドッラァッ!」
『ちょうはつ』により、ドラピオンは防御技を使う事が出来ない。効果抜群の地面タイプの技だが、ダメージ覚悟の上でカウンターを狙うのが今、出来る最良の手段と言えるだろう。しかし、ジンの目論見とは裏腹にゲッコウガは予想外の一手を打ってきた。ゲッコウガはドラピオンとは全く関係のない場所から姿を現すと再び『あなをほる』を使用し、地面の中に身を隠して行く。
「ゲッコウガ!連続で『あなをほる』!」
「『ミサイルばり』!」
右後方に姿を現したゲッコウガに向かってドラピオンは『ミサイルばり』を撃ち出した。しかし、ゲッコウガは穴を掘り終えると直ぐに頭を引っ込めてしまう。まるでモグラ叩きの様であるが、こうまで逃げに徹されてしまうと攻撃を当てるのは中々、難しい。
(何のつもりだ?)
ネモ達の狙いが分からなかったが、何かを企んでいる事はジンも直感で理解できる。毒状態になったゲッコウガでは長期戦に耐えられないのは明らかにも拘わらず、こうして一見、無意味に時間を浪費している事から見て何かを狙っているのは間違いない。
「…………っ!?そういう事か!」
一見、謎にしか見えない行動だったが、ジンは漸くその真意に気が付いた。ゲッコウガが何度も穴を掘り進めた事でバトルフィールドはまるで畑の様に耕されている。それに伴いドラピオンがまき散らした『どくびし』が全て地中の下へと押し込まれてしまった。これではネモが新たにポケモンを入れ替えても毒は地中の下でしか発動せず、意味がない。
「ジンってよくこういう事するでしょう?ちょっと真似してみたんだけど、どうかな?」
「全く……面白い事を考えるな。見事としか言いようがないな」
本来であれば『どくびし』は特定の技などで消すのがセオリーなのだが、ネモとゲッコウガはそれを無視した従来のバトルでは有り得ない戦法を用いる事でバトルフィールドを作り変えてしまったのだ。これにはジンも素直に感心せざるを得なかった。
だが、その代償は大きかった様である。
「コウ……ガ」
「ゲッコウガ!?」
毒状態だったゲッコウガは体力の限界が来たのか地中から出るのと同時に片膝を突いてしまう。何とか立ち上がろうとするが、力が足りない様で中々、立ち上がる事が出来ない。これを好機と捉えたジンは直ぐに指示を出し始める。
「終わらせるぞ!『クロスポイズン』!」
「っ!?力を振り絞って!『みずしゅりけん』!」
X状の毒の刃と水の十字手裏剣がぶつかり合う。しかし、不十分な態勢から放った『みずしゅりけん』では『クロスポイズン』に拮抗するだけの力はなかった様だ。『クロスポイズン』は『みずしゅりけん』を瞬く間に打ち破り、ゲッコウガに命中する。
「コウガッ!?」
ゲッコウガは攻撃が直撃するとそのまま後方へと吹き飛ばされ、生徒達が座っていた観客席に衝突する。ゲッコウガは観客席にもたれかかるような姿勢のまま動かない。近くにいた教師の1人がゲッコウガに近づき意識の確認をすると、クラベルに向けて首を横に振って合図を送る。
「ゲッコウガ戦闘不能!」
「ゲッコウガ……貴方は役目は十分果たしてくれたよ。ありがとう」
ネモの言う様にゲッコウガはジンのポケモンを1体倒している。更に奇想天外な方法で『どくびし』を無効にする事まで成功した。十分すぎる程に役割を果たしたと言えるだろう。
「パーモットお願い!」
ゲッコウガを回収したネモが新たにバトルフィールドに出したのは、パーモットだ。嘗てネモと初めて出会った時にバトルしたポケモンだが、こうして相まみえると以前よりも強くなっているのは明らかだ。
「パーモットか。こうしてバトルするのは久しぶりだな」
「パーモットは、あの頃よりもずっと強くなってるよ?」
「あぁ、そうだろうな。伝わって来てるよ」
バトルフィールドに降り立ったパーモットはドラピオンを真っすぐに睨みつけている。その全身からは、必ず勝利するという強い意志と鋭い闘気が立ち上がっていた。
「ふっ……いい目をしてるな」
ジンはそう呟くが表情に焦りはない。それどころか、むしろこの痺れる様な殺気を浴びせられても尚、楽しんでいる様にすら見受けられる。
「ここから逆転するよ!」
「パモッ!」
パーモットは力強く叫ぶと、両前脚に電撃を集中させる。その電撃は淡く光りながら収縮し周囲の空気を震わせていく。
「『でんこうそうげき』!」
ネモの指示と同時に、パーモットはその場を駆けた。一瞬の内に姿が消え去り、雷鳴の様な轟音を伴いながら、一直線にドラピオン目掛けて突進していく。
「っ!ドラピオン!受け止めろ!」
この攻撃は躱す事が出来ない。そう判断し、咄嗟に防御の指示を出す。ドラピオンは両腕をクロスさせ、更に尻尾を体の前面に出す事で防御を固める。しかし、パーモットは進路を僅かに逸らし、地面を滑る様にドラピオンの無防備な背後へと回り込んだ。
「なにっ!?」
以前、繰り出した様な直線的な突撃ではない。ジンの予測を上回る軌道変更だ。電撃を纏った拳がドラピオンの背中へと叩き込まれる。
「ドラッ!?」
重い音と共にドラピオンの巨体は数メートル吹き飛ばされる。地面に爪を立て何とか踏み止まるが、その衝撃は確かに効いていた。
「まさか、最初からその技で来るとはな……」
「ジンのポケモンが相手だからね。最初から飛ばして行くよ!」
ネモの言葉に応える様に、パーモットは地面を強く踏み込み、即座に距離を詰める。先程の様な爆発的な速度ではなかったが、その分、無駄のない動きと途切れない攻勢がそこには見られた。
「『インファイト』!」
鋭い踏み込みから放たれる拳と蹴りの連撃。防御するドラピオンをパーモットは着実に追い込んで行く。
「迎撃しろ!」
ドラピオンは両腕を振るい、尻尾をを振りかざす事で間合いを制そうとする。しかし、小回りの利くパーモットはそのすべての攻撃を全て紙一重で躱し、僅かな隙を狙って拳を叩き込んでくる。ドラピオンの硬い装甲に拳が食い込み、確かな手応えを感じたのかパーモットの表情には自信が宿って行く。
「いいよ!そのまま!」
息つく暇すら与えない連続攻撃。それはドラピオンの体力を削る為の正攻法でありながら最適解でもあった。しかし、ドラピオンもこのままでは終わらない。
「まだだ。まだ耐えろ」
ジンの短い指示に応える様にドラピオンは防御を固める。パーモットの攻撃も無限には続かない。防御を固め、攻撃が切れる瞬間を必死になり耐え続ける。
「パモッ……」
「ドラァッ!」
そしてその時は訪れた。攻撃の手が緩み背後へと後退しようとした瞬間、ドラピオンは傷つく体に鞭を打ち、その巨体で突進していく。技とも言えない代物だったが、衝撃は大きくパーモットを吹き飛ばすには十分な威力だった。
「『ミサイルばり』!」
空中に飛び上がったパーモットに向けて無数の針が放たれる。回避する事もかなわず、何本もの針が突き刺さった。
「パモッ……!」
苦痛に顔を歪めながらもパーモットはまだ倒れない。地上に降り立つとその場で踏み止まり、拳を強く握りしめる。
「まだ……まだ行けるよね!」
「パモッ!」
ネモの問いかけにパーモットは当然!とばかりに返事をすると勢いよくその場から駆け始め、ドラピオンに向かって来る。
「その根性、嫌いじゃない」
ジンはその様子を鋭い視線で睨みながら、そう呟く。
「だが……既に動きは見切った」
ドラピオンの尻尾が、不意に地面を叩いた。砂煙が舞い上がり、パーモットの目にも砂が入り込む。パーモットは思わず目を瞑ってしまうが、その隙をジンは見逃さなかった。
「捕らえろ!」
ドラピオンの尻尾が意思を持ったかの様に動きパーモットの体を拘束する。パーモットは必死に藻掻くが、両腕を塞がれては為す術もない。
「『どくどくのキバ』!」
顎を大きく開き、毒を纏わせた牙がパーモットの体に深く食い込んだ。
「パモォォォ!」
パーモットから苦痛の叫びが上がる。全身が強張り、力が抜けて行くがはっきりと分かる程だ。
「っ……まだ!」
それでもパーモットは諦めない。最後の力を振り絞り尻尾の締め付けを僅かに緩めると無理やり体を捻ってその場から脱出し、地面へと転がり出る。
「パモ……!」
「いける……まだ届く!」
ネモに応える様に、パーモットは前へと踏み出し、最後の一撃を放とうとする。
だが……
「いや、残念だが届かない」
ジンの声が静かにその場に響いた。
「『クロスポイズン』」
パーモットよりも遥かに長いリーチを活かし、X状の毒の刃が振り抜かれる。
「パモッ!?」
激しい衝撃が襲い、パーモットはそのまま前のめりに崩れ落ち動かなくなった。数秒の沈黙の後、クラベルは勝敗を告げる。
「パーモット戦闘不能!」
ドラピオンの勝利だ。しかし、ドラピオンもまたパーモットの連続攻撃を受け続けた事で足は震え、今にも崩れそうな程に疲弊している。
「ありがとう。パーモット」
「本当にギリギリだったな。ご苦労、休んでくれ」
ジンとネモは同時にポケモン達をモンスターボールへと回収する。勝負はドラピオンの勝ちだが、既に体力も限界。これ以上の戦闘は不可能な様である。
「やっぱり、凄いねジン。それにドラピオンも」
「そちらもな。パーモットの成長には驚かされたよ」
以前、バトルした時のパーモットはどこまでも直球勝負という印象が強かった。しかし、今のパーモットはバトルスタイルそのものに変わりはなくとも相手の隙を狙う工夫が出来る様になっている。これだけでも対戦相手はかなり嫌がるだろう。
「ありがとう!だけど……まだここからだよ!」
「あぁ、最後まで楽しもう」
ジンとネモは同時にモンスターボールを取り出し、フィールドに投げつける。ジンが出したのはボーマンダ、そしてネモが出したのは、体中を黄金の鱗で覆った、うろこポケモンのジャラランガである。相性ではネモが不利なのだが、ポケモンを変更する様子は見られない。
(という事は最後のポケモンはやはり……)
それはネモが最初に貰ったとされる相棒ポケモンである。相性的にもボーマンダと相性が悪く、このタイミングでも交代しないという事は最後の1体がそのポケモンである事は間違いないだろう。
(まぁ、今は最後のポケモンよりも目の前のこいつだ)
相性ではボーマンダの方が有利だが、相手は同じドラゴンタイプを持つ600属のジャラランガだ。決して油断して勝てる様な相手ではない。ここは確実に勝つ必要がある。そう決意したジンはポケットからテラスタルオーブを取り出した。
「っ!初手から……!」
「行くぞ!星々の様に輝け!『テラスタル』!」
テラスタルオーブが強い輝きを放つ。エネルギーが一気に収縮しチャージが完了するのと同時に、ボーマンダの頭上へと投げつけた。テラスタルオーブが開き、無数の結晶がボーマンダを包み込む。結晶が弾け体をクリスタルの様に輝かせ、頭上の王冠にはドラゴンの首と翼を模したジュエルが飾られていた。
「飛べ」
ジンの指示を受け、ボーマンダは地面をけり上げ勢いよく上空へと舞い上がる。大空を自在に旋回するその姿は、まるで空そのものを支配しているかの様だ。
「逃がさない!ジャラランガ!『スケイルノイズ』!」
「『りゅうのまい』だ!」
ジャラランガは息を大きく吸い込み、龍の咆哮を放つ。衝撃波が空を裂き、ボーマンダを包み込もうとする。しかし、ボーマンダは翼を翻し体を回転させると、衝撃波の隙間を縫う様に見事に回避して見せた。
「ボダァッ!」
攻撃を回避しただけではない。竜の闘気が高まり、ボーマンダの素早さと攻撃が一段階上昇する。更に言えば、旋回しながら高度を上げて行くその動きは流れる様に美しくポケモンコンテストでも通用する程の物だった。
「させない!『ドラゴンクロー』!」
このまま距離を取られては攻撃は二度と命中しない。そう直感したのか、ジャラランガはその場で大きく飛び上がり、巨大化させた爪を振り上げる。しかし、それは高度を上げ続けるボーマンダには命中せず空気を切る音が響いた。
「まだだよ!そのまま『スケイルノイズ』!」
空中で再び咆哮が上がる。準備不足の為、先程よりも威力はやや低いが、空気を震わせた。ボーマンダは翼を持ち上げ衝撃を受け流すが、僅かに体勢が揺れる。その隙を見たジャラランガは冷気を拳へと纏い始めた。
「今だ!『れいとうパンチ』!」
冷気を纏った拳がボーマンダの翼へと突き刺さる。翼の一部分が凍り付き、バランスを崩したボーマンダは上手く飛ぶ事が出来ず、そのまま地上へと降下していく。
「今なら決められる!もう一度『れいとうパンチ』!」
ジャラランガは全身全霊で突き進む。ここで確実に勝負を決める、その覚悟が伝わって来る一撃だ。
「勝負を急ぎ過ぎたな。悪い癖だぞ」
しかし、ジンはボーマンダの目の前に迫って来たジャラランガを冷静な眼差しで見て静かに呟いた。
「『テラバースト』!」
ボーマンダのテラスタルジュエルが砕け散る。それと同時にボーマンダの口にエネルギーが集まり青白い炎となり放射された。至近距離で放たれた竜のエネルギーが、ジャラランガを真正面から飲み込んだ。
「ガァァァァァァァッ……!」
悲痛な叫びを上げると、ジャラランガは力尽きバトルフィールドに大の字になり倒れて行く。体中に焼け跡を残し目をグルグルと回している姿を見れば戦闘継続が不可能なのは明らかだ。
「ジャラランガ戦闘不能!」
600族同士のバトルはここに決着を迎える。ボーマンダはゆっくりと立ち合がり、翼を広げた。弱点の氷タイプの技を受け、ダメージは負っている様だが、瞳にはまだ余裕が残っている。
「『れいとうパンチ』で決めたい気持ちは分かるが、焦り過ぎたな。せめて『スケイルノイズ』にしていれば『テラバースト』を回避できる可能性もあったぞ」
「……そうだね。チャンスだと思ったら、考えなしに突き進んじゃう。私の悪い癖だ」
しかし、ボーマンダの片翼を凍らせる事が出来たのは大きい。少なくともこれでボーマンダの得意とする空中でのバトルは出来なくなった。これだけでも十分な戦果と言えるだろう。
「戻ってジャラランガ」
「ボーマンダ、戻ってくれ」
ジンとネモはそれぞれ自分のポケモンを回収すると新たなモンスターボールを取り出した。ジンは負傷したドラピオンやボーマンダを含めても5体残しているが、ネモは次が最後のポケモンである。
「最後まで諦めない!ここから逆転するよ!」
「最後はお前だ。頼むぞ!」
ジンが出したのは相棒であり、手持ちの中で最強のポケモンのジュカイン。そしてネモが出したのは、マジシャンポケモンのマスカーニャだ。ニャオハの最終進化形な上にジンの事前調査によるとネモの相棒ポケモンという情報もある。いづれにしても油断できる相手ではないのは確かだ。
「行くよ!マスカーニャ!」
「ニャァッ!」
しなやかな身のこなしで現れたマスカーニャは、赤い瞳で真正面からジュカインを射抜く。ジュカインもそれに応える様に鋭い視線を向けている。
「ネモ。悪いが、最初から全力で行かせてもらうぞ!」
「当然!むしろ、それ以外ありえないでしょ!」
ジンは胸元のペンダントに触れ、そしてネモはテラスタルオーブを取り出した。互いに出し惜しみをする気は一切無い様である。
「ジュカイン!限界を超えろ!」
「光れ!輝け!私の最高の宝物!」
ペンダントのキーストーンに共鳴しジュカインが首に巻いたスカーフのメガストーンが輝き始める。それと同時にネモはエネルギーの収縮を終えたテラスタルオーブをマスカーニャの頭上へと投げつけた。
「『メガシンカ』!」
「『テラスタル』!」
光に包まれジュカインの姿が変貌し、無数の結晶が砕け頭上に複数の花が咲き誇る王冠を被ったマスカーニャが姿を現した。
「ジュッカァァァァァァァッ!」
「行くぞ!『リーフブレード』!」
ジュカインは咆哮を上げると同時にその場から駆け出した。両腕の草を深緑の刃へと変えるとマスカーニャに向かって一直線に突き進む。
「『トリックフラワー』!」
突如、マスカーニャにどこからともなくスポットライトが当たる。その後、指を鳴らすと周囲に浮いていた花が姿を消しジュカインの真上から花形の爆弾が雨の様に降り注ぎ始める。
「撃ち落とせ!『タネマシンガン』!」
ジュカインはその場で動きを一時停止すると空中の花の爆弾に狙いを定め、口から種を銃火器の様な勢いで次々に発射していく。正確無比な射撃により、空中にあった爆弾は全て消え去ったが、その瞬間を狙っていたかの様にジュカインの目の前に新たな花の爆弾が現れる。
「っ!?ガードだ!」
ジンは思わず回避を指示しそうになるが、この距離では、もはや間に合わないと直感する。ジュカインもジンの指示に従い、咄嗟に体の正面で腕をクロスさせ防御を固めた。
「ジュカァァッ!?」
ダメージを最小限に抑える事には成功したが、その代償は当然あった。テラスタルにより威力を上げた『トリックフラワー』の爆発に負け、ジュカインはその場から遥か後方へと吹き飛ばされていく。
(……厄介な技だな)
空中から大量にばらまくやり方もあれば、今の様に不意打ち気味に1つの花爆弾を生み出す事も可能な様だ。しかも、『トリックフラワー』は必中技な上に急所に当たる強力な技であり、回避は不可能。その名に恥じない厄介な技の様である。
「ジュカッ!」
吹き飛ばされたジュカインは空中で回転すると華麗に着地し受け身を取る。その後、自身の判断で『こうそくいどう』を発動し、マスカーニャへと接近していく。
「『でんこうせっか』!」
「もう一度『トリックフラワー』!」
距離を取っていては『トリックフラワー』の的になるだけと判断したジンは速やかにジュカインに新たな指示を出す。ネモも負けじと再度、『トリックフラワー』の指示を出したが、マスカーニャが指を弾く時間すら与えず、疾風と化したジュカインの一撃が決まる。
「速いっ──!?」
ジュカインは持ち前のスピードに加え、先程使用した『こうそくいどう』で素早さが上がっている。更に先制技である『しんそく』の如し『でんこうせっか』を使用した今、目で追う事すら困難であった。
「『リーフブレード』!」
「『じゃれつく』!」
深緑の刃と、戯れるように振るわれた腕が激突し、乾いた衝撃音がフィールドに響いた。
「ニャッ!?」
草・ドラゴンタイプのジュカインに『じゃれつく』を使う選択は悪くなかった。しかし、この勝負は先に『でんこうせっか』を命中させて勢いに乗せていた分、ジュカインに軍配が上がりマスカーニャの体勢が僅かに崩れる。
「そのまま押し切れ!」
ジンの指示に応えるように、メガジュカインは地面を蹴り、マスカーニャの懐へと深く踏み込む。背中の葉が帯電したかのように閃き、全身から鋭い圧が放たれる。
「連続で『リーフブレード』!」
斬撃が風を裂き、上下左右から襲いかかる。回避を重ねるマスカーニャだったが、完璧には捌ききれない。一閃、また一閃。深緑の刃が残像を伴って振るわれ、フィールドの空気そのものを切り裂いていく。マスカーニャは身を低くし、ステップでかわし続けるが、攻撃の密度が違った。
「ニャァッ……ッ!」
刃先が肩口をかすめ、草の結晶が砕け散る。草タイプの技は効果が今一つではあるが、メガジュカインの攻撃力はそれを上回っていた。
(速い……しかも一撃一撃が重い)
接近戦では『リーフブレード』の連続攻撃により、マスカーニャが圧倒的に不利である。ネモは一瞬だけ目を伏せ、そして即座に決断する。
「……距離を作るよ! マスカーニャ!」
その声に、マスカーニャが即座に反応した。
「目の前に『トリックフラワー』!」
「ニャッ!」
指を弾く動作と同時に、マスカーニャの目前、それこそ、殆ど零距離と言っていい位置に花形の爆弾が出現する。
「なにっ!?」
既に『トリックフラワー』の爆発の威力、規模などをジンは把握していた。あの距離ではジュカインだけでなくマスカーニャもダメージを負う事は避けられない筈だ。
「ジュカイン!離れろ!」
「ジュッカ!」
メガジュカインは咄嗟に後方へと跳躍する。地面を強く蹴り、刃を引きながら距離を取った直後、低く、重い爆音がフィールドに響き渡った。
「ニャァッ……!」
至近距離での『トリックフラワー』。マスカーニャ自身も爆風をまともに受け、体が後方へと押し出される。結晶の王冠が激しくきらめき、草の粒子が舞い散った。
だが、その爆風こそがネモの狙いだった。
マスカーニャは空中で体勢を立て直し、そのまま後方へと着地する。一方、メガジュカインも距離を取ることに成功し、両者の間に明確な間合いが生まれた。
(仕切り直す為とはいえ、無茶な事をする……)
しかし、心で思った言葉とは裏腹に、この一見すると無茶な戦法をジンは好意的に見ていた。無茶である事に変わりはないが、不利な状況から脱するという点だけで見れば悪くはない。何よりも以前のネモにはなかった勝利に対する飽くなき執念が伝わって来ていたからだ。
「ははっ……ネモ!君とのバトルは本当に面白い」
「っ……うん!私もだよ!」
「だからこそ、俺達も全力で行かせてもらう。ジュカイン!」
ジュカインはジンの声に呼応し、口元に『エナジーボール』を生み出す。草のエネルギーの塊である光球をジュカインはそのまま飲み込み、己の力へと変える。両腕の葉、草のアーマー、そして巨大化した尻尾にエネルギーが集中し深い緑色の輝きを放ち始める。
「ジュッカァァァァァァァァッ!」
ジュカインから発せられる強大なオーラを前にネモとマスカーニャは思わず、一歩引いてしまいそうになる。しかし、このまま黙って負ける訳にはいかない。その強い決意の下、ジュカインを真っすぐに睨みつけた。
「先手を取る!『トリックフラワー』!」
「ニャァッ!」
マスカーニャの指が弾かれ、大量の花の爆弾がジュカインに襲い掛かる。しかし、ジュカインは一切動じる事なく、静謐な程に冷静に、それでいて鋭い視線で爆弾を捉えながら──トレーナーの指示を待つ。
(行ける!)
ネモは確信する。これで倒しきれるとは思えないが、それでもあれだけの爆弾が直撃すれば流石のジュカインでも大ダメージとなるのは確実だ。そうすればまだ勝負は分からない。
しかし、ネモのそんな思惑は叶う事なく潰える事となる。
「『ソーラーブレード』!」
ジュカインは纏っていた草のエネルギーを一気に変換し、右腕の愛刀へと集束させる。その結果、瞬く間に右腕の得物は太陽の力を帯びた巨大な光刃と化した。居合切りの如し刹那の抜刀の後、空中にあった全ての爆弾が一刀両断に斬り払われる。その風圧は、トレーナーゾーンに居るネモにまで届く程であった。
「嘘っ!?」
使用までに時間のかかる『ソーラーブレード』を一瞬で使用した事、『トリックフラワー』が全て破壊された事、様々な有り得ない現象を目の当たりにし、ネモは思わずそう叫んでしまう。
「ジュカイン!」
「ジュカァッ!」
ジュカインの攻撃は止まらない。花の爆弾を切り裂いた太陽の光刃の次なる標的は、既に間合いに入っている。
「ニャァッ!?」
驚愕のあまり未だに立ち直り切れておらず、ネモは指示が出せなかった。その為、マスカーニャは独自の判断でその場から大きく飛び上がる事で太陽の刃から逃れる。その瞬間、ジュカインは『ソーラーブレード』を取りやめ、マスカーニャに背を向け始める。
「しまった!?」
ジュカインの姿を見た瞬間、ネモは次にどの様な攻撃が繰り出されるのかを察した。それと同時に空中に逃げたマスカーニャには既に逃げ場がないという現状を理解する。
「『リーフストーム』!」
「っ!?『テラバースト』!」
ジュカインの尾が切り離されると、まるでミサイルの如し勢いで射出された。それに負けじとマスカーニャもテラスタルジュエルが砕け散り、緑色の光線が口から放たれる。2つの技は衝突し、フィールド全体を揺るがす衝撃が走った。地面が悲鳴を上げ、風圧だけで観戦席の空気が震える。
しかし、拮抗はほんの一瞬であった。
「……っ!」
マスカーニャの『テラバースト』が、わずかに押され始める。互角に見えた力のぶつかり合いは、徐々に差を露わにしていった。草テラスタルによる強化は確かに強力だ。しかし、ジュカインのメガシンカ、そして『エナジーチャージ』による強化はそれを優に超えていたらしい。
「ニャァァァ……ッ!?」
光線が押し返され、ついにマスカーニャの前で爆ぜる。爆風と草のエネルギーの奔流に飲み込まれ、マスカーニャの体が大きく宙を舞った。
「マスカーニャ!?」
マスカーニャは爆風で地面に叩き落とされる。それと同時に結晶は砕け散り、従来のマスカーニャの姿へと戻って行った。その姿を見たクラベルは静かに目を閉じ、宣言する。
「マスカーニャ戦闘不能!よって勝者ジン!」
一拍の静寂を挟んで、観客席にいた生徒達から一斉に歓声が上がる。
「うおおおおおっ!!」
「すげぇ……最後のぶつかり合い、鳥肌立った!」
「メガジュカイン、強すぎだろ!」
「ジン先生!おめでとうございます!」
「マスカーニャもヤバくなかった!?」
「ネモ、最後まで一歩も引かなかったよな……!」
歓声、拍手、歓喜の叫びが一斉に巻き起こり、空気を震わせる。生徒たちは立ち上がり、観客席から身を乗り出し、今見た激闘を互いに語り合っていた。
歓声の中心で、メガジュカインは静かに胸を張り、トレーナーのジンは片腕を上げ勝者としてフィールドに立っていた。そしてネモは、倒れたマスカーニャを見つめながら、悔しさと満足が入り混じった表情で微笑む。
「ネモ……ありがとう。最高の勝負だった」
ジンの言葉に、ネモは悔しそうに、けれどどこか晴れやかな笑みを浮かべた。
「うん。最後まで全力だったよ」
エース同士、出し惜しみなし。だからこそ、この結末に後悔はない。だが、その思いとは裏腹に、ネモの肩が小さく震える。
「……っ」
唇を噛み、必死に堪えようとする。しかし溢れ出した感情は止められず、一筋の涙が頬を伝って落ちた。
「え……?」
「ネモ……?」
その異変に、観客席がざわつく。
「な、泣いてる?」
「ネモが?」
「負けたから、なのか……?」
困惑と驚きが入り混じった声が、波のように広がっていく。さっきまで歓声に包まれていたスタジアムは、まるで息を潜めたかのように静まり返った。だが、ネモは顔を伏せたまま、小さく首を振る。
「ごめん。違うの……悔しいのもあるけど……」
ネモは目元を拭いながら、胸元をぎゅっと掴む。
「……こんなに本気でぶつかったの、初めてだったから。楽しくて、苦しくて……最高だったから」
その言葉に、ジンは一瞬だけ言葉を失い、そしてゆっくりと歩み寄った。迷いはなかった。ジンはネモをそっと引き寄せ、強すぎない力で抱きしめる。驚いたようにネモの体がこわばるが、すぐに力が抜け、額をジンの胸に預けた。伝わる体温。落ち着いた呼吸。それだけで、不思議と胸の奥が静まっていく。
「……ありがとう。ここまで戦ってくれて」
「……うん」
しばらくして、ジンはそっと体を離し、ネモの目を正面から見据える。
「ネモ。君は……俺のライバルだ」
その一言に、ネモの目が見開かれた。
「同じ舞台に立って、同じ強さを目指して、何度でもぶつかりたい相手だ」
一瞬きょとんとした後、ネモは涙の跡を残したまま、いつもの勝気な笑顔を浮かべる。
「……それ、ずるいよ」
そう言って笑うが、胸の鼓動はまだ早いままだった。さっき抱きしめられた時の感触が、妙に頭から離れない。
(……あれ?)
視線を逸らしながら、ネモは自分の中に生まれた違和感に気づく。尊敬でも、悔しさでもない。名前の付けられない、別の感情。
「……ジン」
「ん?」
「私達さ……ライバル、なんだよね?」
自分でも意図の分からない問いだ。ジンは少し首を傾げ、それからいつも通りの落ち着いた声で答えた。
「当たり前だろ。最高のライバルだ」
その言葉に、ネモの胸がきゅっと締め付けられる。
(……それだけで、いい筈なのに)
ライバル。その関係を求めていたのはネモ自身だった。しかし、ただ1つ、確かなことがある。この人には……ジンにはもうトレーナーとしてライバルとして負けたくない。そして、ネモ自身まだ気づいてはいなかったが、ほんの少しだけ、異性としても。
ネモは顔を上げ、挑戦的な笑みを浮かべた。
「次は絶対、私が勝つから。覚悟しといてよ?」
「望むところだ」
再戦を誓い合う2人の間に流れる空気は、確かに以前とは違っていた。ジンはネモを1人の強敵として、紛れもないライバルとして認めている。その視線に真正面から向き合うネモは、胸の奥がわずかに熱くなるのを感じ、気づけば頬をほんのり赤く染めてジンを見つめていた。
ジンとネモのバトル決着!新年一発目ですが、相変わらずジンが女性を口説いてますね……書き始めた当初はそんな予定じゃなかったのに、どうしてこうなるんだろう?
☆9
ノーラ・バーンさん、鴨凹さん
☆10
カクリツさん
高評価ありがとうございます
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