ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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フリードたちに護衛の依頼をするって、リコって意外とお金持ちの生まれなのかな?


ライジングボルテッカーズ

 

「ん~~~~~」

 

 窓から差し込む朝日を受けて、ジンは体を伸ばしながらゆっくりと目を覚ます。

 

「……あれ?」

 

 見慣れた寮の自室ではない。知らない天井だった。ゆっくりと起き上がり部屋を見回し、ここがどこかを思い出す。

 

「……ああ、そうだった」

 

 ここはブレイブアサギ号の一室、この船の人たち≪ライジングボルテッカーズ≫の船長のフリードがジンの為に用意してくれた部屋だった。ベッドから降りると、部屋の中にある荷物の中から着替えを取り出し、私服へと着替えていく。

 

 なぜ、ジンが未だにこの船に乗り、部屋まで与えられているのか、その理由を説明するには昨日のアメジオとのバトルが終わった後までさかのぼる必要がある。

 

 

 

***

 

 

 

 アメジオとのバトルを終え、ジンはボーマンダに乗り事前に聞いていたブレイブアサギ号のある港まで向かっていた。

 

「見つけた。あそこだ」

 

 船が巨大なこともあり、港付近まで来ると船はすぐに見つかった。さらに近づくと波止場にはリコとニャオハ、ジュカインがいるのが見えてくる。

 

「…あいつら、なにやってるんだ」

 

 リコもジンの存在に気づき、大きく手を振っている。ニャオハもその横でジャンプしながらジンを待っている。ジュカインが護衛についているとはいえ、その姿からあまりにも狙われているという自覚が欠落しているように思える。やがて船の近くまで来るとボーマンダと共に地上に降り、リコに近づく。

 

「なぁ、リコ…」

「ジン!」

 

 ジンはリコに対し苦言を吐こうとするが、その前にリコがジンに抱き着いてくる。

 

「……リコ?」

「よかったぁ……よかったよぉ……」

「…………」

 

 余程心配だったのか涙ぐんだ声でそう語るリコ、苦言を吐こうとしていたジンであったがその姿を見て何も言い出せなくなってしまう。

 

「悪い…心配させたか?」

「……ううん。ジンなら大丈夫だって信じてた……信じてたけど…」

 

(……ど、どうすればいいんだろう…)

 

思わずリコの背後にいる相棒に助けを求める視線を送るが、ジュカインはあからさまに面倒くさそうに見た後に抱きしめる様にジェスチャーで伝えてくる。

 

(……本当にこれで、あってるのか)

 

 ジンはゆっくり、リコの体に手を回し抱きしめると片腕で頭を背後からゆっくり撫でまわす。

 

「あぅ…」

「…俺は大丈夫だよ」

 

 リコは優しい女の子だ。囮役を引き受けた以上、自分の事を心配しているとは思っていたが、ここまでの反応をしているのを見るとジンは罪悪感を感じずにはいられなかった。

 

「信じてくれてありがとう、リコ」

「そんな…お礼を言うのは私の方だよ。ジンが…ジンがいてくれたから、希望をなくさずにいられた…ジンが頑張ってくれたからニャオハを取り戻せた。だから………ジン、本当にありがとう!」

 

 リコは両目に涙を浮かべながらも笑顔でジンに感謝を告げる。その笑顔は学校で何度か見た笑顔とは程遠く、輝いてみえた。ジンはその笑顔を呆けたように見つめ続けることしか出来なくなっていた。しかし――

 

「あ~……邪魔して悪い。そろそろいいか?」

 

 リコの背後から来た、フリードたちによって空気が一瞬のうちに変わっていく。

 

「最近の子たちは進んでるんだな~」

「マードック、その言い方おじさんくさいわよ」

「船に来た時から若干、そんな空気は感じてたけど、ここまでとはね」

 

 ジンとリコの姿を興味深そうに見ながら感想を言い合う面々、その言葉を聞きリコは自分がどれだけ大胆なことをしていたのかを理解する。

 

「お前ら、付き合ってたのか?それなら、ジンがあそこまで頑張るのも納得だな」

「ち、違うんです!」

 

 フリードたちの存在で正気に戻ったリコは、慌ててジンから離れると言い訳をし始める。

 

「わ、私は、ただジンが心配だっただけで、べ、別に付き合ったりとかそんなんじゃ……ジンもなんとか言って!」

「………………」

 

 付き合っていないのは事実だった。しかし、今のジンにはそれを正面から否定することに対して拒否感が芽生え始めていた。

 

「なにか言ってよ~~!」

「はいはい、そこまでだ。もう飛ぶ準備できたからエクスプローラーズが追ってくる前に引き上げるぞ」

 

 未だにエクスプローラーズは近くに潜んでいる可能性がある。フリードの言うようにできるだけ早くこの場を離れる必要があるだろう。少しだけ冷静さを取り戻したジンとリコはその言葉に従い船へと戻っていく。

 

 

 

***

 

 

 

 その後は、予想以上に早くニャオハの救出が済み、当初は船の修理が終わっているのかなどの心配もあったようだが、メカニックのオリオを筆頭にマードック、モリー、そして船のポケモンたちによる総出の活躍もありなんとか修理を終え、エクスプローラーズの追撃を受ける前に出航することに成功した。

 

「……それじゃあ、最初からリコの護衛の為に来てたんですか?」

「ああ、リコのお母さんからの依頼でな」

 

 船が出航すると、ジンはフリードたちからようやく、彼らの本来の目的を説明される。ちなみに、リコは照れてしまったのか出航と同時にブレイブアサギ号の船首にまで逃げてしまった。

 

「あれ?やっぱり、言ってなかったか?」

「言ってませんね」

 

(それが目的なら一番最初にあった時に言ってほしかった)

 

 そうすれば、少なくともリコの不安の一つはそうそうに解消できていたかもしれない。悪気はないのだと分かっていても、そう思わずにはいられなかった。

 

「フリード…」

「あんたってやつは…」

「まぁ、そのことは置いておいてだ。俺たちは仕事を受けた以上、リコをパルデア地方の実家まで送るつもりだ。ジン、お前はこれからどうする?」

「俺は……」

 

どうするべきか…ジンには2つの道がある。1つはここで別れて学校に戻る道だ。しかし、ジンはこの道を選ぶつもりはなかった。学校に戻ったところでリコの事を心配しながら過ごすのはご免だろう。そうなると2つ目の道しかない。

 

「リコの選択次第ではあるんですが、彼女があなた達と一緒に行くことを決めたら、俺も旅に同行させてもらえませんか?」

「それでいいのか?多分、またエクスプローラーズともやりあうことになるぞ」

「望むところです」

 

 アメジオにも宣戦布告をしてしまったばかりだ。あそこまで言っておきながら逃げるなどと言う選択肢は存在しない。

 

「いいんじゃないの?私もジンがアメジオとバトルしてるの見たけど、その子とジュカイン、かなりの強さだよ」

「ああ、あのアメジオとバトルして無事に帰還してきたんだ。ジンの実力は既に証明されてる。覚悟ができてるなら俺から言うことはない」

「フリードさん…」

「これから、よろしくなジン!」

 

 フリードはジンに向かって手を伸ばそうとしたその時、船首へとつながる扉が開き、ニャオハを抱えたリコが出てくる。

 

「おぉ、リコ」

 

 リコは先ほどよりも落ち着いたようだが、ジンを見ると少しだけ顔を赤くしている。

 

「あの…皆さんに…ジンにもお話があります」

 

 リコはジンを含めた甲板にいた全員に向かって話し出す。

 

「こんな事言うの今更なんですけど、皆さんの事信じてみようと思います」

「なんだ?疑ってたのか?」

 

(そりゃ、普通は疑うよな…)

 

 エクスプローラーズに続く形で突然、現れ目的も告げずにバトルを始めて、行き先すら教えてもらえない。これで信用できるのはジンの様に少し、変わった見かたができる者だけだろう。

 

「だって!何の説明もないし……その…見た目も怪しいので…」

 

 フライトジャケットのフリード、ツナギのオリオ、髪に変わった剃り込みを入れた巨漢のマードック、看護服に黒タイツのモリー、緑の衣服に釣竿を持ちまるで仙人のようなランドウ、なかなかバラエティ溢れる恰好だった。

 

「私に何が起きてるのか、私にも分からない…ペンダントの事とか、なぜ狙われるのか知りたい…だから、だから…もう少しだけ私に付き合ってください!」

 

(そうか…決めたんだな…)

 

 ならば、ジンの答えは…いや、ジンだけではない。ここにいる全員の答えは既に決まっていた。

 

「そうか…なら、改めて引き受けよう。最初から、そのつもりだったしな」

「当然、俺もだ」

「いいんですか!ジンも…しばらく、学校に行けなくなるかもしれないのに」

「置いてけぼりにされる方が困るよ。それにペンダントの事も含めて気になることも多いしね」

 

 ペンダント、ペンダントとリコとの関係、エクスプローラーズの目的、不明な点があまりにも多すぎる。このまま帰ったのではジンは気になって夜も眠れないだろう。

 

「ああ、ペンダントの謎は俺達も知りたい。俺達の使命はポケモンの謎、世界の謎を解き明かすこと、人呼んで≪ライジングボルッテカーズ≫だ!」

 

 それこそが、彼らの正体。ライジングボルテッカーズ、ジンとリコが今後関わっていくことになる集団であり、その目的にはなかなかロマンを感じるものがある。

 

「そういう人たちだったんですか?」

「あれ?言ってなかったか?」

「聞いてません」

 

(……もう、何も言わないでおこう)

 

 本来なら一番最初に名乗るべきところだろう。しかし、フリードのこの悪癖はどうやら治りそうにもない。一緒に旅をしていく以上、ジンたちが慣れていくしかないのだ。

 

「おいおい」

「本当に何も説明してない…」

「そりゃ、私達やばい集団じゃん」

「悪い悪い…まぁ、それは置いといてだ。何はともあれ、よろしくなリコ、ジン」

 

 フリードは先ほどリコが来たことで中断していた続きを、手をグーにしてジンとリコに差し出す。その場にいたマードック、オリオ、モリーもそれに続く。

 

「「よろしくお願いします!」」

 

 ジンとリコもそれに続き、手を出すとグータッチ後に手を上下にさせる。ライジングボルテッカーズの仲間の証のハンドサイン、ジンとリコが仲間に加わった瞬間だった。

 





この話で「ニャオハとなら、きっと」は終了です。お付き合いいただきありがとうございました!あと1、2話位でロイも出したいと思ってます。


☆9
邪龍王さん、純白の翼さん、akizuki3さん、ヒースノーランドさん、櫛菜さん、怪猫蜜佳さん

高評価ありがとうございます。
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