ロイ、遂にポケモンゲットですね。古のモンスターボールは別枠ってことなんですかね?
朝食を食べ終えると、ライジングボルテッカーズの面々はそれぞれの仕事に取り掛かり始める。
リコ、ロイ、フリードの3名はロイの祖父に話を聞くために彼の実家を訪ねに島へと上陸した。そして、ジンを含めたそれ以外のメンバーとポケモンたちは船を砂浜に移動するための作業を行う。
メカニックのオリオが陣頭に立ち、彼女の指示のもとジンたちもサポートに入ったため、およそ数時間で砂浜への移動は完了した。オリオによると予測よりも大分早く、移動できたとの事だ。
船を移動させると、ちょうど昼食の時間が近づいていた為、甲板で手伝ってくれたポケモンたちに昼食を与えながら全員で談笑を始める。
「以上が、昨夜とそれから今朝あったことの全てです」
「それじゃ、2人は?」
「ええ、正式に交際を始めさせてもらいました」
「やっぱりね!2人とも昨日と今日じゃあ明らかに雰囲気が違うんだもん。そうじゃないかと思ったわ」
内容は、オリオ、モリーに詰め寄られてあっさりと全てを自白したジンによるリコとの交際までの成り行きについてだった。
「やったな!ジンおめでとう!……でも、それ俺達にまで話して大丈夫なのか?」
「確かに……聞いておいてなんだけど、そんなにあっさり言っちゃって良かったの?」
「そうね、リコは隠しておいて欲しそうだったけど…」
「ああ、構いませんよ」
そもそもこの船にはジンとリコを含めても8名のメンバーしか存在しない。こんなにも狭い人間関係の中でできたカップルがいつまでもその実態を隠し通すという方が無理がある。変なタイミングで露見するくらいなら自分からある程度明かしてしまった方が問題は少ないだろう。
「それに………」
「「「?」」」
「船に戻ってきたときに、交際してることが皆にばれてるって知った時のリコがどんな可愛いリアクションを起こすのか、めちゃくちゃ楽しみじゃないですか?」
ジンの予想では、顔を真っ赤にし涙ぐみながらどうして話してしまったのかと詰め寄ってくる姿が容易に想像が可能だった。その姿を思い浮かべるだけで、ついつい笑ってしまいそうになる。
「「「…………」」」
「どうかしました?」
「い、いや何でもない……あんまりイジメてやるなよ?」
「勿論です。そこら辺はちゃんと見極めてやっていくんで安心してください」
ジンとてリコが本気で悲しむ姿は見たくない。見たくはないが、本気で悲しむ20歩手前程度までは弄る気満々だった。
「ひょっとして……ジンって、結構S?」
「まぁ、好きな子ほど意地悪したくなるって言うしね」
「だ、大丈夫かな?」
「さぁね……でも、大丈夫じゃない?ジンはSだけどリコはMっぽいし、案外相性いいかもよ?」
そんなジンの姿を見たオリオとモリーは小声で相談しあう。2人の交際は素直に祝福するが、喧嘩でもして破局するようなことになれば、昨夜の夕食時の様なギスギスした空気を再度味わうかもしれない。そんな不安感があったからだ。
「?………ん?」
「どうした?」
「……いや、ちょっと」
(……嫌な予感がする)
この感覚は以前、ホウエン地方を一人で旅をしていた時に何度か感じたことがあるものだった。第六感とも言えるもので、根拠はないがこの感覚が発動すると大抵、面倒な事態に巻き込まれることになる。
言葉で説明するのは難しいが、ジンはこの第六感を信頼していた。その為、すぐに船の周囲を見渡しその正体を察することに成功する。
「……なるほど。そういう事か…面倒な事になったかも」
「なに?…あれは…エクスプローラーズ!」
突然、行動し始めたジンに困惑しながらもその後についてきた3人も目線の先にアーマーガアと2体のエアームドに乗ってこちらに近づいてくる集団に気づく。
「見つかった!」
(でも、なぜここが分かった。俺が奴らから離れた時に追っ手はいなかった筈だ)
ここがリコの実家の周辺であれば先回りされ見つかるのも理解できる。しかし、ジンたちがこの島に停泊しているのは予期せぬアクシデントの為だ。そんなことまで予測するのは不可能だ。
(だとすると、考えられる可能性は発信機か)
「最悪だ!クソっ取り合えず、降りるぞ」
(……考えるのは後だな)
ただでさえ、修理が終えていないブレイブアサギ号でバトルをするのは得策ではない。そう考えた面々は念の為、非戦闘員のポケモンたちを守るためにモリーのみを船に残し砂浜でエクスプローラーズを迎え撃つ準備に入る。
「頼むぞ、イワンコ」
「準備はいい?メタグロス」
マードックとオリオはそれぞれ相棒であるイワンコ、メタグロスを共に砂浜に連れ出し、バトルの準備に入ろうとしていた。
(……これは、ちょっと厳しいな)
弱すぎる。
それがジンが目の前のイワンコ、メタグロスに対して行った評価である。イワンコは兎も角、本来メタグロスはレベル的にももっと強い筈なのだが、どうにも戦闘慣れしていない様子が窺える。
これまでに、ジンはエクスプローラーズのアメジオ、ジルの2人とバトルしたが正直に言って、アメジオどころか恐らくは2体がかりでもジルにすら敵わないと思われる。
(これじゃあ、俺1人で3人を相手にした方がいいかもしれない)
だが、現実的に考えてそれも難しいだろう。奴らの狙いは、リコとペンダントだ。現在、この船にリコがいないことが分かれば移動手段である船の制圧に掛かるだろう。
前回の一件でアメジオがリベンジに燃えているのは簡単に想像ができる。間違いなくジンとの一騎打ちを望んでいるだろう。1対1の勝負であれば、たとえアメジオが相手でも負けない自信はある。しかし、それでも多少の時間はかかるだろう。そうなれば、残る2人がイワンコとメタグロスを倒し船の占拠ないし破壊に入ってしまう。
(考えてる時間はないか…)
そうこうしている内に、エクスプローラーズはジンたちのいる砂浜へとやってくるとそれぞれ乗っていたエアームドとアーマーガアから降りると、ジルはサイドン、コニアはゴルダックを出し戦闘態勢へと移行していく。やはり、予想通りバトルの経験値がまるで違う。
だが、嬉しい誤算もあった。
(あのゴルダックだけなら、もしかしたら…)
コニアの強さをジルと同等と考えていたが、どうやらジルの方が若干格上であるように見える。ゴルダックだけであれば、マードックたちが同時に掛かれば少なくとも時間稼ぎは出来るかもしれない。
(タッグバトル…いや、せめて順番で相手をさせることができれば……)
「ジン!」
アメジオはジンを目の前にすると忌々しそうな声で叫ぶ。
「アメジオ、また来たのか」
「当然だ。お前を倒し、ペンダントとあの少女を連れていくまであきらめるわけには行かない」
「……この間、負けたばかりだろう。再戦するには早すぎるんじゃないのか?」
「黙れ……二度は負けない」
「そうか……だが、再戦するならそっちのトサカのおじさんの方が先じゃないか?」
「誰がおじさんだ!俺はまだ20代だぞ!」
「っっっっ!」
「わざとらしく驚いてんじゃねぇ!」
(ナイスツッコミ)
コニアも大分、面白い性格だったがジルも負けていないようだ。その鋭いツッコミにジンは思わず、心の中で称賛の言葉を送ってしまう。
「それは失礼……だけど、あんたも俺にリベンジしたいんだろう?順番的にもあんたの方が先だしな。今なら、相手になるぞ」
「っ!アメジオ様、まずは俺にやらせてください!」
「……駄目だ。俺がバトルする」
「アメジオ様!」
「黙れ。ジル、分かっているだろう?お前の勝てる相手じゃない」
「………」
アメジオの一言でジルは渋々と言った形ではあるが、黙り込んでしまう。
「おいおい、やる前からそれはないだろう。バトルはやってみないと分からないもんだ」
「分かりきっている。ジン、お前の事は徹底的に調べた。ホウエン地方では随分、有名なようだな」
「………」
(……こいつ)
「有名?」
「ジンが?」
「なんだ、仲間にも話していないのか?前回のホウエン地方ポケモンリーグサイユウ大会においてポケモンを一体も失うことなく圧倒的な実力で優勝したチャンピオンであり、メディアからは次期四天王、未来のチャンピオンなどと呼ばれているそうじゃないか」
「……よくご存じで」
ジンがアメジオの言ったことを一切否定しない様子を見て、マードックとオリオは驚愕した様子を見せる。
「マジかよ!ポケモンリーグで優勝だと!?」
「ちょ、ちょっと!どうして黙ってたのよ!」
「…………あれ?言ってなかったか?」
「なにフリードみたいなこと言ってんのよ!真面目に答えて!」
渾身のものまねも軽くスルーされてしまったジンは、仕方なさそうに本心を語っていく。
「……別に言うほどの事じゃないかな~って」
「そんな訳あるか!それって凄い事だろう!」
「そうですか?実際に四天王やチャンピオンになったら、凄いですけどリーグ優勝者なんて探せば結構いますよ?」
地方にもよるが、ポケモンリーグの歴史は長い。その中で優勝した経験のある人物は確かに探せばそれなりにはいるだろう。
次期四天王、未来のチャンピオンなどと呼ばれていても現在は一般人であるしリーグ優勝経験のあるトレーナーだけが参加できるチャンピオンリーグに参加し、そこで優勝しなければ四天王にもチャンピオンにも挑戦できない。
そこに一度も挑戦していないうちから、そのような評価をするのはいささか過大評価だとジンは思っていた。
「……まぁ、俺の過去話はこの辺にしてだ。どうするアメジオ、1対1が不安ならダブルバトル、いや2対1でも構わないぞ」
「お前の挑発にはもう乗らない。お前の相手は俺一人でする。ジル、コニア作戦通り船の制圧に入れ、船を奪い、奴らをこの島から絶対に逃がすな」
「「了解!」」
(……乗ってこないか)
アメジオならば挑発すればあるいはと思ったが、どうやら今回はどんな手を使ってでも必ず、目的を達成するつもりのようだ。
しかし、それも仕方ないだろう。新人トレーナーの少女からペンダントを奪うという簡単な仕事に失敗しその上、自分の判断ミスで敗北までするという失態を起こしている。アメジオにはもう後が残っていないのだ。
「行け!ソウブレイズ」
アメジオはモンスターボールを投げ、お馴染みのソウブレイズを出してくる。
「さぁ、始めるぞ。早くポケモンを出せ」
(……やるしかないか)
ジルとコニアの方は既にマードックとオリオと向かい合っている。こうなってしまった以上もはや、介入は難しいだろう。
「ジン、こっちは任せろ!」
「そいつをお願い!」
「……分かりました。そっちは頼みます」
こうなった以上はそれぞれがベストを尽くす以外の道は残っていない。多少の不安はあったが、それでも今は彼らを信じるしかなかった。そう決意したジンはポケットから一つのモンスターボールを取り出し、宙に投げる。
「頼むぞ!ジュカイン」
「ジュカ!」
相性が悪いのは言うまでもないが、バトルを出来るだけ早く終わらせるためにも最も素早さの高く、前回のバトルを半端な形で終わらせてしまい再戦を望んでいるであろうジュカインを選択した。
「……ジュカインか」
「なんだ?もう相性の指摘はしないのか?」
「もう、お前たち相手に油断するつもりはない。全力で行くぞ!」
(全力ね……)
アメジオそしてソウブレイズからは一切の油断も驕りも感じられない。どうやら格上の相手に挑むつもりでかかってくるようだ。
「……いいだろう。なら、俺たちも本気で行く」
そう呟くと、ジンは自分の胸元に手を入れるとそこから一つのペンダントを取り出す。
そのペンダントにはリコのペンダントとは違ったキラキラと輝く宝石のような石が埋め込まれていた。ジンはそのペンダントの宝石に触れる。その瞬間、ペンダントの宝石とジュカインの首に巻いてあるスカーフについた同系統の宝石も同時に輝きだし、その姿を覆う。
対峙していたアメジオとソウブレイズが……いや、その場にいた全てのトレーナーとポケモンがその姿に目を奪われる。
「限界を超えろ『メガシンカ』」
遂にジンの経歴が明かされ、メガシンカ解禁です。最後のセリフ、フリードに張り合って急遽考えたわけでは決してありません。
しかし、更新速度落ちてきたな。なるべく早く上げる様に努力しますね。
☆9
嫌な夢の迷子さん、キンキンキノコさん
☆10
ヒースノーランドさん、マヒロシロさん、MR-001さん
高評価ありがとうございます。