ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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カントーの離島編これにて完結です!

活動報告に回答頂き、ありがとうございます。活動報告はずっと残しておくんで思いついたらどんどん送ってください。


旅立ち

 

 ジンたちは今、ロイの祖父である長老の家を訪ねていた。ここに来た理由だが、ロイの持つ古のモンスターボールは元々は長老の持ち物であるため長老からなら黒いレックウザの事やボールと共鳴したペンダントの情報なども得られるかもしれないと考えたためだ。

 

『よーすっ!ポケモントレーナーのみんな~!グルーミンしてる~?ぐるみんの動画だ!』

 

 長老がお茶の用意の為に席を外すとリコは暇つぶしも兼ねてスマホロトムを起動させる。画面に映し出されているのはハイテンションで挨拶をするニドリーナのヌイグルミを着た動画配信者のぐるみんだ。

 

『なにぃ~!珍しいポケモンについて知りたいって~?この世界にはな、伝説のポケモンと呼ばれる特別な奴らがいる!めっちゃ強くてどこにいるかも分からない、会えるだけで超ハッピー!ゲットなんて夢のまた夢!みんなも一度くらい伝説のポケモンが見たいよな?』

 

「ぐるみん…今日もカワイイ~」

「……そうだなぁ」

 

(……これ可愛いのか?)

 

 どうやらこのぐるみんという配信者は学園ではリコを始めとした女子生徒の間で流行っているらしい。

 

 リコは、このぐるみんの大ファンであり、ジンがその存在すら知らないことを知ると「ジン駄目だよ!ぐるみんの事を知らないなんて人生損してるよ!」ともの凄い勢いで勧めてきたのは記憶に新しい。

 

(まぁ、結構適切な事も言ってるけどな)

 

 ジンもリコに勧められ、何度か動画をチェックしたことがある。その時はたまたまバトルの考察動画だったのだが、なかなか的を射た指摘であり素直に面白いとも思った。だが、それと同時に気になることもある。

 

(ぐるみん……多分、実際のバトルの経験ないんだろうな~)

 

 ジンから見ると指摘していること自体は間違いはないのだが、どこか理屈的すぎる気もするのだ。

 トレーナースクールなどに通っていて知識ばかり身につけ実戦でのバトルを殆どしたことがない者などにそのような傾向が見られる事が多い。ジンの心に本気で響かないのは恐らくは知識だけで実戦経験が伴っていないのが大きな原因なのだろう。

 

「ジン!」

「ん?」

「ジンも見たよね!レックウザ!」

「ああ、間違いない。あれはレックウザだった」

「「わぁ……」」

 

 しばらくすると人数分のお茶を入れた長老が戻ってきたことにより、話は中断し本来の目的であった古のモンスターボールとペンダントの質問を行う。

 

 しかし……

 

「すまんな。なんにも分からん」

 

 どうやら長老も古のモンスターボールは空だと思っていたようでペンダントとの関係も知らないらしく分かった事といえば、黒いレックウザは古の冒険者が従えた伝説のポケモンであるという事だけだった。

 

(むしろ、謎が深まった気がするな…)

 

 ペンダントだけでも謎だらけだったというのに、ここに来て古のモンスターボールまで追加されてしまった。こうなってくると、やはりペンダントを託したリコの祖母に直接訪ねるしかないのかもしれない。

 

(……だが、今一番に考えるべきなのは…)

 

 それはロイについてだ。今後、彼はエクスプローラーズに狙われる可能性は少なからずある。しかし、ロイには自衛の術がない。奴らが本腰を入れて攫いにくれば、間違いなく捕まってしまうのは目に見えている。

 

『ロトロトロト!ロトロトロト!』

 

 その時、フリードのスマホロトムが鳴り出す。相手は船でポケモンたちの治療をしていたモリーからだ。

 

『お待たせ、ニャオハとホゲータの治療が終わったよ』

 

「ホゲータッ!」

「あ!おいっ!」

 

 モリーの言葉を聞くと居ても立っても居られないのかロイはその場から船に向かって走り出していく。

 

「ありがとうございました!ロイ、待って~」

 

 リコも治療したニャオハの事が気になるようでロイに続く様に船に向かい走り出すがジンはその場に留まっている。

 

「ジン、俺たちも行こうぜ」

「……フリードさん、それとお爺さんもちょっと相談があるんですけど、お時間いいですか?」

「「?」」

「その…ロイの事なんですがブレイブアサギ号に一緒に乗せてやる訳には行かないでしょうか?」

 

 それは、ロイがエクスプローラーズに狙われる可能性がある。そう思った時から……いや、それ以前にロイから師匠になる様に頼まれた時から考えていた事だ。

 

 この島にいるよりも目に見える場所にいた方が守りやすい上に本人の希望通り鍛え上げ、自衛の手段を身に着けさせることも出来る。

 

「ロイが俺達と一緒に行きたいって言ってたのか?」

「いえ…これは俺の勝手な考えでまだ、本人にも了承を取ってはいません」

「それじゃあ…」

「分かってます。本人の気持ちの確認はこれから取りますが、もしもロイが希望したら考えてあげてくれませんか?」

「いや、俺は別にいいが……長老」

 

 フリードは長老へと視線を送る。長老はロイの保護者、つまりはロイが旅に出るかどうかの最終決定権を持っている存在だ。

 

「ジンといったな……まず、聞いておきたいんじゃが、なぜロイを旅に連れていきたいんじゃ?」

 

 その視線は厳しく、ジンを見極めようとしているようだ。そして嘘は許さない。そう物語っているようにも見える。

 

「知ってますか?ロイには夢があるんです」

「夢?」

「この島で初めて会った時に聞いたんですが、世界を巡って旅をした古の冒険者のようなトレーナーになりたい。そう言っていました」

 

 ロイの夢、それを叶えるためにはこの島から旅立つ必要がある。それは絶対条件だ。島から出なくては冒険など始まる筈もない。

 

「ロイにそんな夢が……それは分かった。しかし、なぜ君はロイの為にこんな事を頼むんじゃ?」

「友人ですから」

 

 ジンとロイが出会って、まだ数日しか経っていない。ロイと関わった時間は決して長くはないが、ジンの中でロイは既に友人といって差し支えないものになっていた。

 

「ロイはいい奴ですからね。ついつい味方してやりたくなるんですよ」

 

 真っすぐで純粋で見ていると応援したくなってしまう。それはロイの持つ魅力なのかもしれない。そんな不思議な魅力があるからこそリコを怒らせると分かっていながらも弟子入りの件を完全に断ることが出来なかった。

 

「それに…実はロイから弟子にして欲しいって頼まれたんです」

「弟子?君のか?」

「ええ…この島でストライクとバトルしてゲットした所をロイが見ていたみたいで…」

「ストライクじゃと……まさか!額に傷のあるストライクか!」

 

 長老の脳裏に浮かんだのは何日も前に突然、この島にやってきた凶暴なストライクだ。島にいるポケモンたちでは全く歯が立たず、話し合いに行っても応じるどころか攻撃を仕掛けてくる正直に言って困った存在だ。

 

「あいつなかなか強いですよね~野生のポケモン相手であそこまで楽しめたのは久しぶりでしたよ」

「そ、そうか…」

 

 自分の知る限り凶暴で強力なストライクをゲットした上に、そのバトルを楽しかったと語るジン。それを見て長老はひきつった笑みを浮かべる。

 

「師匠とか弟子とか、今はまだ深くは考えてないんですがロイの強くなりたい、もっと成長したいっていう気持ちには一切の嘘がなかった。だから、一人の友人として出来る限りあいつの力になってあげたいんです。今すぐ許可を出せとは言いません。でも、一度だけロイと真剣に話し合ってはいただけないでしょうか」

 

 ジンはそう言うと立ち上がり長老の前まで移動すると頭を下げる。その姿からは嘘を一切感じられない。新たに出来た友人の為に頭を下げる姿は、その場にいたフリードと長老の心に深く刺さる。

 

「なぁ長老……その、ロイの話だけでも聞いてやらないか?」

「……頭を上げてくれ。君の気持ちはよく分かった」

「それじゃあ…」

「まだ決まりではない。まずは、わしがロイと話す。後はあいつ次第の覚悟次第、それでよいな?」

「はい!真剣に考えて下さるならそれだけで構いません」

 

 厳しいかもしれないが、家族一人説得することができないのであれば所詮はそこまでの夢だったという事だ。この程度の試練を乗り越えられないようではこの先、旅に出ても何一つ乗り越えることはできない。

 

(……ここがロイの最初に超えるべき壁だな。勝てよ、ロイ)

 

 

 

 

 

 話し合いを終えたジン、フリード、そして長老は改めてブレイブアサギ号へと向かう。ようやく、船に着くとそこには先に向かったロイとリコがそれぞれ傍らに相棒のホゲータとニャオハを連れてジンたちを出迎える。

 

「じいちゃん!話があるんだ!」

 

 長老の姿を確認すると、ロイは緊張した様子を見せながらも目をそらすことなく話しかける。

 

(……これは…もしかして)

 

「僕、冒険に行きたい!フリードさん達が許してくれるならジンやライジングボルテッカーズと一緒に冒険がしたいんだ!」

「「「………」」」

「あの……じいちゃん?」

「……何でもない。それで?」

 

(……タイミングが良すぎるだろう)

 

 こちらから、振ろうとしていた話題を先に出されてしまいジンたち3人は少々困惑してしまう。しかし、ロイが一人でこの発言までに至ったとは思えない。そうなると、考えられるのは…

 

(ホゲータ……それから……リコか)

 

 ホゲータがロイのポケモンになった以上、ロイが一緒に来ないのであれば当然ホゲータもここに残ることになる。しかし、リザードンに憧れるホゲータはそれを望まないだろう。

 

 リコも当初はロイの事を嫌っていたが、今は友人のような間柄だ。ロイが一歩を踏み出すことを躊躇っているのを見れば、同じ悩みを抱えていたものとしてアドバイスを送るのは間違いない。

 

(すっかり先輩っぽくなってるな……いらない気づかいだったか?)

 

 どうやら、ジンのいない所で彼らは彼らなりに色々考えていたようだ。あまり、意味のない仮定だがジンが何もしなくても結果は決まっていたのかもしれない。

 

「古の冒険者は本当にいたってずっと信じてた!いつか島を出て伝説のポケモンに会うって夢みてた!あのレックウザを追いかけてゲットしたい!だから旅に出たいんだ!」

「……それがお前の新しい夢か?」

「……新しい?あ!それともう一つある。ホゲータの夢だよ!」

「ホンゲェ?」

「ホゲータはリザードンみたく強くてカッコよくなりたいんだ!だから僕がホゲータを育てる!トレーナーとして僕がホゲータの夢を叶える!2人で一緒に!!」

「ホンゲゲ!!」

 

(……ロイ)

 

 ほんの少し前までは自分の夢しか語る事の出来なかったロイがいつの間にかホゲータの夢まで叶えると宣言して見せた。ポケモンとの出会いはトレーナーを大きく成長させる。ロイもまた例外ではない。ホゲータと出会い相棒となったことで成長し始めているようだ。

 

「…よかろう。昨日までのお前は自分の夢しか語れなかった。だが今は違う、相棒の夢も語れた。ポケモンとトレーナーは一心同体、その子ためにも力を合わせて頑張るんじゃぞ」

 

 知り合いであるフリードと一緒という事もあるからこそ旅に出る許可を出したという面もあるだろうが、それ以上に長老にもロイの成長を感じさせたのだろう。

 

(しかし、レックウザをゲットか…)

 

 それはとてつもない大きな夢だ。

 

 世の中には伝説のポケモンをゲットすることを夢に見ているトレーナーは多い。しかし、そんな彼らでも人生の大半をかけても尚、ゲットする所か姿を見ることすら出来ずに終わる事が多い。伝説のポケモンをゲットするという事は、それほどまでに難しい事なのだ。

 

(いや……待てよ)

 

 だが、ロイにはレックウザとの確かな繋がりのある古のモンスターボールがある。まだ、詳しい事は分からないがホウオウの虹色の羽の様にあのボールがロイを黒いレックウザに導いてくれるかもしれない。根拠こそなかったがそんな予感があった。

 

(……何一つ手がかりがないよりかは、ずっといいスタートかもな)

 

「ジン!」

「ん?」

「改めてよろしくね!」

 

 ロイはそう言うと握手をしようとして右手を伸ばしてくる。ジンもそれに応える様に右手を伸ばす。

 

「ああ、よろしくな」

 

 握手の為に手を開いて伸ばすロイ、ジンはそれとは真逆で手をグーにしたまま伸ばしていくと手がぶつかり合った瞬間、手を上下にするライジングボルテッカーズのハンドサインを行う。

 

「え?いっあっえっああ…」

「ははは、悪い悪い。分かんないよな?」

「さぁ、新人君!まずは仲間たちに挨拶からだ。その後は出港準備の手伝い、やることはいっぱいだぞ!」

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

 こうして、修理の為に偶然立ち寄ったこの島で出会った少年、ロイが新たにライジングボルテッカーズのメンバーへと加わった。彼の持っていた古のモンスターボール、そこから現れた黒いレックウザ、リコのペンダントとの関係、それらの謎を解き明かすためライジングボルテッカーズは再び、リコの実家のあるパルデア地方に向けて旅立つのだった。

 

 ロイとの出会いがこの先の冒険に何をもたらすのか、それはまだ誰も知らない。

 





長かった~~カントーの離島編だけで10話以上も書くとは思ってませんでした。ここから少し巻いて行きたいと思ってます。

☆8
久保サカナさん

☆9
可笑し屋ジャックさん、クロ0805さん、櫛菜さん

☆10
通りすがった暇人さん、スローイングさん、ハルマキEndさん

高評価ありがとうございます。
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