活動報告で主人公設定と所有ポケモンを書いてます。そちらもよければどうぞ
「あれが……サイユウ大会優勝者……ジン…」
ドットはジンたちの姿が見えなくなったのを確認すると、扉を閉めてパソコンを操作し保存されていた動画を再生する。
「………」
再生された動画に映し出されたのは巨大なバトルスタジアム、その中央のバトルフィールドを見つめる大勢の観客たちだ。そして、観客たちが見つめる先、バトルフィールドには今、2体のポケモンたちとそのトレーナーたちの姿が確認できる。
そこにいるのはジンと相棒のジュカイン、そして相手トレーナーとそのポケモンのハリテヤマだ。
『さぁ、決勝戦もいよいよ大詰めです。ジン選手は未だに6体のポケモンを残しているのに対し、相手選手はもうハリテヤマ一体しか残っていません!このまま終わってしまうのか~!』
実況の言葉が途切れたのと同じタイミングで、ジンはジュカインに指示を出し始める。
「ジュカイン!『タネマシンガン』だ」
「ハリテヤマ!『つっぱり』で撃ち落とせ!」
ジュカインが口から連続で発射した『タネマシンガン』を素早さで劣るハリテヤマは回避を諦め、その場で『つっぱり』を発動させ、『タネマシンガン』を撃ち落としていく。
「突っ込むぞ!『でんこうせっか』だ」
ハリテヤマは先程と同じように『つっぱり』で迎え撃とうとするが、接近したジュカインはギリギリのタイミングで顔を横にずらし回避するとハリテヤマの腕が引っ込んだタイミングに合わせて接近し『でんこうせっか』を命中させる。
「ハリテヤマ!?」
「一気に行くぞ!『リーフブレード』!」
『でんこうせっか』により体勢を崩したハリテヤマをジュカインは『リーフブレード』で斬りつける。大ダメージを受けるハリテヤマだが、決勝まで残ったトレーナーのポケモンだけありまだ倒れない。
「ハリテヤマの得意な接近戦で来るなら相手になってやる!『インファイト』だ!」
相手のトレーナーは起死回生を狙ったのか強力な技を仕掛ける。ハリテヤマは一気に接近し勝負を仕掛けようとするが…
「下がれ!」
ジュカインはあっさり、接近戦を捨て後方へとジャンプし『インファイト』を回避する。
「なに!?」
「これで終わりだ。『リーフストーム』で仕留めろ!」
ジュカインは草のエネルギーを尻尾に集中させると、背中を向け『リーフストーム』を発射する。大量の尖った葉が嵐となって襲い掛かり、ハリテヤマを空中へと吹き飛ばす。
「ハリテヤマ!?」
『リーフストーム』の勢いに負け、空中へと飛ばされたハリテヤマはゆっくりと地面に落ちていく。その姿を見た審判が近づき確認に向かうとハリテヤマはフィールドに大の字に倒れ目を回していた。どちらが勝者なのか誰の目にも明らかだった。
「ハリテヤマ戦闘不能!ジュカインの勝ち!よって優勝はミシロタウンのジン選手!」
審判が勝利宣言をしたのと同じタイミングでドットは映像を止める。
「接近戦と遠距離戦を状況に合わせて完全に使い分けてる……こいつのバトル、凄くクレバー」
他のポケモンを使用する場面も見たが、ドットから見てジンというトレーナーは妙な所で熱くなったりせず、常に冷静で己のポケモンによってバトルスタイルを変更し勝負を有利に進めていく事が非常に上手く見える。
「どんなこと考えながらバトルしてるのか知りたい…」
しかし、先ほどはあまり良くない態度を取ってしまった。ジンに対しては何もしてはいないが、その友人に失礼な態度を取った以上、きっと印象はよくない。人付き合いの少ないドットでもそれくらいは理解できた。
「……クワ~ッス」
「……分かってるよ。あの絵はちょっとやりすぎた……黒いレックウザか…………」
***
ドットが自室でサイユウ大会の映像を見ていた頃、ジン、リコ、ロイの3人はドットの部屋の前から移動すると再びウィングデッキに来ていた。
「ど、どうするの?あんな事言っちゃって!」
ロイは慌てたようにジンに言い寄る。だが、それも仕方ないだろう。今朝からずっと練習したが『ひのこ』は使えなかった。それを使えるようする上にバトルの基本まで身に今日中に出来るようにする。簡単じゃないのはロイにも理解できた。
「大丈夫だ。なんとかなる………………ような気がする」
「ちょっと~!?」
「じ、ジン…」
「悪い悪い冗談だよ……今朝の様子から見てホゲータはもう『ひのこ』を使える段階に入ってる様に見えたぞ」
「本当に!」
そもそも『ひのこ』とはホゲータが最初から使う事の出来る基本的な技だ。生まれたてならばともかく、今の状態で全く使えないという方がおかしい。
「ああ、ホゲータはリザードンが『かえんほうしや』を使う場面を何度も見ていた。既に技を使うイメージは出来上がってる。あと足りないものは技を発動するタイミングだ」
「タイミング?」
「そうだ。ホゲータが力を込めすぎて空回りしてるから『ひのこ』が発動できない。だから、力がいい具合に溜まったところでトレーナーが指示を出せばそれで解決する」
一度、技が発動できればポケモンはそのタイミングを体で覚えてその後はトレーナーの指示がなくても使用できるようになる。だからこそ、ここでホゲータが技を発動させるタイミングを掴む事は必須となるだろう。
「う~ん……」
「難しいか?」
「……うん」
ロイがそう思うのも当然だ。そもそもそのタイミングが分かっていれば今朝のトレーニングの時に既に『ひのこ』を発動できていた筈だ。
「まぁ、少し考えてみろ。ホゲータと一緒にタイミングを計る為に何が出来るのか」
「う、うん!分かった」
そう言うとロイとホゲータはバトルフィールド中央に座り込み考え始める。ジンとリコは展望室に繋がる階段に座りその様子を眺め様子を伺う。
「ねぇ、ジン」
「ん?」
「ジンならホゲータが『ひのこ』を使うタイミング分かるんじゃない?」
「まぁな」
「だったら……」
リコの言いたいことはジンも理解できた。要するにそのタイミングをすぐにでも教えてあげたらどうだと言いたいのだろう。
「駄目だ。この問題はロイとホゲータが解決しなくちゃ意味がない」
「で、でも…」
「この程度は乗り越えてくれないと、レックウザのゲットなんて一生かけても不可能だ」
伝説のポケモンとは一生に一度出会う事が出来ればそれだけで幸運と言えるポケモンだ。ましてやゲットするとなれば、限られたチャンスを物にする以外ない。夢を夢のままで終わらせるのかどうかは結局、ロイ次第だ。
「……ねぇ、ジンならレックウザをゲットできる?」
現在のロイではレックウザのゲットが難しいのは分かる。それなら自分の知る限り、最強のトレーナーであるジンならどうなのか訪ねずにはいられなかった。
「なりふり構わずやっていいんなら可能性はあると思う」
レックウザが持っていないこちらの利点、頭数やトレーナーの有無などの利点を最大限に生かせば決して不可能ではないだろう。
「本当に?」
「ああ、だがそれでも絶対とは言い切れない。つまり、ロイが正面対決でレックウザをゲットするなら最低でも俺たちと対等に戦えるだけの強さが必要だって事だ」
(ジンと対等………)
『ジュッカァァ!』
『ホンゲェェェ~~~~』
リコの脳裏でジュカインとホゲータのバトルという名の一方的な蹂躙が思い浮かぶ。『リーフブレード』で切り刻まれ、『タネマシンガン』でハチの巣にされ、『リーフストーム』で遥か彼方まで吹き飛ばされていくホゲータ、想像だというのに思わず顔を背けたくなる光景だった。
(だ、駄目……想像できない……したくない…)
「?」
「そうだーーー!」
顔を青ざめ始めるリコを不思議そうに見ていたがロイの突然の声を聞き2人は視線をロイに戻す。
「なにか分かったのかな?」
「見てればわかるさ」
ジンたちが注目する中、ロイはその場から立ち上がると……
「♪ホッホッホホゲ~」
ロイは唐突に歌い始める。
「え?……う、歌?」
「ふむ……」
リコが虚を突かれたように、ジンが興味深そうにみる中ロイは歌い続ける。
「♪ホッホッホホゲ ♪ホッホッホホゲ ♪ホッホッホホゲ ♪ホゲータホゲータ頑張れ~」
(なる程……歌か)
ジンにはない発想ではあるが、冷静に考えるとタイミングを取るという意味では悪くない。ロイとホゲータ双方が好きなものでリズムを合わせる事が出来れば上手くいく可能性は大いにある。
「♪ホッホッホホゲ~ ♪負けるなホゲータ頑張れ~ ♪ホッホッホホゲ~ ♪負けるなホゲータ頑張れ~ ♪立ち上がれ~ ♪ホゲータホゲータ頑張れ~ ♪思い出せ~ ♪ホゲータホゲータ頑張れ~」
「「♪ホッホッホホゲ~」」
ロイの歌を最初は茫然と聞いていたホゲータだが、歌に合わせて徐々に体を動かしリズムを取り始め、遂には一緒に歌い始める。
「「♪ホッホッホホゲ~」」
「ホゲータ!『ひのこ』だ!」
「ホッ…ゲーッーーー!」
ロイが指示を出した瞬間、今まで火種程度でしか発射出来なかった筈のホゲータから強力な威力の『ひのこ』が発射され、展開されていたウィングデッキのバリアへぶつかっていく。成功したことを理解したロイとホゲータはお互いを抱きしめあいながら喜びを分かち合う
「う、歌で出来ちゃうんだ…」
「色んなタイプがいるのさ。トレーナーにもポケモンにもね」
リコとニャオハが『このは』を始めて成功させたときはジンとジュカインが毎回、どうすればよくなるのかを丁寧に言語化して説明していたが、今回は少しのアドバイスだけで後はロイが直感で成功させたように思える。
「……ふむ。どうするかな?」
リコやニャオハとは明らかにトレーナーもポケモンもタイプが違う。リコたちにしたような合理的な指導をしたとしても同じだけの成果は望めないかもしれない。
(ロイには、あまり頭を使うような事を言っても逆効果かもな……それなら)
「よし!ロイとホゲータへの指導方針が決まった」
(え?指導方針?)
「あっ!ジン…」
ジンはリコの横から立ち上がると階段を降り、未だに喜んでいるロイとホゲータの前に移動していく。
「ジン!見てた?成功だよ!」
「ホゲゲェ!」
「ああ、見てたよ。おめでとう」
ジンは祝福の言葉をかけながら自分のポケットからモンスターボールを取り出し宙に投げボスゴドラとボーマンダをウィングデッキ上に出す。
「ボーダァァ!」
「ゴドォォ!」
外に出ると同時に雄たけびを上げるボーマンダとボスゴドラ、その雄たけびを傍で聞いたロイとホゲータは思わず耳を塞いでしまう。
「本当ならもう少し、喜びの余韻に浸らせてやりたい所なんだけどな」
相棒と初めての技の成功、貴重な体験だ。それこそ、何度でも思い出せる大切な思い出になるだろう。しかし、ドットとの約束で今日中にバトルの基礎まで身に付けさせなくてはならない。
「悪いんだが、今日は時間がなくてね」
今までの生活態度やトレーニングの様子を見る限り、ロイとホゲータは感覚でバトルをする傾向があるように思える。ならば、伸びしろが一番高い今だからこそ合理的なトレーニングをするよりも感覚を鍛え上げた方がいいだろう。
その為に、必要なのは技の特訓よりも実戦経験だ。
「今日の俺たちはスパルタモードだ。ちゃんと手加減はするが、覚悟しろよ」
ジンはそう言うと、にやりと笑う。背後にいたボーマンダとボスゴドラも同じような顔つきで笑っている。悪タイプのポケモンやエクスプローラーズよりも遥かに悪らしい笑みだった。
「「………」」
その後、ウィングデッキより大空に少年と一体のポケモンの悲鳴が何度も響くこととなるが、この時、なにが行われていたのかはその場にいた彼らしか知らない。
***
コンコンコン、扉をノックされる音が聞こえ、ドットはパソコンの操作をしていた手を止めてめんどくさそうに扉を見つめる。
「……来た」
「クワ!」
「…分かったよ」
ジンたちがいなくなってから数時間、黒いレックウザの情報は既に集め終わったドットはアプリでジンたちを呼び出していた。いつもなら、先ほどの様に絵で書いて伝えて終わりなのだが…
(ちょっとなら……話してみたい……でも、どうすれば?)
外に出て話せばいいだけである。しかし、ドットにはその発想が出ない模様だ。
「おーい、ドット?」
「っ!」
扉の外から聞こえるジンの声を聞こえ、ドットは思わず肩をびくっと震わせる。このまま無視していればいなくなってしまう。それでは呼び出した意味がない。その為、ドットは勇気を振り絞り…
「ま、まずは相手の観察からだ。バトルと同じ…」
「クワ~…」
ドットはそう自分に言い聞かせる。クワッスがあきれた様子で見守る中、扉を少しだけ開き外の様子を伺う。
「え?」
そこにはボロボロのロイとホゲータ、心なしかやつれているようにも見える。リコとニャオハは顔を少し青くしてロイたちから必死に目をそらしている。ただ一人、先ほどと変わらない様なのはジンだけだ。
「い、一体、なにが…」
(……ん?この声…)
ジンはこの声には聞き覚えがあった。リコに勧められて何度も聞いたあのハイテンションボイス、それをローテンションにすれば…
(……まさか…そんな偶然が?)
「お、おい!」
「ああ、悪い悪い。さっき言っただろう。『ひのこ』のマスターとバトルの基礎を身に着けさせるって、その為のトレーニングしてきたんだよ。それでちょっとハードにやり過ぎてね」
「………ちょっと?」
「………あれで?」
「………ホゲェ」
「………ニャン」
(こ、こいつ……やばい奴だ!)
少し話してみたい。そう思って顔を出したことをドットは即座に後悔する。何がやばいのかもよく分かってはいないが、とにかく早く扉を閉めたい。そんな気持ちになっていた。
「く、黒いレックウザはパルデアにいる!」
「え!」
さっさと要件を伝えたいドットは、話の流れを切って本題を伝えると、やつれ顔だったロイが黒いレックウザという単語を聞くと生気を取り戻していく。
「ほ、本当に!」
「……今いるかは分からないけど、目撃情報がいくつも出てる」
「ありがとう!」
「そ、それじゃあ……」
ドットは扉を閉めようとするが、その瞬間、ジンが手を滑り込ませ扉を閉めるのを妨害する。
「まぁ、待てよ。もうちょっと話さないか?」
「僕には話すことはない!ぐっ!力つよっ!」
(そんなに力は込めてないんだけどな…)
ドットは扉を閉めようと必死なようだが、力が足りなすぎるようで扉は先程から1ミリも動いていない。
「さっき来た時、ぐるみんの動画の音楽が聞こえたんだけど、ぐるみんのファンなのか?」
「関係ないだろ!いい加減に手を離せ!」
「実はリコもファンでさ、なぁリコ、ぐるみんのどんな所が好きなんだ?」
「聞けよ!僕の話!」
「え、えっと…」
ジンが扉を閉めるのを阻止するのを茫然と見ていたリコは突然、自分に質問が飛んできて上手く答える事が出来ない。
「難しく考えるな。ドットはリコのぐるみんへの愛を試してるんだよ」
「ちょっ!」
「う、うん!聞いて!ぐるみんの好きな所はいっぱいあるんだ。あの着ぐるみも存在自体可愛いし、ポケモンに詳しい所やいつでも凄く楽しそうな所とか!私、ぐるみんに会ってから毎日が楽しくてポケモンの事がもっと好きになれたよ!」
「……あ……う~……」
リコのぐるみんに対する止まることなき称賛を聞くと、ドットは顔を赤くして下を向き始めてしまう。その姿を見て、ジンは自分の予想が当たっていることに確信を持つ。
(こりゃあ、当たりだな。しかし……この展開、面白すぎるだろ)
まるで、神様からの巡りあわせの様だ。こんな面白い状況を与えてくれた神様に感謝しつつも笑いそうになり必死で堪えると手の力が僅かに緩む。ドットはその瞬間を逃さず、目一杯力を込めて扉を今度こそ閉めてしまう。
「はぁ、はぁ……話は終わり!バイバイ!」
「……まぁ、いいか。元々、今日は挨拶だけのつもりだったしな」
「うん。ドット、レックウザの情報ありがとう!」
「じゃあ、ドットまた来るね。今度はドットのぐるみんの好きな所教えてね」
「もう来るなよ!」
ジン、リコ、ロイの三人はそこまで話すと一緒に廊下を進んでいく。人の気配がなくなったことに気づき、ドットはため息をつくが、突如、足音が聞こえ再び扉がノックされる。
「言い忘れてた」
戻ってきたのはジン一人だけの様だ。ドットは今度は完全に無視を決め込み、ベットに寝転がる。
「動画配信頑張れよ。今度チャンネル登録しとくからさ」
「なっっ……な、なにを言って…」
「ポケモンを観察するうえで、鳴き声だって立派な観察ポイントの一つなんだよ。同じポケモンでも個体によって微妙に鳴き声が違うし、声の出し方で体調とかも分かったりするからな。俺はトレーナーになる前からよくポケモンの観察してたからその辺り敏感なんだよ」
ジンの故郷のミシロタウンは田舎だ。あるものと言えば、オダマキ博士の研究所程度しかない。その代わり、研究所にはポケモンが大勢いた。それらを観察するうちに身に付いたテクニックがここに来て予想外の成果を上げた。
「安心しろ。リコにバラしたりはしない。秘密を知ったことを黙っておくのはフェアじゃないと思っただけだよ。それじゃあな」
ジンはそう言うと、今度こそ廊下を進みドットの部屋から離れていく。
「……なんなんだよ」
ドットは扉を開け、去っていくジンの背中を見る。先ほどまでは、ただのやばい奴だと思っていたのに不思議と最後の言葉だけは信頼できた。
「本当に……この船は変な奴ばっかり乗せる…」
今回で「特訓!キャプテンピカチュウ」は終わりです。キャップ出てないけど許してください。
ちょっと来週は親戚の法事があって実家に戻る予定です。その間、執筆できないと思うので次の投稿まで一週間以上かかるかもしれないです。
☆9
禁断覇王さん、ヘルメス3さん
☆10
オトマトペさん、アスシさん、金銀好きさん
高評価ありがとうございます。