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さて、今回から「ネモとコルサと」になりますがネモのポケモンが物語の都合上アニポケ本編とは違うポケモンになってます。
ボウルタウン
先日、訪れたテーブルシティの東側に位置し花と芸術の町と呼ばれている。町全体が一つの自然公園のような造りになっており、至る所に花畑や花壇が点在し町を彩っている。その為か草タイプやフェアリータイプのポケモンが多く集まっており、慰安目的でこの町を訪れる者も多いそうだ。
更に、芸術の町というだけあって町の中には様々な芸術家が自分の作品を展示している。しかし、その中には公に認められ評価されている作品もあれば芸術界から見向きもされない芸術家の作品も多く展示されているらしい。
「ここがボウルタウンか…」
リコの実家を訪れた翌日、ジン・リコ・ロイの3人はリコの父親のアレックスからある情報を得た為、ここボウルタウンへと来ていた。
「コルサさんって人はこの町にいるんだよな?」
「うん。お父さんはそう言ってたよ」
「黒いレックウザの情報あるといいな~」
昨日の事、恋人の父親への挨拶というある意味での試練を乗り越えた後、アレックスと意気投合したジンは旅立ちの前にせめて一日だけでもというアレックスの希望に沿って、リコと共にそのままリコの実家へと宿泊した。
最初に出会った頃の、ジンの緊張とアレックスの敵意はどこへやら、いつの間にか数年来の友達のような関係にまでなっている。
『ボウルタウンのコルサという芸術家が珍しいポケモンを見たと言っていたな』
フリードとロイが船に戻った後、3人は親睦も兼ね夕食を食べている時にパルデアに来た目的の一つが黒いレックウザであると話すとアレックスは思い出したかのようにそんな情報を口にした。
その情報を得たジンたちは翌日、朝早くに早々に挨拶を済ませるとそのまま船に戻りロイを引き連れこの町へとやってきたのだ。
(まぁ、ダメ元だけどな…)
そもそも伝説のポケモンは発見例があまりに少ない。手がかりとなる情報を得たと思い、実際に現地に行くと単純に勘違いだったり、全くのデマだったなどという笑えない展開は割とよく起こる事なのだ。
「ごめん、分からないな」
実際にこの町に来て、既に10人以上に黒いレックウザについて何か知らないか訪ねたのだが、全員の回答はほとんど同じで見たことすらないらしい。偶に見たという者もいたのだが…
「ああ、レックウザね。見たことあるよ」
「本当に!どこでですか?」
「どこだったかな~…ジュース買ってくれたら思い出すかもよ?」
などという商売根性丸出しで田舎から出てきたばかりの純粋な少年を騙そうとする、ちょっと汚い大人たちばかりだった。毎回毎回、騙されそうになる度にジンとリコが止めなければロイはあっという間に破産してしまうだろう。
「また駄目か~…」
あまりにも黒いレックウザについての情報が入ってこず、いつも明るいロイも些かテンションが下がってきている。
「ロイ…そう落ち込むなよ」
「ドットもこの地方にいるって言ってたし、コルサさんに会えば何かわかるよ」
落ち込むロイを見かねてジンとリコはロイを慰める。これ以上、町中で情報収集してもあまり大した情報は期待できないと考えた3人は情報源であったコルサを訪ねる為に再度行動を開始しようとする。
ワァァァァ!!!!!!
ジンたちが行動を開始しようとすると、とある場所から多くの人の歓声が聞こえてきた。ジンたちが興味本位で駆けつけて見るとそこには2人のトレーナーがバトルを行っており、それを囲むように子供から大人まで大勢の人たちがその様子を見ている。
大勢の観客が見守る中、バトルをしていたのは一人は恐らくこの町の少年とそのポケモンのポポッコだ。しかし、ジンが興味深そうに見つめていたのはその対戦相手のトレーナーの方である。
褐色肌に黒髪のポニーテールで前髪に緑のメッシュという特徴的な髪型をしていて先日、テーブルシティで見たオレンジアカデミーの制服を着ている少女、そして彼女のポケモンを一見するとブレイブアサギ号に乗っているパモによく似ている。ロトム図鑑を取り出し、ポケモンの事を調べる。
『パーモット てあてポケモン 電気・格闘タイプ パモの最終進化形 普段はおっとりしているが いざ 戦いになると電光石火の 身のこなしで 敵を叩きのめす』
(やっぱりパモの進化形か、かなり強いな…)
「『タネマシンガン』!」
「避けて!」
ジンの見立て通り、パーモットと相手のポポッコとのレベルの差は歴然のようだ。パーモットはポポッコの『タネマシンガン』を縦横無尽にフィールドを駆け抜ける事で回避し、技が途切れるのと同じタイミングで一気に接近する。
「決めるよ!『スパーク』!」
パーモットは体に電撃を纏い、そのまま突進する。『スパーク』をくらったポポッコは力尽きたように目を回しながら空中から地上へとゆっくり落ちていく。戦闘不能なのは明らかだ。
「ありがとう!実りあるバトルだったよ!またバトルしようね。いつでも相手になるから」
「うん!ありがとう、ネモ!」
バトルが終了し、ポポッコに駆け寄ってきたトレーナーにネモと呼ばれた少女はそう声をかける。それと同時に見ていた観客たちが一斉に両者の健闘を称える様に拍手を送りだす。
「ネモ?……ひょっとしてチャンピオンランクのネモ!?」
ネモという名を聞くとジンの隣でバトルを見ていたリコが驚愕の声を上げる。どうやら聞き覚えのある名前だったらしい。
「チャンピオンランク?」
「ああ、そっか。ジンは知らないんだっけ?」
リコによるとパルデア地方には他の地方と同様にいくつかのジムが存在する。そこでジムリーダーとジム戦を行い、勝ち抜けることができればチャンピオンランクと呼ばれる称号を獲得することができるらしい。
チャンピオンとは基本的にはただ一人にだけ与えられる称号だ。実際、ジンの故郷のホウエンや他の地方でもそういった制度が多い。しかし、このパルデア地方の制度であれば一度に複数人がチャンピオンランクの称号を得ることが可能となる。
勿論、だからといって誰でもなれるわけではない。ジム戦の難易度は高く、途中で投げ出す者も多い筈だ。しかし、他の地方と比べてチャンピオンになるまでの手間が少ないのは間違いないだろう。
(なるほどな…チャンピオンランクか)
ジンは自分でも気づいていなかったが、とても恐ろしい笑みを浮かべていた。その姿を見たものがいれば、きっと獲物を見つけた野生の獣のようだったと言うだろう。
「…………」
リコはそんなジンを複雑そうに見つめていた。ジンの様子から見て、ネモに異性として関心を引いたのではないという事は分かっている。しかし、それでも自分の恋人が自分以外の女性を楽しそうに見つめているのはあまりいい気分はしなかったのだ。
(……悪くないな)
ネモがこのパルデア地方においてどれ程の強さなのかは分からない。だが、ジンの見立てでは最低でもアメジオ以上の力を持っているのは間違いない。それはつまり過去にバトルしてきたトレーナーの中でも最高峰の強さを持っているという事だ。
「あっ!ジン!」
そう判断すると、リコの制止も聞かずに未だにフィールドで喋っていたネモに向かってゆっくりと前へと進みだし彼女の近くまで移動すると声をかける。
「今のバトルお見事でした」
「あっは!ありがとう!ひょっとして…あなたもポケモントレーナー?目と目が合ったらそれはバトルの始まり!さぁ、やろう!」
「……懐かしい言葉ですね」
『目と目が合ったらそれはバトルの始まり』、ひと昔前まではそれがポケモントレーナーの合言葉だったと言われている。しかし、現代では消極的な若者が増えたことや相手の都合を配慮していないなどと様々な理由が付けられていつの間にか、その言葉は廃れていっていた。
「だが…望むところです」
「いいね!そうでなく「ちょ、ちょっと待って!」っちゃ?」
ジンがバトルを快諾し、今まさにバトルが始まるという空気になるとリコとロイが背後から駆け寄り慌てて待ったをかける。
「ん?どうしたリコ?」
「どうした?じゃないよ!なんで急にバトルすることになったの!?私達、予定があるんだよ!」
「そうそう!早くレックウザの事聞きに行こうよ!」
「………あ~」
「忘れてたでしょう!」
「いや……そんな事はない…」
嘘である。完全に忘れていた。ネモのバトルに夢中になり、彼女とバトルすることに意識が向いてしまっていて本来の目的が頭からすっぽり抜け落ちてしまったようだ。
「もう!ほら行くよ!」
リコとしては本来の目的でもあるコルサを早く訪ねたいという気持ちはあった。だが、それ以上にこれ以上、ジンをネモの近くに置いておきたくなかったのだ。一刻も早く、この場を離れてジンとネモを少しでも遠ざけたい。その一心でジンの手を引き移動させようとする。
「なんだ、やらないのか?」、「口だけだったんだろう?あのネモに勝てるわけない」
またネモのバトルが始まると思い盛り上がりかけていた観客たちの言葉が耳に届くとリコは急にその動きを止める。
(いま…なんて言った)
ジンが勝てない?そんな筈はない。ジンは自分の恋人は最強のポケモントレーナーなのだ。それが自分の行動のせいでどこの誰とも知らない相手に貶され馬鹿にされることなど許せるはずがなかった。
「……ジン、バトルしたいの?」
「あ、ああ…彼女クラスのトレーナーとは滅多にバトルできないからな…」
「……いいよ」
「…え?」
「だから、バトルしていいよ。その代わり絶対に勝って」
「ちょっ!リコまで……………な、なんでもないです…」
突然、意見を翻したリコにロイは抗議しようと視線を向けると途端に真っ青になり、頭をぶんぶん上下に動かしバトルの許可を出し始める。
ジンは状況の変化に困惑していたが、目の前のバトルを優先したい。そう考え、頭を切り替えると改めてネモと対峙する。状況の変化に追いつけていないのはネモも同じだったようで混乱しているようだ。
「すいませんね。なんだか振り回して」
「う、ううん!それでバトルするんだよね?」
「ええ、ただし、こっちの都合で悪いんですが使用ポケモン1体のシングルバトルで頼みますよ」
「分かった!実りあるバトルにしようね」
ネモはそう言うとジンから離れフィールドの奥へと下がっていく。ジンとリコもそれに続き距離を取るとリコは更にジンの後方まで下がるとロイと共にバトルを見守る様だ。
「私のポケモンはこのパーモットだよ!」
「パモ!」
パーモットは電気・格闘の複合型のポケモンだ。電気タイプであれば、地面タイプを出すのがセオリーだがジンには地面タイプのポケモンがいない。地面タイプの技を使えるポケモンはいるが、この手のストリートバトルでは『じしん』などの地面タイプの技を使うのは町への影響を考えるとあまりよくない。
(それなら…)
町への被害が少なくそれでいて有利に立ち回れるポケモンは誰か……考えがまとまるとポケットから一つのモンスターボールを取り出し、宙へと投げる。
「サーナ!」
ジンが出したのはエスパー・フェアリータイプのサーナイトだ。電気タイプにはマウントを取れないが格闘タイプへの備えがあり、相性的に見ても有利と言える。ジンの手持ちの中ではジュカインに続く古参のポケモンであるためレベルも高い。確実に勝利を狙いに行く為の選択だ。
「サーナイトか…相手にとって不足なし!行くよ!パーモット」
「パモット!」
一目見ただけでサーナイトの強さを感じ取った様でネモもパーモットもやる気に満ち溢れている。見ていた観客の内の1人が審判に立候補したため、その人に合図を出してもらう事となった。
「よし!それじゃあ…バトル開始!」
審判の合図と共にパーモットはトレーナーの指示が出る前にサーナイトに向かって動き出す。
「先手必勝!パーモット『ワイルドボルト』!」
先のバトルで見せた『スパーク』とは比べ物にならない程の電気を身に纏い、パーモットはサーナイトへと突っ込んでくる。
「『かげぶんしん』」
それに対してサーナイトは『かげぶんしん』で数十体に数を増やすとパーモットを包囲するような陣形を取る。パーモットは数を増やしたサーナイトに一瞬驚き、攻撃を中止すると視線を前後左右に揺らしながら警戒を強める。
「落ち着いて!数が増えたんなら全部に攻撃すればいいだけだよ!『ほうでん』」
パーモットは眩い電撃を体内から発生させ、フィールドにいる『かげぶんしん』で増えたサーナイト全てに電撃を放つ。『ほうでん』は必中技でこそないが、範囲が広く躱しきるのは難しい技だ。電撃は分身を含めた全てのサーナイトへと命中し、分身は全て消えていく。
「本体を見つけた!パーモット!続けて『れいとうパンチ』!」
「『リフレクター』!」
更なる追撃の為に、パーモットは冷気を纏わせた拳を振り上げるが、サーナイトはその寸前に『リフレクター』を発動し目の前に壁を出現させる。パーモットは突如現れた壁に攻撃を阻まれた為、体勢を崩してしまい僅かではあったが隙が生まれてしまう。
「今だ!『サイコキネシス』!」
サーナイトは念動力を発動させると、未だに体勢を崩したままのパーモットを宙へと浮かせるとそのまま地面に叩き落す。エスパータイプの技はパーモットには効果は抜群だ。
「パーモット!?」
(……いい流れだ)
先手を取ったのは勢いに乗って攻撃を仕掛けてきたパーモットだったがダメージの総量で見れば序盤戦を制したのは間違いなくサーナイトだろう。
おまけにサーナイトは『リフレクター』を張ることにも成功している。『ほうでん』のような特攻技も持っている様だが、パーモットは明らかに接近攻撃を得意としているポケモンだ。この相手に『リフレクター』があるのとないのでは大きな差となる。
「パモ!…ッ!」
パーモットは叩きつけられた地面から立ち上がるが少しふらついていた。明らかに『サイコキネシス』のダメージが大きいのがその姿から伝わってくる。
(立ち上がったのは見事だが……あと一撃で行けるな)
チャンピオンクラスのポケモンというのは伊達ではないが、それでもダメージは大きい。そもそも恐らくパーモットは耐久に自信のあるポケモンではなく積極的に攻め、倒される前に倒すのが主なスタイルなのだろう。もう一度、効果抜群の技を食らえば間違いなく勝負は決着するのは確定だ。
「まだ勝負は終わってない!パーモット『でんこうそうげき』!」
「……なに?」
パーモットは傷ついた体を奮い起こし、再び己の体に電気を纏わせる。聞きなれない技名であった為、その様子を警戒してみていたジンは、それでは『スパーク』や『ワイルドボルト』と大差がないのではと首を傾げそうになるが、直ぐに自分の読みの甘さを後悔する。
(これは…)
ジンが知らないのも無理はないが、『でんこうそうげき』とはパーモットの専用技だ。使った直後、電気タイプをなくすというデメリットと引き換えに全身の電気をフルパワーで使って相手に突撃する。
当然ながら、パーモットが今までに使ったどの技とも、ジンが今まで見たことのあるでんきタイプの技とも比べ物にならない程の電気量となっている。
「サーナイト『シャドーボール』で迎え撃て!」
「サナッ!」
そのあまりの電気量に驚き一瞬、判断が遅れるがジンはパーモットの攻撃が始まる前にサーナイトへと指示を出す。最大パワーで突撃してくるパーモットに対してサーナイトもまた両腕の前から黒い球状のエネルギー弾を生成し、正面から迎え撃つ態勢に入る。
「パモォォォォォォォ!」
「サナァァァァァァァァ!」
パーモットとサーナイトの両者は共に雄叫びを上げながら『でんこうそうげき』と『シャドーボール』を激しくぶつけ合う。
そして激しいぶつかり合いを制したのは――
「パモォォ!」
パーモットだ。『でんこうそうげき』は『シャドーボール』を粉砕するとそのまま直撃し、サーナイトはフィールドの隅にまで吹き飛ばされ受け身を取ることも出来ずに倒れてしまう。
「サーナイト!?」
「………サ…サナ…ッ」
サーナイトは大ダメージを負ったようだが、大きく体をふらつかせながら左腕で傷ついた個所を押さえながらもなんとか立ち上がる。
(……なんて威力だ。『リフレクター』がなければ危なかったな…)
そう、事前に張っておいた『リフレクター』が『でんこうそうげき』の威力を弱めていたことがサーナイトがなんとか戦闘不能に陥ることにならなかった大きな理由だ。それがなければサーナイトは間違いなく倒されてバトルは終了していた筈だ。
サーナイトは既に満身創痍の状態、あと一撃でも技を貰えば倒れてしまう。それに対して、パーモットは元々のダメージに加えて『シャドーボール』のぶつかり合いでわずかにダメージを受けこちらもあと一撃貰えば倒れてしまう所まで追いつめたが、もはや動くのも難しいサーナイトに比べればまだ体力が残っている方だろう。
「これで決めるよ!パーモット『インファイト』!」
「パモォッ!」
パモは既に先ほどの技で己の電気を使い果たしたため、格闘タイプの『インファイト』の指示を出す。効果は今一つだが、ここが勝負所でありサーナイトは既に動けない上にこの一撃で倒せると判断したのだろう。
その判断は間違ってはいない。ただし、今回ばかりは相手が悪かったと言うしかない。
(……ここだ!)
「勝負を焦ったな。サーナイト『テレポート』!」
サーナイトはパーモットの拳が当たる寸前に『テレポート』を発動し、パーモットの背後へと移動する。
移動距離にして約1メートル、本来のサーナイトの力であれぼ考えられないほどの短い移動だがバトルで傷つき消耗した体ではこれが限界だ。しかし、今の状況であればそれだけ移動できれば十分価値がある。
「これで終わりだ!『ムーンフォース』!」
サーナイトは両腕に月の光を集め球状のミルク色のエネルギー弾を作り出し、超至近距離から『ムーンフォース』をぶつけると爆発音とともに煙がサーナイトとパーモットを覆う。
ジンとネモ、そして観客たちが見守る中、煙は少しずつ晴れていく。そこには地面に仰向きで倒れるパーモットと息を荒くしながらもしっかりと立っているサーナイトが現れる。
「…………」
「審判」
「……ぱ、パーモット戦闘不能!サーナイトの勝ちだ!」
審判を行っていた男性はその姿を信じられない様な目で呆然と見ていたが、ジンに声をかけられると慌てた様子でコールを行う。
「や、やった!ジンが勝った!」
「ニャーー!」
「2人とも凄いバトルだったよ!」
「ホゲホゲ!」
本来であればこれほどのバトルが終われば、見ていた観客すべてが歓声を上げるところだが、それを行っているのはリコとロイ、ジンの身内だけだ。
だが、それも仕方がない。ここはパルデアでありネモはそこのチャンピオンクラスのトレーナーだ。見ている観客たちの殆どは熱いバトル、そして最後はそのバトルをネモが制するのを楽しみにしていたのだろう。それが、まさかの敗北だ。観客たちには今にも泣きそうな顔になっている子供やどのような声をかければいいのか分からない大人などが見られる。
「…………」
観客たちの心配そうな視線が集まる中、ネモはパーモットをボールへと戻していく。パーモットをボールに戻し終えてもネモは俯いて何も言わない。観客たちだけでなく、ジンやジンの勝利を喜んでいたリコやロイも次第にネモに注目していく。
「………すっごーーーーーい!」
長い沈黙を破りネモはそう大声で言うと、目をキラキラさせながらものすごい勢いで距離を詰めてジンに近づいてくる。
「今のバトル凄い楽しかった!君のサーナイトめっちゃ強い!ねぇねぇ!さっきの『テレポート』のタイミング完璧だったよ!ひょっとして狙ってたの?」
ジンの目の前まで来たネモはジンの両手を握り無理やり握手を行うとその手をブンブン振って自分の喜びを伝えてくる。
「あ、ああ……まぁ、サーナイトには動く体力が残ってなかったですから。パーモットの攻撃をカウンター気味に狙うしかないと思ってたので…」
「やっぱり!ジンって凄い強いんだね!ねぇ、今度は違うポケモンでもう一度バトルしようよ!」
ジンに迫っていくネモの姿からは悲しみや悔しさの様な物は感じない。バトルに負けて傷心しているのかと思えば、楽しいバトルができて感激していただけの様だ。
無論、敗北の悔しさは感じているだろうがネモにとっては勝ち負けよりもどのような勝負したのかの方が大事な要素なのだろう。
(大事なのは勝負の結果よりもそこまでの過程という訳か……否定はしないが…)
ジンにとってどれほどいい勝負をしようとも敗北とは許せないものだ。これまでの自分と自分に期待してくれた人たちへの裏切りだとさえ思っている。バトルでは楽しむことは当たり前、楽しみ抜いた上で死んでも勝つ。それがジンのバトルでの基本だ。
ネモの考えを否定はしないし、彼女の事も嫌いではないがバトルで絶対に負ける訳には行かない相手という認識になっている。恐らく勝負事での価値観についてはジンとネモでは残念ながら分かち合うことは出来ないのだろう。
「ねぇ!バトルしようよ!」
「……そうですね」
「駄目!」
だが、それはそれとして実際、ネモとの勝負は面白かった。この緊張感とバトルで得られる経験値はとても貴重だ。折角の機会だし、もう少しだけと思ったその時観客の中からリコが飛び出してジンとネモの間に入り込み二人の繋いでいた手を強制的に引き離す。
「1回だけって約束だったでしょう?」
「あ~……そうだな」
「え~~~~~」
ジン・ネモ共にやや不満そうだが、元々がそういう話だったため仕方がないと諦める。確かにこれ以上、時間をかけては本来の目的であったコルサの捜索や黒いレックウザの情報を得る事にも支障をきたしかねない。
「取り合えず、サーナイトをポケモンセンターに連れて行くか。そこでコルサさんの事も聞いてみよう」
今のバトルでサーナイトは既にボロボロだ。治療と情報収集の為にポケモンセンターに行こうと提案を出すとそれを聞いていたネモが話しかける。
「コルサさん?あなたたちコルサさんに会いに来たの?」
「知ってるんですか?」
「勿論!この町のジムリーダーだよ。どこに住んでるのかも知ってるから案内するね」
ちょっと半端な終わりかなとも思いましたが、今回はここまでです。
最初はパモットとバトルさせようとも考えましたが、流石にパモット相手に苦戦するジン君は書きたくなかったので勝手ながら進化させちゃいました。ネモはきっとパルデアではトップクラスのトレーナーだろうし強いと信じてます。
☆9
ビスケットサンドさん
☆10
來楼羽さん、ゆうゆう書籍(ガッツYYのマブダチ)さん、みっちちゃんさん、ヒツジチャンさん
高評価ありがとうございました。