アニポケ、いよいよ次から新章突入ですね。六英雄も分かったし、めっちゃ楽しみ!
ボウルタウンにてコルサから黒いレックウザを森で見たという情報を手に入れたジンたちは一度、ブレイブアサギ号へと帰還した。直ぐにライジングボルテッカーズのメンバー全員(ドットは画面越し)を招集、手に入れた情報を共有し翌日に森を探索することが決定する。
「こんなに早く、情報が手に入るとはな…」
ミーティングルームを後にし、自室に戻ったジンは椅子に座りながら今日手に入れた情報を整理する。アレックスから得た曖昧な情報を元に調査した結果、調査一日目で黒いレックウザの貴重な目撃情報を得ることに成功した。情報の専門家のドットによりパルデアにレックウザが来ていたという確かな情報があったとはいえ、この早期発見は奇跡と呼べるかもしれない。
「コルサさんの情報に嘘はないと思う。だが、レックウザのようなポケモンがいつまでも同じ場所に留まっているとはどうしても思えない……」
レックウザとは本来、宇宙空間やオゾン層に生息しそこで大気中の水分や塵を食べて、地上に降りてくることは少ないと言われているポケモンだ。仮にその森にまだいたとしてもその気になれば、あっという間に宇宙まで飛んで行ってしまう可能性もある。
「いや……見つけた所でか…」
ロイとホゲータは着実に成長している。コルサとのバトルを見てもそれは明らかだ。だが、現段階ではどう考えてもレックウザとは勝負にもならない。ゲットするなど夢のまた夢だ。この実力差でゲットするとなれば、それこそマスターボールの様な道具でもない限り不可能だろう。
「そうなると2つ目の情報に期待するしかないか…」
2つ目の情報、それは森のオリーヴァだ。コルサによると黒いレックウザを見たのは、このオリーヴァが生息している森らしい。そして、理由は不明だがレックウザに共鳴するようにオリーヴァが輝いていたそうだ。
もしもこのオリーヴァがレックウザと何らかの関係があり、レックウザを見つけ出すヒントになればロイが確かな実力を身に着けた時に大いに役に立つ可能性がある。今のロイがレックウザをゲットするよりかはこちらに賭ける方がまだ現実的だ。
「黒いレックウザと森のオリーヴァか……」
ジンはポケットからスマホロトムを取り出すと、オリーヴァを検索する。
『オリーヴァ オリーブポケモン 草・ノーマルタイプ 穏やかでとても慈悲深い。栄養豊富な美味しいオイルを弱ったポケモンに分け与える』
「レックウザに比べたら明らかに普通のポケモンだ…」
コルサが連れていたオリーニョの進化形のポケモンだ。ミニーブの最終進化形という事もあり、どこにでもいるという訳ではないが決して珍しいポケモンでもない。図鑑の情報だけではレックウザとなにか関わりがあるとはとても思えなかった。
「……念のために調べておくか」
今日のバトルで頑張ったロイとホゲータへのご褒美、そして明日に備える為に今夜と明日の早朝のトレーニングは中止にしたため時間だけはある。その時間を利用して、通常のではあるがオリーヴァに関して得られるだけの情報を集め対策を練り上げると翌日に備え体を休める。
***
翌日、前日に道案内を頼んだネモと合流しジン・リコ・ロイ、そして今回は本人の希望もありモリーも一緒にコルサに教えられたオリーヴァのいる森へと来ていた。
「これは……」
「酷い……」
しかし、そこは予想していた緑あふれる自然豊かな森など存在せず辺り一面が焼け野原と化していた。森だった場所に一歩足を踏み込むと土はかさつき、木は少し触っただけでボロボロと崩れてしまう。
「ここはついこの間、山火事があったんだ」
「ニュースでは落雷が原因だって、今の時期はどこも乾燥してるから」
「この辺りに住んでいたポケモンたちは?」
「それは大丈夫、丘の向こうは無事みたいだからほとんどそっちに移ったみたい」
「そうか…」
この状況ではそうする他なかったのだろう。このまま無理にここに住み続ければ環境に適応できずに生きづらい思いをしていた筈だ。そうなってしまうくらいであれば、住み慣れて思い入れがあったとはいえ住処を変えた方が遥かにいい。
(……これは元に戻るまで時間がかかりそうだな)
ジンの故郷のホウエン地方はパルデア地方と同じように自然豊かな場所だ。旅をしている時にここと同じように山火事などが起こってしまった土地を何度か見たことがあったが、以前の様に回復するまでに何年も時間を要するという話を聞いたことがある。ここも恐らくは例外ではないだろう。
「それじゃあ、私はポケモンリーグにコルサさんが復帰したことを報告しないといけないからここで、ジン!次に会ったらもう一度バトルしようね!今度は私が勝つから!」
「……ああ、いつでも相手になるよ」
ネモはいつの日かジンとの再戦を約束すると笑顔になり来た道を戻っていく。その笑顔は一般的に見れば間違いなく可愛らしい少女の笑顔だったがジンにはどこか自分の事を獲物として狙っているような不気味で危ういものを感じさせる笑みに見えていた。
「………」
狙う者から一転、狙われる立場になったジンは強くなったネモとの再戦を期待しながら彼女の背中を楽しそうな顔をして見ているといつの間にか接近していたリコがジンの腕に自分の腕を絡ませ強引に体の向きを焼け野原となった森の方へと向ける。
「リコ?」
「……なんでもない。行こう?」
「あ、ああ…」
先に進んだロイとモリーを追いかける形でジンとリコも焼け野原となった森を進んでいく。変わり果てた森の姿に心を痛めながらも暫く歩き続け丘を越えた先には、ネモの言っていた通りで自然豊かな森が広がっていた。
「先に偵察行って来るよ!」
幼い頃から自然に囲まれた島で育ったロイは森に入ると同時にテンションが高くなっている様だ。目的の黒いレックウザがここにいるかもしれないという状況が尚更そうさせるのだろう。
「気を付けてよ!」
「大丈夫!森には慣れてるから」
「ロイ!レックウザを見つけても、1人でバトルを仕掛けるなよ。まずは連絡を入れてくれ」
「分かった!迷ったらあそこの大きな木の下で待ち合わせってことで!」
ロイとホゲータは万が一、森で迷ってしまった場合の集合場所を森の中で一番巨大な大木と決めると元気よく森の中を進んでいく。
「大丈夫かな?」
「……まぁ、大丈夫だろう。ロイは森に慣れているだろうし集合場所も決めた。迷ったとしてもこっちには森の専門家のジュカインがいるし、いざとなればサーナイトのエスパー能力とボーマンダで空中から捜索すればなんとかなるさ」
「そうだね…」
不安要素があるとすればロイが単身でレックウザと予期せぬ形で遭遇してしまった場合だろう。ああは言っていたが、レックウザを見つけてしまえばロイの性格上、バトルを挑む可能性は大いにある。そうなれば返り討ちになりホゲータが傷つくだけでなく森が荒らされることまで考えられる。
「うちは心配性ばっかりだね。さぁ、こっちも行動開始するよ」
暫く3人で森を捜索していると丁度良く倒れている木を発見する。ジンは体力的にはまだ余裕だったがリコとモリーの体力を考慮し、そこで休憩を取る事にした。ジンたちは持参したおいしい水を飲みながら改めて森の観察を始めると森の中には木の上で囀るヤヤコマや若葉を食べるメェークルなどが確認できる。
「わぁ……森の奥ってこんなにポケモンがいるんだ…」
「リコの地元じゃないのか?」
「うん。でも、森の奥まで来たことなかったから」
「お嬢様だね…」
「ち、違うよ!だって、あの頃はニャオハもいなかったしお父さんとお母さんも忙しかったから」
「それなら尚更だろう。俺なんて両親から森に入るなって散々言われてたのにそれを無視してポケモンに会いに森に行ってたし」
親の言いつけを無視して森に入った結果、なかなか帰ってこないジンを心配した両親や周りの人たちが森を捜索したことは何度もある。だが、ほとんどの場合は両親が森で捜索をしている間にジンがいつの間にかひょっこりと帰ってきて入れ違いになり、逆に両親が遭難しかけることが多々あったそうだ。
「リコはジンと違って親御さんに迷惑をかける問題児でも不良でもないって事だね…」
「失敬な。好奇心旺盛な少年と言ってくれ」
「ふーん……ねぇ、リコの両親はどんな仕事してるの?」
(思いっきり話逸らされたな…)
決してジンは不良だったわけではない。ただ、単にポケモン関連の事となると気になることがあれば分かるまで調べあげたくなる性質だっただけの事だ。その結果、偶然両親が二次被害にあってしまっただけの事である。
「お父さんは絵本を書く人でお母さんは学校の先生だよ」
「リコはどっちに似たの?」
「うーん……どっちにも似てないんじゃないかな?どっちかに似てたら楽だったんだと思うけど」
「ん?」
「お父さんもお母さんも、二人ともやりたいことがあって、良いなって思ってた。私、何になればいいのか、何をやりたいのか、全然わからなかったから」
「リコの年で将来見据えてたら逆にやばい。そんなのは本当に一部の例外だけだから」
「……俺の方を見ながら言うのやめてくれないか」
モリーは珍妙な生物を見るような目でジンの方を見てくる。ジンがかつてアレックスに語った夢、ジンに敗れバトルの道を諦めた人たちや期待を寄せる人たちの想いを背負い、その想いを裏切らない強いトレーナーになる事。
それは既にライジングボルテッカーズのメンバー全員が知っている。リコの実家にリコとジンが泊まった際にアレックスから話題が出てしまいリコが興味を持ったためジンは黒歴史を披露する様で、嫌々ではあったが話した。人の口には戸が立てられないと言うが、その例に漏れずリコはロイに、そしてロイはフリードにという順で情報が広がり、いつの間にかメンバー全員が知る事となってしまったのだ。
「あ、あはは……ご、ごめんね。まさかこんなにあっさり広まるとは思ってなくて…」
「……別にいいよ。自分への戒めにもなるさ」
過去に犯したような過ちはもうしないつもりである。ただ、そのことは自分だけでなく仲間たち全員が知っているのだ。それが改めて己を律する事に繋がる。ジンはそう考える事とした。
「私もリコと同じ。やりたいことなんてわからなかった。リコと私が違うところは、私には最初から道が用意されていたこと」
「……医者の道か」
「正解。よく分かったね」
それは以前から感じていた事であり、先日のボウルタウンでジョーイの顔を間近で見てほぼほぼ確信していた事だ。医療関連の家系のジョーイそして警察関連の家系のジュンサー、この2つの家系は遺伝子がとても強く家族写真などを見ると余程親しい関係でなければ誰が誰なのかを特定するのは難しいと言われる程似た顔つきとなる傾向がある。
(……モリーは目つきがちょっと鋭いけどな)
「お医者さん…すごい」
「凄くないよ。リコくらいの頃の私って将来のこととか、本当に何も考えてなかったんだ。ただ言われたことをやってきただけ。でも、ポケモンのことは大好きだったし仕事にやりがいもあったけどね……でも、辞めちゃった」
理由はまだ内緒との事だが、この旅が始まり今までポケモンセンターを訪ねたことは何度かあったがモリーがポケモンセンターを訪れたのはニャオハが攫われた時だけだ。それ以外の時は何らかの理由をつけて行くのを断っている。その理由を垣間見た気がした。
「ニャオ~ニャハ~!」
ジンたちがそんな会話をしていると近くの茂みからニャオハが顔を出し声をかけてくる。何かあったのかと思い近寄って見ると茂みの先には小さな木があり、その木には多くの木の実が実っていた。
「オレンの実か……収穫するにはちょうどいい頃合いだな」
「そうだね。2人とも見つけたら集めておいて」
オレンの実は食べることが出来るのはもちろんの事、ポケモンの体力回復やポロックの材料にもなる。旅をするうえで持ち運びもしやすい事からトレーナーには使い勝手のいい木の実だ。薬の代わりにもなる為、モリーの提案で採取をジン・リコ、モリーの二手に分かれ採取を行っていく事となる。
ジンとリコはモリーと分かれてからニャオハに匂いを辿ってもらい、森の奥へと進んでいく。木々の間を抜けて少しずつ前に進んでいくと少しひらけた場所へと繋がっていた。そこには周りの木と比べると小さな、先ほど見つけたオレンの実の木が多く生えていた。
「お、あったな」
「本当だ!いっぱいあるね」
リコは木に近づくと背負っていたカバンを下ろし、オレンの実をどんどん詰めていく。
(これだけあれば、当分の間はオレンの実に困らないな)
使い勝手がいい事もありオレンの実は消耗が激しい。ライジングボルテッカーズの財政面などの事も考えると採れる場所ではできるだけ入手しておきたい。そう思ったジンはリコに続くように木の実を採取しようと近づいた、正にその時だった。
「っ!リコ!」
「え?きゃあ!」
ジンが近づいたのほぼ同じタイミングでリコのすぐ近くに生えていた大きな木が突如、大きく揺れた。瞬間的に強い敵意を感じたジンはリコの肩に手を伸ばすと無理やり自分のいる後方へと引っ張り抱き寄せる
「ブギャァァァァ」
すると怒りの声と共に木の上から一体のポケモンが現れ、今までリコのいた地面に拳を力の限り振り下ろし砂埃が辺りを包みこむ。注意深く観察をすると砂埃が少しずつ晴れてシルエットが見えていき、ようやくそのポケモンは正体を現した。
「オコリザル……いや、違う」
そのポケモンは砂埃越しにはオコリザルの様にも見えたが、実際に見るとオコリザルと比べ両腕の筋肉が太く両腕にあったはずの腕輪は片方は完全になくなっている。更に見た目に関してもボサボサに振り乱した灰色の長い体毛にギラギラと真っ赤に輝く目、そして目の下に表れたドス黒い隈などオコリザルにはなかった特徴がいくつも見られた。
(……ひょっとして)
咄嗟にスマホロトムを取り出し目の前のポケモンを検索する。
『コノヨザル 格闘・ゴーストタイプ オコリザルの進化形 怒りのボルテージが臨界点を超えたとき肉体という枠に縛られないパワーを手に入れた 心に秘めた怒りのパワーを拳に込めて相手を骨の髄から砕く』
「そうか…やはり、こいつが」
先日のネモとのバトルでパルデア地方のポケモンや専用技に対する知識が不足していると感じたジンは昨夜、情報の報告を終えた後にポケモン博士であるフリードに頼み個人的な授業を受けていた。その時に教わったポケモンの一体が目の前にいるこのコノヨザルだ。
オコリザルの進化形というだけでも興味はあるが、それ以上に格闘・ゴーストなどという複合タイプはジンの知る限りほとんど確認されていない貴重な存在だ。
「ブギャァ!ブギャ!ブヒィィ!」
(……怒ってるな)
コノヨザルは今にも血管が切れてしまいそうなほどの怒り声を上げてこちらに敵意を向けて拳を振り回している。コノヨザルがこれほどまでにこちらに敵意を向ける理由は恐らく一つだけだ。
「……なるほど、ここはあいつの縄張りだったか」
森に入ってから多くの野生のポケモンたちを見たが、このオレンの実の木の周辺ではコノヨザル以外にポケモンを一体も見ていない。よくよく考えてみればこれだけ大量に木の実がある場所に野生のポケモンが全くいないなんておかしな話だった。恐らくはここは、コノヨザル専用の餌場と考えるのが自然なのだろう。
「ジン……」
抱き寄せられていたリコは不安そうな声を上げながらジンを見つける。それも仕方ない。先ほどのコノヨザルの拳はジンが無理やり引き寄せていなければ確実にリコに当たっていた。図鑑の説明や実際に拳が落ちた地面の様子を見る限り、もしもリコに命中していたら無事では済まなかっただろう。
「大丈夫だ、任せろ」
ジンはリコの頭に手を置き彼女の不安を取り除くために大切そうにゆっくりと撫でると額にそっと口づけをし、ただ一言そう告げてリコを自分の後ろに回す。
「さてと……」
コノヨザルはジンたちを完全に敵と判断している。たとえ、逃げたとしてもどこまでも追って来る筈だ。サーナイトやボーマンダの力を借りれば逃げることは簡単だが、その場合コノヨザルは怒りを森や森に住む他の野生のポケモンにぶつける可能性が高い。逃げるという選択は出来ない。もはや、バトルは避けられないだろう。
(ふっ……ただの言い訳だな)
そう……周りに迷惑をかけるなんて考えは正直、今のジンにはどうでもよかった。目の前にいるコノヨザルとバトルがしたい本当の理由はただ一つ、大切な恋人であるリコに手を上げようとしたことに対する強い怒りだ。
「コノヨザル、お前を責める気はない」
「ブギャ?」
「俺たちは知らなかったとはいえ、お前の縄張りに足を踏み入れ食事にまで手を出した。怒るのは当たり前だ。だから、憎しみを抱いたり恨んだりはしない。だが……」
ジンの心は今は怒りに燃えているがバトルを終えた後であれば、きっとコノヨザルの事も許せる。だが今は、今だけは……
「覚悟はいいか?コノヨザル、俺は今から怒るぜ」
前半はアニメ通りの展開で最後のセリフはなんか咄嗟に思い出しちゃったので書いちゃいました。思い出したときはいいと思ったのですが、書き終えた後に読むと若干ネタっぽいですねw
次回は真面目にバトルします。よければ次回も読んでください。
☆9炎竜騎士さん
☆10雪村紅さん、ビシャデスマーチさん、ほうきさんさん、ヒサヤさん
高評価ありがとうございます。