ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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今回はコノヨザルとのバトル回となります。


VSコノヨザル

 

「覚悟はいいか?コノヨザル、俺は今から怒るぜ」

 

 コノヨザルを鋭く睨みつけながらポケットに手を入れ、中にある6つのモンスターボールから1つを取り出そうとする。ジンは間違いなく目の前のコノヨザルに怒りの感情を抱いてはいた。しかし、ポケモントレーナーとして経験がそうさせるのか、いざバトルを始めようとすると怒りに燃えている心とは裏腹に頭の中はとても冷静になっていく。

 

(……あまり森を傷つけたくないな)

 

 ほんの少し前に火災が起こり森の多くが傷つき、復活の目処も立っていない。この状態の森で炎技や電気技などを乱用してしまえば被害は広がり、今度こそこの森は終わってしまうかもしれない。流石にそれは避けたいところだ。

 

「……決めた」

 

 森を必要以上に傷つけない為の様々な条件をクリアし、更に以前から実戦で使用してみたいと思っていたポケモンが一体いる。レベル的に見ても恐らくコノヨザルと然程違いはないだろう。

 

「初陣にはちょうどいい相手だ。頼むぞハッサム」

「ハッ!」

 

 モンスターボールから飛び出したのはロイと出会ったカントー地方の離島でゲットしたストライクから進化したハッサムだ。このハッサムはジンのポケモンたちとは何度も対戦し、ニャオハやホゲータの修行相手になったことはあるが実戦ではこれが初陣となる。

 

「ブヒィィィィィィ」

 

 ハッサムがボールから出るのと同時にコノヨザルは数メートルは離れた位置から拳を構えると右ストレートをハッサムに向かって打ち込む。するとコノヨザルの右拳から黒い影が拳の形となり飛び出す。

 

「『メタルクロー』!」

 

 ハッサムは両腕のハサミを構え、影の拳にハサミをぶつけ空中に受け流す。ハサミを鋼鉄化したこともあり、ハッサムには大してダメージが入ってないようだ。

 

(……今の技、思っていたよりも威力がなかった)

 

 技が来た時は『シャドーパンチ』かと思い、回避ではなく迎え撃つ形を取ったがハッサムが容易に受け流しダメージも大して負っていない所を見るとやや威力が低いように感じる。『シャドーパンチ』よりも威力が低く似たような技となると1つしか思い当たらない。

 

 恐らく、コノヨザルが使用したのは『ふんどのこぶし』なのだろう。この技はコノヨザルの専用技で元々の威力は『シャドーパンチ』よりも低い。しかし、これまでに受けた攻撃1回につき、威力が50上がるという効果を持っている。

 

(下手に攻撃を当て続ければ『ふんどのこぶし』の威力を上げることになる…)

 

 そうなることは避けたい所だ。その為には、できるだけ少ない攻撃でコノヨザルを戦闘不能にするしかない。攻撃の隙を与えず攻め続ける。そう決めるとジンはハッサムに指示を出す。

 

「今度はこっちの番だ!『バレットパンチ』!」

 

 ハッサムは両腕のハサミを弾丸のように固く握り締め、その状態で高速で接近し拳をコノヨザルの腹に叩き込む。特性『テクニシャン』により『バレットパンチ』の威力も上がっており技をくらったコノヨザルは勢いよく後方へと転がっていく。

 

「一気に攻めるぞ!『シザークロス』!」

 

 更なる追撃を仕掛ける為に、ハッサムは再度接近する。コノヨザルは立ち上がるとハッサムが接近してくるのに気づき、回避を諦めた様で両腕を前に出し脇を閉めガードを固める。コノヨザルは体からピンク色のオーラを出しながら『シザークロス』を正面から受け止めた。

 

「ハッサム!下がれ!」

 

 ジンの指示を受けハッサムは慌てた様子で後ろにジャンプする。するとジャンプした瞬間、今までハッサムの顔があった場所にコノヨザルの拳が横切る。恐らく、ハッサムの攻撃を避けられないと判断した時から今のカウンターを狙っていたのだろう。判断が一瞬でも遅れていれば拳はハッサムを捉えていたかもしれない。

 

(『ビルドアップ』……そして『ドレインパンチ』か…)

 

 そう、コノヨザルはガードの体勢に入ると『ビルドアップ』を発動させ攻撃と防御を上げていた。その結果、多少のダメージはあるが『シザークロス』を受け止めるこに成功し、更に攻撃を耐えるとすかさず『ドレインパンチ』で攻撃と自身の体力の回復を狙っていたようだ。

 

 ジンの読みがギリギリで追いついたこともあり、ダメージは免れたが『バレットパンチ』と『シザークロス』で2回攻撃を受け、『ビルドアップ』で攻撃と防御を上げている。『ふんどのこぶし』の威力は先程の比ではないだろう。

 

「……見た目に似合わず色々考えてるんだな」

 

 一連の行動を分析すると、ジンの口から思わずそんな言葉が口から溢れてしまう。

 

「ブギャァァァァァァァァ」

 

 ジンは誉め言葉で言ったつもりだったのだが、コノヨザルはこれを侮辱と受け取った様で今にも血管から血を吹き出しそうなほどに怒り狂い、目を真っ赤にすると先ほどまで見せていた戦術の欠片も感じられない程愚直に突っ込んでくる。

 

「『かげぶんしん』」

 

 コノヨザルは接近すると手足を乱打させながら攻撃してくるがハッサムは『かげぶんしん』を発動し複数体の分身を作り出す。コノヨザルは怒りに任せて視野が極端に狭くなっている為、分身したことにすら気づかず目の前にいた分身体を攻撃してしまう。

 

 確かに『ビルドアップ』によりコノヨザルの攻撃値は上がっている。しかし、こんな闇雲に攻撃しては当たるものも当たらない。先ほどまでの冷静な判断が出来ていたコノヨザルならばそれが分かるはずだ。だが、今は完全に怒りに囚われてしまっている。

 

(……これって『あばれる』いや『げきりん』か?どっちにしろ、もったいないな)

 

 今の場面、もしも『ふんどのこぶし』を使用していれば先ほどの様に『メタルクロー』で弾くのは難しかった。しかも一度見ただけでは必中技である『シャドーパンチ』との区別がしにくいため回避するという選択肢が取りにくい。正面対決せざる得ないとなればハッサムもかなりのダメージを受けていたかもしれなかった。

 

(あの怒りをコントロールすることが出来れば……)

 

 それが出来ればコノヨザルはもっと強くなれる。それだけの才能は間違いなくある。だが、今は……

 

「そろそろ終わらせよう…」

 

 コノヨザルは怒りに任せ辺りの木々にも八つ当たりするかのように攻撃をしている。これ以上、好きにさせれば森への被害が広がるばかりだ。早々にバトルを終わらせる必要がある。

 

「ハッサム、飛べ」

 

 ジンの指示を受けハッサムは空高く舞い上がる。ストライクから進化した際に体重が倍近くとなり、更に背中の羽は退化し以前ほど自在には飛べなくなってはいるが、短時間であれば飛行することが可能だ。

 

「決めるぞ!『ダブルウイング』!」

 

 いまだに怒りに囚われ暴れているコノヨザルと十分な距離を取ると一気に空中から地上に加速しながら突っ込み翼をぶつける。一度の攻撃で二回分のダメージ、しかも効果抜群な上にハッサムの特性の影響で威力の上がった攻撃を受け、コノヨザルは力尽きその場に倒れ込んでいく。

 

「行け!モンスターボール」

 

 コノヨザルが倒れ込んだのを確認するとジンはポケットから空のモンスターボールを取り出し、コノヨザルに投げつける。赤い光がコノヨザルを包みモンスターボールへと吸い込むと数回左右に揺れた後、カチリという音がなり動きを止める。

 

「……よし、ハッサムお疲れさん」

「ハッ!」

 

 バトルを終えたハッサムを労いモンスターボールへと戻す。続いて図鑑を操作し、今ゲットしたばかりのコノヨザルを手持ちに残す代わりにライボルトをオダマキ博士のもとに転送する。

 

「リコ、もういいぞ」

「う、うん…」

 

 ジンの背後から少し距離を取りバトルを見ていたリコが近づいてくる。

 

「ジン……お、おめでとう…」

「無理しなくていいぞ」

「そ、そんな事!」

「いいんだよ。それにコノヨザルを仲間に加えるのかはリコに決めて欲しいんだ」

 

 ジンの手持ちになればこの先、リコとも何度も顔を合わせることになる。その度に襲われた時の事を思い出すかもしれない。手持ちにする以上、もう誰彼構わず襲ったりしない様に指導していくつもりだが簡単に上手くいく保証はないのだ。

 

「……私が?」

「ああ、もうコノヨザルが怖くて顔も見たくないって言うんならコノヨザルは後で野生に戻しても構わない」

 

 コノヨザルは世にも珍しい格闘・ゴーストの複合タイプのポケモンだ。レベルもそれなりに高く、才能もあり直感ではあるがまだまだ強くなれる。できれば欲しいがゲットしたばかりのコノヨザルとリコ、どちらかを選べと言うのならジンは迷わずリコを選ぶ。

 

「…………私は」

 

(コノヨザル……怖かったなぁ……でも……)

 

 本を正せば、悪いのはコノヨザルの縄張りに足を踏み入れた自分たちだ。コノヨザルは自分の縄張りを守ろうとしただけの事、勿論、襲われた時の恐怖感が消えるわけではないがコノヨザルを憎む気持ちにはなれなかった。

 

(怖いからって逃げてたら、前となにも変わらない……折角、冒険に出たんだもん。勇気を出さないと!)

 

「……大丈夫だよ」

「本当にいいのか?」

「うん。元々、悪いのは私なんだもん。それにね…私、ポケモンの事もっとよく知りたい。だから、そんなに気を使わなくても大丈夫だよ」

「リコ……」

「それに、ジンだって本当はコノヨザル欲しいんでしょう?」

「……まぁな」

 

 コノヨザルがあの溢れるほどの怒りを自在にコントロールできるようになれば即戦力になることは間違いない。現状、格闘とゴースト、どちらのタイプも持っていないジンにとっては、ここで逃がしてしまうのはあまりにももったいないポケモンだ。

 

(リコ……強くなったな…)

 

 学園で初めて会った頃の彼女であれば、きっとこんな事は言えなかっただろう。ジンやニャオハ、ライジングボルテッカーズと出会い、冒険に出ると決めてからリコはジンの知らないうちに以前よりもずっと強くなっていた。

 

「さぁ、そろそろモリーと合流しよう!」

「……ああ、そうだな」

 

 ジンとリコは木の実の採集とバトルでかなりの時間をここで使ってしまった。いい加減、モリーも待ちくたびれているであろうと思い来た道を戻ろうとするが……

 

「あ、あれ?」

「……まずいな」

 

 コノヨザルが怒りに任せて木々に攻撃した結果、生えていた木のいくつかは倒れてしまっている。そのせいで先程までのジンたちの記憶していた森の景色が変わってしまい、来た道が分からなくなってしまったようだ。

 

「ま、迷っちゃった!?どどどどどうしよう~~!?」

 

 成長していると思った途端にこのテンパリ具合だ。精神的には強くなったようだが、こういった場面で焦る所を見るとまだまだ旅の経験値が不足しているのが窺える。その困っている姿を見て不思議と楽しくなってきたジンだが、流石にふざける場面ではないので旅の経験を生かしてリコにアドバイスを送る。

 

「落ち着けって……こういう時は連絡と地図の確認だ」

 

 そう言うとジンとリコは互いにスマホロトムを取り出し、起動させる。しかし‥…

 

『圏外です』

 

「そ、そんな!」

「まぁ、森の中だしな。機械の調子が悪くて道に迷うってあるあるだよ。仕方ない仕方ない」

「仕方ないじゃないよ!どうするの!?」

「……そうだな。取り合えずモリーやロイと合流したいし、待ち合わせ場所に行こうか?」

 

 ジンに言われロイやモリーと事前に迷ってしまった時の待ち合わせ場所を決めていた事を思い出す。辺りを見渡すとその場所は直ぐに見つかった。

 

「あ、あれだよね?」

「ああ、行くぞ」

 

 約数キロ程先に確認できる大きな大木、そこに向かってジンとリコは歩き出す。この数分後、目印程度にしか思っていなかった大木の本当の正体をジンたちは知る事となる。そして、それが大いなる冒険と謎の一歩へと繋がる事はまだ誰も知らない。

 





最初はハッサムはコルサとのバトルで使おうと思ってたのに、ロイの活躍を書いたらハッサムの出番作れなかったので今回は頑張ってもらいました。

次回はVSオリーヴァです。久々にメガシンカさせたいですね!

☆9
ヌワーノ・パパスさん

☆10
仮面ライダージオウ平成アーマーさん

高評価ありがとうございます。
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