ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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なんとか一週間以内に投稿できた~


森の再生

 

 ジンたちはオリーヴァから地上に降りると地上に残っていたモリーにこの森が自分たちの予想以上に深く傷ついている現状を説明し、この森に住むポケモンたちのかつての暮らしを取り戻す為に森を再生させる事を提案した。

 

「森の再生か……異論はないけど、本当に出来るの?」

 

 モリーもジンの案には賛成の様だが、現実的に可能なプランであるのかについては少々、疑問を抱いている様子だ。しかも、それはモリーだけでなくリコやロイも同じらしい。

 

「あぁ、上手くいけば今日中にある程度の所までは元に戻せるかもしれない」

 

 勿論、ジンもノープランの一時の感傷だけでこんな事を提案したわけではない。この森の様々な状態、自分たちの持っているポケモンたちの力を把握した上で実現可能な可能性があるため提案している。

 

「今日中に!?」

「そんな方法があるの!?」

「ああ、手順を説明するからよく聞いてくれ」

 

 ジンは3人にこの森を再生させるプランを説明していく。

 

 まず、リコとモリーの女性陣の役目は森にある木の実をたくさん集めて来ることだ。この際、今後の森で生活するポケモンたちの為に、できればオレンの実やオボンの実などの体力回復効果のある木の実やラムの実の様な状態異常を回復するものなどを中心に選んで持ってきてもらう。

 

 そして、ジンとロイは焼け野原となった個所を耕す作業だ。焼け野原となった個所は広いため、2人だけでは当然不可能だが、そこはポケモンたちの力を借りる。そこにリコたちが持ってきた木の実を植えて下準備を行うという内容だ。

 

「でも、肝心の水はどうする?この時期のパルデアじゃ、雨は期待できないよ」

「だから、『あまごい』を利用しようと思う」

 

 ポケモンの技、『あまごい』で強制的にここに雨雲を発生させ、作った畑に水を与える。現状のパルデアの環境で雨を降らせるにはこの方法しかない。

 

「ただ、今の手持ちには『あまごい』を使えるポケモンがいないんだ。通信障害が回復したら直ぐにスマホロトムでポケモンの交換してもらおうと考えてる。それでこの問題は解決するだろう?」

「……プラン自体は悪くないと思うけど、これだと時間がかかるでしょう?どうやって今日中に森を復活させるつもり?」

「そのカギを握っているのは……オリーヴァだ」

 

 ジンは振り返り、背後で荒れ果てた森を悲し気に見つめていたオリーヴァに視線を向ける。3人もジンにつられオリーヴァに視線が集中した。

 

「オリーヴァの特性を利用して森を復活させる」

 

 オリーヴァの特性『こぼれダネ』、この特性は攻撃などを受けると周りの植物を成長させその場をグラスフィールドという状態にする効果がある。そして、オリーヴァはこの大きさだ。通常の個体よりも強大な威力が出ることが期待できる。

 

「確かに……それなら、上手くいくかも!」

「うん!やってみようよ!」

 

 リコとロイはジンの作戦を聞き、実現可能だと判断した様で乗り気な様子だが、モリーは待ったをかける。

 

「ジン、やっぱりあんた凄いよ。でも、その作戦には問題がある。それは……」

「オリーヴァの体力か?」

「……まぁ、あんたなら気づくよね」

「まぁな……これがある意味、一番の難題だ」

「ど、どういう事?」

「僕たちにも分かるように言ってよ!」

 

 深刻そうな顔でオリーヴァを見上げるジンとモリー、その会話についていけなかったリコとロイは説明を求めてくる。

 

「オリーヴァはさっきのウパーの様に自力では生きていけない力の弱いポケモンが現れたら養分を分け与えて傷つけば治療もしていたんだ。その影響でオリーヴァ自体がとても弱ってる」

「恐らくね。それに……」

「分かってるよ。さっきのバトルでオリーヴァは更に深い傷を負ってしまった」

 

 あの状況ではバトルは避けられなかった。ジュカインが如何に素早くてもただ、逃げているだけでは倒されてしまう。反撃も仕方なかったが、時間稼ぎという観点で見れば『くさむすび』で転倒させた段階で役目は終えており最後の『シザークロス』での容赦のない攻撃は少々、過剰だったと言わざる得ない。

 

「そんな……」

 

 だが、リコたちにはジンを責めることは出来ない。あの場でオリーヴァに対抗できたのはジンだけであり、自分たちはそれに頼るしかなかった。もし、責任があるとすればそれはジンだけでなくここにいる全員が背負うべきなのだから。

 

「心配するな。バトルの傷はなんとかする」

 

 そう言うと、ジンはオリーヴァに近づいて行き大声で聞こえる様に話しかける。

 

「オリーヴァ、聞いてくれ!」

「……ヴァァァァ」

「さっきはすまない。お前の置かれている状況や気持ちも考えずに必要以上の攻撃を加えてしまった。だけど、これだけは信じて欲しい。俺たちはこの森に住むポケモンたちの為に、この森を以前のように緑あふれる場所に再生したい!」

 

 オリーヴァはジンの言葉を聞くと、視線を下げジンの顔を見つめる。その表情はバトルしていた頃に比べれば大分和らいで入るが、それでも警戒されている為か少し鋭い。

 

「だが、その為にはオリーヴァ、お前の力が必要だ」

「……リィヴァ」

「もしも俺の事を少しでも信じてくれるなら、お前が失った体力を取り戻す手伝いをさせて欲しい」

「……………」

 

 オリーヴァはジンの事を黙って、見つめ続ける。そして、数秒後……

 

「ヴァァァァ……」

 

 オリーヴァはジンに片腕を握手するように伸ばしてくる。その表情にはもはや敵意も警戒心も感じられない。とても穏やかな笑みだった。

 

「……ありがとう。そのまま動かないでくれ、サーナイト!『いやしのはどう』!」

「サーッナ!」

 

 サーナイトは両腕をオリーヴァに向けるとピンク色のオーラを放出する。そのオーラはオリーヴァを包み、先ほどのバトルで負っていた傷に集中し癒し始める。

 

(ふぅ……バトルすることに拘らずに最初からこうやって話し合っていれば……いや、オリーヴァも暴走気味だったし流石に無理か?……でも……)

 

 今更ながら話し合う事の大切さを思い出したような気がしていた。思い返してみれば、今までの旅でもポケモン絡みで問題が起これば話しあう前にまずは倒す。倒してから話を聞くのスタイルでここまで来てしまったのが要因なのだろう。

 

 ジンは決して聞く耳がなかったわけではない。しかし、冷静に自分を分析するとバトルが得意な上にバトルを好む性格でもあるためついつい自分の得意な手段に頼ってしまう傾向があったのも確かだ。

 

(傲慢さは捨てた……つもりだったんだが、自分に甘いな) 

 

「オリーヴァの傷が…」

「どんどん治っていく!」

「リィヴァァァァ!」

 

 やがてバトルで負っていた傷が完全に治るとオリーヴァは元気そうな声を上げる。その姿を見て、ジンも満足そうにうなずいた後、オリーヴァに背を向け改めて、リコ・ロイ・モリーに視線を向ける。

 

「ジン……オリーヴァと仲直りできたんだね!」

「あぁ、後は俺達次第だ」

「うん!僕も頑張る!」

「もう反対する理由がないね。私も協力するよ」

 

 ジンの立てた森の再生計画はオリーヴァの治療を終えたことで更に現実性を帯びていた。これならば、本当になんとかなるかもしれない。そんな期待を胸に抱きながらそれぞれの担当された仕事に取り掛かる。リコとモリーは木の実を集めに森の中に、そしてジンとロイは焼け野原を耕しに移動した。

 

「ジュカァァァァ!」

「ゴッドォォォォ!」

 

 移動した焼け野原をジュカインとボスゴドラが『じだんだ』で一歩一歩踏みつけながら耕していく。焼け野原は広いが2体が全力で作業を行っている為、そう時間がかからないうちにこちらの作業は終わるだろう。

 

「ロイ、ホゲータ」

「どうしたの?」

「ホゲ?」

 

 ジンに声をかけられ、邪魔になりそうな岩を動かしていたロイとホゲータは一旦、手を止める。

 

「少し手を止めていいから、ジュカインとボスゴドラの『じだんだ』をよく見ておけ。あれはホゲータでもマスターできる数少ない地面タイプの技だ。今後はあの技の習得に力を入れていくから、そのつもりでいてくれ」

 

 ロイとホゲータもコルサのウソッキーとのバトルで自分たちが不利なタイプに対して有効打となる技が欠けている事には気づいていたため素直に従う。尤もロイたちの目的であるレックウザには効果のない技ではある。しかし、覚えるだけの価値はあるだろう。将来的にホゲータが進化すれば、強力な地面技の『じしん』を覚えるのにも繋がる筈だ。

 

(まぁ、それはかなり先の話だな……だけど、飛行船だと『じだんだ』の練習はあんまりできないか。それなら、このパルデアにいるうちに何とか形だけでも整えて置きたい)

 

「いいぞ!ホゲータ!」

「……おいおい」

 

 ホゲータはジュカインたちを真似てその場で足踏みをし、『じだんだ』の真似をし始める。最初こそただの見よう見真似であったが、次第に精度が上がっていき技として成立する段階にまでなってしまった。

 

「見て見て!ジン!できたよ!」

 

 ニャオハの時にも感じた事だが、このホゲータもまたポテンシャルがかなり高い。今回は、タイプ不一致の技とは言えホゲータに向いていた事や目の前で手本を見たことも影響しているのだろうがそれを考慮しても早い習得だ。出会った時は、碌に技が使えなかったというのにまるでスポンジの様に教えたことを吸収していく姿には脱帽してしまう。

 

 ホゲータは早速とばかりに『じたんだ』を使用し、ジュカインやボスゴドラがまだ手を出していなかった箇所を耕しに入る。これで時間はさらに短縮されるだろう。しかし、木の実を集めに行ったリコたちの方はまだまだ時間がかかる。もう何人か応援が欲しいと思いスマホに手を伸ばした。

 

「……通信障害が治ってる?」

 

 何故、急にという疑問はあったが今は森の事を優先させたい。そう考え、フリードの番号に連絡を入れる。するとフリードはワンコールで電話に慌てた様子で出てくる。

 

『どうした?何かあったのか?』

「あぁ、繋がってよかった。実は……」

 

 そこでジンは森で出会った巨大なオリーヴァの事、森が火事になった事、そして森を再生するために活動を始めたことを全て説明し応援要請を行った。

 

『……なるほど、状況は分かったよ。オーケー任せておけ!俺を含めて何人か連れて直ぐに応援に行ってやるよ!』

「よろしく頼むよ……そう言えば、さっきまでここら辺一帯でさっきまで通信障害が発生してたんだけど何か心当たりないか?」

『あぁ、それはレアコイルが悪戯してたせいだ』

 

 フリードによるとボウルタウン周辺で一体のレアコイルが強力な電波を放っていたらしい。その磁力影響で通信障害が発生していたとの事だ。

 

「……………」

『ジン?どうした?」

「いや……なんでもない。それじゃあ、応援よろしく頼むよ」

『あぁ、待っててくれ』

 

 フリードはそう言うと、電話を切る。今頃、準備をしようと急いで船に戻っているのだろう。そう考えたジンは改めて、岩を動かす作業に戻るのだが……

 

「……レアコイルね……まさか……いや、考えすぎか?」

 

 コイルやレアコイルの能力を悪用し、機械や通信システムを妨害し悪事を働く。そういった手法を取る犯罪者は何年も前から存在する。ジンもホウエン地方で実際にその手法を取り、ポケモンセンターを襲う犯罪者を何度か見たことがあった。

 

(一応、気に留めておくか……)

 

 フリードに連絡して暫くすると、ジンたちの元にフリードとオリオ、そして今回は珍しくランドウも同行して応援に駆けつけてくれた。フリードたちはジンたちが畑を耕している間にリコたちと合流し木の実の採集と植え付けの作業を行っていく。人数が増えたこともあり、効率よく作業は進みあっという間に畑は完成した。

 

「よし……こんなもんだな」

「あぁ、後は水だけだ。少し、待っててくれ。今、『あまごい』の使えるポケモンの入れ替えを…」

「必要ない」

 

 通信障害もなくなったため、今ならばスマホロトムの機能を使用すればポケモンの入れ替えができる。取り敢えず、オダマキ博士に預けたミロカロスを手持ちに入れようとスマホに手を伸ばすとランドウが胸元に手を突っ込み、そこから水タイプのポケモンのゲットに使用されるダイブボールを取り出す。

 

「枯れ木も山の賑わいと言うからの。わしも久しぶりに、なまくら刀を振るうとするか」

 

 ランドウはダイブボールを宙に投げると、みずうおポケモンのヌオーが現れる。

 

「ヌオー!大いなる恵みをもたらすのじゃ『あまごい』!」

「ヌ~オッ」

 

 ヌオーは両腕を空に広げ叫ぶ。すると、雲行きはどんどん変わっていき、雨が降り始める。乾いた土地に雨が降り注ぎ潤いを取り戻していく。これでジンたちにできる準備は全て終わった。ここから、森を再生させるにはオリーヴァの協力が必要だ。

 

「オリーヴァ……」

 

 ジンがオリーヴァに視線を向けると、オリーヴァは両腕を空高く掲げ体から緑色のオーラを発生させる。そのオーラは森全体を包み込む様に広がっていき、今、畑に植えたばかりの種から芽が一つ二つと生え始める。その芽たちは、それぞれが一本の木にまで成長し森は以前の姿を取り戻していく。

 

「凄い!森が元に戻った!」

「見て!ポケモンたちが戻ってきた」

 

 暫くすると、オリーヴァの力で元に戻った森にポケモンたちが次々と姿を現す。この復活した森があれば、ウパーの様に住処を失い傷を負うポケモンはもういない。これからは安心して生きていけるだろう。

 

(しかし、予想以上だな……)

 

 オリーヴァの特性を利用して森を再生させる計画、上手くいく自信はあったが、それでもこれ程まであっさりと復活させるとは思っていなかった。今、目の前で起こった現象の半分程度の効果があれば十分な成果だと考えたためだ。ポケモンの神秘的な力にはつくづく驚かされる。

 

「……ヴァァァァ」

 

 森にポケモンたちが戻った姿を見届けるとオリーヴァは静かに声を上げる。すると、リコのペンダントが突如、輝き始めた。

 

「あっ…ペンダントが」

「これって、レックウザの時と同じだ!」

「いや、何か変だ」

 

 ペンダントの輝きは確かに古のモンスターボールから黒いレックウザが出てきたときと酷似しているが、今回は決定的に違う所がある。光の中心であるペンダントから足の様な物が生え始め、少しずつ姿を変えていったのだ。

 

「パ~ゴ~」

 

 光が収まるとそこにはまるで亀のような姿をした見たことのないポケモンが姿を現した。

 

「ペンダントが……」

「本当に……ポケモンだったのか」

 

 ペンダントがポケモンに姿を変える。リコの目撃証言などから予想していなかった事ではないが、それでも実際に目の当たりにすると全員が驚き、謎のポケモンに注目が集まる。それはオリーヴァも例外ではなかった。ただ、一つ違うのはオリーヴァだけは謎のポケモンを見ても驚くことなく即座に行動を取り始めた事だ。

 

「……リィヴァァァァ」

 

 オリーヴァは謎のポケモンを見ると、体を光り輝かせエネルギーを球体状に収縮するとそれを謎のポケモン、そしてリコとロイにゆっくりとかぶせる様に当てようとする。

 

「リコ!ロイ!」

 

 ジンは慌てて手を伸ばすが間に合わず、2人は球体に取り込まれてしまう。外からでは姿を確認することも出来ない。ライジングボルテッカーズのメンバー全員が2人の安否を心配したが、それもほんの少しの事だった。球体はあっという間に消え去り、中にいたはずの謎のポケモンはペンダントに戻りリコとロイも姿を現した。

 

「2人とも大丈夫か?」

「う、うん……」

「大丈夫……」

「中でなにがあったんだ?」

「霧の中に人がいたような……ロイ、見えた?」

「うん。見えた。でも、なんなのかは……」

 

 どうやら、2人はあの球体状のエネルギーの中で何かを見たらしい。しかし、突然の出来事に困惑している上に自分たちでも見たものが何のなのかよく理解できていないようだ。

 

「……ヴァァァァァァ」

 

 更に詳しい話を聞こうとするとオリーヴァは突然、大声を出し始める。するとオリーヴァの首元にあった古のモンスターボールが光りはじめ、オリーヴァは吸い込まれていく。古のモンスターボールはオリーヴァを吸い込むと地面に落ちてきた。

 

「自分から入っちゃった……私たちに付いてきてくれるって事かな?」

「さてな……真意はオリーヴァにしか分からない…か」

 

 謎が謎を呼ぶなどという言葉はよく使われるが、今回の一件はまさにそう呼ぶしかない。新たに古のモンスターボールを手に入れる事には成功した。しかし、オリーヴァの真意もペンダントの正体も結局、何も分からないままだ。

 

「きっとオリーヴァには何か考えがあったんだろ。だが、オリーヴァがお前たちの事を認めてくれたのは確かなんじゃないか?」

 

 オリーヴァが自主的に古のモンスターボールに入ったことから見てもそれは間違いないだろう。それならば、このボールを持つべき者たちは決まっている。

 

「リコ、ロイ……このボールはお前たち2人で預かってくれ」

 

 ジンはボールを拾い上げると、それをリコとロイに差し出す。

 

「ぼ、僕たちが?絶対、ジンが持っておいた方がいいよ!」

「そうだよ。オリーヴァとバトルしたのも森を再生させる方法を考えたのもジンだもん!私たちが持ってるよりもジンが持っておいた方が絶対いい筈だよ」 

「気持ちは嬉しいが、この古のモンスターボールはペンダントとの何らかの関係があるのは確かだ。俺が持っていても有効活用してやれる自信はない」

「で、でも……」

「俺が持っていても役に立たないけど、リコたちが持っておけば役に立つかもしれないんだ。いいから、遠慮せずに貰っておけ。貰えるものは病気以外なんでも貰っておけばいいんだ」

「だけど……あ、ちょ、ちょっと!どこ触って!分かった!分かったから!」

 

 いつまで経ってもなかなか首を縦に振らないリコを見かねて、ジンはリコの胸のショルダーバックを掴み強引に引っ張り勝手に開くとオリーヴァの入った古のモンスターボールを入れようとする。リコは顔を赤くし慌てて止めに入ると、仕方なさそうにボールを受け取りバッグにしまうと胸元を抑えながらジンをジト目で睨みつける。

 

「う~……ジンのエッチ」

「知らなかったのか?」

「………知ってた気がする」

「だろ?」

「……お前たち、俺の前でいちゃつくのはお願いだからやめてくれ」

 

 2人の出す甘い空間に耐えられなくなったのか、フリードは若干、苦しそうな声を出しながら2人を注意する。因みにロイはよく分かっていないようだが、モリーとオリオ、そしてランドウは面白そうにジンたちを見ていた。

 

「ご、ごめんなさい!」

「悪い悪い。いちゃつくのは2人だけの時、皆の目を盗んでやるよ」

「じ、ジン!」

「はぁ~………まぁ、目の前でなければいいか。全員、そろそろ船に戻るぞ」

 

 ここでのやるべき事を全て果たしたライジングボルテッカーズはこうしてブレイブアサギ号への帰路へと着いた。皆の前でジンに辱められたリコは未だに顔を赤くし、ぷりぷり怒りながらジンと顔を合わさないまま歩いている。

 

(これでいい……あのボールはリコたちが持つべきだ)

 

 リコやロイはジンが持つべきと主張したが、それは間違いだとジンは思っていた。オリーヴァが最後に2人に何を見せたのかは分からないが、オリーヴァは意図的に2人にだけなんらかの映像を見せたように思える。

 

(オリーヴァがどんな基準でリコとロイを選んだのかは分からないが、俺は落選した。そう考えた方が自然だ)

 

 リコもロイもいいものを持っているが現段階でのポケモントレーナーとしての知識や能力ではジンやフリードの方が遥かに上だ。ジンとバトルしたオリーヴァであればそのことは分かっている筈、その上で2人を選んだからには何らかの事情があると推測できる。

 

(……残念だが、縁がなかったって事だろうな)

 

 あれ程、貴重なポケモンだ。欲しくないわけがない。だが、どうやらジンには黒いレックウザやオリーヴァとはバトルの相手にはなってやれても相棒やトレーナーになれる運命ではなかったらしい。

 

 ジンは既に素晴らしい仲間たちに囲まれている。今回の事は残念だとは思うが、決して悲観しているわけではない。ただ、その彼らのトレーナーになる役割はジンには与えられなかった。それだけの事なのだ。

 

(バトルする以外にも解決策はある。だが、バトルが必要な時は誰よりも先頭で戦う。それが俺の役割だな……)

 

 この旅はオリーヴァの様なポケモン以外にもエクスプローラーズという明確な敵もいる。奴らと戦うことが与えられた役割なら喜んで従うだろう。だが、今回のオリーヴァの様に倒すだけでは解決できない問題もある。それらを解決するためには力をつけるだけでは駄目だ。

 

(トレーナーとしても人としても、もっと成長する必要がある……)

 

 旅は人を成長させる。それはリコやロイだけではない。ジンもまた新たに多くの人やポケモン、未知と遭遇しながらトレーナーとしてそして一人の人間として新たな一歩を踏み出し、大きく成長しようとしていた。

 





リコがヒロインの小説増えてきましたね。お気に入り登録はしてるけど、読むと真似しちゃいそうであんまり読めてないです。

☆9
夏凛さん

高評価ありがとうございます。
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