ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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これが今年最後の投稿になります。ここまでお付き合いくださりありがとうございました!


新たなる可能性

 

 ジムバトルを終え生配信を終了したジンとナンジャモは観客たちに見送られながらバトルフィールドを後にするとハッコウジム内部のチャレンジャー専用控室まで移動した。

 

「は~い!笑って笑って~!」

 

 その控室では今、ナンジャモとライボルトがツーショットの記念写真を撮影している。本来はバトルに勝ったらという約束だったが、ライボルトも了承したためバトルのお礼という意味も込めて撮影を許可した。

 

「ニッシッシッシ!ライボルトとのツーショット!あ~~しあわせ~~」

 

 ナンジャモはライボルトとの自分の写った写真をとろけるような顔で見つめる。だが、こうなるのも仕方がない。ライボルトはパルデアでは見られない上にジムリーダーという立場上、そう簡単に他地方まで赴くという訳にはいかないのだ。

 

「ありがとね~バトルに負けたのに写真まで撮らせて貰っちゃって!」

「これくらい構いませんよ。それよりも動画の方はあれで大丈夫でしたか?」

 

 真剣勝負で手を抜くことは出来ない。その為、全力を尽くしバトルをした。だが、結果だけを見ればジンのストレート勝ちという事になる。あれで問題はなかったのかは少々、気がかりだった。

 

「全然OKだよ!そりゃ負けて悔しい気持ちもあるけどさぁ……それよりも見て!」

 

 ナンジャモはスマホロトムを取り出し先程まで生配信をしていた動画を開く。そこには見たこともない程の視聴回数とコメントが寄せられていた。

 

「今回のドンナモンジャTV視聴者数爆上がり!あ~ん!幸せ!天に召され~」

 

 ナンジャモは負けた事よりもこの結果に対する喜びの方が強いようで、むしろ満足している様子だ。

 

(まぁ……これで目的は果たせたかな?)

 

 コメント欄を見ればパルデアでは滅多に見られないメガシンカ、『エナジーチャージ』という謎のパワーアップ方法に対する考察など様々なコメントが寄せられている。

 

 巨大なオリーヴァという根拠の薄く一見すると不確実な情報よりも映像の残るバトルの方が印象に残りやすい。本来の目的であったオリーヴァの噂を消すことにもそれなりには貢献する事が出来たと言えるだろう。

 

「ジン氏ってやっぱりホウエン地方じゃ有名人?ホウエンの視聴者たち、めっちゃ盛り上がってるよ?」

 

 どうやら視聴者の中にホウエン出身者がいたようでジンの勝利の影響もあって、かなり盛り上がっている。また、動画はどんどん拡散され普段ナンジャモの配信を見ていないホウエンの人も地元の人間が出るならと興味本位で見始めているらしい。

 

「あ~……まぁ、それなりですかね」

 

 ジンはあまり興味がなかったため正確には把握していないのだが、実は彼にもファンクラブがある。ナンジャモやネモなどに比べれば小規模だが、ジンのサイユウ大会でのバトルを見て以降、一定数以上のファンが存在しているのだ。

 

「へ~~やっぱり話題の人は集客力が違うね~また定期的にコラボして!あと他の配信者……まぁ、ぐるみん氏は仕方ないか……とにかく!ボクとぐるみん氏以外の配信者との動画には出ないでね!」

 

 特に動画配信に出たいという思いはジンにはない。ドットからぐるみんの動画にゲストで出て欲しいなどと言われれば喜んで出るがそうでなければ今回の様に配信に参加する事は恐らくこの先ないだろう。

 

「構いませんよ。むしろ大歓迎です」

 

 時間がなかったためジンもナンジャモも互いに情報を集める事も相手に合わせた作戦も練る事が出来なかった。しかし、また次にバトルすることがあればお互い万全の準備をすることになるだろう。そうすれば結果はまた変わるかもしれない。

 

「言質取ったよ!二言はなしだからね!」

「……なんか大袈裟ですね」

「大袈裟じゃなーーい!チャンピオンクラスの実力者とコラボできる権利をほぼ独占できるっていうのはとっっても貴重なんだから!」

 

 ジンの知らない世界だが、ここでも苛烈な争いが起こっているらしい。ナンジャモ程の有名人でも見えない努力と苦労があるのだとその必死な姿から汲み取る事が出来る。

  

「そいじゃ!さっそく契約をしてもらおっかなー……と思ったけど契約用紙がちょうどきれちゃってるし……う~ん……それじゃあ仮契約って事で特別プレゼントを進呈しよう!ちょっと待っててねー!」

 

 ナンジャモはそう言うとジンをその場に残し控え室を飛び出していく。

 

(……プレゼントか、妙なものでなければいいけど)

 

 既にバトル終了後にジムバッジは貰っている。楽しいバトルも出来たのでジンとしてこれ以上、何もいらないのだが折角の厚意を無下にする事も出来ない。

 しかし、女性からの贈り物となればリコの嫉妬の回避はかなり難しい。ただでさえ船に置いてけぼりにしたことでちょっと不機嫌になっているのだ。これ以上、機嫌を損ねることはしたくなかった。

 

「お待たせ~」

 

 待つこと数十分、どうやってリコに言い訳しようかと考えているとナンジャモが再び控え室へと戻ってきた。

 

「そいじゃ改めて!ジン氏のパルデア初ジム戦並びにボクとの今後の長い付き合いを記念して!特別プレゼントでーす!」

 

 そう言うとナンジャモは両手をジンの前に出す。その両手の上にはこのパルデア地方に来て、2度程見たことがある黒いモンスターボールの様なアイテムが乗っていた。

 

「これって……まさか!」

「そう!テラスタルオーブなのじゃ!」

 

 これを起動するとオーブ内のエネルギーが解放されて発光し、ポケモンの頭上へ投げることでテラスタルを発現させポケモンによってタイプをバトル中に変更し戦略の幅が大幅に広げる事ができる。このパルデア地方ならではの特殊なアイテムだ。

 

「いいんですか?こんな貴重なものを」

「OK!OK!言うほど貴重な物じゃないしね~これだって本当はリーグから配布されたボクの予備用のやつだから気にしないでよ!」

「……それ本当に貰っても大丈夫ですか?」

「大丈夫だって!ちゃんとリーグ側からは許可は貰ったからさ!本当は専用の講義を受けてもらう所なんだけど、そこはボクの推薦でパスしてもらえたしね!」

 

 どうやらこの数十分の間にナンジャモはポケモンリーグなどありとあらゆる機関に連絡を入れ、ジンがテラスタルオーブを貰うための許可を取ってきたようだ。リーグ関係者も先ほどまでの配信でのバトルを見ていたようでジン程のトレーナーであれば喜んで渡してくれるらしい。

 

「ジン氏!これで全ての条件はクリアされた!さぁ、ボクと契約してビジネスパートナーになってよ!」

 

 新たなるポケモンの可能性、それを手に入れるチャンスが目の前にある。たとえこの先、リコに睨まれる事になったとしてもジンは1人のトレーナーとしてその可能性から目を逸らすことは出来なかった。

 

 

 

***

 

 

 

 ナンジャモと分かれ、ハッコウシティを後にしたジンはそのままボーマンダに乗せてもらいブレイブアサギ号へと帰還した。ジンが戻る頃には、船の出航準備も完了しており一行は遂にパルデアを飛び立ちガラルに向けて出航する。

 

「……テラスタルか」

 

 ジンは結局、ナンジャモからテラスタルオーブを受け取った。これがあれば戦略が広がるのは間違いない。更にジュカインのメガシンカと違い、他のポケモン全てに使用できるのも大きな魅力の1つだ。

 これから詳しく変化するタイプなども調べなくてはならないがポケモンの新たな可能性に触れることができ、ジンは大いに満足していた。

 

「……プレゼント貰えてよかったね」

 

 ウイングデッキで1人、テラスタルオーブを眺めていると背後の展望室の扉が開き中からジト目になったリコが現れジンの隣に座る。

 

「「…………」」

 

 気まずい空気が2人を包み込む。何故こうなったのかと言えば、偏にジンの対応ミスと言わざる得ない。

 

 当初、ジンはナンジャモからテラスタルオーブを貰った事を暫くは隠しておくつもりだったのだが、リコは謎の嗅覚でジンが隠し事をしていることに気づいてしまったらしい。そこからの展開はジンとナンジャモのバトル以上に一方的であったとだけ記載しておく。

 

「……そろそろ許してくれないか?」

「……ちょっと複雑だけど、プレゼント貰った事はいいよ。隠そうとしたのが嫌なだけ……」

 

 リコはジンがホウエン地方でそれなりの有名人である事を知った時から、こういったプレゼントやファンレターなどをジンが受け取る事は覚悟していた。それだけにジンがそのことを隠そうとしたことの方が不快だったらしい。

 

「……リコに隠し事はもうしないよ」

「……本当に?」

「あぁ、約束だ」

 

(隠し事しても直ぐにばれそうだしな……)

 

 リコはどうやらジンに関連することで特に女性問題に関しては並みはずれた嗅覚と直感でそれを察知できるようだ。もはや技や特性と呼んでもいいレベルである。これなら何かあった時は下手に隠し事するよりも素直に謝罪した方がお互いの為になるだろう。

 

「……ん」

 

 隣に座っていたリコは体をジンの方に向けると、目をつぶり唇を少しだけ突き出す。その顔を見てなにをして欲しいのかを察する。

 

「……珍しく積極的だな」

 

 普段、こういった行為は互いの部屋で2人だけの時にしか行わない。しかもリコは照れてなかなか自分からは切り出せず、ジンから積極的に行っていくのが彼らのいつものパターンだ。

 

「ん!」

 

 顔を赤らめながら再び、催促してくるリコを見てジンは左手を頭に右手を顔に添えるとゆっくりと顔を近づけていく。距離にして数センチ程で2人の唇が重なり合おうとした正にその時……

 

「リコ、話が……あっ……」

 

 展望室の扉が開き中からとある人物が姿を現した。慌ててリコが声のした方に視線を向けるとそこにいたのは顔を真っ赤にし驚愕した様子でジンたちを見つめるドットとクワッスだった。

 

「ご、ごめん!?」

「ど、ドット!?ま、待って!?」

 

 慌てて逃げ出そうとしたドットをリコは今までに見せたことがない程の運動能力を発揮し、ジンを振り払い立ち上がるとその勢いのまま取り押さえる。

 

「じゃ、邪魔するつもりはなくて……」

「な、なにが!?ちょっと目にゴミが入っちゃったから見てもらってただけだよ!ねぇ!ジン!そうだよね!」

 

 顔を真っ赤にしながら必死な様子で同意を求めるリコ、あまりにも必死すぎるその姿に思わずジンは笑みがこぼれそうになったがこのままでは、また話がこじれそうだと思った為、一応頷くことで同意の意思を示した。

 

「なんか……その……ほんとごめん」

「だ、だから、何にもないってば……」

「はいはい、そこまで。ドット、俺はいいからここに座れよ。話があるんだろう?」

「……う、うん」

 

 リコ、ドット、両者ともに時間が経ち少し落ち着き始めた様なのでジンは座っていた場所をドットに譲る。このタイミングでドットがリコに告げる話と言えば1つしか考えられない。

 

「リコ……実は……謝らなくちゃいけないことが……あるんだ」

「え?」

「そ、その……」

「クワアアア!クワワワワワ!」

「わ、分かったってば!」

 

 昼間、ジンに話していたようにドットはこのパルデアを旅立つ前にリコに自分の秘密を話そうと考えていた。しかし、いざ本人を目の前にするとなかなか勇気が出なかったが相棒のクワッスに背中を押されようやく本当の意味で覚悟を決める。

 

「ずっと黙っててごめん。めんどくさい反面、自分の口から言わなきゃって思ってのが半分なんだけど……」

 

 ドットは少しずつ自分の秘密を話し出すが、リコは心当たりがないようで不思議そうな顔でドットを見つめている。

 

「その顔……分かってない?」

「う、うん……」

「だ、だから!その……ぐるみんの事!」

「え?それだったら!」

「知ってた!?」

「うん!ぐるみんのガチファンなんでしょう?」

「違う!あ~もぉぉ!なんで気づかないんだよ!ジンは直ぐに気づいたのに!」

 

 いつまでたっても自分の言いたいことを理解してくれないリコを見てドットは遂に真実を告げる事にした。

 

「僕が!ぐるみん本人なんだよ!」

「え?…………………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 たっぷりと間を置き、リコはようやくドットの言葉の意味を理解したようだ。顔を真っ赤にし真実を告げるドットとあまりの衝撃に変顔を披露するリコ、予想通りすぎる2人の反応をジンは楽しそうに眺めていた。

 

 今後のリコとドットの友人関係がどのように変化していくのかまでは流石に予想出来なかったが、ジンの中で確定していることが1つだけ存在する。

 

(2人の様子を見ているだけでも、暫くは退屈せずに済みそうだな……)

 

 

 

***

 

 

 

 リコがドットの正体を知ったのとほぼ同時刻

 

「…………」

 

 エクスプローラーズが所有する一隻の船、そこの一室からスピネルは今回の任務に関しての報告を行っていた。この場にはアメジオを除いたスピネルと同等の幹部、オニキス、サンゴ、アゲート、そして執事のハンベルが参加している。

 

「あははははははは!あんたみたいな用意周到な男が失敗するなんて鬼ウケるんですけど!」

「お前らしくもない。策に溺れたな」

「返す言葉もありません」

 

 スピネルとしても誠に遺憾ではあったが任務に失敗した以上、組織に属するものとして報告しないわけにはいかない。先だって任務に失敗したアメジオをこき下ろしておきながら、自分も同じ轍を踏んでしまったのだ。このような反応をされても仕方ないだろう。

 

「ペンダントの力、スピネルはどう見る?」

「……報告書が全てです」

「慎重だな……というより臆病なのか」

「せっかく、言い訳があるなら聞いてあげようってのに~」

「言い訳などありません。先ほど、報告したようにあの少年を甘く見すぎていた。それが最大の敗因です」

「少年……ジンだったか?」

 

 スピネルはペンダントの事については不確かな情報であった為、敢えて報告しないでいる部分もあったが、今回の任務が失敗した一番の要因であったジンについては余すことなく報告した。チャンピオン級の実力、スピネルの策を読む洞察力、ペンダントを奪うにあたりこの先一番の難関になる事は間違いない。 

 

「スピネル様の報告を受け、ジンという少年については調査を終えました。データを送りますので皆さまご確認をお願い致します」

 

 ハンベルは会議が始まる事前にスピネルから簡単な報告を受け、ジンについて調査を行っていた。そして纏まったデータを幹部たち全員のスマホロトムに転送する。

 そこにはジンの公式戦のデータやそれに対するメディアの反応、そして最新の情報として巨大オリーヴァとのバトルや先程まで行われていたナンジャモとのフルバトルの映像なども含まれていた。

 

「……なるほど。確かに強い。アメジオやスピネルを倒しただけの事はある」

「この歳でこの強さか。油断できんな」

 

 ジンの強さはトレーナーとしても一流の腕前である彼らから見ても並外れていた。特にナンジャモとのフルバトルで最後に見せたメガシンカと『エナジーチャージ』という強化方法を使ったジュカインは簡単に攻略できそうには見えなかった。 

 

「なにこれ!?オニオモシロそうなんですけど!次はサンゴが行きたーい!」

 

 アゲートやオニキスが警戒する中、サンゴだけはジンがバトルする映像を目を輝かせながら見終えると、早速ジンに興味が出たようで任務に立候補し始めた。

 

「サンゴ!任務はお前の遊びではないぞ!」

「はぁ?そんなんお前に言われなくても分かってっから!」

「2人ともそこまでです」

 

 オニキスとサンゴが言い争いをしそうになるとハンベルが2人を睨みつける。睨まれた2人は渋々といった様子ではあるが矛を収めた。

 

「では、本日はここまでにしましょう。今後の事は決まり次第、再度連絡いたします」

 

 ハンベルはその言葉を最後にホログラムの姿を消していく。それに続くようにオニキス、アゲート、サンゴも姿を消していき、スピネルだけがその場に残った。全員がいなくなるとスピネルは部屋を後にし相棒のブラッキーと共に甲板へと出る。

 

「不確かな情報を報告する訳にはいきませんからね。その代わりに彼の情報は全員に共有する事が出来ました」

 

 これでエクスプローラーズ内でのジンの脅威度は正しく伝わった。今後は警戒され、油断して挑んでくる者はもはや存在しないだろう。更にスピネルにとっても予想外ではあったがサンゴがジンに興味を持ってしまった。

 今後のサンゴの行動次第ではジンに嫌がらせをしてくれる事くらいは期待できる。その対処に苦労するジンの姿を思い浮かべるだけでスピネルは顔のにやつきを抑えられなくなっていた。

 

「ふふっ……ペンダントの事も含めてこの先、何が起こるのか少し興味がわいてきました」

 





なんとかパルデア編まで完結させることができました。年明けは忙しくなりそうなのでまた1週間以上かかるかもしれませんが、来年もよろしくお願いします!

☆9
龍神将さん

☆10
HAZIME00さん、青嵐・パーシーさん

高評価ありがとうございます。

作品の要望などあれば気軽にメッセージを送ってください。
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