ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!

今回は「カイデンとホゲータ 秘密の大特訓!」です。この1話だけでキャップも出ないのですが、よろしければどうぞ


カイデンとホゲータ

 

 パルデアを旅立ってから数日、ライジングボルテッカーズはリコの祖母、ダイアナのいるガラル地方に向け旅を続けていた。

 

「ボーマンダ『ドラゴンクロー』!」

「ホゲータ!カイデン!避けて」

 

 そんな中、ウイングデッキではいつものようにジンとロイとで実践訓練も兼ねたトレーニングが行われている。今回のトレーニングは少々変則的でロイはホゲータだけでなくパルデアで新たに手持ちに加えたカイデンもいれた1VS2でバトルを行っていた。

 

 今も正に『ドラゴンクロー』を構え、接近してくるボーマンダに対してホゲータは頭上にカイデンを乗せたまま地面に『かえんほうしゃ』を発射し空高く飛び上がり回避する。

 

「今だよ!カイデン『スパーク』!」

 

 空高く飛び上がったホゲータの頭上にいたカイデンは、そこから更にホゲータを踏み台にし上昇すると両翼に電撃を纏いボーマンダに向けて突撃する。

 

(……なるほど)

 

 カイデンの翼の骨は風を受ける事で電気を作り出す特殊な仕組みを持っている。それを活かすためにホゲータの協力の元、空高く舞い上がりそこからの落下する速度と風をの力を利用してカイデンに電気を溜めさせたのだ。

 

「いっけーーーー!」

 

(考えたな、ロイ……だが!)

 

「まだ甘い!ボーマンダ『りゅうのまい』で受け流せ!」

 

 ボーマンダはカイデンと衝突しそうになったタイミングで『りゅうのまい』で体を回転させる。カイデンはその回転によって完全に受け流されてしまい、そのまま甲板に落ちていく。

 

「ホゲータ!『かえんほうしゃ』!」

「そのまま『ドラゴンクロー』!」

 

 一足先に甲板に着地したホゲータはボーマンダに向かって『かえんほうしゃ』を放つ。ボーマンダは『りゅうのまい』で回転をしたまま『ドラゴンクロー』を発動するとそのまま『かえんほうしゃ』を打ち消しながら、ホゲータに向けて突っ込んでいく。

 

「ホゲェェェ!?」

「ホゲータ!?」

 

 ホゲータは回転しながら迫ってくる『ドラゴンクロー』を正面から受けると甲板の中央まで飛ばされてしまう。それとほぼ同じタイミングでカイデンも甲板に落下してくる。ホゲータ、カイデン共に目を回しており戦闘継続は不可能だった。

 

「ここまでだな」

「これも駄目か~~~~~いい手だと思ったんだけどなぁ……」

「実際、悪くなかったよ。頑張って考えたな。まぁ、反省点もあるけどそれは2人が目を覚ましてからにしよう」

 

 一旦、休憩だ。そう言うとジンとロイはホゲータとカイデンを回収すると休憩の為にウイングデッキから展望室へと移動していく。

 

「ジン!ロイ!ナイスファイト!」

「……お、お疲れ」

 

 そこには2人のトレーニングを見守っていたリコとドットがおり、ジンとロイにそれぞれ声をかける。

 

「ありがとう。どうだったドット、実際のバトルを見た感想は?」

「……めちゃくちゃだった。ホゲータもボーマンダも……」

 

 そう思うのも仕方がない。ホゲータの『かえんほうしゃ』を利用した上昇もボーマンダの『りゅうのまい』の回転を利用した受け流しや更にその回転を維持したまま『ドラゴンクロー』で突撃するのも従来の使い方とは大違いなのだから。

 

「知識は大事だしセオリーを無視すればいい訳じゃない。だが、教科書通りやればバトルに勝てるってわけでもない。そのことだけは覚えておいてくれ」

「……ん。分かった」

 

 ドットはトレーニングには基本不参加だが、偶にこうしてトレーニングの様子を見学している。バトルすること自体には然程、興味はなかったようだがクワッスのトレーナーになった事で彼女にも心境の変化が出てきている様だ。

 

「それにしてもホゲータとカイデン、ちゃんと連携が出来てたね。あんなに喧嘩ばっかりしてたのに……」

 

 リコの言うようにホゲータとカイデンの相性はお世辞にもいいものではなかった。お互い、ちょっとしたことをきっかけに喧嘩を吹っ掛け合う様子が何度も見られる。嫌悪しているとまではいかないが、互いの事が好きではないという印象だった。

 

「最初はね……仲良しとまではいかないけど協力し合う関係には、割とすぐなってたよ」

 

 ロイも当初はホゲータとカイデンを仲良くさせようと色々と奮闘したが、逆効果になる一方で藁にも縋る思いでジンに相談した。

 

 

 

***

 

 

 

『放っておけ』

 

 ロイの相談を受けた時のジンの回答はその一言だった。

 

『で、でも!なんとかしないと!』

『気持ちは分かるが仲の悪い奴らを無理やり仲良くさせようとしても、まず上手くいかないぞ』

『……でも』

 

 ジンの回答が不満だったようでロイは下を向きながら納得していない様子を見せる。そのいじけた子供のような姿を見て、ジンは仕方がなさそうな顔をしながら諭すように話しかける。

 

『心配するな。俺もこのままでいいとは思ってない』

『え?で、でも今……』

『放っておけっていうのは、いますぐ何かをする必要はないってだけだ。この船にいればそう遠くないうちに互いに協力し合う程度の関係にはなれるよ』

 

 ジンはそう自信満々な顔で言い切る。

 

『ほ、本当に!?どうやって!?』

『そうだな……ロイ、仲の悪い奴らが仲良くするためには何が必要だと思う?』

 

 ジンにそう問われロイは真剣な表情で考え出すが、答えが出ない様だ。実際、ロイは2人が仲良くするためにあらゆることを試した。一緒にご飯を食べたり、歌を歌ったり、日向ぼっこをしたりと両者が好きそうなことを試したが、全て失敗に終わっている。

 

『……ごめん。分かんない』

 

 だが、分からないのも仕方がない。そもそも、それが分かっていれば自分で解決しジンに相談などしないのだから。ロイの分からないという回答を聞くと、ジンはまるで悪魔の様なニヒルな笑みを浮かべながら自分の答えを語り出す。

 

『正解は共通の敵だ』

 

 

 

***

 

 

 

「共通の敵って、もしかして……」

「当然、俺の事だ」

 

 しかし、共通の敵と言ってもジンは特に今までと比べて変わった事は何一つしていない。ただ、いつも通り厳しいトレーニングを行っただけだ。1つ違う点があるとすれば、それはホゲータとカイデンが協力し合わなければノルマを達成できない様に調整したことくらいだろう。

 

 当初はそれでも協力し合わなかった両者だが、ジンとロイはその度にヒントを与え続けた。協力しなくては太刀打ちできない上にトレーニングから解放もされない。ホゲータとカイデンがその事に気づき、地獄のトレーニングから解放されるために協力し合うまでにはそれほど時間はかからなかった。

 

「ホゲータもカイデンも必死だったからね」

「……それであんなに連携が取れてたんだ」

「い、いいのかな?それで?」

「仲良しとまではいかなくても互いの事を尊重して協力し合う関係になれたんだ。男同士の仲なんてそれで十分だよ」

 

 そう、何も親友になる必要はない。いざという時にしっかり協力し合う事さえできればそれで問題はないのだから。

 

(これ以上の信頼関係は時間をかけて作り上げるしかない。となると次の問題はやっぱり、カイデンか)

 

 ロイのカイデンは体が小さいため、空を飛べない。これはカイデンの武器を潰す要因となっている。確かに先程のやり方ならば、空高く飛ぶことも出来るが一度見られた相手にはもう通用しないやり方だ。

 

 更に言えば、ロイの目標はあくまでもレックウザのゲットにある。その為には、飛行タイプのポケモンの飛行能力は絶対に必要だ。出来る事なら、ホゲータを乗せて空中から近づき攻撃する。常に高い位置で飛んでいるレックウザとバトルする以上、それが最低条件だ。

 

(その為には、進化させるしかない)

 

 カイデンが進化しタイカイデンになれば体格も大きく成長し、ホゲータを乗せて飛ぶことも可能になる。その為には、カイデンに経験値を積ませ地道にレベルを上げて行くしか方法がない。

 

「あっ!ホゲータ!カイデン!やっと起きた!」

 

 ジンたちが談笑しているとホゲータとカイデンが目を覚ました様だ。目を覚ました事で自分たちの状況が飲み込めたらしく悔しそうな表情を見せるが疲れとダメージの影響もあり、ぐったりとしていた。

 

「ロイ、今日はもう終わりでいいから2人をモリーに見せてやってきてくれ」

「え?いいの!?」

「あぁ、ただし、後でカイデンにこの間の俺とナンジャモさんとのバトル、特にタイカイデンの動きをもう一度見せておいてくれ」

「うん!分かった」

 

 ロイはそう言うとホゲータとカイデンを抱き上げ、モリーのいる医務室へと向かっていく。

 

「ねぇ、今のどういうこと?」

「あの映像を見ればカイデンが自分が進化したらどうなるのかをイメージしやすいだろう?いつか来る進化に今の内から備えさせておきたくてな」

 

 進化に必要な物は経験値だけではない。進化したいという確かな思い、これが最も大事なものだ。ポケモンも人間と同じように生物、気持ちという要素は間違いなく存在している。これが大きければ大きい程、進化までの時間が早くなるのは確かだ。

 

「あとは技の問題もある。できれば、カイデンには『おいかぜ』をマスターしてもらいたい」

 

 『おいかぜ』を使えるようになれば、先程の様に毎度毎度、ホゲータに協力してもらわなくても特性の『ふうりょくはつでん』の使用が可能となる。

 

「でも、カイデンは……」

「あぁ、分かってる」

 

 ロイのカイデンは小さすぎる。当然、翼も他の個体と比べて小さくナンジャモのタイカイデン程の持続力のある『おいかぜ』は期待できない。だが、一瞬だけでもカイデンの力を急増させる程度の風であれば起こせる可能性はある。

 

「心配ない。ボーマンダが特訓に付きあってくれるしな」

「ボーマンダが?」

「ああ見えてもカイデンの事、結構気にしてるんだよ」

 

 ボーマンダは現在、ジンの手持ちの中で最もカイデンの事を気にかけている。空を飛びたくても飛ぶことができない。そんな姿が、かつてタツベイだった頃の自分と重なって見える様だ。

 

「カイデンも潜在能力はそれなりにある。心配しなくてもその内、技の習得も進化も出来るから大丈夫だよ」

 

 ジンの言葉を聞き、リコとドットは少しだけ安心した様子を見せる。それなりに長い付き合いだが、ポケモンに関する事でジンの言う事が外れたことはないのだ。安心するには十分な根拠となる。

 

(まぁ、ロイたちの事ばっかり気にしてもいられないんだけどな……)

 

 

 

***

 

 

 

 全員が寝静まった深夜、ジンは部屋を抜け出し1人、ウイングデッキに移動するとナンジャモから貰い受けたテラスタルオーブを取り出した。

 

「行くぞ!」

 

 ジンの持つテラスタルオーブにエネルギーが集まり始める。一瞬のうちにエネルギーが収縮し、輝きだしたテラスタルオーブを宙に向かって投げつける。

 

「ブギャァァァァ!」

 

 そして、たった今、最後のポケモンのコノヨザルの頭上にてテラスタルオーブが発動し無数のクリスタルが包み込む。やがてクリスタルが弾け、雄叫びと共に現れたコノヨザルは体が宝石の様に輝き頭には巨大な鉄斧を生やした姿となり現れる。

 

「無事、成功と……これで全員分確認できたな」

 

 最新のスマホロトムでテラスタルタイプは確認できたのだが、何事も自分で見なければ理解できないこともある。そう考えたジンはまずは手持ちにいたポケモンたちを調べ、その後、研究所に預けたポケモンたちも呼び戻しテラスタルタイプの確認を行った。

 

「後は使うタイミングだな……」

 

 メガシンカ同様にテラスタルもバトル使用中は制限時間などは気にせずに使える。しかし、メガシンカはジュカイン限定であった為、使うタイミングも限られていたがテラスタルは全てのポケモンに使用可能なものだ。タイミングを見誤ればただの失敗に繋がる可能性もある。

 

 それらを見極めるためには実戦で訓練するしかない。しかし、この船で実践訓練は少々難しい。フリードが相手ならば訓練にはなるが、彼らとジンは偶に一緒にトレーニングをしている為、互いの手はほとんど知っている。今、ジンが望んでいるのは手持ちや戦略など全く知らない上で実力もある、そんな相手だ。

 

「……まぁ、いい。ガラルまで待つさ」

 

 今、向かっているガラル地方はポケモンバトルがエンターテインメント的に扱われている面が濃く、地方全体で盛り上げられている。その為か、バトルが好きなトレーナーが多いようなのでそこでなら、トレーナーとバトルする機会がいくらでもあるだろう。

 

 しかし、出来る事ならば……

 

(本気のジムリーダーとバトルがしたい……)

 

 ナンジャモと本気のバトルをしたからこそ感じた事だが、本気のジムリーダーとのバトルは本当にいい経験となる。出来る事ならば、またあのようなバトルがしたい。それに、別地方の名前も知らないジムリーダーであれば先程、ジンが考えていた対戦相手の条件をすべて満たしているのだ。

 

 フリードから聞いた船が現在向かっているガラル地方の到着予定場所はエンジンシティ周辺、そして、そこにはジムが存在する。ガラルについてから自由行動する機会があるならばジムにチャンレンジしたい気持ちがジンにはあった。

 

 だが……

 

(……危険かもな)

 

 ジムに挑戦したい気持ちはある。しかし、先程も言ったようにガラルではポケモンバトルがエンターテイメントとして扱われる。

 

 下手に正面から挑戦し、ナンジャモの時の様に生配信されたり大勢の観客に見られるようなことになればエクスプローラーズに自分たちの居場所を伝える事にもなりかねない。正直に言って、かなりのリスクが考えられるのだ。

 

「……やめだ。着いてから考えよう」

 

 非公式に誰も見ていない場所などでバトルが可能なのがどうかは相手のジムリーダーの性格次第だ。ここで考えても埒があがらない。それならば、今すべきことは別にある。

 

「ブヒィ?」

「いや、なんでもない。特訓を始めようか?」

「ブギャ!」

 

 元気よく両手を上げ返事をするコノヨザル、最近になり漸くバトル中も感情の制御ができ始めたが、まだ完璧とは言い難く経験不足故にジンとの連携面では心配が残っている。今のままではジムリーダークラスが相手だと敵わないかもしれない。

 

「コノヨザル、これから最終調整に入る。その出来次第では次の実戦でのバトルでお前も使うつもりだ」

 

 ジンのその言葉を聞くとコノヨザルはテラスタルした体以上に目を輝かせ、さらにやる気を見せる。そうなるのも仕方が無い。ゲットされてからコノヨザルは実戦での出番がない。ナンジャモとのバトルでは準備不足で不参加だった上に勉強の為にと彼らのバトルの映像を見せられ、バトルに対するフラストレーションが溜まっていたのだ。

 

「ブギャ!ブギャァ!ブヒィィィ!」

 

 コノヨザルはその場でシャドーボクシングを始め、体を温め始める。自分にも漸くチャンスが巡ってきた。そう思い喜び、気合が出ているようだ。このやる気を上手い具合に引き出す事が出来ればガラルに着くまでに間に合うかもしれない。

 

(いや……間に合わせて見せる)

 

 決意を新たに奮闘しているコノヨザルの為、なによりもジン自身がコノヨザルと共にバトルに臨みたいと本気で思っていた。





アニメ通りだと次回はキャップとフリードの出会いの話しになりますが、特に書くことないので、一気にガラル編に突入します。

☆8
GREEN GREENSさん

☆9
こんぼいさん、サボテンダーイオウさん

高評価ありがとうございます。

作品の要望などあれば気軽にメッセージを送ってください。
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