アニポケだと今回は19話と20話にあたります。今は36話まで放送中、あんまり離されすぎないようにしたいですね
エンジンジムで非公式のバトルを終えたジンとカブは傷ついたポケモンたちをポケモンセンターに預けると、リコに指定されたバトルカフェに向かっていた。
「黒いレックウザか……」
「えぇ、何か知らないですか?」
カブはジンと同じくホウエン地方の出身者であり、この街のジムリーダーだ。彼らならばもしかしたら、そう希望を込めてジンは目的の1つである黒いレックウザの情報を持っていないかを道すがら訪ねてみた。
「心当たりはある。しかし、なぜ?」
カブの疑問にジンは正直に答えた。関係が未だ完全に把握できていないペンダントの事などは敢えて説明しなかったが、レックウザが古のモンスターボールから飛び出したことや仲間のロイがレックウザをゲットを夢見ている事など知っている事は全てだ。
「なるほどね。君がレックウザに挑むのであれば、この場で教えても構わなかったんだが……そういう事なら、話はそのロイ君と会ってからにさせてもらうよ」
「……ですよね」
レックウザに挑むのはあくまでもロイだ。状況によってはジンも加勢する可能性はあるが、積極的に参戦するつもりはない。そして、レックウザに挑む以上は相応の力が求められる。カブとしてもそれを見極めてからではないと情報は与えられないのだろう。
「ジン君から見てどうなんだい?ロイ君はレックウザをゲットできると思う?」
「バトルでって意味なら、将来的にはともかく今は絶対に無理ですね」
「即答だね……」
「俺はロイの力もレックウザの力も両方とも知ってますからね」
ロイは格段に強くなっている。だが、それでもまだレックウザには届かない。それどころか今のままではそもそも視界にすら入れてもらえないだろう。残酷なようだが、事実としてそれだけの差が両者には存在する。
「でも、あいつの諦めの悪さは折り紙付きです。たとえ負けても何度も何度も挑戦する。そして、いつかは本当にレックウザに届くかもしれない……そう思ってるんです」
「そうか……君がそこまで信頼するロイ君に少し興味が出てきたよ。あっ!見えてきた。あの店だ」
どうやら話しながら歩みを進めている内に目的地であったバトルカフェに到着したらしい。ジンとカブはそのままカフェの入り口から中に入り、店内を進み空いていたテラス席へと進んでいく。
「ん?」
「これは……」
ジンとカブがテラス席に近づくと店内に作られたバトルフィールドでリコとマードックがパティシエと思われる男性とバトルを行っている途中であり、ニャオハとマホイップ、ペロリームとタルップルがフィールドに出ていた。
「今度はこっちの番だ!マホイップ『デコレーション』!」
マホイップは体から黄色い光の粒子を発しつつ両手の間にクリームをを作り出し、それをニャオハの頭上にソフトクリームの様な形状にし乗せていく。その姿はさながらテラスタルした姿の様で見ている者に素直に美しいと思わせる程だった。
「なんというか、コンテストバトルみたいですね……」
「はは、確かにそうだね」
コンテストとは正式名をポケモンコンテストと言い、ジンとカブの出身地方であるホウエン地方発祥で単純にポケモンの強さだけではなく魅力を競うといったものだ。ジンもカブもコンテストの参加経験はないが、コンテストを見た経験は何度かある。
それ故に思わず出た感想であったが、実際に今の一連の動きには確かにそれらしい部分が見られた。『デコレーション』というシングルバトルではほとんど使えない技をダブルバトルのパートナーに使用し、攻撃と特攻を上昇させその上で見栄えもいい。コンテストであればきっといい評価を得られただろう。
「ニャオハ!『ひっかく』!」
ジンたちが会話をしている間もバトルは進み、『デコレーション』により攻撃を上昇したニャオハは相手のペロリームとタルップルに強力な『ひっかく』をお見舞いする。
「なかなかやりますね……ですが、負けませんよ!美味しさ、トレビアーン!」
トレーナーの声に反応するように立ち上がったペロリームとタルップルはそれぞれクリームと甘い蜜を打ち上げる。するとそれらの具在はどこから取り出したのか不明だが、トレーナーが持つボウルへと吸い込まれるように入っていく。
「………ん?」
「え?」
「やりやがったな!ミッチェル……だったら!こっちもだ!俺たちの味をとくと味わえ!」
ポケモンバトルとは全く関係のない行為に観戦していたジンとバトルを行っていたリコも同じような反応をする中、マードックだけはミッチェルの意図が理解できたようだ。ミッチェルに続くようにマホイップはマードックの構えたボウルに向けて自分のクリームを注ぎ込んでいく。
「もっともっと!トレビアーン!」
「マホイップ!遠慮するな!どんどん頼む!」
突然の事態に混乱するジンたちを放置し、マードックとミッチェルは次々に見た目も香りもいいケーキを作り出していく。その動きには無駄がなく、何よりも先程までバトルをしていた筈の2人が心から楽しそうにケーキを作る姿は不思議と見ている者たちの気持ちまで賑やかにさせた。
(ポケモンバトルからスイーツバトルに変更か……さっきまでのバトルはコンテストみたいだったのに、今度は男版のトライポカロンみたいになってきたな……)
バトルからスイーツバトルに移行するという今までに一度も見たことない内容にジンは興味深そうに眺めていると2人によって作られたケーキは従業員たちにより店にいた客たちに次々と運ばれていく。ジンの前にもマードックとミッチェルが作ったケーキが並び一口食べると口の中に美味しさが広がっていった。
「……美味い」
「言っただろう?ここのケーキは美味しいって……だけど、今日はいつもよりもさらに美味しい気がするけどね」
「……そうなのかもしれないですね」
ここのケーキはジンにとって初めての物だったが、それは周りで作られたばかりのケーキを食べる常連客達の反応を見れば察する事が出来た。
「その理由は、彼らかな」
そう言うとカブはフィールドに視線を向ける。ジンもそれに続き視線を変えるとそこにはフィールドで大泣きしながら抱き合うマードックとミッチェル、そしてそれを微笑ましそうに見るリコとロイの姿があった。なぜそうなったのかは流石に見当もつかなかったが、きっとこの味に大きく関与していたのは間違いないのだろう。
「面白いバトル、そして美味しいケーキをどうもありがとう」
ケーキを食べ終わり、コーヒーを飲み終えたカブはフィールドにいたマードックとミッチェルにお礼の言葉を告げる。
「カブさん!いらしてたんですね!」
「え?もしかしてジムリーダーのカブさん!?それにジンも!?」
ミッチェルの言葉を聞き、リコたちは背後のテラス席に座っていたジンとカブにようやく気付いたようだ。しかも、ロイが大声でカブの名前を呼んだことで店にいた客たちにまでカブの存在が伝わってしまう。
(おっと……)
嫌な予感がしたジンは席を離れ、バトルフィールドへと降りる。それとほぼ同時に店にいた客たちはカブの元に集まり、次々に話しかけ始める。その様子からカブがこの街でどれほど慕われているのかが伝わってきた。
「ジン、遅いよ……」
ジンがフィールドに入るとリコは軽くジト目で睨みつけてくる。詳しい話を聞くとこの店のパティシエのミッチェルとマードックは昔、同じ店で働いていたがちょっとしたことをきっかけに仲違いをしていたらしくその関係をなんとかしようとリコの提案でバトルをすることに至ったらしい。
「もう!大変だったんだからね!」
リコとしてはジンがいればもっとスムーズに解決できたと思っている様だが、恐らくあまり結果は変わらなかっただろう。それどころかバトルをジンがする羽目になっていたら速攻でバトルを終わらせてしまい今よりも酷い結果になっていた可能性すらあり得た。
「悪かったよ。埋め合わせは今度ちゃんとするから……それより、ロイ、カブさんがレックウザの情報なにか知ってるみたいだぞ」
「え!?本当に!?」
話しかけてくる店の客たちへの対応を終えたカブは視線を再びリコたちへと向ける。
「お嬢さん、バトル見させてもらったよ。なかなかいい『このは』だったね。ニャオハ君との絆が伝わってきたよ」
「本当ですか!?あ、ありがとうございます!」
「それから、君がロイ君かい?」
「はい!あの!僕、聞きたいことがあるんです!」
「あぁ、既にジン君から話は聞いているよ。ここではなんだから、ジムで話そうか?」
***
「着いたぞ。ここだ」
ジン、リコ、ロイの3人は買い出しで買った食材などをマードックに任せるとバトルカフェを後にし、ここエンジンスタジアムにまで来ていた。ちなみに、カブは一緒ではない。彼はなにやら準備したいことがあるからと言って先にスタジアムに向かっていた。
「……よし、そろそろいいか」
カブから言われ、30分程、街を散歩などで少し時間を潰しながらここまで来た。恐らくカブの準備も終えているだろう。
「うん。でも、カブさんの言ってた準備ってなんだろうね?」
「……まぁ、入ってみれば分かるさ」
この場では敢えて答えなかったが、ジンにはカブが何の準備をしているのかが凡その予想はついていた。
(試す気……だよな)
バトルカフェに着くまでのカブとの会話から考えて、レックウザに挑むにあたりロイの実力を確認する事、そしてジムリーダーとしてロイの力を引き出す手伝いをすることであるのは想像に難くない。
「ジン!カブさんって、何タイプのジムリーダーなの?」
「あぁ、それは……」
「炎タイプっす!」
ジンが答えるよりも早く、スタジアムの入り口から赤いユニフォームを着たジンたちと同い年位の女性が会話に割り込んでくる。
「どうも。自分はジムトレーナー見習いのワカバといいます。リコさん、ロイさん、そして……ジンさんっすね?カブさんから話は聞いてるっす!こちらへどうぞ!」
彼女の名はワカバというらしい。ジムの関係者の様で、彼女の案内の元、ジンたちはスタジアムの中に入っていく。
「ジンさん!この間のナンジャモさんとのバトル見させていただきました!自分、感動したっす!」
「あぁ、あれ見てたのか?」
「はいっす!あの時は偶然、カブさんと一緒に配信を見てたんですけどカブさんも凄い絶賛してたっすよ!」
(……そうか。ワカバだったのか)
先程のバトルの後、カブが言っていたジムトレーナーに志願している子とは恐らくこのワカバの事なのだろう。
「自分、勉強も兼ねて色んなトレーナーのバトルの映像見たんすけど、ジンさんのバトルはとても参考になってるっす!」
そこまで絶賛してくれるとジンとしても悪い気はしない。問題があるとすればそれは1つだけ、ワカバがジンを褒めるたびに不機嫌そうになり、いつの間にかジンとの距離をほぼゼロになるほど接近し腕を組んできた嫉妬深い恋人くらいだろう。
「……あの!リコさん!質問してもいいっすか?」
「……なんですか?」
「ひょっとして、リコさんはジンさんの恋人さんっすか?」
ワカバからそんな疑問を聞かれるとリコは先程までの不機嫌さがどこかへと消え去り、一気に機嫌をよくすると満面の笑みを浮かべながら頷く。
「やっぱり!距離が近いからそうなんじゃないかと思ったんっすよ!」
(……腕まで組んでりゃそう見えるよな)
街中で腕を組んでる男女を見かければ余程の年齢差などがない限りは、その2人は恋人同士だと思うのは自然である。
「凄いっす!自分と同じ年頃なのに恋人がいるなんて」
「そ、そうですか?」
「そうっすよ!自分はまだ修行中の身、恋人なんて考えられないっすけど……その……興味はあるっす!是非、お2人の馴れ初めを教えて欲しいっす!」
「え、え~と……ちょっと恥ずかしいな……」
ガールズトークの内容にはジンとしても大変興味はあったが、流石にこの先の会話を聞くのは罪悪感もありいたたまれない。
「ねぇ、カブさんってどんな人?」
そう思っていると状況が分かっていないのか空気が読めていないのか分からないがロイの素朴な疑問にガールズトークを中断したワカバが慌てた様子で答え始めた。
「か、カブさんはですね!一言で言うと、熱くて強くて、優しく頼れるジムリーダー!自分を高める為に常に鍛え続ける孤高のトレーナーっす!」
全然、一言では言えていなかった。しかし、その発言には間違いがなくワカバがどれ程、カブの事を慕っているのかが伝わってきた。
「俺の独断だけど、カブさんはコルサさんやナンジャモさんよりも強いと思うぞ」
ポケモンの相性、ダイマックス使用可能かどうかなどによって多少の変動はあるが、3人のバトルを見た事のあるジンからするとカブが経験でも実力でも頭ひとつ抜けているというのが素直な評価だ。
「本当に!?カブさんって凄いんだ!」
「そうなんすよ!自分はそんなカブさんに憧れてジムトレーナーを目指してるっす!まだ試験では一度も合格できてないんすけど……でも!何度でも挑戦し続けるっす!」
「うん!頑張って!」
ワカバの真っすぐで明るい性格故なのかこの短い時間にジン、リコ、ロイの3人から高評価を得ることに成功する。少しの間、談笑しながらスタジアム内に進むと先程、ジンがカブとバトルしたバトルフィールドではなく別室のトレーニングルームへと案内される。
「やぁ、待っていたよ」
トレーニングルームには円状にできた特殊なフィールドが存在し、柵で覆われている。その入り口付近でカブがジンたちの事を待ち受けていた。
「カブさん!」
「さっきも言ったが、既にジン君から君たちの目的が黒いレックウザのゲットである事は聞いている」
「レックウザ!?伝説のポケモンの!?」
「うん。このボールに入ってたんだけど、飛び出してどこかに行っちゃって……」
ジンたちの目的を知らされていなかったワカバのみが驚愕する中、ロイは古のモンスターボールを取り出し、カブとワカバに見せる。
「それが……やはり、見たことがない」
あまり期待していなかったが、やはりベテランのトレーナーであるカブも古のモンスターボールは見たことがない様だ。
「レックウザにもう一度会ってゲットしたい。それが僕の夢なんです!」
「なるほど……それで君は?」
ロイの真っすぐな思いを受け止めたカブは次いでリコに視線を向け、彼女の目的を訪ねる。
「わ、私は、そのレックウザが特別で仲間と出会った事とか、私がここにいる事とか、全部繋がってる気がしてて……だからレックウザの事を知りたいんです!」
ロイと比べると少々、抽象的な目的ではあったがそれでもリコが何かを追い求め、その為にレックウザに会いたいという気持ちはしっかりとカブに届いたようだ。
「君たちの熱い思い、確かに伝わったよ。若いトレーナーの背中を押すのもジムリーダーの務めだ。君たちのバトルの力が今よりも向上するように協力しよう」
(やっぱりか……)
ジンが予想した通り、最初から2人の力を試し向上させることが目的で当たっていたようだ。
「それってカブさんが……」
「バトルの相手をしてくれるんですか!?」
(……いや、違う)
それならば最初からバトルフィールドのある場所に案内すればよかった筈だ。わざわざ、このトレーニングルームに招待したからにはここでしか出来ないことをすると考えた方が自然だろう。
「ふふ……さぁ、まずは中に入って」
カブは柵の入り口を開くと中にジンたちを入れた。その中央に存在する赤いサークルに到達するとフィールドの中にある草むらから合計20体のヒトモシが現れる。
『ヒトモシ ろうそくポケモン ゴースト・炎タイプ 炎は普段消えているが 人やポケモンの生命力を吸い取ると燃えると言われている』
「こわっ!」
スマホロトムによるヒトモシの説明を聞くとロイはそう反応する。忘れがちなのではあるが、ポケモンとは見た目とは裏腹にこういった怖さを持つ者も多いのだ。
「今から、君たちのトレーニングを始める」
「え?バトルじゃないの?」
「強くなるために大事なのは基本だ。基本となる技を磨き上げパワーを上げれば、おのずとバトルのレベルも上がる」
基本となる技、即ちニャオハであれば『このは』、ホゲータは最近、『かえんほうしゃ』のトレーニングを主に行っていたが、今回の趣旨に添えば『ひのこ』が適切と言えるだろう。
「それではルール説明だ。赤いサークルの中から、ホゲータ君は『ひのこ』をニャオハ君は『このは』でヒトモシ君のたちの頭の上を狙う。全てのヒトモシ君を『ひのこ』で灯せればロイ君の勝ち、逆に『このは』で全ての炎を消せればリコ君の勝ちだ」
模擬線などで2人は何度か手合わせをしたことはあるが、今回の様にはっきりと勝ち負けを決める戦いは初めての事だ。お互い、競争という事で気合が入っているらしい。邪魔にならない様にリコとロイだけをサークル内に残し、ジンたちは柵の外に出る。
「それでは2人とも準備はいいかい?」
「「はい!」」
「それでは、始め!」
ビィィというブザー音と同時にカブが開始の合図を出した。その瞬間、ニャオハとホゲータはヒトモシに狙いを定め始める。
「ホゲータ『ひのこ』!」
「ニャオハ『このは』!」
ホゲータの『ひのこ』とニャオハの『このは』が互いの正面にいたヒトモシに向かっていくが、技が向かって来るの見たヒトモシは慌てて草むらに逃げ込んでしまう。
「落ち着いて、狙いを定めていくよ!もう一度『ひのこ』!」
「ニャオハ!冷静にね!『このは』!」
最初の失敗を反省した2人、冷静に正確に目の前にいたヒトモシに技を命中させる。ほぼ同時であった為、スコアで見れば10対10のままだ。
「2人とも思っていたよりも冷静だね」
「普段のトレーニングで失敗を繰り返すなんてことはザラですからね。2人ともこの程度では挫けませんよ」
ジンとのトレーニングを普段から行っている2人だ。失敗した経験などもはや数える方が馬鹿らしいと思えるほど失敗してきている。今更、一度失敗した程度でどうこうなる様な精神ではない。
「ニャオハ!『このは』をいっぱい出して包み込んで!」
「ニャァァ!」
柵を登ろうとしていたヒトモシに対して、ニャオハは『このは』を大量に出し、ヒトモシの体全体を包み込み、頭の炎を消し去った。それを確認するとリコとニャオハ次なる獲物に狙いを定める。
「今度は、『このは』を固めて鋭く!」
ニャオハはリコの指示に従い先程よりも少量の『このは』を固く丸めると弾丸のように鋭く発射し、さらにもう一体のヒトモシの炎を消し去る。
「リコさんとニャオハ凄いっす!」
「うん。いいコンビネーションだ」
連続でヒトモシの炎を消し去ったニャオハを見てワカバとカブは素直に称賛の言葉を送る。
(このルールだと、やっぱりリコの方が有利か……)
リコはロイよりも僅かではあるが、トレーナー歴が長い。さらにジンはロイの指導は実戦を主に取り入れているが、リコはセキエイ学園で鍛えた頃から基本となる『このは』を出来るだけ上手く扱えるようになる様に指導した。その差が明確に出始めており、スコアはどんどん離されていく。
「あ~~~どうしよう!?このままじゃ!?」
(このままだと少し一方的だな……仕方ない)
「ロイ!負けたら今日のトレーニング量を倍に増やすぞ!」
「ホゲータ!死んでも勝つよ!」
「ホンゲェェェェェ!」
差が付き始め、あたふたしているロイの為にジンは魔法の言葉をかけてあげた。すると元気を取り戻したロイとホゲータは次々とターゲットのヒトモシに炎を灯すことに成功し始める。
「「♪ホッホッホホゲ ♪ホッホッホホゲ ♪ホッホッホホゲ」」
ロイとホゲータはいつものお気に入りの歌を共に歌いながら『ひのこ』を発射する。その『ひのこ』はリズムに乗った影響もあり素早くそれでいて鋭い。ロイたちの目の前にいたヒトモシは次々に炎を灯していき、遂にはリコとニャオハたちが消したヒトモシの炎を灯すほどの勢いだ。
「いいぞ!ホゲータ!」
「ホゲ!」
盛り返し始めたロイとホゲータ、スコアは遂に逆転し一転してリコとニャオハが不利な状況にまでなっていく。
「このままじゃ……あっ」
不利にこそなったが、やはりここでも僅かではあるが経験の差が出ている。フィールド全体をしっかり見渡したリコは炎がついたヒトモシが大量に固まっている場所を即座に見つけ出した。そこに大量の『このは』を放てば一気に追いつき、流れを呼び戻すことも可能だ。
しかし……
「頑張れ!ホゲータ!♪ホッホッホホゲ~」
勝負に勝とうと一生懸命に奮闘するロイとホゲータ、その姿が目の端に一瞬だけ入ってしまった。その姿を見たリコは咄嗟に行動する事が出来なくなってしまったのだ。
「「………」」
その姿を見たジンとカブは険しい表情を浮かべている。
「ニャ~~!」
「あ、ごめんね。鋭く、いや、いっぱいで」
ニャオハの声を聞き、リコは慌てて指示を出そうとしたがその時にはもう全てが遅かった。最後のターゲットのヒトモシをホゲータの『ひのこ』が襲い、全てのヒトモシに炎が灯されてしまう。この瞬間、ロイとホゲータの勝利が決定した。
「やった~~~~~~!ホゲータ!僕たち生き残ったよ!」
「ホンゲ~~~~~~~!」
ロイとホゲータはお互いに抱きしめあい、まるで絶体絶命の窮地から逃げ出せたのではないかと勘違いさせる程に喜び始める。
「負けちゃったか……ごめんね、ニャオハ」
「……ニャン」
「惜しかったすね!リコさん……でも、凄かったっす!」
「ワカバさん……ありがとう!応援してくれて元気出たよ」
一方で負けたリコはニャオハに謝罪すると柵を乗り越えフィールドに入ってきたワカバと楽し気に会話をし始める。その姿からはあまり負けたことに対しては悔しさを感じていない様だ。
「……ちょっと、よくないですね」
「そうだね……」
その様子を柵の外から見ていたジンとカブはをそう評した。今の勝負、リコには躊躇いが感じられたからだ。慣れ親しんだロイが相手だからそうなってしまったのかは不明だが勝負事において、これは致命的なまでの弱点になりえる。
「ジン君、もう少しだけ様子を見ていてくれないか?」
この事を伝えるべきかどうか悩んでいるジンにカブはそう語りかける。
「まだ決まった訳じゃないしね。次のトレーニングでそれを確認してみよう」
「……分かりました」
カブとジンもそう話し合うと、ワカバに続きフィールドに入り中央にいる2人に近づいて行く。
「リコ……惜しかったな」
「うん。ごめんね。負けちゃった……」
「……まぁ、気にするな。また、その内、模擬戦をやるからそこで勝てばいい」
(その気があればだけどな……)
「……さて、2人ともいいトレーニングになったようだね。じゃあ、次はその成果をぼくとのバトルで試してみよう」
「「え?」」
「それじゃあ……ワカバ君、タッグを組んでくれるかい?」
「えっ!?自分がカブさんと!?は、はい!喜んで!」
カブの提案により、リコとロイ、カブとワカバによるタッグバトルを行うことが決定される。ロイにとっては2回目、そしてリコにとっては初めてのジムリーダーとのバトルが始まろうとしていた。
来週はタッグバトルを書いて行きます。タッグバトルは本当に初めてだからどうなるか分からないですけど頑張って書こうと思います。
☆9
金銀好きさん、ふーしんさん、忍んBさん
高評価ありがとうございます
作品の要望などあれば気軽にメッセージを送ってください。