最近、夜勤ばっかりで完全に生活リズムが崩れてなかなか書けませんでした。遅くなり申し訳ありません。
「カントー以来だな。元気にしてたか?」
ロイの出身地であるカントー離島以来、このガラル地方で久々に再会したアメジオにジンは、まるで旧友に出会ったかのような態度で話しかける。しかし、アメジオはそれに対し何も答えることもせずにポケットからモンスターボールを取り出しジンに向けて構えた。
「つれないな。久しぶりに会ったんだ。少しくらい話しでもしないか?」
「……無駄だ」
「ん?」
「お前の魂胆は分かっている。そうやって俺を喋らせ少しでも情報を得ようとでも考えているのだろう?」
(……ばれたか)
アメジオとこのガラル鉱山の内部で再会したのが偶然であるはずがない。ここまでなるべく情報を残さない様にしてきたが、どこかから情報を得てリコとペンダントを狙ってきたのか、もしくはジンたちと同じように黒いレックウザを探しにきた可能性も捨てきれない。
エクスプローラーズという組織の目的や規模も完全には把握できていない以上、情報は少しでも欲しい所だ。以前、パルデアで敵対したスピネルに比べれば感情的になりやすいアメジオの方が幾らか情報を得られるのではないかと期待したが、どうやらそれ程甘くはないらしい。
「無駄口はいい。さっさとポケモンを出せ」
「せっかちだな……いいだろう。相手になってやるよ」
これ以上の会話はアメジオが拒否している以上は無意味。ここは入り組んでいるので逃走は可能そうだが逆にこちらが迷子になる事が目に見えている。リコたちの捜索を続けたい所ではあったがまずは、絶対に逃がさないという強い意志の籠った目で睨みつけているアメジオをなんとかするしかない。
「行け!ボーマンダ!」
ジンは取り出したモンスターボールからボーマンダを出す。それに対し、アメジオは無言で構えていたモンスターボールを宙に投げる。中から現れたのは、今までのバトルで見せたソウブレイズでもアーマーガアでもなかった。
「ガァァァァブ!」
雄叫びを上げながらボールから出てきたポケモンは鋭い目つきにサメと恐竜を合わせたような姿をしたマッハポケモンのガブリアスだ。
「ガブリアス……そんなポケモンを持っていたのか」
「驚いたか?お前を倒すために新たに手に入れたポケモンの1体だ」
(1体……という事はまだ他にも手に入れたのか)
対峙しているガブリアスだが、醸し出すオーラからかなりの高レベルである事が窺える。アメジオの言動から考えて他にも複数体同レベルのポケモンがいる可能性がある。
「……どうやら、強くなったみたいだな」
「当然だ。この日の為に俺たちは特訓を重ねてきた。もう……お前に敗れ、レックウザ相手に逃げ出した以前の俺と同じではない」
「……上等だ!ボーマンダ!『ドラゴンクロー』!」
「こちらも『ドラゴンクロー』!」
ボーマンダとガブリアスはそれぞれトレーナーの声に従い、一気に接近すると巨大化させた両腕を鋭く尖らせ、ボーマンダは上空から急降下しガブリアスは地上から大きくジャンプしそれぞれ斬りかかる。洞窟の中央で2体の爪がぶつかり合い強い衝撃を生んだ。
『ドラゴンクロー』の威力こそ互角だったが、空中から攻め重力を味方につけたボーマンダの方がやや優勢だったようでガブリアスはそのまま地面に叩きつけられていく。
「ガブッ!?」
ガブリアスは悲痛な声を上げるが、地面に落ちる寸前で受け身を取った。『ドラゴンクロー』は効果抜群の技ではあったが、互いの爪がぶつかり合い直撃しなかった事もあってか然程はダメージが入っていないらしい。
「ボダー……」
それどころか、むしろ『ドラゴンクロー』の押し合いに勝った筈のボーマンダの方が僅かではあるがダメージを負った様子が見られる。
(このダメージ量……特性は『さめはだ』の方か)
特性『さめはだ』、直接攻撃を受けると攻撃した相手にダメージを与える特性だ。ジンとしてはできればこの特性でないことを祈っていたのだが、『ドラゴンクロー』使用した後にダメージが来たことから、まず間違いないだろう。
(相打ちではこっちのダメージが大きいか……)
ガブリアスの特性を考慮すれば、このまま接近戦を繰り返せば必要以上にダメージを負う事を覚悟する必要がある。
「『りゅうのはどう』!」
「『あなをほる』で地面に逃げろ!」
ならばと接近攻撃から遠距離攻撃に切り替え、ボーマンダは龍の形をした光線を放つ。それに対しカブリアスはその場で地面を掘り起こすと地中へと潜って『りゅうのはどう』を回避した。ボーマンダは辺りを見回し警戒するがガブリアスはなかなか姿を現さない。
「っ!ボーマンダ!下だ!」
「『スケイルショット』!」
空中にいるボーマンダの真下にまで穴を掘ったガブリアスは穴から飛び出すと自身の体から複数の鱗を打ち出した。
「『りゅうのまい』で受け流せ!」
迫り来る鱗をボーマンダは空中で『りゅうのまい』を発動し回転し始める。鱗はボーマンダの回転によって天井や地面へと受け流されていく。
(遠距離攻撃で来るのを読まれてたか……だったら!)
「ボーマンダ!『りゅうせいぐん』!」
ボーマンダは頭を上に向けるとエネルギーを腹に集中させ、天井に向けて光球を打ち上げる。光球は空中で分裂すると隕石の様になりガブリアスに降りかかり始めた。
「『あなをほる』!」
迫りくる隕石を前に回避は難しいと判断した様でガブリアスは再び、その場で地面を掘り起こし穴の中に逃げ込む。
しかし、これはジンの狙い通りの展開だ。
「ボーマンダ!『じしん』だ!」
「なにっ!?」
ボーマンダは隕石に続くように地面に急降下すると両足を高く上げ勢いよく地面を踏みつける。洞窟全体を揺らすほどの大きな揺れが起こりガブリアスは穴の中から強制的に押し出されてしまう。
「そこだ!『ドラゴンクロー』!」
ガブリアスが穴から飛び出たのを確認するとボーマンダは再び上昇し『ドラゴンクロー』で切り裂く。特性『さめはだ』の影響でボーマンダにもダメージが入るがガブリアスのダメージはそれ以上だ。
「ガブリアス!?」
『じしん』に続き効果抜群の『ドラゴンクロー』も受けてガブリアスはかなりのダメージを負ってしまう。まだ、戦闘不能の領域にまでは達していないが、もう一度抜群の攻撃をくらえば耐えることは出来ないだろう。
ジンが遠距離戦に切り替えた為、『スケイルショット』を使い素早さを上げる選択をしたのだろうが、その代償に防御まで下げたことがここに来て仇になってしまった様だ。
「『あなをほる』で地中に逃げ、死角から攻撃する。まぁ……発想は悪くないが、お前の戦法は少しワンパターンだな」
ガブリアスに取らせた戦法はソウブレイズの『ゴーストダイブ』で行っている事とほぼ同じだ。確かに使い勝手はいいが、同じ戦法を繰り返せば対応は割と容易く出来てしまう。
「っ……ガブリアス、すまない。俺のミスだ……まだ行けるか?」
「ガァブッ!」
アメジオはジンの指摘を素直に受け入れたようだ。こういった指摘を受けてもなおポケモンのせいにするトレーナーは決して強くなれない。そういった意味ではアメジオはポケモントレーナーとしての才能があると言えるだろう。
(アメジオ……こいつはきっと、もっと強くなる)
ジン個人としては、これから更に強くなるであろうアメジオとのバトルは今後も大歓迎だ。しかし、どれだけ腕がよくバトルやポケモンに対しては誠実であろうとも彼が敵であり、大切な恋人のリコを脅かす存在であるという事実に変わりはない。
(少し、残念だがリコの安全やこの先の旅を邪魔をされない為にもここで確実に倒して捕まえるべきか……)
決意を新たにし、更なる策略を練り始めた正にその時だった。ジンたちのいる洞窟に繋がる一本のトンネルから爆発音の様な激しい衝撃音が響き天井から落石が起こり始める。
「なにっ!?」
「これは……」
突然の事態にバトルは強制的に中断され、ジン、アメジオの両者は周辺を見渡しながら警戒し始める。すると爆発音のしたトンネルに続いている線路から一台のトロッコが猛スピードで突入してくるのだった。
「リコ!ロイ!」
トロッコの中には探していたリコとロイ、その後に傷を負ったリザードンの背に乗り、戦闘不能状態にまでボロボロになったキャップを片腕に抱えたフリードが続いてくる。そして、リコたちを追いかけるように最後にトンネルから一体の巨大なポケモンが姿を現す。
「「!?」」
そのポケモンは赤黒く燃え盛る炎のようなものに身を包んだ非常に禍々しい姿をした巨大な鳥の様な姿をしたポケモンだ。初めて見るそのポケモンは猛烈なまでに殺気と憤怒を発していた。今までに感じた事のないその気配にジンとアメジオは今、最も危険な敵が目の前に現れたのだと瞬時に理解する。
「『スケイルショット』!」
「『りゅうのはどう』!」
ジンとアメジオはトレーナーとしての本能で先手必勝とばかりに攻撃の指示を出し始める。ガブリアスの『スケイルショット』が左翼にボーマンダの『りゅうのはどう』が右翼へと命中し、そのポケモンは動きを止め地面へと落下していく。
「ジン!こっちに!」
「俺はいい!フリード!2人を頼む!」
リコはトロッコから必死に呼びかけ手を伸ばすが、ジンは手を伸ばすどころか視線を向ける事もしない。というよりも今は、突然現れ、再び飛び上がろうとする謎のポケモンから目を離し警戒を解くことができなかった。
「……すまない!頼んだ!」
フリードとしては本来であれば、自分が残るべきだと考えていた。しかし、キャップは既に戦闘不能、リザードンも限界が近い。この状況で自分が残っても時間稼ぎができるのかさえも怪しい。
それに対して、ジンは手持ちも多くバトルの腕前は知っての通りだ。ずっと年下のジンにこの状況を任せることには心を痛めたが、それでも最も適任な存在に任せるしかない。そう判断し、フリードはトロッコに続き洞窟の外に向けて進みだす。
「さてと、どうするかな……」
3人を逃がしたまではよかったが、ここからは全くのノープランだ。対策を練る為に改めて謎のポケモンの観察を始めると右足の指の間に挟まれている物に気づく。
(古のモンスターボール……予想が当たってしまったか……)
黒いレックウザ、森のオリーヴァに続き3体目の六英雄であることにもはや疑いはない。放たれるプレッシャーは黒いレックウザやダークライに比べても遜色なく、強者であることを嫌でも実感させられた。
『データなし 謎のポケモン』
スマホロトムで詳しい情報を得ようと思い検索するが図鑑にも情報のない登録されていないポケモンの様だ。
(情報なし……となると推測するしかないか。翼がある事から飛行タイプを持っている事は間違いない。作業員の話し通りなら、気力を奪ったのも多分、こいつだ。発しているオーラを見るに悪タイプの可能性もある。なにより、こいつの姿は……)
カントー地方に伝わる伝説のポケモンの1体、ファイヤーに酷似していた。多くの伝承があり、ジンも資料や映像であれば見た事のあるポケモンだ。しかし、目の前にいるポケモンは形状こそ似ているが、あまりにも禍々しいと言わざるを得ない。
(リージョンフォーム……ガラルファイヤーって所か?)
それぞれが持つ独自の自然環境に適応し、ほかの地方とは異なる姿とタイプとなる現象、それが起こっていると考えれば辻褄は合う。
(1日で2度もか……今日は大当たりだな)
ダークライに続き、2度もこれ程に希少で強力なポケモンに出会う事など、滅多に存在しない。人によっては厄日とも言えるかもしれないがジンは緊張感とは裏腹にこれ程の強者とバトルできる事に心が躍っていた。
「ファァァァァイッ!」
雄叫びと共に再び宙に舞い上がったガラルファイヤーは両翼を大きく広げて烈火の如き邪悪なオーラを放ち始める。そのオーラはまず、ボーマンダとカブリアスを包み込み、そのままジンとアメジオへと向かってくる。
(……なるほど、これが)
迫ってくるオーラから嫌な予感を感じる。恐らく、作業員たちから気力を奪った技だと理解したが範囲が広く躱すことは出来そうにない。先にオーラに包まれたボーマンダの様子から見て直接的ダメージは少なそうだと判断し、受ける覚悟をした。
「っ!」
ジンたちのもとにオーラが届こうとした正にその時だった。ジンのポケットの中に入っていたモンスターボールの1つが突如、動き出し中から1体のポケモンが現れ、ジンたちとオーラの間に立ちふさがる。
「なにっ!?」
「馬鹿な!?ダークライだと!?」
先程まで開閉スイッチを何度押しても何の反応も示さなかったダークライはこのタイミングでボールから飛び出し、迫りくる邪悪なオーラに向かって両手を前に突き出すと緑色のオーラを出しジンとアメジオを包み込む。
「これは……『まもる』か?」
洞窟全体を包み込む程の規模の邪悪なオーラをダークライは力を振り絞り、背後にいたジンたちを守り抜く。しかし、先程のバトルで既に負傷していたダークライは今度こそ力尽き、その場に倒れてしまう。
「ダークライ!?」
これ以上は危険だと判断し、ジンはダークライをボールに戻す。守ってくれたことに対しての感謝を伝えたい思いも聞きたいことも多かったが、それは全てこの場を乗り越えてからすべきことだ。
(ボーマンダもきついか……)
ジンとアメジオは無事だったが、先にオーラを浴びたボーマンダとガブリアスは気力を奪われてしまった様だ。まだ、バトルすることは可能なようだが撤退する必要に迫られた時の事も考えれば飛行能力のあるボーマンダをここで失う訳にはいかない。そう考え、ボーマンダもボールへと戻す。
「……アメジオ、逃げるんだったら今だぞ。今なら追いかけたりしない」
もはやアメジオの相手をしている余裕などない。ジンはリコたちが撤退するまで時間を稼がなくてはならないが、アメジオは違う。むしろ邪魔をされるくらいであれば逃げ出してくれた方がありがたい程の状況へと変化してしまったのだ。
「さっきも言ったはずだ。あの時の……レックウザを前に無様に逃げ出した、俺とは違う」
アメジオも既にダメージを負い、気力も奪われたガブリアスをボールへと戻すと新たなモンスターボールを取り出す。どうやら、逃げるつもりはない様だ。
「お前との決着をつけるまで、ここを去る気はない」
「……そうか。それなら……手を組まないか?」
「……なに?」
「この状況を何とかするまででいい。それまでの一時的休戦を提案する。バトルの続きはその後で必ずする。それでどうだ?」
「…………」
目の前にいるガラルファイヤーを何とかしなければバトルを続けることは出来ない。それはジンもアメジオも共通の認識だ。
「…………いいだろう」
熟慮の末にアメジオはジンの提案を了承した。黒いレックウザもいない上にペンダントを持つリコも洞窟の外に向かっている以上、今のアメジオにとっての最優先課題はジンとの決着だ。この状況を脱し、バトルの決着をつける為であれば、手を組むこともやぶさかではないのだろう。
「感謝するよ」
「不要だ。さっさと終わらせるぞ」
ジンとアメジオは互いにモンスターボールを取り出すと宙へと投げる。ジンが出したのは相棒であるジュカイン、そしてアメジオが出したのは龍のように長い身体と三叉の角が特徴のきょうあくポケモンのギャラドスだ。
「……へぇ」
ギャラドスを目にした瞬間、ジンは思わず感嘆の声を上げる。目の前のギャラドスのレベルが高く、よく育てられている事に対してでもあったが、それ以上に目を引かれたのがギャラドスに付けられた金属プレート製の首輪に填め込まれた1つの石だ。
「出来るのか?」
「当然だ」
「……この短期間でたいしたもんだな」
「俺も、そしてガブリアスやギャラドスも目的は同じだ。今よりも強くなり、更なる高みへと登る。その為に互いに血反吐を吐きながら鍛錬した。その過程で絆が芽生えた……ただ、それだけの事だ」
アメジオはなんという事もないとでも言いたげにそう答える。
(参ったな……)
ジンはアメジオの成長に素直に驚いていた。強くなったとは思っていたが、まさかここまでとは思っていなかったのだ。これから先も恐らくアメジオはジンたちの敵として待ち受けるだろう。その時、今よりも更に厄介な敵になることは疑いない。
だが、それらは後で考えるべきことだ。今、考えるべきことは1つだけ、目の前にいるガラルファイヤーを打ち倒す事のみである。
「行くぞ。準備はいいか?」
「無論だ」
ジンは首に掛かったペンダントにアメジオは右腕のリストバンドに手を当てる。
「限界を超えろ」
「高みへと登れ」
その瞬間、ジンとアメジオのキーストーン、ジュカインのスカーフとギャラドスの首輪に填め込まれていたメガストーンが同時に輝き始め2体を覆っていく。
「「『メガシンカ』!」」
アメジオの新しいポケモンはガブリアスとギャラドスにしてみました。
次回はメガジュカイン&メガギャラドスVSガラルファイヤーになります!なんとか週一で投稿できるように頑張るのでよければ次回も読んでください。
☆10
みっちちゃんさん
高評価ありがとうございます
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