ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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ハンベルを間違えてハリベルと何度も打ち間違えてしまう病気になってしまったかもしれません。


古城

 

 ブレイブアサギ号のミーティングルーム、そこには現在、ライジングボルテッカーズのメンバー全員が集合し中央のテーブルを囲んで座っている。

 

「しかし、不思議なポケモンだな~」

「今まで、宝石に擬態していたって事?」

 

 皆の視線はテーブルの上に乗る1体の謎のポケモンへと集まっていた。そのポケモンは先日、ガラル鉱山で姿を変えたペンダントであったポケモンである。

 

「リコは何か知らないの?」

「ううん。おばあちゃんからお守りだって事だけで詳しい事は何も……」

「図鑑にも詳しい情報がない以上、リコのおばあさんに聞くしかないだろうな」

 

 見た目は亀の様ではあるが図鑑には一切の情報もなくペンダントの持ち主であったリコも知らない謎のポケモン。性格に関しては穏やかに見える。来たばかりではあるがポケモンたちとも仲が良く危険性は感じられない。

 

「ジンの意見に賛成だ。おばあさんに会いに行こう。ジン、リコ、ロイ、準備だ。後のメンバーは何かあった時の為に待機しててくれ」

「「「了解」」」」

 

 話し合いを終えたメンバーたちは退室しそれぞれが己の準備に入り出す。ジン、リコ、ロイの3名もミーティングルームを出ると自室へと戻り、荷物の準備を行い始めた。

 

「……こんな所か」

 

 普段からいざという時に行動できるように荷物を纏めていた為、ジンの準備はほんの数分で終わってしまった。集合時間になるまでは自室で過ごそうと考えたジンはベッドに腰かけるとポケットからモンスターボールを1つ取り出す。

 

「ダークライ……結局、ほとんど出てこないな」

 

 ガラル鉱山で新たにゲットしたダークライだが、船に来た時の挨拶とトレーニング時間を除けばほとんどモンスターボールの中に引きこもっていた。

 

「……まぁ、仕方ないか」

 

 ダークライは自分の意思に関係なく近くにいる相手に悪夢を見せてしまう習性がある。それ故、ダークライもそれを気にして他者と関わろうとしないポケモンだ。いきなり全員と仲良くなる事など、どだい無理な話だ。

 

 更にモンスターボールには中に入っているポケモンの特性や能力をある程度、抑制する機能がある。その機能の影響もあり、トレーナーのジンや他のメンバーたちもダークライがボールにいる間は悪夢に襲われることはない。その為かダークライにとってはボールの中に入っていた方が気が楽なようだ。

 

「それよりも……いよいよか……」

 

 リコの祖母、ダイアナと遂に対面する事となる。父親のアレックスに初めて挨拶に行くときほどの緊張感は既にないが、それでも少しばかりは緊張していた。

 

「……まぁ、やれるだけやるしかないか」

 

 リコによるとダイアナはかなり豪快な人物で長年、冒険者を続けているらしい。冒険者としての経験は比べ物にならないかもしれないが、ジンも同じように何度も危険を潜り抜けてきた冒険者だ。案外、直接話し合ってみれば気が合うかもしれない。そんな淡い期待を抱いていると、いつの間にか集合時間が近づき始めたのでジンは荷物を持つと1人自室を後にするのだった。

 

 

 

***

 

 

 

 ガラル地方の近海、ここには今、一隻の潜水艦が潜んでいる。その潜水艦はエクスプローラーズ所有のものであり、現在はアメジオたちが拠点として使用している。

 

『やはり、独断で行動していたのですね?その上、ガラルファイヤーと接触し、ライジングボルテッカーズと一戦交えるとは……』

「小言はこの映像を見てからにしてくれ」

 

 アメジオは潜水艦内のコンピュータールームからギベオンの側近であるハンベルと通信を取っていた。単独行動を咎められると感じたアメジオはガラル鉱山で秘かに撮影した映像を送信する。

 

『これは……』

 

 ガラルファイヤーでもダークライでもなく、ペンダントであったポケモンの姿を映像越しに見た瞬間、ハンベルは驚愕した様子を見せる。

 

「あの時の任務はペンダントの回収としか聞かされていなかった。ならばあのポケモンは一体なんだ?」

 

 アメジオの問いに言葉を詰めらせるハンベル、その姿を見たアメジオはこれを絶好のチャンスと捉え更に言葉を続ける。

 

「どうする?独断で動いたことを咎め、俺を任務から外すか?ここまで来て再び見失うのは口惜しいが……判断は任せる」

『…………分かりました。ですが、まずは行き先の確認をさせて頂けますか?』

 

 長い沈黙の後、仕方なさそうに許可を出すハンベル。アメジオはジンやリコを含めて何人かが船を降り、鉄道を使いナックルシティ方面に向かった事を伝える。

 

『ナックルシティ……なるほど。以前より掴んでいた情報から足取りがあぶりだせそうですね……ですが、アメジオ様、次こそは行動を起こす前にまず報告を』

「小言はいい」

 

 その言葉を最後にアメジオは会話を終え、通信機を切ってしまう。

 

 

 

***

 

 

 

「はぁ……」

 

 一方的に通信を切ってしまったアメジオの態度を見たハンベルは思わずため息をついてしまう。あの様子から見て全く反省していないのは明らかだ。若者が年寄りの言うことを無視するのはよくある事だが、あそこまで聞く耳なしでは今後もあまり正確な報告は期待できそうにない。

 

「………」

 

 思う所はあるがアメジオから重要な情報を手に入れたのも事実、独断専行の処分などは一旦、保留とし迅速に行動する必要がある。そう切り替えたハンベルは端末を操作し部下に連絡を入れ始めた。

 

『いかがなさいましたか?』

「スピネル様はいますか?」

『アゲート様と共に研究所です。暫くは籠りきりかと……』

「では、オニキス様とサンゴ様を呼んでください」

『承知いたしました』

 

 それから数分後、ハンベルの部下により、招集がかかり本部で待機していたエクスプローラーズの幹部であるオニキスとサンゴがハンベルの元に参上した。

 

「オニキス、ここに」

 

 オニキスは寡黙な雰囲気の大男で傍らには、ピラミッドじみた上半身を持つ二足歩行のゴーレムのような巨人の姿をした、がんえんポケモンのキョジオーンを連れている。

 

「サンゴ来ました~」

 

 オニキスとは対照的に気怠げな態度を取っているピンク髪の少女、サンゴ。同じくエクスプローラーズの幹部であり、氷の装甲を持つ強面な頭だけが特徴のがんめんポケモンのオニゴーリの上に胡坐をかいて座っている。

 

「ガラル地方に向かいます。お二人とも私に同行してください」

 

 ハンベルの指示を受けオニキスは直ぐに返事をし任務を了承するが、サンゴだけはそれを面倒くさそうに聞いていた。

 

「鬼ダル~……お出かけは大歓迎だけどさ~なんでこいつと一緒なの?」

「お前は足手まといだ。留守番でもしていろ」

 

 トレーナー同士の言い争いをきっかけにキョジオーンとオニゴーリが互いに戦闘態勢に移ろうとした瞬間、ハンベルの影からポケモンが現れる。そのポケモンは死神を思わせる様な姿をした、てづかみポケモンのヨノワールだ。

 

「2人共……不服ですか?」

 

 ハンベルは普段は髪で隠れている片目を開き、両者とそのポケモンたちを睨みつける。丁寧な言葉とは裏腹に逆らうことは許さないと脅しているようにすら感じられた。

 

「いいえ!」

「仰せの通りに」

 

 その意思はオニキスとサンゴにもしっかりと伝わっていたようで両者は諍いを収めると姿勢を正し、改めて任務を引き受ける。その姿に満足したハンベルは一言、お礼の言葉を告げると部屋を出て通路を歩き始める。ハンベルに続くようにオニキスとサンゴもその後に続く。

 

「自ら出向くとは、それほどの緊急事案なのか?」

「探し物の回収です。ペンダントからの覚醒、それが事実であるならば、まずはこの目で確かめねばなりません」

 

 通路を歩きながら、オニキスが今回の任務の詳細を聞くとハンベルはそう答えた。

 

「……ん?ペンダント?……って事は、今回の任務ってジン君に会えるの!?」

 

 覚醒などの意味はよく分からなかった様だが、ペンダントという単語を聞いた瞬間、サンゴは突然、オニゴーリの上から飛び降りハンベルの前に出ると目を輝かせながらその問いかける。

 

「え、えぇ……今回の任務はそのペンダントであったポケモンの回収です。それにあたり恐らく、あの少年とも相対する必要に迫られる可能性は大いにあるかと……」

「鬼キターー!直ぐ行こう!今すぐ行こう!」

「「…………」」

 

 サンゴの突然の豹変ぶりに流石にハンベルもオニキスも戸惑っている様だ。サンゴが任務前にテンションを上げるのは決して珍しい事ではない。今までにも似たようなことは何度かあったが、今回のは明らかに群を抜いている。

 

「サンゴ様……あの少年にそんなに会いたかったのですか?」

 

 ハンベルの本音を言えば正直、あまり聞きたくはなかった。しかし、任務にも支障をきたす可能性がある以上、この任務の立案者として聞かないわけには行かない。そんな使命感の様な物から質問したのだが、その瞬間、サンゴは待っていましたとばかりにポケットに手を入れると1枚のカードを取り出す。

 

「うん!あの映像見た時からずっと気になってたんだよね~」

 

 スピネルが任務失敗の報告をした際にハンベルから渡されたジンがバトルをしている映像を見てからサンゴは個人的にもジンの事を調べ尽くした。映像を見るたびにジンの行うバトルのテクニックやポケモンの強さに魅せられ、サンゴはあっという間にジンに夢中になっていった。

 

 そして……

 

「じゃじゃーん!見て見て!ジン君のファンクラブの会員カード!しかも一桁ナンバー!」

 

 サンゴが自慢げに掲げたカードには『ポケモントレーナー ジン ファンクラブ』と書かれている。そのカードを見せられたハンベルとオニキスは何とも言えない様な表情を浮かべながらサンゴを見ていたのだが、本人はそれに気づかずに話し続ける。

 

「一桁ナンバーになるの大変だったんだよね~審査とか意外に厳しくてさ。わざわざホウエン地方まで出向いたんだから」

 

 ポケモントレーナーファンクラブとは各地方に存在する。ジンはナンジャモの配信の影響でパルデアではそこそこ名が売れたが、それでも出身であるホウエン地方以外ではまだそこまでの知名度はない。故にファンクラブはホウエン地方では本部のあるミナモシティにしか存在しない。会員になるだけであればネットからでも申し込めるが、そこから上を目指すためには、どうしても本部で審査を受ける必要があるのだ。

 

「ちょっと待て……お前、任務でホウエン地方に行ったんじゃなかったのか?」

「はぁ?そんな事、一言も言ってないんですけど?」

「だが、お前は確かあの時……」 

 

 確かにサンゴが数日間、本部を離れていたのはオニキスも知っている。なんならサンゴがホウエン地方に出かける前に一度顔を合わせていた。オニキスの記憶が正しければサンゴはあの時『重要な用事があんだよ~』と上機嫌に語っていた。オニキスはそれをエクスプローラーズの重要な用事と勘違いしていたのだが……

 

「そう!サンゴにとって重要な用事があったんだ~」

「サンゴ!」

「なんだよ!なんか文句あんの?」

「2人共、そこまでです」

 

 このままでは再び、先程の様に戦闘に移ると感じたハンベルは両者の仲介に入る。しかし、ここに来てハンベルにとって大きな問題も浮上してきた。

 

「しかし、サンゴ様。先ほども申しましたが、恐らく、今回の任務ではあのジンという少年とも争う可能性があります。本当に宜しいのですか?」

 

 サンゴがジンに執着しているのは本人の様子から見ても間違いない。いざという時に争えないなどと言うようでは流石に連れていく事は危ぶまれる。そう考え、質問を投げかけたのだが、サンゴからは予想外の返答が帰ってくる。

 

「そんなの当然じゃん。むしろサンゴはジン君とバトルしたいんだ~」

 

 ファンクラブの会員カードをポケットにしまうと今度はスマホロトムを取り出すサンゴ、そのホーム画面にはサイユウ大会の優勝トロフィーを掲げ、小さくではあるが笑みを浮かべたジンが映っていた。

 

「楽しみだな~どんなバトル見せてくれるんだろう?ジン君に生で会えるとか鬼楽しみなんですけど~」

 

 目をハートにしながら語り出すサンゴを見て、オニキスは任務の重要性について説教をしようとしたが、ハンベルに片手で制止される。

 

「分かりました。それでは彼の相手はサンゴ様に一任します」

「本当!?」

「……いいのか?」

「構いません」

 

 オニキスの問いにハンベルは仕方なさそうに答える。この分では命令を無視してでもサンゴはジンの元に向かう。そうなるくらいであれば最初から割り切ったうえで作戦を立てた方がいい。そう結論付けることとした様だ。

 

「本来は、2人には最後の切り札として待機して頂く予定でしたが計画変更です。予定地に着き次第、サンゴ様は少年の相手をオニキス様にはそれ以外のトレーナーとポケモンたちの相手をお願い致します」

「りょうかーい!サンゴに任せておくれよ~」

「……承知した」

「それでは急ぎましょう。これ以上、時間を潰すのは得策ではありません」

 

 その言葉を最後にハンベル、オニキス、サンゴの3人は再び、歩み出し事前に部下に用意させてあったヘリコプターへと向かうのだった。 

 

「待っててね~サンゴが今、会いに行くよ~」

 

 

 

***

 

 

 

「………ん?」

「ジン?どうしたの?」

 

 鉄道を降りたジンたちはダイアナが使いでよこしたイキリンコの案内で彼女の待つ古城へと向かっていた。

 

「いや……誰かに呼ばれた気がしたんだが……」

「誰もいないぞ?気のせいじゃないか?」

 

 辺りを見回すが確かに誰もいない。気のせいだと判断し、改めてガラルの古城を目指し歩みだす。イキリンコに従い、平原地帯から森へと入りそのまま森を暫く歩いて行くと大量の石が置かれた場所にまで行きつく。

 

「行き止まり?」

「イキリンコ?」

「リコリコー!」

 

 道がなくなり、どうしたのかと思えばイキリンコが目の前の石の壁に向かって大きな声を出しながら喚き出す。すると目の前にあった石の壁が動き出し隠してあった通路が現れた。

 

「こいつはポケモンか?」

「あぁ、イシヘンジンだ。扉代わりにしてるとは面白い」

 

 隠されていた秘密の通路へと入るとイシヘンジンは再び、動き出し通路を隠し始める。そのまま暫く、その道を歩いて行くとロイがリコにダイアナの事を聞き始めた。

 

「リコのおばあちゃんって冒険家なんだよね?」

「うん。ポケモンたちと一緒にいつも冒険してて古代の遺跡とか沈没船とかを探してるみたい」

「おっ!なかなかロマンがあるな」

 

 旅をしていれば遺跡や沈没船などの噂は嫌でも耳に入る。ジンも興味本位で何度か首を突っ込んだ事はあるのでその手の話にはとても興味があった。

 

「会うのは久しぶりなんだろ?」

「うん。最後に会ったのは去年、セキエイ学園への入学が決まった時、パルデアの家までお祝いに来てくれたの。その時にペンダントをお守りにってくれたんだ」

「それがリコとペンダントとの出会いか」

「ふふっ…‥おばあちゃんって冒険が大好きでバトルも強いからジンとも案外、気が合うかもしれないよ?」

「……そうだといいんだけどな」

 

 思いがけずリコによりジンとダイアナには共通点が多い事を知らされる。リコの言うように気が合えば色々と楽でいいなと考えながら歩みを続けていくと遂にダイアナのいると思われる年期の入った古城が見えてきた。

 

「ここに、おばあちゃんが……おばあちゃーーん!リコです!」

 

 リコが城に向けて大声で呼びかけると古城のテラスから1体のポケモンがジンたちの前に飛び降りた。その正体は、ダイアナのパートナーでもある、でんせつポケモンのウインディだ。

 

「ウインディ!久しぶり!」

 

 飛び降りてきたポケモンの正体がダイアナのウインディであると分かるとリコは抱き着き、再会を喜ぶ。すると古城の扉が開き、中から1人の人物が姿を現した。

 

「見違えたね。リコ」

「おばあちゃん!」

 

 その人物こそが、リコの祖母のダイアナだ。彼女と再会するとリコは笑顔を浮かべ心から嬉しそうな声を出す。

 

「それから……」

 

 ダイアナはニヤリと笑みを浮かべるとジンの事を見つめる。その視線はジンがどんな人間であるのかまるで品定めをしているかのようだった。

 

「ようやく会えた。あんたがジンだね。娘たちから話は聞いてるよ。さぁ、中で詳しく話を聞かせておくれ」

 





今後、サンゴの扱いはちょっと悩みどころですね。この先の展開次第では第二ヒロインにしちゃうかもしれないです。

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